研究領域名:ITの深化の基盤を拓く情報学研究

1.研究領域名:

ITの深化の基盤を拓く情報学研究

2.研究期間:

平成13年度~平成17年度

3.領域代表者:

安西 祐一郎(慶應義塾大学・塾長)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本研究領域では、情報技術(IT)の飛躍的発展により学問分野を横断した広がりを持つ情報学発展の基盤を築くことを目的として総合的に研究を進めた。情報に関する基盤的な学術的研究成果をあげると共に、現在の社会的要請を十分に意識し、IT分野で具体的な効用を持つ成果を結実させることをねらった。その際、(1)ソフトウェアを中心とした基礎研究や基盤研究の育成、(2)人間の認識・行動特性についての十分な理解と社会との調和、(3)我が国発のオリジナルな研究を目指した若手育成、等を重視する観点から研究を推進した。
 本研究領域では六つの研究項目、すなわちA01「新しいソフトウェアの実現」、A02「コンテンツの生産・活用に関する研究」、A03「人間の情報処理の理解とその応用に関する研究」、A04「情報セキュリティに関する総合的な研究」、A05「最先端の情報通信システムを活用した新しい研究手法」、A06「情報化と社会制度の構築に関する研究」の研究項目で、計画研究を推進するとともに、若手研究者の公募研究への積極的な参画を求め、次世代を担う研究者の育成を積極的に図った。学術的な成果をあげるだけでなく、実用化や他の学問分野への貢献も達成できた。以上により、理論、基礎技術、人材、国際的なリーダシップなど、様々の面で我が国のIT戦略の強化に寄与でき、次の段階の研究開発への端緒を開いた。

(2)研究成果の概要

 本領域は、ソフトウェア、コンテンツ、人間の情報処理、情報セキュリティ、先端情報通信システム、情報と社会制度という情報学の基盤をなす6つの研究項目から構成され、11(平成15年度より12)の計画研究とおよそ90の公募研究よりなる研究体制で研究を進めた。5年間にわたる研究の成果は下記のようにまとめられる。
1.各研究項目において、最先端の研究が活発に行われ、領域全体で雑誌論文1,209編、国際会議論文1,873編を始めとする各種成果が公表された。また実用化や他の学問分野への貢献も達成した。
2.研究成果の公表に関しては、年1回の成果報告会および3回の公開講演会を開催し、広く成果を公開した。また国際シンポジウム(16件)等を開催し成果の普及を図った。
3.本領域での研究活動を萌芽として、5つの大規模な研究プロジェクトが領域の期間中に新たに開始され、情報学研究の更なる展開に寄与した。
4.情報学が直面する課題と今後の展開について、本領域の研究を通して明らかになった問題を分析整理した。今後の情報学の主要な課題として、爆発的に増加する情報を人間が効率的かつ効果的に扱うための情報処理基盤を構築することが喫緊の課題であることを明らかにした。また、大規模情報を処理できる安全かつ安心なシステム基盤、人間とサイバー空間を効果的に繋ぐコミュニケーション基盤の構築について、知識社会形成のためのガバナンスなどの社会的観点を入れて研究することが重要であるとの結論を得た。

5.審査部会における所見

A+(期待以上の研究の進展があった)
 計画研究に加え多くの公募研究により構成される大規模な組織が、領域代表者、柱長、総括班等の強力なリーダシップのもとで運営され、情報学の多様な分野において、さまざまな優れた研究成果を生み出していて、高く評価できる。特に、公募研究の評価を厳しく行い、一部の研究課題を非継続とした点等、大規模な研究領域の運営の仕方として見習うべきところがある。また、若手研究者の育成、新たな課題のインキュベーション、研究成果の積極的な公表と普及にも注力しており、情報学分野のみならず、他分野へも十分な貢献があったと考えられる。以上により、情報学の根幹を支える研究分野の振興という設定目的を十分に達成したと判断した。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --