研究課題名:1ミリメートル以下の解像力を持つ超高分解能半導体PET(:次世代型PET)の開発

1.研究課題名:

1ミリメートル以下の解像力を持つ超高分解能半導体PET(:次世代型PET)の開発

2.研究期間:

平成17年度~平成21年度

3.研究代表者:

石井 慶造(東北大学・大学院工学研究科・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 現在、PETに使われているガンマ線検出器として、通常、BGO、LSO、GSOなどのシンチレーター検出器が用いられている。シンチレーター内でのガンマ線による発光を複数の光電子増倍管に分配し、それらの間の比からガンマ線の2次元的に検出位置を求めており、この方法によるPETの空間分解能は2ミリメートル程度が限界である。一方、半導体を用いると、γ線の検出位置を2次元的に約0.2ミリメートル程度の分解能で測定できる。従って、0.5ミリメートル程度の薄い半導体の板を何枚も重ねて検出器ブロックを作ると、1ミリメートル以下の空間分解能をもって3次元γ線検出が可能となる。半導体を使用する場合、各々の半導体検出器に増幅器が必要であり、その数は膨大なものになるが、これは集積回路を用いることによって解決できる。本研究では、3次元半導体検出器ブロック、半導体PET用集積回路を製作し、これをリング状に並べ、1ミリメートル以下の解像力をもつ動物用PETおよび全身用3次元PETを開発する。
 高齢化社会の到来に伴い、3大老人病である癌、認知証、心臓病の撲滅が急務となっている。癌の超早期発見、脳の高次機能の研究はこれに大きく貢献する。一方、他の難病に対しては、遺伝子治療技術の開発・新薬剤の開発に期待が持たれている。本研究で開発される超高分解能PETは、1ミリメートル以下の大きさの癌の検出、脳機能の微細構造の画像化、マウスのような小さな実験用動物の臓器の撮影を可能にする。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 超高分解半導体PET(Ultra High Resolution Semiconductor PET: UHRS-PET)のハードの開発及び医学応用も含めたソフトの開発が順調に進められている。特に、これまでの我々の半導体PETの研究成果を基に、小型CdTe検出器からなる超高分解能半導体検出器ブロック(1ミリメートル×1ミリメートル×5ミリメートルのCdTe結晶が32×32個)を10個、検出器ブロックからの信号を受けるASIC(特定用途向け集積回路)を搭載した信号増幅回路及び信号処理回路を製作し、このデータ収集処理系と検出器ブロックを繋げ、直径72ミリメートルの円周上に並べてUHRS-PETを製作した。このPETの性能を調べる為に、0.5ミリメートル径の円柱のホットスポットを3ミリメートル間隔、2.5ミリメートル間隔、2ミリメートル間隔、1.5ミリメートル間隔に並べたファントムを作製し、測定したところ1.5ミリメートル間隔のホットスポットが十分区別でき、本PETの空間分解能はガントリー中心部で1ミリメートル以下であることを確認した。これは、半導体及びシンチレーターを用いたPETでは、空間分解能1ミリメートルを切る世界で初めての実用型3次元検出型超高分解能PETである。本システムを用いて、ラットの頭部のFDG画像を撮影した。1センチメートル程の脳の断面図の鮮明なFDG画像が得られた。特に、市販の動物用PETでは大脳皮質と線条体とが繋がって見えるのに対して、大脳皮質と線条体が、これらの間にある脳梁の存在によって分かれているのが確認できた。
 本研究結果は平成19年4月6日~8日に大阪で開催される第27回日本医学会総会(テーマ:「生命と医療の原点」-いのち・ひと・夢)のシンポジウムで特別講演として紹介する予定である。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 装置開発に関しては当初計画調書の内容に従って順調に進行しており、特に困難は生じていない。また、多チャンネル信号低雑音伝送や検出器モジュール位置精度要求充足など、研究開始後に改善する必要が生じた課題もあったが、現段階では解決されている。その結果、小動物用三次元PET装置による実験で高分解能PET像が得られている。さらに、位置検出型半導体検出器ブロックの予備実験でも明るい見通しが得られている。これらは現時点までの開発段階の成功を示しており、今後の人体用高分解能可変開口3次元PET開発に向けて着実に地歩を固めつつある。
 研究開始以後、着実に論文発表や口頭発表がなされ、最新の実験成果の発表予定も組まれている。研究費使途の観点からも、問題は見当たらない。まだ本開発の装置で実施されたわけではないが、グループ内の生物・医学・薬学の研究者の連携による応用研究についても計画と議論が進んでいるように思われる。最終的な目標達成にはこれから解決すべき多くの課題があるが、今後の努力によりその達成が大いに期待される研究課題であると判断する。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --