研究領域名:障害者・高齢者のコミュニケーション機能に関する基礎的研究

1.研究領域名:

障害者・高齢者のコミュニケーション機能に関する基礎的研究

2.研究期間:

平成16年度~平成18年度

3.領域代表者:

市川 熹(千葉大学大学院自然科学研究科・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 高齢者や障害者の多くは、情報通信機器を使いこなすことが困難な状況にあるが、どのような情報通信機器が障害者や高齢者にとって本当に使いやすいのか、という肝心の問題は未だ十分に明らかにされていない。その主な理由は、高齢者や障害者の障害部位とその程度によって機器の使いやすさとその改善法が大きく変わることにある。さらに、障害者や高齢者がどのように外界を感じて、ものごとを理解し、体を使い、行動しているか、という認知科学的・身体的な基礎的解明がほとんどなされていない。本特定研究領域の目的は、上述の問題点を解決するために、情報の構造、情報を伝えるメディア、情報の流れという観点に立脚して高齢者と障害者が使いやすい情報通信機器開発の基礎データを収集し、開発の基盤を構築することである(情報福祉の基礎)。障害の構造が極めて多様であることから、障害別に最適なアプローチを問う必要があり、具体的方法はそれぞれに異なる。本領域では、障害別に構成された研究計画班相互に情報交換を行いながら、それぞれの対象に適したアプローチを探索し、現場中心で個別のアプローチ中心であった従来の研究に、現場の実態に基づきながら、対象の構造的理解を進めるための基礎的・統合的アプローチを加えた、複眼的アプローチを探索する。情報福祉に関して大規模なグループを形成し、総合的に研究を進めるのは、本特定領域が初めてである。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 総括班は、研究グループをまたぐ課題の把握に努め、今年度は特に隠れマルコフモデルを手話認識に応用する場合の音声と手話の性質の違い、ロービジョンの実態視力概念による高齢者の視覚機能の検討などの課題を見いだした。聴覚障害グループでは、手話という情報メディアに絞り、手話の動画像通信、画像生成、認識及びニーズ調査について研究を進め、今年度は特に画像通信では「時間解像度≫空間解像度」が重要であるという成果が得られた。視覚障害グループでは、視覚障害者の視覚・聴覚・触覚認知における共通課題を明らかにすることを目標として研究を進め、今年度は特に注視状況に応じた自動拡大ビューアの開発という成果が得られた。肢体不自由者グループでは、きわめて多様な肢体不自由者が最適な支援機器を選択可能にすることを目的として研究を進め、今年度は特に可動域、巧緻性、動作圧の計測手法を開発してグループ内に配付し、計画班相互の協力により、筋電図入力と走査型文字入力ソフトウェアを結合した新しい支援機器を試作した。加齢グループでは、加齢に伴う認知・感覚・身体・行動特性の変化に関する調査・解明を行い、今年度は特に超高齢者では、情報通信機器の利用によって幸福感が高まるが、高齢者のエラー反復は日常的な注意機能低下よりも、複数の課題に対して注意を配分することに対する認知的処理資源の低下が重要な要因であるという成果が得られた。

5.審査部会における所見

B(一層の努力が必要である)
 研究成果が目に見える形で出しにくい領域ではあるが、依然として、研究の方法論を構築している段階である。研究班毎の成果は見られるものの、各班の研究成果に大きなアンバランスが見え、また、班間の有機的な連携、研究成果の統一性も見られない。領域代表者がリーダーシップを発揮し、早急に、この領域の研究体制とゴールを明確に示し、それを可能とする各方面の一級の研究者の何らかの形での参加をもとめ、枚挙的ではなく、体系的に研究を推進する必要がある。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --