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元素ブロック高分子材料の創出(中條 善樹)

研究領域名

元素ブロック高分子材料の創出

研究期間

平成24年度~平成28年度

領域代表者

中條 善樹(京都大学・大学院工学研究科・教授)

研究領域の概要

 多様な材料が求められている中で、現在、有機物と無機物のそれぞれの特徴を複合的に活かした有機-無機ハイブリッド材料や、分子構造のレベルで有機高分子材料に種々の無機元素を組み込んだハイブリッド高分子の考え方に基づく材料が開発され、電子材料を含めた様々な分野で利用されている。
 本領域では、このようなハイブリッド化による材料開発を各種の元素のブロックに対して適用する新しい試みを提案している。まず、有機化学の手法と無機元素ブロック作製技術を巧みに利用した革新的合成プロセスにより、多彩な元素群で構成される“元素ブロック”を開拓し、その精密結合法の開発によって “元素ブロック高分子”を開拓する。さらに、非共有結合による相互作用や異種高分子成分のナノ相分離などを利用した固体状態での材料の高次構造の制御を行う。このようにして、革新的なアイデアに基づく“元素ブロック高分子材料”を創出し、その学理の確立を目的とする。

領域代表者からの報告

1.研究領域の目的及び意義

 多様な材料が求められている中で、現在、有機物と無機物のそれぞれの特徴を複合的に活かした有機-無機ハイブリッド材料や、分子構造のレベルで有機高分子材料に種々の無機元素を組み込んだハイブリッド高分子の考え方に基づく材料が開発され、光学材料や電子材料を含めた様々な分野で利用されている。
 本領域では、このようなハイブリッド化による材料開発を各種の元素のブロックに対して適用する新しい試みを展開している。有機化学の手法と無機元素ブロック作製技術を巧みに利用した革新的合成プロセスにより、多彩な元素群で構成される“元素ブロック”を開拓し、その精密な高分子化によって、 従来にない“元素ブロック高分子”を開拓する。さらに、非共有結合による相互作用や異種高分子成分のナノ相分離など、さまざまな手法を駆使して、固体状態・界面での材料の高次構造の制御を行う。このようにして、革新的なアイデアに基づく“元素ブロック高分子材料”を創出し、その学理の確立を目的とする。
 “元素ブロック高分子材料”という新しい概念に基づく領域を立ち上げ発展させることで、従来の有機高分子材料・無機材料および有機-無機ハイブリッド材料などでは達成できないような機能を有する材料の合成が可能になる。例えば、電子・光学・磁気機能などを有する新奇な材料合成の設計指針および合成手法を提供し、材料開発の分野に新展開をもたらす。

2.研究の進展状況及び成果の概要

 本研究領域では、A01(元素ブロック設計)、A02(高分子化制御)、A03(界面階層制御)の各研究項目で研究を推進するとともに、A04(シーズ包括育成)として、A01-A03の分類にこだわらず、シーズ志向の研究や積極的な相互交流により、領域の活性化に貢献する挑戦的な研究項目を設けた。A01では、種々の典型元素や遷移金属元素を含むπ共役系、籠状ユニット、ナノ粒子、ナノチューブ、ナノシートなどの多彩な新規元素ブロックの合成が行われ、その機能が明らかにされている。A02では、精密合成によって、元素ブロックを骨格内に適切に付与した高分子へと展開し、興味ある半導体特性、発光性、高分子物性などを報告している。A03では、元素ブロック界面の解析による機能メカニズムの解明、階層制御による機能開拓などが行われた。代表例として、精緻に設計・配列した希土類元素ブロックがある。温度によって発光色が変化する「カメレオン発光体」として報道され、実用研究も行われている。A04でも、革新的なアイデアに基づく元素ブロック高分子の開発によって、新しい発光材料、クロミック材料、光学材料、導電性材料などが開発され、放射線がん治療への応用も検討された。A04での元素ブロック高分子の理論的な解析などの横断的な研究、研究項目にこだわらず対象物質で分類した分科会の開催、領域内研究者の化合物・知識・技術などを共通プラットフォーム化したライブラリー構築などを契機として、盛んに共同研究が行われ、既に多くの成果に結びついている。以上の成果は、国際会議を含む公開シンポジウム・領域HP、ニュースレター、各種のアウトリーチ活動などによって、積極的に公開している。

