研究領域名:アディポミクス、脂肪細胞の機能世界と破綻病態の解析

1.研究領域名:

アディポミクス、脂肪細胞の機能世界と破綻病態の解析

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.領域代表者:

松澤 佑次(大阪大学・名誉教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本研究領域の目的は、健康状態を支配する栄養や運動などの生活習慣に最も敏感に反応する脂肪細胞の発生、分化、機能を網羅的に明らかにし、地球を二分する健康障害である過栄養および低栄養を基盤とする病態の解明に貢献することにある。とくに近年、先進国はもちろん一部の開発途上国でも既に大きな問題となっている飽食と運動不足がもたらす糖尿病、高脂血症、高血圧や動脈硬化性疾患あるいは一部の癌の対策において脂肪細胞の解明は必須の課題である。領域代表者の松澤を中心に20年来にわたって提唱してきた内臓脂肪が多くの生活習慣病の基盤になっているという概念は国内外で認識され、本年4月にわが国はグローバル基準とほぼ同時に内臓脂肪蓄積を基盤とした生活習慣病の概念、すなわち「メタボリックシンドローム」の診断基準を発表することが出来た。
 この結果、世界的にも脂肪細胞研究の気運が高まっている中で本研究領域の果たす役割はきわめて高く、現時点で世界に類を見ないアディポミクスという脂肪細胞の網羅的研究を行っている。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本研究領域のこの3年間の成果は計画どおり進展していると考えている。個々の研究者の成果の詳細は、研究経過報告書に示すが、とくにわれわれが発見したアディポネクチンという脂肪細胞特異的生理活性物質(アディポサイトカイン)はほとんどの主要な疾患に関わることから、研究が著しく進展しすでにAdiponectinologyと呼べるレベルに達しつつある。アディポネクチンのほかにも、人類を飢餓から救ってきたと考えられる脂肪細胞特異的アクアポリンの発見や内臓脂肪特異的蛋白ビスファチンの発見をはじめ、脂肪細胞分化に関する新規分子の発見など、各論で示すように多くの成果が上がっていると考えている。また病態発症と関連の深いアディポネクチンをはじめ多彩なアディポサイトカインの分泌機構の解明についても、完成には至っていないものの着々と進行している。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 アディポサイトカインの生物学的研究と臨床応用に関する研究が着実に進展し、期待された成果が得られている。当該領域からの研究は本年4月に発表されたメタボリック症候群の診断基準の研究基盤となり、社会に研究成果が還元されたことは特筆に値する。当該領域は、過栄養・運動不足から生じる内臓脂肪の蓄積の病的意義とその分子基盤を世界に向けて発信している中核組織の集合体である。内臓脂肪特異的蛋白であるビスファチンの発見やアディポネクチンの新たな機能の発見は今後さらなる研究の展開を期待させる。これらの研究において、班員間の有機的な連携がよく保たれており、公開シンポジウムもおこなわれるなど、適切な領域運営がなされているものと評価できる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --