動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築(岡本 正宏)

研究領域名

動的・多要素な生体分子ネットワークを理解するための合成生物学の基盤構築

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

岡本 正宏(九州大学・大学院農学研究院・教授)

研究領域の概要

 2000年頃から米国を中心に、生体分子ネットワークを「眺めて解析する生物学」から、「創って解析する・利用する生物学」を目指し、合成生物学という研究が行われている。しかし、開発された人工遺伝子回路や人工代謝経路は小規模であり、試行錯誤で構築されているのが現状であり、合成生物学を展開するための技術基盤は未だ確立されていない。本申請では、生体分子ネットワークをより深く理解し、利用するために、(1)人工遺伝子回路や人工代謝経路の探索・設計を行う情報科学と、(2)無細胞系(in vitro)で回路・経路構築を行う工学と、(3)細胞内(in vivo)へ回路・経路を導入する分子生物学の技術を結集し、有機的に連携することで、世界に先駆けた合成生物学を展開するための技術基盤を構築する。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A-(研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、生体分子ネットワークを統合的に理解し、利用することを目的に、情報科学と工学、分子生物学の技術を結集し、有機的に連携することにより、合成生物学を展開するための技術基盤の構築を目指すものである。情報科学、工学、分子生物学という異なる3分野のベクトルを揃えることで合成生物学の基盤という新たな領域の構築を目指し、領域内研究組織の融合を高める工夫は認められる。ただし、現段階では、まだ個別研究と見なされるものも多いため、領域の設定目的に照らして概ね期待どおりの進展が認められるものの、一部に遅れが認められると判断した。3分野間の共通目標の設定、さらには何を具体的な到達目標とするのかをあらかじめ提示することが望まれる。
 研究期間の後半では、合成生物学が目指す出口が明確になるような成果を得るためにも、評価系を絞って共同研究を推進するなどの工夫が望まれる。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 「既存の学問分野の枠に収まらない新興・融合領域の創成を目指す」という点については、分子生物学、工学、情報科学という異なる3分野のベクトルを揃えることで合成生物学の基盤という新たな領域の構築を目指し、領域内研究組織の融合を高める工夫が認められる。しかしながら、現状では従来の研究の延長線上にあるような個別研究の段階のものが多く、3分野間にどのような共通目標が設定され、何を具体的な到達目標にするのかが必ずしも明確でない。
 「他の研究領域への波及効果」については、個々の分野の要素技術に関しては着実に進展しており、今後、さまざまな技術を融合することで生命システム理解の深化とともに医療分野へも波及することが期待される。本研究領域の発展と一般化には、関連する他の新学術領域との交流や意見交換なども有意義と考えられる。

(2)研究成果

 本研究領域の目的に向かって進展しつつあるものの、目的の達成には今後の研究成果が重要である。3分野間で共同研究も行われ成果も出つつあるが、まだ領域内の個別共同研究の域を出ていないものが多い。デバイスの構築、データ取得、理論からのフィードバックという3分野間の連携で、これまでにない成果が得られたという具体例を示すことが望まれる。

(3)研究組織

 公募研究の数が少ないことについては、本研究領域の目標及び重要性が十分に認識されていない可能性がある。分野として未成熟で研究者が少ないのであれば、若手研究者の啓蒙などの手立てを講ずる必要がある。技術セミナーの開催や「細胞を創る会」の共催などは評価できる。これに加えて、若手研究者育成のために学会等でのシンポジウム、ワークショップなどを積極的に企画することが望まれる。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。 

(5)今後の研究領域の推進方策

 研究期間後半では、合成生物学が目指す出口が明確になるような成果を得るため、計画研究に加えて質が高く領域推進のために真に必要な公募研究を確保するとともに、評価対象を絞り、具体的な到達目標を設定した共同研究を推進するなどの工夫が望まれる。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 各計画研究は順調に進展しているものの、今後、領域全体の研究の方向性を明確にし、領域内の融合研究を一層推進する必要があることから、一部の計画研究については継続に係る審査を求める。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --