日本語教育推進関係者会議(第9回)議事録

1.日時

令和6年12月18日(水曜日)15時30分~17時30分

2.場所

文部科学省会議室 ※WEB会議併用

3.議題

(1)日本語教育の現状について
(2)これまでに寄せられた意見等について
(3)その他

4.出席者

【委員】 西原委員(座長)、伊藤委員、オチャンテ委員、河原委員、小池委員、佐藤委員、ロジャーズ委員、杉山委員、高橋委員、田尻委員、西口委員、福島委員、松田委員、森下委員、四ツ谷委員
【事務局】平野社会教育振興総括官、今村日本語教育課長、福田視学官、石川日本語教育課課長補佐、外務省鈴木大臣官房文化交流・海外広報課長
【関係府省庁】
文部科学省中野国際教育課長、齊藤大臣官房国際課課長補佐、菊池高等教育局参事官(国際担当)付留学生交流室長補佐、出入国在留管理庁佐藤外国人施策推進室長、経済産業省高橋技術・人材協力室課長補佐、千野アジア大洋州課長補佐、厚生労働省南摩職業安定局外国人雇用対策課海外人材受入就労対策室長、総務省小西自治行政局国際室参事官補佐、こども家庭庁成育基盤課

5.議事録

○西原座長
 では、定刻となりましたので、ただいまから日本語教育推進関係者会議(第9回)を開催させていただきます。本日は御多忙のところ、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 まず、事務局から配布資料等の確認をお願いいたします。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 事務局でございます。
 本日は、対面とオンラインを併用したハイブリッド開催となります。会議は公開となっておりますので、傍聴者の方もオンラインでこの会議を御覧になっていることを御承知おきください。
 また、本日の出欠状況でございますが、橋本委員、古澤委員、由井委員より御欠席の御連絡を、浜田委員より遅れて御出席される旨の御連絡を事前に頂戴しております。
 次に、本日の配布資料の確認をさせていただきます。本日の配布資料は、議事次第に記載しているとおりでございまして、資料1から資料2、参考資料1から参考資料7までの計13点でございます。不足等がございましたら、事務局へお申し付けください。
 事務局からは以上でございます。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 本日の流れでございますが、まず4名の方から日本語教育の現状について、それぞれの御担当の分野についての御意見の御発表をいただきます。その後、事務局から、本会議においてこれまでに寄せられた御意見について説明をさせていただきます。その後、まとめまして質疑応答等の時間とさせていただきたいと存じます。
 それでは、まず議事の1、日本語教育の現状について4名の方からのヒアリングを行っていただきます。まず最初に、株式会社府中テンパール管理部副部長の松本知久様にお越しいただいておりますので、御発表いただきます。松本様、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○府中テンパール
 よろしくお願いいたします。株式会社府中テンパールの松本と申します。本日はこのような場で弊社の外国人従業員に対する日本語教育支援についての紹介をさせていただく貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。それでは、時間も限られておりますので、早速ですが、紹介に入らせていただきます。よろしくお願いいたします。
 2ページ目をお願いいたします。本日はこのように、まず初めに当社の会社概要を簡単に説明させていただき、2番目に日本語教育支援に関する取組、3番目に課題、最後に要望、願いといった流れでお話しさせていただければと思います。
 3ページ目をお願いします。それでは、まず会社概要となりますが、当社は広島県広島市の中心部から約20キロ離れた郊外の安佐北区という場所に本社工場があります。12月1日時点での従業員数は158名で、事業内容は主に配線器具の製造ですが、一般的にブレーカーと呼ばれる配線用遮断器、漏電遮断器や住宅用・産業用の分電盤などの電気機器を製造している会社になります。
 4ページ目をお願いします。続いて沿革ですが、1965年に創業し、外国人従業員に関する部分については、2001年に初めてベトナムからの外国人研修生を受け入れて、現在も技能実習制度、特定技能制度を活用させてもらっています。なお、初めての特定技能外国人は2019年に技能実習の修了者から在留資格の変更を行って受入れを開始しております。
 5ページ目をお願いします。左上の従業員の構成についてですが、従業員の数は表のとおりですが、外国人材については特定技能と技能実習生で現在19名が在籍しております。続いて、左下の円グラフの構成比についてですが、全体の12%を外国人材が占めているといった状況で、右側の円グラフの部分の男女比率については、約75%を女性の従業員が占めている実情をお示ししております。中央より右側の表についてですが、こちらは当初、外国人材の受入れを開始した2001年から2023年にわたっての国籍別の受入経歴をお示しした表になります。御覧のとおり、黄色でお示ししているベトナム人材を主に受け入れてまいりました。累積では、右下の部分に記載しておりますとおり、これまで150名の外国人材を受け入れております。
 6ページ目をお願いします。概要部分の最後となりますが、こちらは外国人従業員についての在留資格別の受入区分と在籍数を表した表になります。技能実習が団体監理型で16名、特定技能が自社支援で3名を現在雇用している状況となっております。また、このような技能実習、特定技能の外国人材を受け入れている目的といたしましては、社内体制の維持・向上といった面と国際的社会貢献といった面において、国籍を問わず、人を財産とした思いの下、会社と人が共に成長でき、多様な人材が活躍できる職場を目指しております。
 7ページ目をお願いします。それでは、ここからは当社で支援している日本語教育に関する取組を紹介いたします。まず初めに上段の部分ですが、こちらは技能実習生の母国であるベトナムの送り出し機関と連携した入国前のオンライン教育について御説明いたします。きっかけは4年前、ベトナムの送り出し機関からお願いされて始めたものになりますが、ボランティアとして当社の社長が週に1回2時間程度の時間を設けて、技能実習生として入国予定の他社の事前学習者も含めてオンライン教育で教育している取組になります。こちらの教育内容といたしましては、社会人としての基本的なマナーや日本の生活一般、気候に関することをテーマに教育しております。毎回、授業の最後に質疑応答の時間を設け、授業内容とは違う質問も飛び交うなど、現地通訳者を介してですが、事前学習者もコミュニケーション機会を楽しんでいます。現在、ベトナム北部のハノイと南部のホーチミンを同時にオンライン接続して、1回に約80名から100名の事前学習者が参加してくれています。
 次に、下段の部分です。こちらもベトナムの送り出し機関と連携した取組になりますが、こちらは当社の面接に合格して母国での事前学習に励んでいる入国前の実習生と定期的にオンラインによる日本語でのコミュニケーションを図っている取組になります。面談の1週間前に、日本語教育で使用している教科書の進捗状況を教えてもらい、それまでに習った日本語を使って実際に私たち従業員と会話する練習をしています。目的といたしましては、実際の日本人との会話はとても緊張することだと思いますので、まずはそのような緊張感に慣れてもらうこと、また、次はもっと上手に話したいといったような学習意欲の向上、そして、このようなコミュニケーションを図ることで入国前から人間関係が構築できるといった点も大きな効果があるのではないかと考えております。
 8ページ目をお願いします。続いて、上段の部分ですが、毎月の給与明細にお礼の手紙を同封している社長の取組について紹介いたします。こちらは日本人の社員とパートさんと同様に、特定技能外国人、技能実習生にも、日本語だけでなく、母国語に翻訳したメッセージを同封して、ねぎらいの言葉を毎月伝えているものになります。日本語と母国語の両方が全く同じ内容で書かれているので、日本語の学習にも効果的ではないかと思われます。また、中には、こちらの手紙を母国の家族に写真で送っている者もいるようで、家族の安心感も同時に築くことができているのではないかと思っております。
 続いて、下段の日本語勉強会の実施について御説明いたします。こちらは毎年7月と12月に実施されている日本語能力試験を受験する特定技能外国人や技能実習生の学習希望者を対象として、試験の二、三か月前からN2・N3の受験レベルに応じてクラス分けを行い、週に2回程度の頻度で当社の社員が日本語を教えている取組になります。勉強の開始前の時期になると、教育を受け持ったそれぞれの社員が、どの教科書を使って教育するか悩みながら選定して実施しております。
 9ページ目をお願いします。上段の部分です。こちらも日本語能力試験に関する取組になりますが、試験当日には受験者をそれぞれの受験会場まで送迎するサポートも行っております。試験会場までの移動にかかる負担を少しでも軽減して、少しでも多くの人数が試験に前向きにチャレンジしてもらいたいという思いで支援しているものになります。
 また、下段に移って、試験の合格者には、社内の全体集会の場で紹介して、褒賞を贈呈するなどの場を設けて、従業員全員で祝福する取組も行っております。
 10ページ目をお願いします。続いて、こちらは地域活動への参加に関する紹介となります。上段部分についてです。春と秋に毎年行われている地域の清掃活動に参加したり、10月の秋祭り、1月のとんど祭りにも、地域の方からお声がけいただき、参加させてもらっています。このような活動への参加が地域の方との日本語でのコミュニケーションを図る貴重な時間となっており、地域の方も温かく接していただき、大変感謝しております。ちなみに、一番右上の写真は、昨年、地域の方が催してくださった焼きガキパーティーの写真になります。
 続いて、下段部分です。社内イベントではクリスマスパーティーやテトパーティーなど季節に応じてイベントを企画したり、技能実習生が新しく入社した際などには歓迎会を開くなどして、日本語でのコミュニケーションを図れる機会を設けております。
 11ページ目をお願いします。こちらの上段部分については、当社のホームページ上のブログの作成について、特定技能外国人や技能実習生も日本語で投稿してくれているものになります。
 そのほか、下段部分については、毎年秋に設けられている品質月間と呼ばれる行事でも、品質についての目標を日本人と同様に日本語で旗に書いたり、品質についての標語も作成して、特定技能外国人と技能実習生に限定した賞を設けて表彰を行ったりもしております。また、新たな年を迎えた際に記入する年間抱負ボードにも、漢字を使って丁寧に1年の抱負を記入しています。
 以上が日本語教育の支援に関する取組の紹介と説明でございました。
 12ページ目をお願いします。ここからは日本語教育支援に関する課題について説明させてください。まずは上段部分についてですが、2027年から施行される予定の育成就労制度に向けての課題となります。こちらの新たな制度では、就労開始前の要件として、初級レベルの日本語試験の合格や講習受講が必要とされており、こちらの要件に対して、送り出し機関とも共通した認識の下で、日本語の教育支援に対する拡充が必要であると感じております。また、育成就労から特定技能1号へ在留資格変更を行う際の要件においても、新たに日本語能力試験のN4レベルの合格が必要とされており、こちらの日本語教育支援についても、さらなる拡充の必要性を感じております。
 そして、下段部分についてです。特定技能制度の改正においても、特定技能1号から2号へ在留資格の変更を希望する際に、新たに日本語能力試験のN3レベルの合格が必要となっていることや、既に昨年6月に改正された工業製品製造業分野における1号から2号への変更において要件とされているビジネス・キャリア検定の3級と特定技能2号評価試験の合格に向けての教育サポートもより一層の拡充を行わないとクリアできない大きな壁となっております。
 13ページ目をお願いします。こちらの上段部分についてですが、俯瞰した視点で捉えた場合においても、国際的な人材獲得競争が進んでいる中で、各種試験等の合格を要する厳しい要件下においても、この日本を選んでもらい、さらには当社を選んでもらえるような魅力づくりを継続していかなければならないと強く感じております。
 また、下段部分についてですが、受け手側となる外国人の日本語学習に対する意欲の醸成についても必要性を感じ始めております。現代では、スマートフォンを中心としたデジタル技術の進歩により、様々な翻訳機能を備えたアプリが存在し、日本語能力が多少劣っていても、日本での日常生活には大きな支障なく過ごせる時代になっていると思います。ただ、そのような環境の中でも、直接日本語を使って会話することで、人と人との心の通い合ったコミュニケーションを図ることの価値や深い人間関係を築いていくことの喜びを少しずつでも感じ取ってもらいたいと考えております。一方、日本の制度や会社で決められているから学習しなければならないといった義務的な意識の下で勉強しても効果が現れにくいのではとも思っております。日本語を学ぶことが楽しい、面白いと感じてもらうことができれば、あとは自発的な学習につながって、大きな成果となって現れてくるのではないかと考えております。
 14ページ目をお願いします。上段部分についてですが、昨今の長引く円安や物価高騰も重なって、日本語試験の費用の負担についても課題を感じております。日本語能力試験の受験料については、5年ぐらい昔はたしか1人当たり5,500円であったと記憶しています。それが、受験者数の増加に対応しなければならないためだとは思われるのですが、現在は1人当たり7,500円まで高騰してきています。この現在の試験料7,500円の費用で考えると、現地のベトナム人にとっては、おおよそ平均的な月収の5分の1程度に相当するものと思われ、このような負担に対する支援も何かできる範囲で考えてあげなければならないとも感じ始めております。
 次に、下段部分ですが、こちらの現象は特にコロナ禍以降で多くなっているように感じられるのですが、賃金の高い他県への転職を希望する外国人従業員が増えていることにも課題を感じております。傾向的に見ても、比較的日本語力が高い特定技能外国人や技能実習の修了者から転職を希望する傾向があると感じられます。当社で行っている日本語教育支援に対する取組により、日本語力の高い人材を育成し続けながら、同時に定着率を上げるような継続的な取組の必要性も感じております。
 15ページ目をお願いします。以上が現時点から今後の将来にかけての課題の紹介でした。最後になりますが、一つだけ、日本語教育支援に関する当社の願いについて少しだけお話しさせてください。取組の中でも御紹介いたしましたが、受入企業の従業員が直接特定技能外国人や技能実習生の日本語支援に携わることには大きなメリットがございます。社内での日本語の勉強を通じて、彼女・彼ら一人一人の性格をコミュニケーションを図ることで把握することができ、深い人間関係の構築につながっているように感じています。昨今、技能実習生などの外国人にまつわるトラブルの多くは、技能実習生と受入企業もしくは監理団体とのコミュニケーションが取りにくい環境を発端として大きな問題に発展しているケースが多いように感じられます。自社による日本語教育の支援は、正しい日本語の教育といった面においては劣ってしまい、教育側の負担も生じるなどのデメリットもあるのは事実です。しかし、ささいなことでもお互いに話し合える深い関係性を築くことができるといった大きなメリットがあると感じています。このような関係性が大きなトラブルの未然防止にもつながり、また、誰もが生き生きと活躍できるような明るい職場風土の土台となるものと考えております。このような考えからも、今後施行予定の育成就労制度において、認定された日本語教育機関等での学習が要件化される方向ですが、どうかこのような自社による日本語教育の取組に対しても評価・推進していただけることを願っております。
 以上、改めまして、本日はこのような貴重な場での発表の機会をいただきまして、ありがとうございました。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 御質問をここでお受けしたいところなのですが、今日、ほかにお三方の方の御発表がありますので、御質問があればちょっとメモっておいていただいて、後でまとめて御質問等をお受けすることにしたいと存じます。
 それでは、佐藤郡衛委員に御発表をいただきます。佐藤委員、よろしいでしょうか。
 
○佐藤委員
 分かりました。よろしくお願いします。
 それでは、児童生徒の日本語教育について報告させていただきます。今回は、日本国内と海外の子供の日本語教育の二つを取り上げていきます。
 最初に、国内の児童生徒の日本語教育の現状について、調査統計、施策、そして学校現場の三つの側面から見ていきます。
 今回の報告に際して、文科省から資料の提供をいただいています。文科省の最新の調査結果を基に現状を見ていくことにしますが、これは日本の公立学校に在籍する外国人児童生徒数です。ここに記載のように、10年間で約5万6,000人増加し、全体で約13万人となっています。
 日本語指導が必要な児童生徒数は6万9,123人、この10年間で1.9倍に増加しています。特に外国籍の児童生徒数の増加が著しく、2年前の調査と比較して約20%増加して、5万7,718人という数です。
 次に、日本語指導が必要な児童生徒の母語別の結果、そして、在籍する学校数と都道府県別の結果を示したものです。上段の方を見ると母語の多様化が進んでいること、そして、下段の在籍する学校数に注目すると、在籍者1人が34%、5人以上が30%となっていて、集住化と散在化の両極の傾向が見てとれます。
 日本語指導の現状ですが、学校で何らかの形で日本語指導を受けている児童生徒の割合は約9割です。そのうち、特別の教育課程、つまり、個別の指導計画を作成して、原則取り出しで指導を受けている児童生徒の割合は約7割となっています。
 日本語指導が必要な中学生の進路状況は、進学率90.3%、就職率1.7%、就職も進学もしていない者の比率5%、いずれも全中学生と比較し低くなっているということが分かります。
 これは日本語指導が必要な高校生の中退・進路状況の結果です。中退率8.5%、進学率46.6%、就職者における非正規就職率38.6%、進学も就職もしていない者の比率11.8%となっています。いずれも全高校生と比較し低くなっているということが、この結果からも見てとれます。
 そして、外国人の子供の就学状況等調査結果ですが、不就学の可能性があると考えられる外国人の子供の数は8,601人となっています。
 こうした調査統計の現状を改めてまとめたのがこのスライドです。繰り返しになりますので、ここでは省略しますが、再度確認をしていただければと思います。
 次に、施策から見た現状ですが、左側が文科省の日本語指導に関わる主な施策を抜き出したもので、それを整理したのが右側です。日本語と教科の統合学習のためのJSLカリキュラムの開発、正規の授業時間内で個別の指導計画の下で日本語指導を行う「特別の教育課程」の制度化、受入れの手引、日本語指導や学習支援のガイドラインの作成、日本語能力の評価ツールの開発、実践の共有化と活用のシステムである「かすたねっと」の運用、日本語指導に必要な教員の基礎定数化など、日本語指導に関わる国の施策が急速に整備されてきていると言えます。
 次は自治体における日本語指導に関わる主な施策ですけれども、日本語の初期指導に関わる施策かなり多くの自治体で実施されるようになってきています。そのほか、主な施策としては、日本語指導員等の学校への派遣を行っている自治体が約39%、母語支援員の派遣が約23%、教員研修の実施が約20%などとなっています。ただ、自治体間でやはり大きな差があって、特に子供の数が少ない散在地域では不十分と言わざるを得ません。一方、在籍者の多い自治体では、編入学時に集中的に日本語を学ぶ特設学級取り出しで指導を行う日本語学級の設置、就学前の適応指導・日本語指導を実施するプレスクールの設置、日本語指導のガイドラインや指導のハンドブックの開発などを行っています。
 次は小・中学校段階の日本語指導の現状です。指導体制としては、学校内で日本語指導の実践に関わる成果の蓄積・共有ができていないという問題があります。これは日本語指導担当教員が人事異動で頻繁に交代するということが大きな理由です。また、教科指導につながる日本語指導について専門的な知識や知見を持った教員が少ないということ、そして、日本語指導が学校全体の教育課題になっていない、そのために日本語指導担当者と学級担任、教科担任との連携が不十分だといった問題もあります。指導上の問題としては、先ほどの調査統計からも分かるように、児童生徒の増加と多様化への対応が非常に難しいということ、それから、教科学習につながる日本語指導が不十分だという問題があります。文科省の調査では、日本語と教科の統合学習の実施率は、小・中学校とも約4割と、まだ半数にも達していません。「特別の教育課程」は、先ほど見たように、約7割程度です。
 高校段階については、学校現場から出ている問題を整理しました。いわゆる「日本語ゼロ」の生徒が入ってくるため対応が難しい、生徒の背景の多様化、日本語力の個人差が大きいため指導が難しいといった声です。高校では、それまでの教科学習が積み上がっていないということも影響して、教科指導につながる日本語指導が非常に難しいという問題も抱えています。高校特有の問題としては、生徒全員が学ぶ必要がある必履修教科・科目の比重が大きいため、日本語指導の時間が確保できないといったこともあります。指導体制としては、日本語指導担当は非正規が多く、学校全体の体制に組み込まれていないのが現状です。これは、日本語指導担当教員と各教科担当教員の連携が不十分だという問題にもつながってきます。このほか、高校段階の日本語指導の知見や経験が不足していることやキャリアに結びついた日本語指導が不十分だといった点も指摘できます。
 それではこうした現状を踏まえて、国内の児童生徒の日本語教育の課題について述べていきたいと思います。
 第1は、日本語指導に関わる課題ですが、まずは「特別の教育課程」による指導の推進です。次は、子供の日本語指導は、一般に「サバイバル日本語」、高校では「生活日本語」、そして「日本語基礎」、「技能別日本語」に整理できますが、学校では指導時間数の制約もあって、こうした領域別の指導が大変難しい。さらに、自治体間でこうした領域ごとに指導内容を示していますが、その内容のばらつきが大きいといった問題があります。ですから、国として、日本語指導に関わる統合的なカリキュラム案を示す必要があるのではないかと思います。「日本語と教科の統合学習」についてですけれども、文科省のJSLカリキュラムが開発されたのは20年も前です。この間、学習指導要領も変わって、学習理論や第二言語習得理論の新しい知見も出てきていますので、改訂する必要があると考えています。そして、子供の多様化に対応し個別最適な学びを進めるためのデジタル日本語教材、特に在籍学級での指導に活かせるようなデジタル教材の開発が必要です。また、今後、障害のある外国人児童生徒の日本語指導体制の整備、そして、高校における日本語指導と職業とのリンクも課題です。高校卒業時の就職に際して、職種によっては日本語能力が問われることもあって、高校における日本語能力の評価をどうするかといった点も検討していく必要があります。
 第2は指導者に関わる課題です。先ほど来強調しているように、「日本語と教科の統合学習」を指導できる教員が少ないという現状があります。ですから、教科指導につながる日本語指導の研修、特に自治体レベルでの研修体制の整備を進める必要があります。「特別の教育課程」による指導を実質化するには、日本語教育のコーディネーター教員の配置が必要です。また、自治体では日本語指導員や母語指導員などの配置も進められていますが、研修の不足という問題があります。学校が多様な課題を抱えている現状から見て、地域日本語人材を積極的に登用していく必要がありますが、研修を含めて、どのように活躍してもらえるかという方策を検討することが必要です。
 第3は、不就学者への対応、学びの機会が得られなかった人や学齢超過者の学習の場となっている夜間中学への支援、そして外国人学校等における日本語教育支援なども今後の課題です。
 中長期的な視点として、制度上の課題をあげたいと思います。一つは、実現までのハードルはかなり高いんですけれども、「日本語科」という新たな教科の設置と「日本語科」を専門とする教員養成に向けた検討が必要だと思います。ハードルが高いので、当面は中高での外国語科目に日本語を加えるといったことが少なくとも必要です。
 第2は指導者の配置です。具体的には日本語指導に必要な教員の基礎定数化です。基礎定数化が実現したことは大きな前進ですが、学校現場では教員が足りないという声があります。達成年度である令和8年度以降、基準の見直しが必要です。また、今年度からスタートした登録日本語教員の学校現場への登用のための検討も必要です。ただ、子供の教育に携わることになるために、どういった知識・技能・能力が必要なのか、そのための養成・研修をどうするのか、さらには今後の教員養成との関連も含めて、しっかりと検討する必要があります。
 第3は散在地域の受入体制や指導体制です。一つの自治体では対応できないということははっきりしているので、複数の自治体にまたがった体制づくり、例えば財政支援の仕組みを検討する必要があります。
 第4は、裏づけとなる財政的支援についてです。厳しい財政状況で支援を求めていくには、この教育の成果のエビデンスが必要になってきます。どのような指標で、どのようにエビデンスを示せるかを検討していく必要があります。
 ここからは、海外の子供、特に日本にルーツのある子供の日本語教育についてお話をしたいと思います。その法的な根拠は、ここに掲げた二つの法律です。関係する条文はここに挙げてありますので、参考にしていただければと思います。
 日本にルーツのある子供の日本語教育の現状を、日本語教育の場、日本語教育の対象、日本語の位置づけに整理することができます。これまで日本人学校、補習授業校では、原則、海外勤務者や長期滞在者の子供を対象にして、母語としての日本語、補習授業校では特に国語科を中心に教育を行ってきました。また、継承語学校、ないし教室は、国際結婚家庭の子供を対象にして継承語、簡潔に言えば、親から継承する言語というような意味ですが、こうした継承語としての日本語を学ぶ場です。
 日系移民の多い国や地域では、日本語学校を開設し、日系人の子供を対象に外国語あるいは継承語としての日本語の教育を行なってきましたが、こうした教育の場と対象、そして日本語の位置づけが非常に大きく変化してきています。日本人学校、補習授業校の中には、国際結婚家庭の子供や永住者の子供が多く就学するようになりました。特に補習授業校では、保護者のどちらかあるいは両方とも外国人という子供が44%という文科省の調査結果も報告されていて、日本の教科学習だけではなくて、日本語教育の必要性が高まっていますし、継承語としての日本語へのニーズもあります。日系移民の子供を対象にした日本語学校では、今、世代を重ねてきて、多様化が進んでおり、いわゆる片仮名の「ニッケイ」とも言われるようになり、外国語としての日本語と同時に、日本文化への関心も高まっています。そして、海外における国際結婚家庭の子供、永住者の子供の増加とともに、親から継承する日本語へのニーズが高まって、小規模な継承語教室や学校が設立されるようになりました。
 こうした教育の場への支援がどうなっているかを見たのが右側です。日本人学校、補習授業校、日系の日本語学校への支援は、ここに記載のような支援がなされてきました。しかしながら、継承語関係については、これまで国から支援があまりなされていません。7月の会議で国際交流基金の四ツ谷委員から話題提供があったように、国際交流基金が着手したばかりです。
 そこで、最後に、こうした現状を踏まえて、日本にルーツのある子供の日本語教育を推進するための主な課題について触れてみたいと思います。
 最初に継承語日本語教育ですが、一つ目は現状や実態の把握です。日本国内の児童生徒の日本語教育は、データを基にして施策が進められるようになってきました。先ほどの調査統計のデータからも課題がはっきり分かるようになってきましたが、海外ではまだ不十分です。施策を立案するには基礎的なデータが不可欠ですので、実態を把握し、何が課題かを明確にする必要があります。ですから、基礎的データの収集が非常に大きな課題です。二つ目は教師研修です。継承語日本語教育は、保護者、特に母親が教師役を担っていることが多いという現実があり、教師研修が不可欠になります。しかし、全てに対応することはできません。そこで、いわゆる階層別の研修、例えば中核的な人材を対象にした研修は日本国内で、海外の拠点となる場では一般の教師研修を行うというように重点化した取組を検討して、実現のための支援を行う必要があると思います。三つ目、ネットワーク化ですが、継承語日本語学校や教室は大変小規模なこともあって、ネットワーク化ができていません。ネットワーク構築にはそれをまとめる人や場が必要になりますので、海外の地域別に拠点となる学校などを指定し、そこからネットワーク化を図っていくことも一つの案だろうと思います。四つ目はカリキュラム開発ですが、この教育では、子供の背景や将来の進路が多様ですし、保護者のニーズも多様です。そのため、標準化されたカリキュラムの開発は大変難しいですし、開発しても利用されないということも考えられます。継承語学校や教室の教育力を高めていくためには、実際の授業づくりに役立つような単元案、活動案、教材などを集積し、それらを活用できるようなポータルサイトの構築と運用が必要だと思います。最後は、こうした海外の継承語日本語教育への財政的・物的・人的な支援策の検討です。現状把握とニーズを基に、可能なことから支援を行っていくということが必要だと思います。
 海外の子供の日本語教育の課題の二つ目は、日本人学校、補習授業校、日本語学校における日本語教育の体制整備です。第1は、日本人学校、補習授業校、日本語学校は大きく変容してきていますので、その実態に即した日本語教育のカリキュラムやプログラム開発が必要です。第2は教員研修ですが、海外での実態を踏まえれば、一つの学校で研修を行うことは大変難しいために、オンラインを活用した、学校、地域の枠を超えた研修体制を整備していくということが必要です。そして第3は、日本国内で子供の日本語教育の経験のある教員の日本人学校、補講習授業校、日本語学校への効果的な派遣・配置、さらに現地の日本語教師などを日本人学校や補習授業校で採用するといったようなことも検討すべき課題だと思います。
 以上、大急ぎでしたけれども、日本国内と海外の子供の日本語教育について話題を提供させていただきました。以上でございます。ありがとうございました。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 先ほども申しましたけれども、御質問等は、あとお二方の御発表をお聞きしてからにしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは次に、第三国定住難民として入国された御発表者をお願いしております。今回は御発表者の御希望を踏まえまして、お名前とお顔は出さずに御発表いただきますので、御了承くださいますようお願いいたします。
 まず初めに、事務局のほうから概要の御説明をしていただきます。よろしくお願いいたします。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 事務局の日本語教育課の石川でございます。御発表者の方に発表いただく前に、事務局より、難民などの方々に対する日本語教育の支援について、背景となる情報を先に御説明させていただこうと思います。
 それでは、資料の1-3-1を御覧ください。国は、平成14年の閣議了解「難民対策について」などに基づいて、条約難民、第三国定住難民、補完的保護対象者の方に対して、日本語教育プログラムの提供を含めた定住支援策を実施してございます。
