研究領域名:メンブレントラフィック-分子機構から高次機能への展開-

1.研究領域名:

メンブレントラフィック-分子機構から高次機能への展開-

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.領域代表者:

大野 博司(理化学研究所横浜研究所免疫アレルギー科学総合研究センター免疫系構築研究チーム・チームリーダー)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 小胞体、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームなどのオルガネラ間および細胞表面からのエンドサイトーシスにおける蛋白質輸送は、ダイナミックかつ巧妙に制御されており、メンブレントラフィックと総称される。メンブレントラフィックは細胞の生存に必須なばかりでなく、生体高次機能を支える基本的な細胞の営みでもあり、その破綻は種々の疾患に直結する。また、ウイルスや細菌には宿主のメンブレントラフィックを利用して細胞内侵入や出芽するもの、宿主細胞の蛋白質輸送系を妨げることにより免疫系から逃れるものもある。このようにメンブレントラフィックの研究は、生命科学としてのみならず医科学的にも重要な研究領域である。そこで、酵母から高等多細胞生物に至るまで全ての真核生物において多様な機能を担うメンブレントラフィックの生理的・病理的意義を、分子~個体のあらゆるレベルで明らかにするため特定領域研究として強力に推進することで、世界におけるメンブレントラフィック研究の一大拠点としての我が国の地位を確固たるものにすることを目的とする。その成果は、生命現象に対する理解を深めると同時に、メンブレントラフィックの破綻に起因する病態の理解から診断法や治療法の開発へと続く医学上の展開の基盤となるものである。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本特定領域研究は計画研究10課題および公募研究51課題という体制で、約2年間が経過した。この間研究は順調に進展しており、既に多くの成果があがっている。代表的な成果としては、神経細胞内輸送異常に起因する新たなてんかんの発症機序の解明、オートファジーによる細胞内感染細菌に対する新たな防御機構の発見、小胞体からの蛋白質輸送における異常蛋白質の監視機構の解明、ウイルス感染植物細胞の細胞死における液胞分解酵素による自己消化というユニークな死細胞除去機構の発見、メラニン産生細胞内でのメラニン顆粒輸送の分子機構の解明、などがある。これらの成果は新聞にも取り上げられた。これらをはじめとする領域研究の成果は、Nature,Science,Cellなどの著名な学術誌を含む英文国際誌に370報の論文として発表するとともに、ホームページの開設、ニュースレターの刊行、シンポジウムの開催などを通じ積極的な公開に努めている。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 本特定領域は、計画研究10課題と公募研究51課題という非常に大きな研究組織よりなるが、すぐれた連携により、膜輸送研究をあまねく網羅するだけでなく、各々の研究課題についても着実かつ精力的に研究が進展している。膜輸送蛋白の機能解析研究の成果や生体防御機構におけるオートファジーの新たな機能の発見は当該研究領域のさらなる進展を期待させる。研究の継続は本分野における世界的な貢献に寄与すると判断される。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --