研究課題名:乱流プラズマの構造形成と選択則の総合的研究

1.研究課題名:

乱流プラズマの構造形成と選択則の総合的研究

2.研究期間:

平成16年度~平成20年度

3.研究代表者:

伊藤 早苗(九州大学応用力学研究所・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 核融合研究の進展、プラズマを用いた物質創成や宇宙天体の観測による知識の急速な増加につれて、「知識から理解へ」の進展を求める世界的な機運が盛り上がっている。こうした研究を貫くものとして、高温磁化不均一プラズマの乱流と構造形成の機構解明が、必須の重要課題と考えられるようになった。
 この研究では、高温磁化不均一プラズマについて、乱流と構造形成の機構を解明し自律的構造の遷移と選択則を得ることを目的とする。乱流と構造形成、および可能な構造の中の選択則の問題は、遠非平衡状態の乱流媒質にとって普遍的な課題であり、ここでは、理論解析・シミュレーションおよび実験研究を統合することによって仮説の検証を経て法則の定式化をめざす。
 この研究は、トロイダルプラズマや天体プラズマでの乱流、帯状流、ダイナモ等の現象について、輸送や分岐、自律的構造や選択則のような形で成果を体系化し、活動するプラズマの法則を示し理解を深める意義をもつ。爆発的に増える知識を理解へと昇華させ、実験室や自然界に観測されるプラズマの構造と流転とを理解する基盤を与える事が出来、この研究は大きな意義をもつ。乱流プラズマの構造形成と選択則の研究は、研究開発のフロンテイアにとって規範となる学問方法を提供する事が出来るだろう。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 研究初年度には研究メンバーによる集中的会合をおこない、研究目的の実現のため明確な方針を得た。そして国際研究集会や海外共同研究者の滞在研究なども含む集中的研究を推進した。
 実験機器やクラスター計算システムなどの開発は順調に進展した。特に、直線プラズマ装置では、rf結合器を整備し高密度プラズマ形成に成功、百数十の静電プローブ系や重イオン・ビーム・プローブからなる計測系の開発を進め、平行し1μs(マイクロ秒)の時間分解能を持つ192チャンネルのデータ収集システムを構築した。これらは準二次元乱流の中で揺動と構造の非線形相互作用を世界の最高精度で実測する道を拓く。CHSトーラス・プラズマに対しメゾスケール電磁場の観測や2μs(マイクロ秒)から40ns(ナノ秒)へと高速化された電磁場計測が開始された。データ分析法も開発し、今後の乱流構造物理実験と解析の高度化へ繋がる研究基盤が拡充された。
 プラズマとメゾスケール構造の非線形状態に関する世界初の実験的発見や、プラズマ帯状流に関する総合的な国際的レビュー論文の完成など、特筆すべき成果があがり始めた。理論・シミュレーション・実験の各アプローチを連携する研究が軌道に乗り始め、国際的な研究潮流を主導している。また、国際諮問委員会を設け、国際諮問委員による評価を受けるなど自主的な評価にも力を注いでいる。基盤をなす論文が日本物理学会論文賞を受けるなど、内外の高い評価を得た。
 以上のように、研究基盤が充実し、質の高い研究が軌道に乗った。

5.審査部会における所見

A(現行のまま推進すればよい)
 理論研究・実験研究の双方において、質の高いレベルの成果が多数あがっており、当該分野での高い評価も得ている。実験と理論やシミュレーションとの詳細な比較を通じて、乱流プラズマの物理に新展開をもたらす研究環境が整備されつつある。当初の研究計画調書におおよそ沿った形で、研究計画が順調に進んでいると判断される。今後は、理論ではプラズマ乱流と帯状流、実験的にはトロイダルプラズマと直線プラズマの相互の関連をより明確にした研究の推進を期待する。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --