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生命応答を制御する脂質マシナリー (横溝 岳彦)

研究領域名

生命応答を制御する脂質マシナリー

研究期間

平成22年度~平成26年度

領域代表者

横溝 岳彦(順天堂大学・大学院医学研究科・教授)

領域代表者からの報告

1.研究領域の目的及び意義

 本領域では「全国を横断するAll Japan体制の脂質メディエーターの研究組織を構築し、より広範なモデル生物やヒト臨床リソースを利用することで、脂質メディエーターの生命現象における種を超えた普遍的な役割を解明すること」を目的として研究を遂行する。具体的には、研究目標の3本柱として、丸1 脂質メディエーターのフロー(生合成・輸送・受容)を総合的に解析してそれぞれの生命応答に固有の代謝マップを構築する、丸2 多様なモデル動物を利用することで種を超えた脂質メディエーターの普遍的かつ新しい機能を見いだす、丸3 臨床リソースを活用し、脂質メディエーターフロー異常がもたらす疾患の同定と治療に向けての理論基盤を確立する、を掲げ、これを遂行するためにA班(脂質メディエーターと受容体)、B班(脂質メディエーターの生合成と輸送)、C班(脂質メディエーターと疾患)に合計8名の精鋭を計画班員として配置し、これに18名の公募班員を加えて領域研究を推進する。脂質研究をサポートする複数の研究支援センターを領域内に構築し、計画班員・公募班員で情報・手技・ツールを共有することで、経済的・時間的に効率的な研究を展開すると共に、脂質研究の経験が少ない班員の研究をサポートし、より広い視野、バイオリソースからの脂質メディエーター研究を全国規模で展開する。さらにホームページや公開シンポジウム、ニュースレターの発行を通じて、研究成果や実験プロトコールの公開を積極的に行い、「取扱の難しい脂質」のイメージを払拭し、脂質研究の裾野を大きく広げることにも貢献する。

2.研究の進展状況及び成果の概要

 領域内に立ち上げた研究支援センターは順調に稼働し、活発な共同研究(センター利用32件、班員間共同研究32件)が行われている。12-HHT産生抑制によるアスピリン副作用の新規機序、LPAによる毛髪形成の促進作用と慢性疼痛発症機序を明らかにした。ゼブラフィッシュのPG、LT、LPAの全ての受容体と産生酵素を同定し、種を越えた脂質メディエーターの役割をあきらかにしつつある。LPA産生酵素オートタキシンの結晶構造を解明し、阻害剤開発を進めている。分泌型PLA2のサブタイプ別の解析を進め、精子形成、精子活性化、体毛形成における各アイソザイムの役割を明らかにした。好酸球が産生するEPA由来の新規抗炎症脂質17,18-diHEPEを発見し、炎症の収束に重要であることを示した。スフィンゴシン1-リン酸の全代謝経路を明らかにし、代謝酵素(ALDH3A2)欠損がシェグレン・ラルソン症候群を引き起こすことを見いだした。疾患モデルについても解析を進め、毛包炎、肉芽内リンパ管新生、アレルギー性腸炎、炎症性大腸炎、挫折ストレス、動脈瘤形成におけるPG、 LT、 LPAの役割を明らかにした。質量分析機を用いた脂質解析では、質量顕微鏡の改善と、超高感度脂質定量法の開発に大きな前進があった。領域HPを充実させ、班会議を計3回開催すると共に、公開国際シンポジウム、学会シンポジウム、出前授業を積極的に行い、情報の公知に務めた。

審査部会における所見

 A (研究領域の設定目的に照らして、期待どおりの進展が認められる)

1.総合所見

 本研究領域は、「脂質メディエーターの生命現象における種を超えた普遍的な役割を解明すること」を目的とするものである。目的達成の為に、総括班が研究支援センターを立ち上げ、微量脂質定量法の開発などを通じて、各研究代表者の研究を効率よくサポートしている点は高く評価できる。脂質メディエーターのフローの解析に留まらず、その異常がもたらす疾患との関連も解明されつつある。今後は、様々な疾患のメカニズムの解明や、治療法の開発に繋がることが期待される。

2.評価の着目点毎の所見

(1)研究の進展状況

 「異なる学問分野の研究者が連携して行う共同研究等の推進により、当該研究領域の発展を目指すもの」、「多様な研究者による新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指すもの」としては、本領域により、脂質メディエーターによる生命現象の基本原理の解明のみならず、脂質が関与する炎症性疾患、糖尿病、肥満、動脈硬化症、神経障害など様々な疾患のメカニズムの解明や治療法の開発に繋がることが期待される。しかしながら、個々の研究代表者の研究は順調に進展しているものの、技術提携を除いては、全体としてどのような異分野連携による共同研究が推進されているのか明らかでない。

(2)研究成果

 「新たな視点や手法による共同研究等の推進により、当該研究領域の新たな展開を目指すもの」としては、本研究領域では、超高感度の脂質定量法の開発などにより、アスピリンの副作用の新規機序、毛髪形成の促進作用、慢性疼痛発生機序の解明などの目覚ましい成果を上げている。さらに、ゼブラフィッシュを用いることで、種を超えた脂質メディエーターの役割を明らかにしつつあることも評価できる。

(3)研究組織

 総括班によって研究支援センターが立ち上げられ、質量分析などの高額機器を保有、運用することで各研究代表者の研究推進を効率よく支援できている点が評価できる。なお、予定されていた計画研究代表者が3人離脱したことについては、相応しい研究者の補充が行われ、ゼブラフィッシュ、マウスの解析センターの円滑な運営が行われているが、脂質輸送研究の補充は十分でなく、研究の遅延を危惧する意見があった。また、「異なる学問分野の研究者が連携して行う共同研究等の推進により、当該研究領域の発展を目指すもの」としては、臨床と基礎の連携、特に創薬を目指した応用研究の推進も考慮すべきであるが、その際、これと関連して、一名の有機合成研究者の参入では不十分であり、相乗効果をもたらすようなより幅広い異分野連携が求められる。

(4)研究費の使用

 特に問題点はなかった。

(5)今後の研究領域の推進方策

 「当該領域の研究の発展が他の研究領域の研究の発展に大きな波及効果をもたらすもの」として、当該研究領域の研究支援センターの活動は、今後も継続して活用されることが望まれる。また、既に開発された技術を基盤に、領域内外での共同研究を積極的に推進することで、様々な分野への波及効果を期待する。さらに、脂質メディエーターが関与する様々な疾患の創薬に結びつく研究や、脳には脂質が多く存在するとの理由から脳機能と脂質との関連性も考えられるため、神経科学研究者との連携も今後考慮してはどうかとの意見もあった。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成24年12月 --