プラズマ燃焼のための先進計測(笹尾 真実子)

研究領域名

プラズマ燃焼のための先進計測

研究期間

平成16年度~平成21年度

領域代表者

笹尾 真実子(東北大学・大学院工学研究科・教授)

領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 核融合炉においては、燃料となる重水素(D)と三重水素(T)の核反応(D+T→α+n)によって発生するアルファ(α)粒子のエネルギーがプラズマ燃焼維持に利用される。したがって、プラズマ燃焼を安定に維持させるためにはアルファ粒子の十分な閉じ込めと制御が不可欠である。プラズマ燃焼を対象とする炉心プラズマ研究の次段階においては、プラズマ閉じ込めの方式にかかわらず、アルファ粒子の発生・減速過程において発生する多くの課題に取り組むこととなる。そこで本領域では新たな段階に入った核融合実験において、燃焼に関わる課題に取り組むために不可欠である、(1)従来のプラズマ計測からの大きな飛躍を伴う計測法、特にアルファ粒子及び中性子測定を駆使した核燃焼プラズマ研究に直結する診断法の開発と、(2)アルファ粒子による自己加熱プラズマを支配している機構解明に必要とされる計測要素抽出を領域活動の目的とした。
 具体的には
  A アルファ粒子の閉じ込めと損失機構の解明に不可欠な計測法の開発
  B 自己加熱プラズマ研究で特に開発を必要とする計測法の開発
  C アルファ粒子及び自己加熱プラズマに直接関わる物理機構の解明
の3項目について研究を推進し、平行して項目間相互の連携を図ることにより、新段階の核融合実験炉における先進的診断機器の整備とそれらによる核融合研究の進展に資する。

(2)研究成果の概要

本領域活動の研究成果としては、研究項目Aについては、
 *プラズマ燃焼実験で実機に適用しうるアルファ粒子・中性子計測システム設計
 *実機サイズの粒子ビーム源、レーザー光源の開発に成功
 *先進的アルファ粒子計測手法の原理検証実験の成功
項目Bについては特に、高時間分解空間分布計測に重点をおき、
 *プラズマ燃焼実験に適用できるシステム開発と稼働中大型装置での実験検証
 *物理課題に直結した新診断手法開発とその適用による実験研究の成功
項目Cについては、
 *高速添加慣性核融合実験の具体化とその計測機器開発
 *能動・受動の両方式を駆使し、研究項目Bと連携したアルヴェン固有モードと高速イオンとの結合に関する研究成果
 *アルファ粒子固体表面相互作用に関する新手法を用いた研究の展開
等が上げられる。これらの成果は国際的に評価され、特にプラズマ燃焼実験のため現在最前線で活動している国際トカマク物理活動の中でも高く評価されている。
 特筆すべきことは、研究項目C班での要素解明の研究とA班・B班での計測法開発の連携が重要な役割を果たしたこと、関連する知見や情報、関連技術の移転等が班を横断して活発に行われたこと、また参画研究機関が持つ施設を複合的に利用する等により、幾多の成果につながったことである。
 これらの活動を通し、燃焼プラズマ計測としての領域を確立し、(2)アルファ粒子による自己加熱源を含むプラズマ研究への基盤を確立し、(3)核融合実験炉における燃焼実験ならびに高速点火慣性核融合実験での計測機器の構築に貢献した。

審査部会における評価結果及び所見

A (研究領域の設定目的に照らして、十分な成果があった)

 本研究領域は、核融合実験において重要な課題であるアルファ粒子計測手法を開拓しようとしたもので、プラズマ計測に関しアルファ粒子に着目した点で興味深い研究である。本研究領域は、目的の実現のために必要なアルファ粒子計測手法に関連する要素技術開発において特に成果をあげており、研究領域が設定した目的は達成されたと判断される。論文等も十分に公表されており、研究業績もあがっている。本研究領域の成果の他分野への波及も認められ、研究成果の更なる展開が期待される。一方で、研究成果の対外的な説明が十分ではなかったとの意見もあり、今後、研究成果の社会への説明を更に進めることが望まれる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年01月 --