研究課題名:マイクロレンズ効果を利用した新天体の探索

1.研究課題名:

マイクロレンズ効果を利用した新天体の探索

2.研究期間:

平成14年度~平成18年度

3.研究代表者:

村木 綏(名古屋大学太陽地球環境研究所・教授)

4.研究代表者からの報告

(1)研究課題の目的及び意義

 銀河に付随する大量の、暗い天体をマイクロ重力レンズ法で検出しようとするのが、本研究の目的である。今まで誰も手がけていない、5000万個の星を毎晩NZで大量測光して、超高倍率に増光される背景天体を多数観測する。それにより、背景天体の前面を通過する暗い天体の速度を同定し、暗い天体の位置を求める。
 そしてこれらの暗い天体が我々銀河のハローにあるのか、マゼラン雲の内部にあるのかを決定する。検出を目指す天体として、褐色矮星や、中性子星、白色矮星、ブラックホール及び宇宙初期にできたブラックホールがある。これらは銀河のダークマターの候補である。また太陽系外惑星もマイクロ重力レンズ効果で検出可能である。我々は他の観測方法では検出困難な地球型系外惑星の発見を目指している。太陽系外に、我々の地球と同じ環境におかれた兄弟星が存在するか、という人類の永年の謎に本研究で答えることを目指す。

(2)研究の進展状況及び成果の概要

 本科研費を利用して、国産では最大級の口径1.8mの天体望遠鏡を製作し、8000万画素の大面積のCCDカメラを製作した。望遠鏡は平成16年8月に京都の西村製作所で完成した。そして同年10月ニュージーランド・マウントジョン天文台に移設された。望遠鏡の星の追尾精度は0.2秒角/5分である。望遠鏡の補正レンズ系の光学系調整作業が2月に終了し、設計どおり2平方度の広い視野が、一度に良いフォーカシングで観測できることが分かった。そしてこの望遠鏡がマゼラン雲や銀河中心の星の大量測光に強力な装置になることが証明された。平成17年4月よりマゼラン雲や銀河中心の星の大量測光に入り、マイクロ重力レンズ効果を受けている星々を現在観測中である。
 また以前から60cm望遠鏡を用いて銀河中心方向を観測しているが、その中で平成16~17年度にかけて、2例ほど太陽系外惑星が発見された。惑星の質量はそれぞれ木星、及び冥王星程度であるが、マイクロ重力レンズ法で系外惑星の検出が可能であることを初めて示した意義は大きい。新しい望遠鏡は面積が9倍大きく太陽系外惑星の発見に大変役立つであろう。

5.審査部会における所見

A‐(努力の余地がある)
 1.8m光学望遠鏡、大面積CCD、望遠鏡ドームの作成と設置が無事終了し、これらの装置による観測が順調に行われていることは高く評価する。今後、マイクロレンズ効果を利用した観測で、多くの優れた成果が得られることを期待するとともに、研究期間内において、さらなる成果の公表に努力することを望む。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成23年03月 --