次世代共役ポリマーの超階層制御と革新機能(赤木 和夫)

研究領域名

次世代共役ポリマーの超階層制御と革新機能

研究期間

平成17年度~平成20年度

領域代表者

赤木 和夫(京都大学・大学院工学研究科・教授)

領域代表者からの報告

(1)研究領域の目的及び意義

 非局在化したπ電子やσ電子をポリマー鎖上に持つ共役ポリマーは、未曾有の機能を内包している。その材料としての働きや機能は、ポリマーの高次構造や組織形態に大きく依存する。有機ポリマーと無機ポリマーとの複合材料、あるいは有機ポリマーと生体ポリマーとの会合体においても、ファンデルワールス力や水素結合力などの分子間相互作用を基にした超階層構造により、その物性や機能が大きく左右されることが広く認識されている。生体系においては、階層的に独立した分子や組織が協同的に作用し精巧な機能を生み出している。光・電子デバイスにおいても機能を十二分に引き出すには、分子材料を単純に積層、配列するだけではなく、独立した機能を有する分子材料を高次に組織化し階層性を制御して大域的に配列することが重要である。
 本特定領域研究では、卓越した分子設計と反応・重合設計を基盤とし、従前にない斬新な共役ポリマーを創成し、ポリマーの階層構造制御や次元性をはじめとするトポロジー制御、モルホロジーや結晶構造の大域的な制御を目的とした具体的には共役ポリマーのサブミクロンからナノメートルレベルでの微細加工や積層構造、機能や応答の精密制御を行い、次世代の光・電子材料への展開を図るとともに、電子・光機能を基軸として、これらを高度にシステム化した生体機能や極限性能をも視野に入れ、革新機能の創出を探求する。

(2)研究成果の概要

 本研究領域では、次世代共役ポリマーを用いた超階層構造の構築とその学理の探求及び革新的な応用の開拓を目指し、研究推進を担う4つの研究班すなわちA01項目「次世代共役ポリマーの創成」、A02項目「超階層構造の構築」、A03項目「超光電子機能の制御」、A04項目「革新機能の探索」を設置し、さらに総括班を置くことで、研究領域全般の運営と特に研究領域内での共同研究の推進と若手研究者の育成に関して重点的な取り組みを行った。具体的な成果として、たとえば1)主鎖に隣接したα位に、キラル炭素を有する置換ポリアセチレンや共重合体においてらせん構造の形成と制御に関する一般的な材料設計指針の提示、2)液晶場の配向制御を利用することでヘリカルポリアセチレンをはじめとする種々の共役ポリマーに関する超階層構造構築方法の一般化や単一ポリアセチレンフィブリルの創成、3)電荷注入によるポリアルキルチオフェン(P3AT)デバイスでのバイポーラロンの検出、P3ATとフラーレン誘導体とを積層した相補性金属酸化膜半導体電界効果トランジスター(C-MOSFET)などの多様な電子素子の作成、4)Si系共役ポリマーやπ共役オリゴマーの結晶や微結晶における特徴的な発光特性やレーザー発振特性の実現などの成果を得た。これらの成果は、世界的に著名な学術雑誌に合計1003件の論文として公表したほか、8回の公開シンポジウムと3回の国際ワークショップを開催し発表した。出版事業として国内向きには「次世代共役ポリマーの超階層制御と革新機能」(平成21年1月30日発行、シーエムシー出版、445頁)、国際的には専門学術雑誌“Synthetic Metals”にて Special Issue “International Symposium on Control of Super-Hierarchical Structures and Innovative Functions of Next-Generation Conjugated Polymers”(Volume 159, Issues 9-10, 2009、228頁)を刊行した。また4年間を通じて領域内で154件の共同研究を推進し、75編の共著論文を出版した。

審査部会における所見

A+ (研究領域の設定目的に照らして、期待以上の成果があった)

 卓越した分子設計と反応・重合設計を基盤として創成された斬新な共役ポリマーによる1次構造から高次構造へ至る超階層構造の制御と、それらの物性評価を通した積層構造化による革新機能の創出を行うことで、これまでの高分子研究の単なる延長ではない新しい学問領域開拓に成功する等、本研究領域の意義を大いに高めた。領域代表者が研究領域を適切に組織化し、その成果がいずれも世界的にも先端的な業績をあげており、新しい学術分野としての定着が見られたこと、さらに、同分野の啓発活動・若手研究者育成において格段の努力がなされた運営についても高く評価する。以上のことから、特定領域研究として期待以上の大きな成果をあげたと判断する。

お問合せ先

研究振興局学術研究助成課

-- 登録:平成22年01月 --