研究領域名:プラズマを用いたミクロ反応場の創成とその応用

1.研究領域名:

プラズマを用いたミクロ反応場の創成とその応用

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.領域代表者:

橘 邦英(京都大学大学院工学研究科・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 従来のプラズマプロセス技術などにおける「低圧力領域で大容積の均一なプラズマ」という指向を転換し、「必要な場所に必要な大きさで必要な特性をもったプラズマ」をという発想で以下の3つの観点から新しいプラズマ科学技術の展開を目指している。すなわち、ミリメートルからマイクロメートルのミクロな空間領域において、プラズマを1.如何に安定かつ高効率に生成するか、2.微小なプラズマにどのような新しい物性を発現させるか、3.その応用としてどのような新規の技術を創出できるか、について計画研究と公募研究を有機的に組み合わせて系統的に追求し、実証していくことを目的としている。ミクロな空間では、体積に対する表面積の割合が増加するため、プラズマの損失レートが増えるので、それを上回る高速で高効率な生成法に関する回路技術や高性能の電極材料を開発する必要がある。また一般に、マクロな場に比べてミクロな場でのプラズマ生成には高密度な媒質が有利となる。それによって、高気圧のガスのみならず液滴や微粒子などを介した微小放電技術によって気化が困難な材料のプラズマが実現できる。本来、プラズマは反応性、発光性、導電・誘電性をもつが、マイクロプラズマの1~3次元的な配列や集積化によって、それらの特性から人工的な性質を生み出すことも可能になる。このように従来のプラズマの特性を時空間領域における微小性と巧妙に組み合わせることによって、新規のプラズマ科学技術を創成していくことを目指して総合的なプロジェクト研究を進めている。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本特定領域研究では、研究組織を【A01】ミクロ反応場の生成と制御、【A02】ミクロ反応場の診断とシミュレーション、【A03】ミクロ反応場の先端技術への応用の3班より構成して、それらを総括班によって有機的に統括しながら領域全体の計画を進めている。これまでに得られた主な成果を列記すれば、1.マイクロプラズマ生成用小型電源の開発、2.水、液滴、微粒子を用いたマイクロプラズマ生成技術の開発、3.超臨界流体の放電初期過程における特異現象の実験的発見とその理論的解明、4.マイクロプラズマの周期配列を用いたプラズマフォトニック結晶の実験的検証、5.極端紫外光源用小型高密度ピンチプラズマ源の開発とそのプラズマパラメータの診断、6.マイクロプラズマジェットの局所的材料プロセス、μTAS、マイクロサテライト推進機構等への新規応用、7.マイクロプラズマによるバイオマテリアルの創成と加工、などが挙げられる。なかでも、3.では超臨界流体中の短ギャップ放電における火花電圧の激減などの特異現象が観測され、その機構が密度揺動を有する媒質中での電子輸送モデルによって解明されつつある。4.では微小なプラズマの配列によって人工的な誘電媒質が生成できることを示した。5.では次世代のリソグラフィ用極端紫外光源の高密度マイクロプラズマ中で電子の密度と温度が世界で初めて測定された。班内外の連携研究も進んでいるが、今後はそれらの研究をより体系化して一つの学術分野として確立していく。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 プラズマに関するミクロ反応場を「つくる」「みる」「つかう」の各テーマに関して研究進捗状況は順調に推移しており,学問的にも工業的にもその研究成果はそれぞれ大きく、評価に値するものである。今後は,各テーマ間で連携を強く取り合って「マイクロプラズマ」の枠組みとして纏め、マイクロプラズマの体系化・研究成果の公表に一層の努力を期待したい。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --