研究活動の不正行為への対応に関する科学研究費助成事業における運用方針

平成19年4月1日
平成21年3月23日一部改正
平成24年3月23日一部改正
平成25年9月3日一部改正
平成28年3月31日一部改正
科学技術・学術審議会学術分科会
科学研究費補助金審査部会決定

(趣旨)
第1  科学研究費助成事業(以下「科研費」という。)により得られた研究成果に関し、「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(平成26年8月26日文部科学省大臣決定。以下「ガイドライン」という。)及び「科学研究費補助金取扱規程」(昭和40年文部省告示第110号。以下「取扱規程」という。)第4条第1項第5号に基づき、不正行為の疑義のある者の所属する研究機関等(以下「調査機関」という。)において不正行為があったと認定された者に対する措置の検討については、科学研究費補助金審査部会(以下「本部会」という。)において行うこととし、本運用方針に則って行うものとする。

(留意事項)
第2  学術研究における不正行為は、真実の探求を積み重ね、新たな知を創造していく営みである学術の本質に反するものであり、国民の期待や信頼を揺るがし、学術研究の発展を妨げ冒涜するものであって、研究費の多寡を問わず絶対に許されないものであるとの考えに基づき、調査機関に対して厳格な調査を求め、この調査結果に基づいて本部会において措置を判断する。
  ただし、不正行為に対する措置が、研究者の研究活動を不当に萎縮させることがないよう留意する。

(不正行為の定義)
第3   対象とする不正行為は、科研費を活用した研究活動において発表された、論文、著書及び研究発表等の研究成果(以下「論文等」という)の中に示されたデータや研究結果等に関する故意による又は研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったことによる次の(1)から(3)に掲げる行為とする。
  なお、科学的に適切な方法により正当に得られた研究成果が結果的に誤りであったとしても、それは不正行為ではない。
(1)捏造
存在しないデータ、研究結果等を作成する行為。
(2) 改ざん
データ、研究結果を真正でないものに加工する行為。
(3) 盗用
他の研究者のアイデア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文又は用語を、当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用する行為。

(措置の対象者)
第4   本部会で措置を検討する対象者は、調査機関において、ガイドラインを踏まえた適切な手続に則り、科研費を活用した研究活動において発表された論文等について、次の(1)から(3)に掲げる者として認定された者(以下「不正行為認定者」という。)とする。
(1) 不正行為があったと認定された研究にかかる論文等の、不正行為に関与したと認定された著者。(共著者を含む。以下同じ)
(2)不正行為があったと認定された研究にかかる論文等の著者ではないが、当該不正行為に関与したと認定された者。
(3)不正行為に関与したとまでは認定されないものの、不正行為があったと認定された研究にかかる論文等の内容について責任を負う者として認定された著者。

(交付決定の取消)
第5  調査機関において、不正行為があったと認定された研究課題(以下「認定研究課題」という。)の交付決定の取消は、次に掲げる(1)から(5)により取り扱うことを原則として、本部会において事案ごとに判断し、これに基づいて行うものとする。
(1)認定研究課題の研究代表者が不正行為認定者であった場合は、認定された時点で未使用の補助金について交付決定を取り消すものとする。この場合、次年度以降継続して補助金が交付される予定となっているものについては、継続を認めない。
(2)認定研究課題の研究分担者又は研究協力者が不正行為認定者であった場合は、交付決定を取り消すか否かは、事案ごとに判断するものとする。ただし、交付決定が取り消されない場合であっても、不正行為認定者への分担金の配分若しくは補助金の使用を認めない。
(3)当初から不正行為を行うことを意図していた場合など、不正行為が極めて悪質であると判断される場合は、交付決定の全部を取り消すものとする。
(4)認定研究課題以外に交付決定されている他の研究課題がある場合は、次のとおりとする。
ア) 不正行為認定者が研究代表者となっている研究課題については、認定研究課題が認定された時点で未使用の補助金について交付決定を取り消すものとする。この場合、次年度以降継続して補助金が交付される予定となっているものについては、継続を認めない。
イ) 不正行為認定者が、研究分担者又は研究協力者となっている研究課題については、不正行為認定者への分担金の配分若しくは補助金の使用を認めない。
(5)他者の強要があった場合、論文等の責任を負う者について、その責任を問うことが適切でない場合(監修責任者等を貶めるための意図的な不正行為等)など、個別に考慮すべき事情がある場合には、交付決定の取消を免除することができるものとする。

(応募研究課題の不採択)
第6  研究計画調書の応募から交付決定までの間(以下「応募段階」という。)にある、不正行為認定者からの研究課題については、次に掲げる(1)又は(2)により取り扱うことを原則として、本部会において事案ごとに判断し、これに基づいて行うものとする。
(1)研究代表者として応募段階にある研究課題は、不採択とし交付決定しない。
(2)研究分担者として応募段階にある研究課題は、不正行為認定者を研究組織から除外してもなお研究遂行が可能であると判断するときは、交付決定することができる。また、交付内定後に、不正行為認定者の除外がないまま交付申請されたことが判明した場合は、交付決定しないことができる。

(調査中における一時的措置)
第7 不正行為の疑義があった場合において、調査機関の予備調査の結果、本調査を行うことが決定された場合には、調査機関に対して中間報告を求めることとし、中間報告の内容を踏まえ必要がある場合には、採択の決定又は補助金の交付を留保し、又は調査機関に対し補助金使用の一時停止を求めることができるものとする。

(交付対象からの除外期間)
第8  取扱規程第4条第1項第5号に基づき、不正行為認定者を科研費の交付対象から除外する期間については、次に掲げる(1)又は(2)により取り扱うことを原則として、本部会において事案ごとに判断し、これに基づいて行うものとする。
(1)調査機関からの調査報告書等を精査のうえ、不正行為への関与の度合い、不正論文等の学術的・社会的影響度及び行為の悪質度に応じて、別表に基づき、判断するものとする。
(2)論文の取り下げがあった場合など、個別に考慮すべき事情がある場合には、事情に応じて適宜期間を軽減することができるものとする。

(科研費以外の研究における不正行為の取扱)
第9   研究代表者及び研究分担者として科研費の交付を受けている者に、科研費を活用した研究活動以外の研究活動における不正行為があった場合において、科研費の交付が、当該研究活動に係る論文等の成果に基づいてなされたものと本部会において判断した場合は、科研費の「不正受給」にあたるものとして、取扱規程第4条第1項第4号の規定を適用する。

(その他)
第10   不正行為に関する措置に関し、本運用方針に定めのないものは、ガイドラインに基づき、本部会において定める。

第11   平成26年度以前の会計年度に支払われた科研費を活用した研究活動において不正行為があったと認定された者に対しては、「競争的資金に係る研究活動における不正行為対応ガイドライン」(平成18年8月科学技術・学術審議会報告)及び取扱規程第4条第1項第5号に基づき、措置の検討を行うこととする。

別表

不正行為への関与に係る分類

学術的・社会的影響度
行為の悪質度

除外期間

不正行為に関与した者

ア)  研究の当初から不正行為を行うことを意図していた場合など、特に悪質な者

10年

イ)  不正行為があった研究に係る論文等の著者

当該論文等の責任を負う著者(監修責任者、代表執筆者またはこれらの者と同等の責任を負うと認定された者)

当該分野の学術の進展への影響や社会的影響が大きい、若しくは行為の悪質度が高いと判断されるもの

5~7年

当該分野の学術の進展への影響や社会的影響、若しくは行為の悪質度が小さいと判断されるもの

3~5年

上記以外の著者

-

2~3年

ウ)  ア)及びイ)を除く不正行為に関与した者

-

2~3年

不正行為に関与していないものの、不正行為のあった研究に係る論文等の責任を負う著者(監修責任者、代表執筆者またはこれらの者と同等の責任を負うと認定された者)

当該分野の学術の進展への影響や社会的影響が大きい、若しくは行為の悪質度が高いと判断されるもの

2~3年

当該分野の学術の進展への影響や社会的影響、若しくは不正行為の悪質度が小さいと判断されるもの

1~2年

お問合せ先

研究振興局学術研究推進課

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