研究領域名:中世考古学の総合的研究-学融合を目指した新領域創生-

1.研究領域名:

中世考古学の総合的研究-学融合を目指した新領域創生-

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.領域代表者:

前川 要(中央大学文学部・教授)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本研究では、従来個別分散化してきた中世考古学の総合化・体系化を目指して、周辺諸科学と「学融合」を行うことにより新領域「中世総合資料学」を樹立することを目的とする。研究組織としては、後述する13の具体的研究目的を実現可能とするために、4つの研究部門、20の計画研究そして約10の公募研究を企画した。
 従来中世考古学における膨大な資料的蓄積と研究は、個々の分野にとどまり、相互の連携が少なく、かつ、文献研究との接点も、いわゆる個別的な段階に終始し、十分に成果が生かされていない弱点を内包している。すなわち、中世考古学・文献史学・自然科学・アジア史の隣接分野と相互協力し、学融合的に考古学を中心とした新たな学問、つまり「中世総合資料学」の確立を目指した特定領域研究を実施する必要性が現在求められている。
 上述した、4つの研究部門とは、A:新領域創生研究部門、B:学融合方法論研究部門、C01:空間動態論研究部門、D01:情報システム論研究部門としている。簡潔に言えばAは、考古学の専門領域、Bは、学融合、C01は、国際的視点、D01は、コンピュータ情報研究ということになる。本研究の最大の特色は、総合的研究を実施することにより、日本中世史・東洋史・建築史・民族学・歴史地理学・理論考古学から投げかけられた問題提起を受け止め、古環境学・形態人類学等と関連して、中世考古学に主軸をおきつつ、中世歴史像の再構築を「中世総合資料学」という新領域を創生した上で試みようとするものである。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 下記の具体的到達目標13を、領域立ち上げに際して掲げ、3年間に9回の公開シンポジウムを開催して、学融合へ向けて大きなステップを示した。

A 東アジアを視野に入れた物質資料による総合的な中世国家・社会像の構築、1)国家・社会における「中心」・「境界」・「周縁」地域の構造的特質そして民族形成の動因や日本的生活の形成などに関する物質資料を中心とした検討。2)土器・陶磁器編年の確立及び地域性の析出。自然科学的手法による年代的裏づけ。3)陶磁器や金属器の流通機構や人や情報・技術の移動の解明。特に、日本的生活の原点を明らかにすること。さらに、その歴史的背景の文献史学・自然科学的方法による研究。4)水中遺跡探査手法の確立と水中考古学研究の進展。5)気候変化と農業生産、災害の様相を解明。6)都市及び農村景観や日本的生活様式の総合的復元―生と死。

B IT戦略の実践、7)中世遺跡学術データベースの構築とテラ・バイト(Terabyte)時代を見据えた多様な発信ネットワークの確立。8)物質資料デジタル化の方法論的確立。

C 科学的評価システムの確立、9)新領域創生として提言した中世総合資料学の学問水準に対する高い国際的評価の獲得。10)学融合を前提とした自然科学・人文科学と考古学との間における検証システムの確立。

D 研究成果の積極的公開と社会貢献、11)国内のみならず東アジア全体の若手研究者の育成を計る。新たな人材を掘り起こすことにより中世総合資料学に関するベンチャー的研究を推進する。12)中世総合資料学の立場から見た埋蔵文化財取り扱いに関する諸問題解決のための文部科学省及び文化庁への諸提言の実施。13)研究成果についてSCSを利用して高等教育や生涯学習に活用すること。さらに子どもゆめ基金と連動した青少年への教育・普及活動の実施。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 研究代表者を中心とする持続力ある研究推進体制により、研究は順調に進展し、北アジアとの比較研究をはじめとするいくつかの分野では着実に成果があがっている。内部評価の結果を受けて、計画の適切な軌道修正がはかられている点も評価に値する。すでに示されている今後の計画により、東南アジア等においても同様の成果が得られることが期待される。最終目標とする学融合を実現するために、より一層の方法論的考察が求められる。

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研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --