「研究領域提案型」の応募書類は「電子申請システム」を活用して応募する方式を採っており、
の二段階に分けて提出することとしている。
また、「研究領域提案型」では、審査を希望する区分を「人文・社会(人社)」、「理工」、「生物」、「人社・理工」、「人社・生物」、「理工・生物」、「人社・理工・生物」から必ず一つ選択することとしている。
審査は、審査部会に置かれた各委員会において実施した。
また、合議審査に当たっては、前述の「審査を希望する区分」に応じ、次のように担当する委員会を定めている。
審査を希望する区分 | 「人文・社会(人社)」 | ⇒ | 「人文・社会系委員会」 | |
「理工」 | ⇒ | 「理工系委員会」 | ||
「生物」 | ⇒ | 「生物系委員会」 | ||
「人社・理工」 「人社・生物」 「理工・生物」 「人社・理工・生物」 |
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⇒ | 「複合領域委員会」 |
各系委員会は、過去の領域型研究の応募状況や各評価者の専門性等を勘案して1委員会当たり10数人から20数人の評価者で構成しており、また、複合領域委員会は、「人文・社会系委員会」、「理工系委員会」及び「生物系委員会」の3つの委員会を構成する評価者の中から6人ずつ選定した評価者で構成している。
また、ヒアリング対象となった研究領域については、関連分野に精通する研究者(評価者以外の者)に対し「領域計画書」及び「計画調書」に関する審査意見書の作成を依頼している。
審査は、概ね次の手順で進めている。
(参考:科学研究費補助金「新学術領域研究」の審査要綱(抜粋)) 【ヒアリングの進め方(時間配分の目安)】 時間配分は、以下を目安とするが、質疑応答等のためにやむを得ない場合は、主査の判断により必要な範囲で増減することができる。
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従前にない取り組みとして、「研究領域提案型」の応募書類を二段階に分けて提出(当初応募時は「領域計画書」のみ提出。)する方式を採っている。この方式により、ヒアリング対象研究領域選定までの評価者の負担が多少軽減され、全体的には効率的な審査が実施できたものと考える。
また、応募者側にとっても、ヒアリング対象となった研究領域の関係者が「領域計画書」の内容と齟齬のない範囲で、最新の研究費受給状況や業績の記載、記述内容の精査を行うことができるなど「計画調書」作成に関する利点もあると考える。
なお、ヒアリング対象となることが決まった研究領域の関係者が「計画調書」を提出するまでの期間はかなり短く(約3週間)、一部の研究領域から「計画調書作成のための対応が大変」との情報が寄せられている。この点に関しては、最初に提出する「領域計画書」の作成には計画研究ごとの研究組織や研究経費の記述が必要であり、その前提となる「計画調書」の内容も、応募開始段階で基本的にはでき上がっているものと考えれば、対応に窮することはないと思われる。
一方、「電子申請システム」を活用して応募する方式を採っているため、応募者側のパソコンのトラブルにより応募が間に合わなかった、応募時の入力誤りではないかと思われる「系」の選択がある(後述参照)、といった事例も一部に見受けられる。もちろん、これらはいずれも応募者側の責任であり、応募情報の入力はゆとりをもって対応すべきというのが基本であるが、「電子申請システム」も応募者にとってよりわかりやすいシステムづくりが求められる。
審査は、「審査要綱」に則って取り進められ、各委員会において、採択候補研究領域及び採択候補研究課題が選定された。
各系委員会は、従来の領域型研究の応募動向も参照して委員会ごとに10数人から20数人の評価者で構成しており、多様な応募内容に適切に対応する観点で概ね妥当な体制であったと考える。
複合領域委員会は、各系委員会を構成する評価者の中から6人ずつ選定した評価者で構成しており、書面審査結果とともに各系委員会における審査意見の内容も踏まえて合議を行うなど、多様な応募内容に適切に対応する観点でも概ね妥当な体制であったと考える。ただし、複合領域委員会の評価者は、各系委員会の合議審査に加え複合領域委員会担当分の合議審査も行う必要があり、将来的には、負担軽減につながる方途も検討していくことが求められる。
審査は、「書面、ヒアリングによる審査」→「結果集計」→「集計結果を踏まえつつ全体合議」と進めていくが、最終段階となる合議審査時においても、集計した結果において単に高得点のものを自動的に採択するようなことではなく、各委員会に参加した評価者全員により、評点に対する考え方、研究内容等に対する見解等に関し活発な議論が行われている。
このように、審査は、各委員会における議論を経て全体合議により決定する方式を採っており、仮に、評価者の専門が研究テーマとかなり異なり理解が難しい場合や、認識誤りに基づく評価が含まれたとしても、合議審査に至る過程で適正化されることとなる。
なお、今回から導入した応募書類を二段階に分けて提出(当初応募時は「領域計画書」のみ提出。)する方式により、ヒアリング対象研究領域の選定までの間は「領域計画書」のみで審査を行ったが、この点について問題がなかったか評価者の感触を聴取した。結果、様々な意見があったが、多数を占めた意見としては、
といった内容である。従って、審査の在り方としても、今回から導入した方式は概ね妥当であったと考える。
なお、審査の過程で応募内容等に対する次のような意見があった。
1. 「系」の選択方法について
・ 複数の「系」を選択しているが、計画の内容から見ると、あきらかに単独の「系」で応募するべき内容である。応募時の入力誤りではないのか。誤りであれば、審査の際考慮してもよいのではないか。 ・ 複数の「系」を選択しているが、計画の内容から見ると、決して誤りではないものの単独の「系」で応募するのが妥当と思える内容である。妥当と思える「系」だけで審査してもよいのではないか。 ・ 単独の「系」を選択しているが、計画の内容から見ると、複数の「系」を選択し、それぞれの「系」の観点で評価を受けたほうが妥当と思える内容である。複合領域委員会で審査をしてもよいのではないか。 |
これらはいずれも、審査希望区分の選定方法に関することであるが、審査対象の中に、評価者が疑問に感じるような内容(審査希望区分の選択)の応募研究領域が含まれたことを意味している。
これらは、評価者が疑問を感じるか否かという程度問題を含め論ずるべき問題でもあり、審査部会の見解としては、応募者が選択した「審査希望区分を尊重する。」ことが全てであって応募者の選択に沿わない形で審査をすることはない。各委員会においてもその方針で取り進めている。
なお、「応募時の入力誤りではないか」という指摘に関しては、電子申請システムの入力画面を改善し誤りが起こらないような仕様に平成21年度公募より変更されている。応募に当たっては、より慎重な選択が望まれるところである。
2. 後年度に研究者が追加されることを前提とした応募研究領域について
・ 研究領域として応募した時点で参加していない研究者が、後年度から追加で参加することを前提とした領域計画書がある。当該追加参加研究者のための研究経費は総括班研究課題に計上されているが、この応募をどのように見るべきか。 |
この研究領域の応募内容は、研究領域発足時に重複応募制限の関係で参加できない研究者について、後年度から参加してもらうことを念頭に組み立てられたものと推察される。審査に関わった各委員会における議論の結果、
※ | この内容は、現行の公募要領に定められた応募ルールに抵触しているものではないと見るべきである | |
※ | ただし、1.後年度から参加する予定の研究者は、確実に参加することの科研費制度上の保証がないこと、2.後年度から参加する予定の研究者の研究経費を総括班活動に含めることは、公募要領に記載されている総括班の内容(「実際の研究を行わない組織」と記載。)に沿っているとは言い難いこと、から、当該応募研究領域の応募内容をそのまま認めることは適切ではない。(参加する保証のない研究者への研究費配分を予定することとなってしまう。) | |
※ | このため、後年度から参加する予定とされる研究者は、応募段階としては「参加しない」こととして取扱い、かつ、後年度から参加する予定の研究者の研究経費の総括班研究課題への計上は認められない。 |
との判断がなされた。
審査部会でも再度議論を行ったが、後年度から参加する予定の研究者が当該領域における構想に含まれていたとしても、科研費制度の現行の仕組みにおいて確実に参加する保証がないこと等の状況を踏まえると、審査を行った各委員会の判断は適切である。
3. 「審査意見書」の内容について
・ ヒアリング対象となった研究領域については、関連分野に精通する研究者により作成された「審査意見書」も参照している。参考資料として大変重要である反面、一部には追従的な賛辞のような内容もある。あくまで参考資料との前提で見ているが、内容的には疑問も残る。 |
ヒアリング対象となった研究領域については、採択候補研究領域及び当該研究領域の計画研究の採択候補研究課題を選定する際の資料とするため、「領域計画書」及び「計画調書」に関する審査意見書の作成を依頼している。
適切な審査意見書は、当該研究分野の状況や応募者等について大変有効な情報を提供してくれるが、追従的な賛辞ばかりが記述されている場合は参考情報としても扱いづらい。
評価者は、審査意見書の内容を見極めるとともに、必要に応じ議論により内容を確認していくため特段の問題は生じていないところであるが、今後、審査意見書の作成依頼の仕方にも工夫が求められる。
審査は、評価者等の膨大な労力の投入により行われており、総じて適正に執り行われたものと判断できるが、一方で、審査システム全体を通じてみると問題点として考慮するべき事項が無いわけではない。
審査の過程で意見のあった、「審査を希望する区分(系)の選択方法」の問題や、「複数の「系」を選択した研究領域については審査そのものが大変難しい」問題に関しては、抜本的に改善する方途は容易には見出せないと思われるものの、次回以降の審査の状況も見極めながら改善策を考察していくことが求められる。
また、応募者側の入力誤りや応募内容そのものに関する問題等については、基本的には応募者側の責任というべきであるが、問題となるような事項を公募要領に明記する等により改善できる点もあるものと考える。従って、対応が可能な段階(平成21年度公募時において既に対応済みの事項有り。)で随時改善していくことが求められる。
研究振興局 学術研究助成課
-- 登録:平成21年以前 --