研究領域名:太陽系外惑星科学の展開

1.研究領域名:

太陽系外惑星科学の展開

2.研究期間:

平成16年度~平成20年度

3.領域代表者:

田村 元秀(国立天文台・光学赤外線天文学観測システム研究系・助教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 1995年における太陽系外の恒星を周回する木星型巨大惑星の発見を契機に、惑星系研究の場は、もはや太陽系に閉じる必要はなくなった。これまでに発見されている惑星系の多くは私たちの太陽系と似ても似つかず、その多様性を理解するためには、むしろ太陽系以外の惑星系とその形成を理解することが重要である。本領域では、惑星系形成の現場である星周円盤の直接撮像から太陽系外惑星検出に至るまでの観測を系統的に集中して進め、より多様な惑星・円盤を研究するための観測装置を開発する。円盤内でダストが凝縮し、ダストから微惑星、微惑星から地球型惑星・木星型惑星コアが形成される各段階のプロセスを基礎物理に立ち戻って明らかにした上で、円盤観測データを初期条件にして系外惑星の分布を理論的に推定し、太陽系にとらわれない一般的惑星系形成の統合的描像を構築する。また、惑星の元とも言える円盤ダストの包括的理解のために実験的・理論的研究を行い、様々な観測情報を読み解くツールを開発する。さらに、長波長赤外線検出器の実現によって、太陽系外の惑星系に付随する塵円盤からの放射光である系外黄道光の観測を可能にする。本領域の特徴は、地上・スペースの最新気鋭の装置を用いて研究を進めること、開発を含む観測・理論・実験グループが三位一体で融合的研究を進めることにある。これによって「太陽系外惑星科学」と呼ぶべき新しい研究分野を展開する。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 太陽系外惑星科学の展開のスタートとして、学術的及び開発的にも順調な成果が挙がっている。すばる望遠鏡を用いた近赤外線観測の結果、原始惑星系円盤の形態の多様さを実証する新しい形の円盤の発見、Tタウリ型星を周回する惑星質量に迫る軽量伴星天体の検出、高解像度偏光観測による大質量原始星円盤の発見などに至った。次期コロナグラフの開発も急ピッチで進んでいる。中間赤外線観測では、若い星の周りの珪酸塩の結晶化が進化の初期段階ですでに生じていることを見いだし、2006年2月に成功裡に打ち上げられたASTRO-F(「あかり」)衛星による観測も着々と行われつつある。理論班は、ダスト沈殿・成長過程と円盤乱流の相互関係を明らかにし、今後の円盤観測との比較検討の指針を得た。さらに、微惑星から出発した一般化惑星形成モデルのプロトタイプを構築した。ダスト実験班は、円盤ダストの生成・熱変成実験から、非晶質シリケート粒子の結晶化する変成過程を実験的に世界で初めてとらえた。開発班は、200マイクロメートル帯の検出器用にGe(ゲルマニウム):Ga(ガリウム)の結晶成長を行い、これまでにない高純度を達成し検出器として動作させることに成功した。これらの成果の海外における研究発表を重視しつつ、国内の研究組織構築のために、年一回の大型研究集会、月例の系外惑星セミナー、中規模の研究会を開催している。その結果、研究者の連携が進みつつあり、領域目標が着実に達成されつつある。

5.審査部会における所見

A-(努力の余地がある)
 すばる望遠鏡を用いた原始惑星系円盤の観測においては、世界で初めてバナナ型円盤を発見するなど重要な成果をあげており、今年2月に打ち上げられた赤外線天文衛星「あかり」も順調に観測を進めている。理論・実験班もそれぞれ着実に成果を挙げている。全体としては活発な論文発表が行われており、準備段階の研究については、おおむね順調に進展していると考えられるが、実験班については太陽系外惑星研究独自の切り口の探索、赤外線検出技術班については、技術的到達点の設定や開発方針の更なる明確化が望まれる。今後は、本研究領域が目標としている太陽系外惑星の直接観測と科学的成果の取得に向けて、より一層の努力を期待したい。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --