研究課題名:ダブルハイパー核の研究

1.研究課題名:

ダブルハイパー核の研究

2.研究期間:

平成15年度~平成19年度

3.研究代表者:

今井 憲一(京都大学大学院理学研究科・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 この研究の目的はダブルハイパー核(ここではストレンジクォーク(s)を2個含む核の総称)をできるだけ数多く発見して、そのミニチャートともいうべきものを作りその存在様式を調べることである。核物理はこれまで新しい原子核の発見によって発展してきた。残念ながらわが国で発見された原子核はすくない。ダブルハイパー核はこれまでの申請者等の研究によって確認されている数種がすべてといってよい。すべての探索可能なダブルハイパー核をわれわれの手で発見したい。この研究では、いままで開発してきた実験やデータ解析の技術を総合してダブルハイパー核の研究を飛躍的に発展させ、ダブルハイパー核の世界を明らかにしてストレンジネスを含む世界での核物理を確立することを目的とする。この研究によって中性子星内部の構造が明らかになり、さらにはクォーク星の存在可能性を探ることにもなる。また原子核をつくる核力の起源を明らかにすることができると考えられる。ダブルハイパー核の研究をすすめることで、クォークからどのように物質がつくられるかという問題を明らかにすることが目標である。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 ダブルハイパー核の発見のために、高エネルギー研(KEK)やブルックヘブン研究所(BNL)でK中間子を使った実験をすすめてきた。ダブルハイパー核はグザイ粒子の核による吸収から多く生成されることが期待される。KEKの実験で得られた原子核乾板のデータ解析によるダブルハイパー核の探索はほぼ終了した。世界最高の約600例のグザイ粒子静止吸収反応を観測し、7例のダブルハイパー核候補事象と2例のtwinhyper核事象を発見し、相互作用が弱い引力であることを示した。さらにはダブルハイパー核のΣ粒子への弱崩壊をはじめて発見した。しかしダブルハイパー核がストレンジネスをもつ原子核物理として確立するためにはまだ統計が不十分である。そこで10倍の統計の次世代ハイブリッドエマルション実験を行うため、カギとなるDouble-sidedsiliconstripdetector(DSSD)の開発製作と原子核乾板やその自動解析装置の高速化に取り組んできた。製作したDSSDがS/Nなど十分な性能を持つことをβ線で確認した。自動解析装置では3倍の高速化と大型化に成功した。scintillatingfibervisual検出器を用いたKEK-E522実験ではの不変質量の測定を行い、の閾値付近にHダイバリオン共鳴とも考えられるピークを見出し、さらにペンタクォークの探索も行いハドロンによる生成断面積の上限を与えた。

5.審査部会における所見

A-(努力の余地がある)
 高エネルギー加速器研究機構(KEK)における実験では、新たなダブルハイパー核の発見およびラムダ-ラムダの不変質量分布に予想を超えるピークの観測など、着実に成果が上がっている。また、米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)における実験に向けての読出し装置やエマルジョン解析装置の改良等の検出器の開発等は順調に進展している。これまでのところは、当初の研究計画調書に概ねそった形で研究計画が順調に進んでいると判断するが、今後に関しては、米国国内の事情によりBNLにおける実験計画には大きな不確定性を抱えており、十分な対策が必要である。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --