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シリア・中心体系による生体情報フローの制御(濱田 博司)

研究領域名

シリア・中心体系による生体情報フローの制御

研究期間

平成24年度~平成28年度

領域代表者

濱田 博司(大阪大学・生命機能研究科・教授)

研究領域の概要

 中心体は分裂期の細胞で紡錘体の形成中心として機能する一方、静止期の細胞では、その核である中心小体が基底小体としてシリア(繊毛)を形成する。シリア‐中心体系は様々な生化学シグナルあるいは力学的シグナルの発生・伝達・整流・応答に重要な役割を果たす。とりわけ、一次シリアは細胞のアンテナとして働くことで多様な生理作用に関与し、その破綻は多彩な疾患・症状に結びつく。本領域では、細胞の内外を貫くシリア〜中心体系という密接に関連した構造を、生体情報の流れを制御するダイナミックな細胞内小器官として捉え、その構造と動態に立脚した新たな視点から、細胞内外の情報フローの制御を体系的に理解することを目指す。

領域代表者からの報告

1.研究領域の目的及び意義

 生体の様々な営みは細胞内外の情報伝達の上に成り立っているが、細胞内で発生したシグナルは、細胞間を伝わり、再び標的細胞によって受容・解釈されるまでの間、等方的に伝わる訳ではなく、局在化、ベクトル化(方向付け)されることにより、効率的な情報伝達を達成している。しかしながら、細胞内・細胞外空間を通して、情報の流れがどのように整流され、方向付けられるのかを包括的に展望する視点はこれまで未成熟であった。本研究領域では、細胞の内外を貫くシリア(繊毛)〜中心体系という密接に関連した構造を、生体情報の流れを制御するダイナミックな細胞内小器官として捉え、その構造と動態に立脚した新たな視点から、細胞内外の情報フローの制御を体系的に理解することをめざす。本研究の発展は、発生・発育・ホメオスタシス等の生理現象の理解を促進するだけでなく、シリア-中心体系を介した情報フローの破綻に由来するヒト疾患の病態解明の礎となるものである。次々と明らかにされつつあるヒト疾患への関与を考えると,基礎生物学的な意義のみならず、医学的な意義も極めて大きい。本領域に集結した先端的研究者と若手研究者層が中核となって、生体情報のフローと細胞構築の動態をリンクさせる新しい学問分野を創出することで、若い世代の研究者の分野を超えた連携と活性化が期待される。

2.研究の進展状況及び成果の概要

 計画班と公募班ともに、概ね順調な進展を見せている。細胞周期、細胞内シグナル伝達、細胞骨格、細胞運動という基礎的な細胞生物学とともに、ヒト繊毛病(ciliopathy)の病理学の面からも、オリジナルな研究成果を生み出している。具体的には、中心小体の構成と複製の機構、基底小体アペンデージの解剖と細胞骨格との相互作用、中心小体から基底小体への変換機構、細胞周期に依存したシリア・軸糸の形成機構、シリアが運動性を獲得する機構、シリアによる水流の感知機構、中心体による細胞の非対称化、中心体構成因子による神経細胞の制御とヒト神経疾患への関与、などにおいて大きな進展があった。領域研究全体を見ると、研究項目内あるいは項目を超えた班員間の連携・共同研究が、予想以上に進んでいる。これは、公募班員が領域班会議や国際シンポジウムでの情報を、有効に利用しているのが大きな要因である。領域研究の中期であるために、そのほとんどは未だ発表に至っていないが,非常に有望な成果が多く、今後論文として結実するはずである。総括班を中心とした技術支援や研究資材・動物の支援も適切に行うことができ、研究の進展に大きな役割を果たしている。

審査部会における所見

A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、共通の構造基盤を持つシリア(繊毛)と中心体を生体情報の流れを制御するダイナミックな細胞内小器官として捉え、細胞内外の情報フローの制御の理解を目指すものである。計画研究はこの分野の中心研究者が結集し、公募研究も含め有機的連携により領域研究がうまく進展している。これまで、基底小体アペンデージの解剖と細胞骨格との相互作用に関する報告、繊毛による水流の関知メカニズムに関する報告など、順調に成果が上がっている。一方、研究対象とする生物学的課題が広範囲におよぶため、領域目標の達成に向けて研究成果を如何にまとめるかが課題である。また、この領域の未来を考えると、若手のコミュニケーションを図るワークショップの開催など若手育成への具体的な取り組みが必要である。 

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 計画研究、公募研究の有機的連携により、設定された目標達成に向けて順調な進展がみられる。一方、既存の学問分野の枠に収まらない新興、融合領域の創成という点ではやや物足りない。実験材料、実験系に関して準備が整いつつあり、これまでの研究成果に基づいて領域として重要な課題を明確にし、その解決に向かった取り組みに期待する。

(2)研究成果

 独自の生物学的課題に取り組んできた研究者が、シリア・中心体という視点から現象を捉え直して、それぞれオリジナリティーの高い課題に挑戦し、着実に成果を挙げている。一方、シグナルという視点から見ると問題点が絞り込まれていない部分も見受けられる。領域内の成果の共有や連携をさらに進めて今後それぞれの課題を成果公表できる段階まで進める努力を求める。

(3)研究組織

 計画研究は、各々の分野で既に実績のある研究者で構成され、今後の成果も期待できる。既に幾つか共同研究が発展しつつあるが、技術面での提携のみならず、問題点の整理や方法論に関する議論および研究コンセプトの共有を図ることも重要であろう。また、各計画研究における成果や、実験上の進展などホームページを用いて情報共有を図ることも有効な手段である。

(4)研究費の使用

 多くの計画研究において初年度・次年度に備品購入が行われたが、いずれも有効に活用され、研究費の使用は概ね妥当であると判断する。また、総括班経費も有効に使用されている。現時点では、設備備品に関しては既製品の導入に限られているが、本研究課題に最適な装置開発を進める等の取り組みにより、一層の展開が期待できるのでは、という意見があった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 各計画研究の強みを生かした領域内連携をさらに進め、研究領域としてまとまった成果を如何に出していくかが課題である。今後の領域研究の推進にあたって、疾患研究分野および構造生物学分野については、公募研究による補強が望まれる。若手の育成は、この領域の将来の発展につながる重要な取り組みであり、より積極的な取り組みが望まれる。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 いずれの研究計画も妥当であり、組織変更等の大幅な計画変更も無いため、継続にあたっての審査の必要は無い。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成26年11月 --