上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立(菊池 章)

研究領域名

上皮管腔組織の形成・維持と破綻における極性シグナル制御の分子基盤の確立

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

菊池 章(大阪大学・大学院医学系研究科・教授)

研究領域の概要

 上皮管腔組織は、多細胞生物における多くの器官そのものであり、生体の生理と病理の根幹をなす。生命科学の諸分野の発展により、上皮管腔組織の形成・維持と破綻の根底には、組織幹細胞や前駆細胞の自己複製と分化、細胞の極性化と脱極性化、管腔構造の形成と維持などの事象が複層的に潜んでいることが明らかになっている。これらの事象は各々異なった研究者グループによりこれまで研究されてきたが、本研究領域では我が国においてこれらの研究を先導してきた研究者が連携して、極性シグナルにより制御される上皮管腔組織の形成・維持と破綻の分子機構を解明することを目指す。上皮管腔組織形成を基軸とし連携研究を行うことは、生命科学の諸分野への大きな展開を通じて我が国の学術研究の強化に繋がる。 

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、上皮細胞が3次元的に管腔構造を形成する過程及び維持機構の解明とその破綻による疾患の理解を深めることを目指すものである。「上皮管腔」というキーワードにより実績のある研究者が集結し、幹細胞誘導系の開発を世界に先駆け成功させるなど、研究は順調に進展している。領域内の連携も良好で、今後も成果が見込まれる。
 また、管腔組織の形成に結びつく分子(遺伝子)レベルの解明など新たな展開によるがん研究や発生・再生研究分野への波及効果も期待される。今後、公募研究で補うことにより、シミュレーションモデル分野の研究者の参画あるいはモデル生物による研究をさらに強化することが出来れば、本研究領域のさらなる飛躍が期待される。なお、管腔形成、上皮化、細胞極性という既存の概念の組合せからどのような新しい概念が生み出されるのか明確にする必要がある。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 本研究領域内での異分野連携による共同研究から、上皮管腔組織の極性に焦点を当てた形態形成に関わる新知見が得られるなど着実に研究が進展している。また、共同研究により上皮管腔組織の形成過程の解析に関わる方法など新しい技術が開発されつつあり、他の研究領域への波及効果も期待される。さらに、本研究領域で明らかになってきた様々な研究成果は、がん研究分野、組織形成機構研究あるいは炎症領域へも大きな波及効果をもたらすと期待できる。今後、新分野への発展も視野に、領域内の複数の研究を結ぶ共通性を見出すための分子レベルでの解明が望まれる。

(2)研究成果

 本研究領域の目標に沿った共同研究が順調に進展しており、その中から新規アクチン蛍光プローブの開発など新たな手法の開発も進み、成果が生まれている。また、領域内の異分野の研究者間の交流から新たな方向性も見出されている。上皮組織を研究対象とした本研究領域では、特にがん研究や発生・再生研究分野において成果がみられ、また、腸管炎症を促進する新たなシグナル伝達経路の可能性が示されたことは、免疫・炎症領域への波及効果も期待される。一方で、上皮管腔を形成するための共通原理と個々の臓器特異的原理については未だ不明であり、今後の課題である。

(3)研究組織

 「上皮管腔」というキーワードにより個々の臓器の研究において実績のある研究者が集結し、領域内の共同研究が活発に行われている点は評価できる。今後、シミュレーションモデル分野の研究者の参画やモデル生物の利用の検討も望まれる。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 この分野の専門家が集結しており、領域内の連携による相乗効果は高く評価でき、引き続き推進することが期待される。今後は、シミュレーションモデルやモデル生物の専門家の参画を図り、上皮管腔形成の共通原理の解明などにより、本研究領域をより発展させることが望まれる。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 いずれの計画研究も順調に進行しており、経費も必要かつ妥当と思われ、継続に係る審査の必要はない。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --