統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明(門松 健治)

研究領域名

統合的神経機能の制御を標的とした糖鎖の作動原理解明

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

門松 健治(名古屋大学・大学院医学系研究科・教授)

研究領域の概要

 糖鎖は核酸、タンパク質に並ぶ第三の生命鎖として、さまざまな生理的・病的過程に関与することが明らかになっている。しかしその機能と構造の多様性ゆえに、糖鎖の作用機序解明の実現性に対しては高い障壁があった。この障壁を克服して糖鎖の普遍的な作動原理を解明する重要な手がかりとして、私たちは、糖鎖の特定配列中に神経機能を制御するドメインが内包されていることを見いだした。一方、糖鎖がシナプス可塑性や神経回路再編を介して記憶・学習などの高次脳機能を制御することが明らかになりつつあり、糖鎖に着目した統合的神経研究が待望されている。
 本領域では、これまでに我が国において蓄積された世界に誇る糖鎖の知見と新しい解析法を最先端の神経研究に融合させる。これにより、「糖鎖機能ドメイン」から受容体、下流の分子動態、統合的な神経機能に至る制御機構を解明し、新しい生命科学の起点となる学術領域、神経糖鎖生物学を創成する。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、糖鎖研究と神経研究の融合・連携により、神経糖鎖生物学という新たな学問領域を創成することを目指すものである。糖鎖研究の専門家と神経科学の専門家が有機的に連携して多くの共同研究が推進されており、順調に研究成果が生まれつつあるなど、期待どおりの進展が認められる。
 神経系をモデルとして明らかとなった糖鎖による生命活動制御機構は、がんや免疫系、発生など他の生命現象においても共通の原理が存在する可能性が高く、他分野への波及効果は高い。シンポジウムの開催や若手研究者への支援活動についても積極的に推進されており、評価できる。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 「異なる学問分野の研究者が連携して行う共同研究等の推進により、当該研究領域の発展を目指す」という点については、糖鎖研究と神経研究の連携・共同研究が活発に行われており、その成果もあがりつつあることから、期待どおりに進展していると評価できる。
 また、「当該領域の研究の発展が他の研究領域の研究の発展に大きな波及効果をもたらす」という観点においても、神経機能制御の他の生物学分野にも大きな波及効果を及ぼす可能性のある成果が出つつあり、今後の発展が期待できる。

(2)研究成果

 「異分野連携の共同研究」の状況については、有機的な連携・共同研究により、リガンドとしての糖鎖機能を明らかにするなど、順調に研究成果があがっていると評価できる。
 「他領域への波及効果」については、神経系における糖鎖による生命機能制御に関する新しい知見が生まれつつあり、現時点で、他分野への波及効果を示す具体的な事例はないものの、今後の発展が十分期待できる。

(3)研究組織

 糖鎖研究者と神経研究者がバランスよく配置されている。領域代表者のリーダーシップのもと、共同研究や公開シンポジウム、若手研究者の育成、アウトリーチ活動が推進されており、研究組織として十分に機能していると評価できる。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 糖鎖研究と神経研究の融合・連携による研究成果は順調にあがりつつある。一方で、糖鎖機能ドメインの抽出は十分になされていないと思われるので、今後の発展に期待したい。若手研究者育成も積極的に推進されており、今後も継続的に発展させることを期待したい。
 なお、海外の研究者を招聘してシンポジウムの開催が行われているが、今後は「神経糖鎖生物学」をテーマとして海外でシンポジウムを開催するなど、海外に向けたより積極的な活動が望まれる。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 各計画研究は順調に進展しており、継続に係る審査の必要はない。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --