研究領域名:生殖細胞の発生プロセス・再プログラム化とエピジェネティックス

1.研究領域名:

生殖細胞の発生プロセス・再プログラム化とエピジェネティックス

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.領域代表者:

中辻 憲夫(京都大学再生医科学研究所・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 生殖細胞の発生プロセス・再プログラム化・エピジェネティクスは互いに深く関連しているが、これらを研究する研究者は、発生生物学・細胞生物学や実験動物学・畜産学、分子生物学・遺伝学など多岐の分野に分散しており、異なる方法論により各々の得意とするアプローチによって研究を進めてきた。
 生殖細胞の発生プロセスやクローン動物の誕生などは極めて重要な生命現象ではあるが、その分子機構を解明するためには、分子生物学と遺伝学的アプローチが不可欠である。すなわち、ゲノムとクロマチンのエピジェネティクス制御を解明することが必要になる。また逆に言えば、遺伝情報の高次制御機構を解明しようとするエピジェネティクス研究にとっては、生殖細胞とクローン動物は重要な研究対象と解析ツールでもある。しかしながら、生殖細胞発生と核移植を行う研究者そしてエピジェネティクスの研究者はこれまで基盤とする学問分野が発生生物学、実験動物学・畜産学と分子生物学・遺伝学などに分散しており、研究交流と共同研究はこれまでは不十分であった。本研究領域は、まさにこのような学際的交流と共同研究による画期的な展開を目指している。
 このような学際的研究を推進することは、生殖細胞の発生分化プロセスおよび生殖系列における再プログラム化とエピジェネティクス制御という基本的生命現象の機構解明につながるだけでなく、核移植クローン動物という画期的技術をバイオテクノロジー産業などへ活用するための基盤作り、あるいは、細胞分化の人為的制御や体細胞と幹細胞との相互変化の制御により再生医学などの先端医療の基盤作りに貢献できる。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本研究領域には、ふたつの研究項目すなわち「生殖細胞の発生プログラム」および「生殖系列と発生能の再プログラム化とエピジェネティクス」をおいた。計画研究は13課題と公募研究19課題を設定したが、いずれの研究課題も順調に進展し、顕著な研究成果が得られている。具体的な研究内容を類別すると次のようになる。1)生殖細胞の初期発生と分化に関わる遺伝子群の解析、2)生殖細胞の配偶子への発生分化と減数分裂に関わる因子の解析、3)生殖細胞の発生と個体発生に関わるゲノム刷込みの解析、4)新規技術の開発による生殖細胞発生過程の解析、5)DNAメチル化と生殖細胞および体細胞の分化過程、6核移植クローン動物とゲノム再プログラム化、7)遺伝子のエピジェネティクス制御機構と制御因子の解析
 特定領域研究の重要な目的は多様な研究者間の連携や相互作用による共同研究の推進であるが、本研究領域内では、これが特記すべき成功を収めている。参加研究者間で専門性を生かした多くの共同研究や連携研究が極めて積極的に実行され、その成果として多数かつ重要な共同論文発表が行われている。また多数の論文がNatureやCellなど権威ある国際学術誌に掲載されて注目を浴びている。また、各年度に公開シンポジウムを開催して、ひろく研究者コミュニティーへの参加呼びかけを行っている。また、インターネット上に特定領域ホームページを公開して、研究内容と研究成果などに関して情報発信を行っている。本研究領域の計画研究および公募研究は極めて順調に研究が進展して顕著な研究成果が得られており、18年度からの残り2年間についても、大きな研究成果が引き続き確実に期待できる。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 生殖細胞の発生機構についての研究が着実に進行し、期待どおりの質の高い成果が得られている。核移植クローンES細胞から生殖細胞への分化における精子あるいは卵子特異的遺伝子の発見や、多分化能を持つ生殖幹細胞株の樹立はさらなる研究の進展を期待させる。生殖細胞の再プログラム化の研究においても、生殖細胞のDNAメチル化酵素の解析や、核移植クローンマウスにおける遺伝子発現プロファイルの解析により着実に進展している。これらの研究において、班員間の有機的な連携が実行されており、特定領域研究の意義が実現されていることは特筆すべきである。公開シンポジウムも予定されており、またホームページ等を通じて広く研究者への情報提供を行っていることも評価できる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --