研究領域名:脳科学の先端的研究

1.研究領域名:

脳科学の先端的研究

2.研究期間:

平成12年度~平成16年度

3.領域代表者:

井原 康夫(東京大学大学院医学系研究科・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 「先端脳」はミレニアム予算でつくられたこれまでになく規模の大きな班で、「来たるべき21世紀の人類が安心して暮らせる豊かな長寿社会を実現することを見据えて、戦略的に目標を立てた研究を推進する」という観点から「脳の老化の問題と大脳高次機能の問題とを集中的に扱う研究グループ」として設けられた。次に掲げたように、ニューロサイエンスのほとんどの分野を取り込んだ研究体制を組織し、同時に班員としてわが国の代表的なニューロサイエンティストを網羅した。

研究項目A脳の発生・発達・老化の研究
 A01脳の発生における分子生物学的研究
 A02脳の発達生理機能の研究
 A03脳の老化及び病態に関する研究
 A04脳細胞の編成に関する研究

研究項目B記憶・学習・思考の研究
 B01記憶・学習・思考の分子生物学的研究
 B02システム回路形成およびその機能の研究
 B03モデル脳による記憶・学習・思考の研究

(2)研究成果の概要

 「先端脳」の5年間を振り返ると、インパクトの大きい優れた業績が多数出版された。特に、A01における中福雅人(東大・医学系研究科)による脳虚血後のneuronalprogenitorcell刺激による神経細胞再生の試み(brainrepairと称されている)、同貝淵弘三(名大・医学系研究科)によるガイダンス分子の機能同定、A03の西道隆臣(理研)によるAβ分解酵素としてのネプリライシンの発見、A04の祖父江 元(名大・医学系研究科)によるX-linkedspinobulbarmuscularatrophy(SBMA)のchemicalcastrationによる治療法の開発および臨床応用、は際だったものである。またB02の丹治 順(玉川大学・学術研究所)によるサルをモデルとした高次機能解明は、「先端脳」を代表する成果である。

5.審査部会における所見

A(期待どおり研究が進展した)
 神経発生から神経疾患に至る広範な領域におよぶ研究組織によって、当初設定された目的は概ね達成され、わが国の脳科学の進展に大きな貢献を果たした。特に神経発生や神経難病の治療法に関連する成果をはじめとする数々の優れた研究成果は、わが国の脳科学研究の水準の高さを国際的に印象づけたものと高く評価される。今後、本領域の成果を継承発展しつつ、研究者間あるいは研究領域間の有機的な相互連携と、脳研究以外の異分野との融合研究を積極的に推進し、わが国の脳科学研究がさらに発展することを期待したい。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --