法と人間科学(仲 真紀子)

研究領域名

法と人間科学

研究期間

平成23年度~平成27年度 

領域代表者

仲 真紀子(北海道大学・大学院文学研究科・教授)

研究領域の概要

 司法手続きや司法に関わる様々な行為には、人の認知、情報、意志決定などの心理学的プロセスや、発達、障害などの心理的特性、知識、信念、価値観などの心理的属性が密接に関わっている。本研究課題は、法学、心理学、司法の実務の領域にまたがる新学術領域を創出し、押し進めようとするものである。その目標は、法学者、心理学者、実務家が協働し、司法の現場に関わる研究活動を行うこと、得られた成果を制度や実務へと還元すること、制度や実務からのフィードバックを得て、新たな研究課題へと投入すること、である。このことにより、実証科学に支えられた法制度の構築、法の実務が可能となり、社会の福祉と幸福のために資することができると考えられる。

領域代表者からの報告

審査部会における所見

A-(研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、法学や心理学を中心とする学術研究の成果を司法実務などに社会実装し、そこから得られるフィードバックを踏まえて更なる学術研究を進め、既存の学問分野の枠にとどまらない新たな学術領域を創出することを目指している。各研究項目における理論的な成果の一部が、実務においても現に参照され、それが更なる成果をもたらしている点は、評価に値する。
 他方で、一部の計画研究において、計画の進展に遅れが見られ、また、それらの連携・融合の深度にばらつきがあることから、計画研究相互の連携を強化することを含め、異分野の融合により新学術領域を創成する方法論の確立・実践が求められる。

2.評価の着目点ごとの所見

(1)研究の進展状況

 複数の計画研究での合同研究や実務家研修の実施を通じて、研究者の専門分野や、研究者と実務家といった区分を超えた異分野の連携を図る取組が着実に実施されている。他方で、研究項目によっては研究の進展に遅れが見られ、十分に連携がなされていないことから、研究領域全体として、新たな学問領域の創出に向けて研究成果の体系化を促進するとともに、異分野融合を可能とする方法論の確立が強く求められる。

(2)研究成果

 理論面で多くの成果が得られ、それらが研修等を通じて司法実務において参照される例もあるなど、連携による成果が着実に得られているほか、公開研究会等によりその情報発信も積極的に行われている。今後は、社会実装から得られるフィードバックを踏まえた理論の深化とともに、異分野連携を進め、既存の研究の枠組みを超えた形での融合によって、具体的な成果の獲得につなげることが期待される。

(3)研究組織

 司法実務の場面で使用できるツールの作成、実務家研修などを通じて、連携ないし融合のインセンティブを与える工夫がなされており、いくつかの計画研究では異分野の連携が展開していることが認められる。こうした活動を現実の異分野融合による新たな学問領域の創出につなげるためにも、組織の改編も含めて、総括班のイニシアチブによって各計画研究の連携をより強めることを可能とする領域運営方法の検討が求められる。

(4)研究費の使用

特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 計画研究相互の連携の強化を通じて、融合による新たな研究領域の創成に結びつける方法の確立が求められる。そのため、領域全体として何をどのように明らかにするか、実務家との協働をどのように実質化するか、といった点を明確にした上で、領域内の連携強化を図る必要がある。例えば、研究会等の場での研究成果の共有に加えて、研究の着手時点において異分野間の実質的な連携を図る具体的な研究課題を設定するなど、研究サイクルにおける意識的・制度的な異分野融合に向けた対応を図ることも考えられる。

(6)各計画研究の継続に係る審査の必要性・経費の適切性

 一部の計画研究で遅れが見られるものの、各計画研究は概ね順調に進展している。
 しかしながら、計画研究相互の連携が十分でないことから、領域全体としての研究の進め方、連携強化に向けた方策等を改めて明確にするため、一部の計画研究について継続に係る審査を行う必要がある。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

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-- 登録:平成25年11月 --