審査部会における所見

A+(研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、多彩な元素群で構成される「元素ブロック」を開拓し、これを材料化するための精密結合法ならびに界面階層制御法を開発することによって、従来の有機材料、無機材料、およびハイブリッド材料を凌駕する「元素ブロック高分子材料」を創製し、その学理を確立することを目的としている。領域代表者の強力なリーダーシップと独創的なアイデアのもとで順調に領域運営が行われており、計画研究、公募研究ともに研究構想が着実に実行され、新たな学術領域が形成されていると認められる。既に本研究領域から、光学、磁気特性などにおいて特出した機能を発揮する「元素ブロック高分子材料」が創出されており、量・質ともに極めて優れた研究成果が得られている。
 領域組織の活性化と異分野融合のための取り組みとして、領域内の新物質・装置などのデータベース「元素ブロックライブラリー」の構築や、対象物質に特化した分科会、公募研究代表者の項目間移動などが実施され、その結果として100件を超える共同研究が生まれたことは高く評価できる。アウトリーチ・広報活動、国際交流、学協会・産業界との連携についても、積極的に推進していると認められる。また、若手合宿セミナー、若手の海外渡航支援、英語でのショートプレゼンテーションを含む合同修士論文発表会など、独自の試みにより若手の育成・活性化が積極的に図られている点も評価に値する。
 以上により、本研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められると判断する。今後も、領域組織のさらなる活性化と異分野融合を通じて、革新的な元素ブロック高分子材料が創製され、本研究領域の学理が確立されることを期待する。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 従来型のケイ素を中心とした無機元素から構成される有機-無機ハイブリッド材料は数多く研究されてきたが、ケイ素に限定されない多様な元素群を積極的に利用し、新しい材料化学領域として体系化しようとする動きに乏しかった。本研究領域は、多彩な元素群で構成される元素ブロックを基軸として材料化のための方法論を確立し、従来材料を凌駕する「元素ブロック高分子材料」を創製し、その学理を確立しようとする意欲的なものである。総括班によるきめ細やかなマネジメントのもとで、合成、材料化、界面制御、理論の専門家が一丸となって、新たな学術領域の創成を着実に推進している。様々な取り組みによって人材交流と異分野融合が強力に推進されており、100件を超える領域内共同研究が実施され、質の高い成果が数多く創出されている。「既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成等を目指すもの」という本研究領域の設定目的に照らして、期待以上の進展が認められる。なお、元素ブロックには、組成と大きさにおいてかなりの幅・多様性が認められ、表面のエネルギー状態は相当に異なると考えられる。今後、本研究領域がさらに発展することによって、これらが統一的な法則で整理・体系化されていくことを期待する。

(2)研究成果

 計画研究、公募研究ともに研究構想が着実に実行され、「元素ブロック高分子材料」という新概念に基づくインパクトの高い成果が多数報告されている。論文発表、特許出願、招待講演・学会発表などの研究成果実績も申し分なく、期待通りの成果が順調に得られている。また、100件を超える共同研究の実施は、期待を上回る成果と言え、高く評価できる。合成、材料化、界面制御、理論の研究者を戦略的に配置した研究体制と、人材交流・異分野融合のための取り組みの効果が目に見える形で表れていると言える。アウトリーチ活動、領域ホームページやマスメディアを通しての広報活動など、社会・国民に向けた情報発信も活発に行われている。既に本研究領域から、光学、磁気特性などにおいて特出した機能を発揮する「元素ブロック高分子材料」が多数創出されており、産業界への成果波及を見据えた取り組みも開始されている。今後、産業界との連携をさらに強化し、材料としての具体的な出口イメージをより積極的に追及していくことが望まれる。一方、一部の研究者においては、発表論文数などの研究実績に差が認められる部分もあった。今後、領域組織の一層の活性化と研究実績の底上げを期待する。

(3)研究組織

 領域代表者および総括班の強力なリーダーシップとマネジメントのもとで、合成、材料化、界面制御の各研究項目A01~A03が着実に推進されている。これらの研究項目を理論面でサポートする研究項目A04「シーズ包括育成」も効果的に機能し、本研究領域を先導している。公募研究代表者にはアクティビティーの高い若手研究者が多く、本研究領域の発展に欠かせない存在となっている。公募研究代表者の研究項目間移動は、研究組織に柔軟性を与えるとともに、研究者の交流と連携を推進する新しい取り組みとして評価できる。また、若手の自主運営による合宿セミナー、若手の海外渡航支援、英語でのショートプレゼンテーションを含む合同修士論文発表会など、若手の育成・活性化に向けた取り組みが積極的に行われていることも、評価に値する。一方、有機化学的なアプローチに比して無機化学的なアプローチが少ない部分もあった。今後、水熱法などの無機材料のユニークな合成手法を取り入れることにより、革新的な材料創製に向けたアプローチの幅を拡張し得る組織に向かうことが望ましい。

(4)研究費の使用

 研究費は有効に活用されていると判断できる。購入された装置類の多くは共同研究に生かされており、本研究領域内で広く有効に利用されている。研究費に係る問題点、課題は認められない。

(5)今後の研究領域の推進方策

 様々な人材交流・異分野融合の取り組みにより数多くの領域内共同研究が実施され、今後も産業界を巻き込んだ形で加速される見込みであることは高く評価できる。また、別に進行中の新学術研究領域「融合マテリアル」と合同シンポジウムを開催するなど、本研究領域内に留まらない材料化学分野の拡大と活性化、情報交流を積極的に進めていることも評価に値する。今後も、研究項目の枠組みを超えた共同研究や国際交流、学協会・産業界との連携がより一層推進されることを期待する。ただ、多くの活動が展開されているため、領域組織の活性化を図る際には、過度の負荷が集中して研究者の研究活動が束縛されることのないよう、きめ細やかな配慮を求める。
 また、元素ブロックライブラリーは、多くの関連研究者にとって有用な情報リソースとなることが期待されるが、このような包括的な活動を研究者個人のレベルで実施することは困難であり、本研究領域で進めることに大きな意義が認められる。ニュースレターにも充実した情報が盛り込まれている。今後、これらの情報を本研究領域内に留めておくのではなく、広く流布する方策を早期に検討することが望まれる。新材料の創出と応用に際しては、材料の安全性についても留意されたい。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 領域代表者ならびに総括班の適切なマネジメントのもと、各計画研究は順調に進展しており、今後の研究計画・方法・経費も妥当であることから、全ての研究項目について継続に係る審査は不要である。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成26年11月 --