研究領域名:我が国の科学技術黎明期資料の体系化に関する調査・研究

1.研究領域名:

我が国の科学技術黎明期資料の体系化に関する調査・研究

2.研究期間:

平成13年度~平成17年度

3.領域代表者:

佐々木 勝浩(独立行政法人国立科学博物館理工学研究部・部長)

4.領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 本研究は主として江戸時代に我が国で行われた科学や技術の諸分野における活動に関する古文書、記録、また輸入書などの文献類及び、具体的に製作された様々な測量器具、天文観測器具、医療器具、銃砲、エレキテル、望遠鏡、ガラス、時計などの資料を我が国の科学技術黎明期資料と位置付け、この知識と実践の相関関係から「江戸のモノづくり」の実態を明らかにしようとするものである。分野によっては、資料が我が国の科学や技術の発展形態に特徴的な視点を加味し、江戸以前や明治以降の資料及び関連する周辺の資料も対象とする。
 従来の研究が科学史、洋学史や実学史等のフィールドで、医学、天文学、和算、鉱山、本草学、銃砲、測量術等の個別の知識体系として、文献は文献、器物は器物として個々に取り扱われる傾向があったのに対して、本研究では、科学的知識(理論的なもの)とモノづくりの技術(実践的なもの)を一括して取り扱い、さまざまな視点から総合的に再検討する。そのため、歴史を研究対象とする者ばかりでなく保存科学や美術史、技術史、芸能史、再現技術などの各分野における大学・研究機関等に勤める研究者、器物を扱う博物館、保存修復についての専門機関である東京文化財研究所、さらには、技術や資料を伝承する市民を、有機的に結びつける仕組みを考案し、従来にない手法、研究交流、新たな資料の発掘を目指した。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本領域は計画研究25件、前期の公募研究37件、後期の公募研究35件、取りまとめの総括班からなる。計画研究と公募研究はA01~A06の各項目に分かれ、それぞれにおいて個別のテーマを掘り下げ、多数の論文、シンポジウム、報告書を発行すると同時に、本領域の特徴である多様な分野から研究者、博物館関係者、在野のアマチュア研究者、一般の市民の協力を得て、広範な連携に基づく研究活動を展開した。具体的には領域内に設定した各ワーキンググループを通じて、佐賀(佐賀県立博物館)、東北(東北大学図書館)、赤木コレクション(江戸東京博物館)、南葵文庫(東京大学)など各地の科学技術史資料・文献等の合同調査、九州や信州など各地の市民も交えた資料調査・研究活動の立ち上げ、各地の県市町村立博物館を拠点とし、地域や博物館に眠る文化財的な資料を大学などと共同で比較研究を行い、その成果を「文明交流史からみた科学と宗教(京都大学)」、「生産遺跡から探る「モノづくり」の歴史(大阪商工会館)」、「佐賀・鹿児島・萩の反射炉が語るもの(鹿児島大学)」「トヨタコレクション展(産業技術記念館)」などシンポジウムや博物館での特別展などで公開し、地域社会にも還元した。また日本関係資料を持つ海外関係機関との情報交換や国際シンポジウムを開催し、研究を促進させるためホームページ・情報データベースの運営、影印本・研究叢書・一般向け解説書の刊行を進めている。さらに信州地域を「江戸のモノづくり」研究方式のケーススタディーとして「信州プロジェクト」を企画し、地元研究者と諸機関の全面的協力を得て10回を超える合同調査・研究集会、16箇所の地域密着型シンポジウムや「国際シンポジウムin長野」を開催し、特定領域の集大成を図る。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 江戸時代の科学技術の産物と資料の収集および調査において優れた成果を上げ、博物館の研究活動として望ましい方向性を示している。多数の国際シンポジウムおよび展示会を開催している点も高く評価できる。本研究成果を活用・発展させ、関連分野への貢献を図るためにも、学術的な理論研究、知的支援システム、データベース化に関する一層の努力が望まれる。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --