太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ(林 正彦)

研究領域名

太陽系外惑星の新機軸:地球型惑星へ

研究期間

平成23年度~平成27年度

領域代表者

林 正彦(国立天文台・台長)

研究領域の概要

 1995年の太陽以外の恒星を周回する惑星(系外惑星)の発見以来、系外惑星は人類に新しい宇宙観をもたらしている。太陽系内の8個の惑星に対し、すでに500個近い多様な系外惑星が発見されている今、従来の枠を超えた新機軸により、系外惑星科学を展開することが求められている。
 本領域研究では、過去7年間で開花した我が国における系外惑星科学をさらに飛躍的に発展させるため、天文学と惑星科学の研究者の強い連携・融合のもと、ハビタブルゾーンに地球型および木星型の系外惑星を検出、木星型惑星を直接分光してキャラクタリゼーションを行い、また惑星誕生の場である原始惑星系円盤の高解像度観測を推進し、これらを惑星形成および惑星大気の理論研究と融合することで、太陽系内外の地球型および木星型惑星の起源、形成、進化を統一的に解明することを目標とする。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、天文学と惑星科学のいわば中間に位置する研究対象について、この両分野の連携を図り、宇宙に存在するであろう地球型惑星の探索とその形成過程・存在頻度に関する理解を大幅に深めることを目指している。明確な目的と研究計画のもと、オールジャパン体制での人的資源の投入と新しい分光装置の導入により新たな学術領域研究を推進するというコンセプトは適切である。モデル系による数値計算は、大気循環、円盤の構造や組成の解明、惑星の形成過程などで、興味深い成果を上げている。
 特に、従来説明が困難であった観測結果を説明するシミュレーションなど、新しい手法により世界をリードする成果が得られている点は評価できる。一方、これらが観測に結びつくフェーズにはまだ至っていないことから、領域全体としては設定目的に照らして期待どおりに進展していると判断し、研究期間後半の活動に期待したい。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 「異なる学問分野の研究者が連携して行う共同研究等の推進により、当該研究領域の発展を目指す」という研究領域の設定目的に照らして、着実に研究が進展している。
 また、「多様な研究者による新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指す」という趣旨が実現されている。すなわち、すばる望遠鏡に取り付ける新型惑星分光装置の開発、ALMAの徹底活用、これらから得られる観測データを取り込んだ理論・数値シミュレーションの連携など、様々な最新の手法が有機的に取り入れられている。極めて具体的かつ着実で新たな視点と手法により、注目すべき成果が得られている点は評価できる。今後の研究推進上、大きな問題となる点は見当たらない。

(2)研究成果

 本研究領域では、天文学と惑星科学の連携という異分野連携の他、理論・数値シミュレーションと観測、太陽系惑星と系外惑星の研究の連携といった異分野の連携が重層的・多角的に図られている。これにより、ガス惑星の直接検出、類似の幾つかの候補天体の検出、原始惑星の検出などの観測と、円盤構造や円盤内固体物質の組成等の理論・計算的解明が相互にアイデアを出し合い、現時点で期待された成果を上げている。
 「多様な研究者による新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指すもの」としては、すばる望遠鏡に設置する新型分光装置の開発が順調に進展していること、すばる既存装置により惑星と原始惑星円盤研究が急進展していること、ALMAによる観測に戦略的に取り組んでいることなど、現時点で期待された成果を上げていると評価できる。
 さらに、これらの観測的成果を解釈し体系づけるための新しい計算手法の開発、すなわち系外惑星の多様性を説明するための理論・シミュレーション研究、太陽系惑星と系外惑星の大気循環シミュレーション、水の滞留などについてすでに成果が出始めており、その成果は積極的に公表されている。

(3)研究組織

 研究組織は、研究項目X00 が総括班会議、研究推進会議により4つの研究項目のステアリングを行う体制となっている。各計画研究がよく機能しており、今後さらに有機的に連携することを期待する。また、連携のためのチーム内研究会、国際会議なども活発に行われている。研究成果の公開のための日本語及び英語によるウェブページも充実しており、研究成果の積極的な公表・普及に努めていると認められる。また、数は多くはないが、若手研究者の育成にも注力している。

(4)研究費の使用

 円安・円高の影響についてはフレキシブルに対応するように考慮されている。しかし、特別推進研究により行われている赤外線観測に関する研究との関係が分かりにくいため、研究費の切り分けについては留意が必要である。

(5)今後の研究領域の推進方策

 モデル系による数値計算はすでに興味深い成果を上げており、大気循環や惑星形成過程について理論内での相互理解が深まるとともに、電波干渉法による円盤内ダスト探索について理論的な方法論の提案がなされている。
 一方、本研究領域の装置として最も期待されている赤外線面分光器や波面補償光学装置などは、それらの開発が計画通りに進捗しているようではあるが、まだ稼働していないためそのインパクトを十分に感じることができない。そのため、望遠鏡に装置が取り付けられて、実際に観測が開始された後に真の成果が分かるということではなく、途中経過におけるマイルストーンとして判断基準・項目を明示し検証してはどうか、との意見もあった。研究期間後半では、理論計算と観測とが結びつき、ALMAを使った実観測を含め、さらに活発な研究活動が行われることを期待したい。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 各計画研究は順調に進展しており、継続に係る審査の必要はない。また、研究経費の必要性・妥当性についても問題はない。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --