2.各候補プロジェクトの概要等について

  各候補プロジェクトの概要及び主なスペックについて、本検討会において専門家から意見を聴取したところ、以下のような提案があった。

(1)国際核融合エネルギー研究センター

  • 国際核融合エネルギー研究センターは、原型炉設計・研究開発調整センター、ITER(イーター)遠隔実験センター及び核融合計算センターから構成され、これらのセンターが連携を図りながら、核融合エネルギーの実現に向けた研究開発を効果的・効率的に実施する研究センター。
  • 原型炉設計・研究開発調整センターは、各国で検討されている次世代核融合炉(原型炉)の概念設計を評価し、合理的な概念設計を確立するとともに、その設計をもとに原型炉の実現に向けて必要な物理的・工学的な研究開発課題を抽出し、予備的な研究開発を実施する。
  • ITER(イーター)遠隔実験センターは、ITER(イーター)本体と高速ネットワークで結ばれ、我が国においてITER(イーター)の実験条件の設定、データ収集、解析等が行えるようにする施設。カダラッシュとの8時間の時差(夏時間期間は7時間)を利用して効率的にITER(イーター)で実験をすることが可能となる。
  • 核融合計算センターは、スーパーコンピュータを用いて、燃焼プラズマの挙動やプラントの安全性等に関連する計算・解析を行い、その成果をITER(イーター)の運転シナリオの最適化や次世代炉の設計等に反映させる。また、核融合計算センターのスーパーコンピュータは開発済みのものを調達することを想定。
  • タイムスケジュールについては、当初の2年で研究棟の整備を行い、その後、核融合計算センターと原型炉設計・研究開発調整センターは活動を開始。遠隔実験センターはITER(イーター)完成の2年前から整備を開始し、ITER(イーター)運転開始と同時期に運用を開始する。
  • 必要な経費としては、核融合計算センターの性能等により大きく変わりうるが、数百億円規模を想定。

(2)サテライトトカマク装置

  • 日本原子力研究所が有する臨界プラズマ実験装置JT60を活用し、ITER(イーター)の運転シナリオの最適化等のITER(イーター)支援研究や原型炉に向けてITER(イーター)を補完する研究を国際枠組みで実施する。
  • また、サテライトトカマクの役割を適切に果たすために、プラズマの長時間維持やITER(イーター)を模擬したプラズマ配置等が可能となるよう、JT60のコイルの超伝導化等の改修を行う。
  • 改修により高ベータプラズマを保持することを目指すとともに、プラズマアスペクト比、断面形状制御性等において機動性と自由度を最大限確保できるものとする。
  • スケジュールとしては、本体改修と機器調整・整備を合わせて約10年を予定。なお、最後の4年程度は実際の運転・研究を行いながら調整整備を行うことを想定。経費としては、本体改修及び機器調整・整備等に数百億円を見込んでいる。

(3)国際核融合材料照射施設(設計活動及び/又は施設)

  • 本プロジェクトは、核融合炉の材料開発に不可欠である14MeV中性子の重照射(80dpa(ディスプレイスメントパーアトム)(注)程度以上)に関する照射データを取得するために、中性子照射施設の工学設計活動・建設を行うもの。
    (注)dpa(ディスプレイスメントパーアトム): 中性子照射によって材料の構成原子が格子点からはじき出される割合を示す単位
  • これまでの国際核融合材料照射施設の概念設計活動の結果、施設の主な要求性能としては、はじき出し損傷速度は最大50dpa(ディスプレイスメントパーアトム)毎年、中性子スペクトルは核融合炉の第1壁環境を模擬したものとされている。
  • 工学設計活動は、建設判断に必要な十分に統合された工学設計とその裏付けになる技術データの整備を目的とし、そのために必要となる、加速器プロトタイプ、リチウムモデルループ等の製作・試験も実施。
  • 本プロジェクトは、現在OECD/IEA(国際エネルギー機関)の下で日欧露米の協力により実施している国際核融合材料照射施設の概念設計活動の延長上に位置付けられる。
  • 必要な経費としては、施設の建設を行う場合は総額約1,000億円。また、工学設計のみについては、加速器のプロトタイプの試験まで含めるか否かにより変わるが、約100億円~約200億円。
  • 工学設計活動は(1)の国際核融合研究センター活動の一環として実施することが効果的・効率的。スケジュールとしては、同センターの研究棟が完成しだい開始し、5年程度の期間を見込む。

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研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当)

(研究開発戦略官付(核融合・原子力国際協力担当))

-- 登録:平成21年以前 --