 ここで、条約難民、第三国定住難民、補完的保護対象者がそれぞれどう違うかというところでございますけれども、まず条約難民については、難民の地位に関する条約に定義された難民の条件に該当して、難民の認定を受けた方ということとなります。続いて、第三国定住難民については、難民キャンプ等で一時的な庇護を受けた難民の方について、当初に庇護を受けた国とは別の第三国に移動して受け入れるというものでして、日本では、アジア地域に一時滞在した方で、国連難民高等弁務官事務所から推薦があった方を受け入れているところでございます。また、補完的保護対象者でございますけれども、紛争等による避難民など、難民の要件に該当する理由以外の理由で迫害を受けるおそれのある方が認定されるというものでございまして、主にウクライナ避難民の方が補完的保護対象者として現状認定されているところでございます。今回御発表いただきますのは、第三国定住難民として日本にいらっしゃった方ということでございます。
 政府は、こうした難民等の方に向けて定住支援プログラムを実施しておりまして、その内容については、資料の右下のところにあるとおりでございます。そのうちの日本語教育支援については、定住支援施設における原則として半年間の、572授業時間の日本語教育プログラムなどを提供しているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 それでは、今おっしゃってくださった第三国定住難民として今御滞在の方に、資料とともに御説明をお願いいたします。
 
○発表者
 それでは、発表させていただきます。2017年にマレーシアから第三国定住難民として13歳で来日しました。RHQセンター定住難民プログラムの子供クラスを6か月受講しました。その後、定住をしまして、定住先にある中学校に入学しました。RHQセンターでは標準語で日本語を学習していたので、定住先の方言と苦闘しながら中学生活を送っていました。その中学校では、市の取り出し授業の日本語教室で、ほかの外国籍児童生徒と共に、外部の日本語教師からの漢字などの支援を受けていました。その後、再び移転しました。その移転先の中学校ではそのような支援はなかったため、勉強は大変でした。そのときに、社会福祉法人さぽうと21の支援を受けて、高校進学をかなえることができました。高校では、特別入試による入学者に対して放課後の多文化教室で日本語の学習支援を受けていました。そのほかに、進学準備のためにさぽうと21にも通い、支援を受けていました。そして、今現在はUNHCRの奨学金を得て、大学で学び続けています。
 次に、支援でよかったことを話させていただきます。RHQセンターの定住支援プログラムの日本語教育がよかったと思っています。中学校入学するときには既に日本語が話せている状況、話せるようになっていまして、これはRHQセンターの日本語プログラムのおかげで自己肯定感を育てることができました。そして、RHQセンター退所後の中学入学、高校進学、大学進学という局面での支援団体によるサポートがあって、今現在、私は大学で学習することができています。そして、夜間中学という学び場もとても役に立っています。マレーシアでは公立の学校にアクセスすることができなかったため、コミュニティースクールにて中学校を卒業した兄弟たちがいますが、日本の高校にはRHQセンターで受講した後にすぐに入学はできませんでした。そのときに、夜間中学校に通いながら中学卒業資格を得ました。そのため、夜間中学という学び場もとても役に立ちました。
 次に、これから来る難民に対する支援についてお話しさせていただきます。定住支援プログラムの後半に、入学前の教科学習が必要ではないかと思います。入学する前に自分自身のレベルを把握するときにも役立つと思いました。そして、日本語や教科学習の継続的な支援も必要ではないかと思います。私たちのような難民の子供たちは、来日する前までには公教育を受けることができなかったりする場合もありますので、日本に来て中学校または小学校などに通っているときに学習面でも困ったりすることもありますので、継続的な支援も必要だと思います。そのような支援をしてくださる、さぽうと21のような機関の拡大も必要だと思っています。そして、定住先地域の確定時期を早めることも役に立つのではないかと思います。これは、移住先での教室で使われている方言などに早めに慣れさせることのメリットもあります。私のように教室での内容などを理解することにも役に立つと思います。そして、自分の日本語や教科学習のレベルなどの判定、レベルがどのぐらいなのかの判定も必要ではないかと思います。こちらは自分の成長などを可視化することもできるとも思います。そして最後に、定住先選定時の学習環境への配慮も必要だと思います。私たちの家族は定住先に移動したんですけれども、その定住先の周辺では夜間中学校がなかったため、私の兄弟は家と約2時間ほど離れた場所の夜間中学校に通っていました。なので、定住する前の、地域の夜間中学校の有無などの確認も必要ではないかと思いました。
 最後に、皆様の支援に心から感謝しています。御清聴ありがとうございました。
 
○西原座長
 ありがとうございました。本当に貴重な御発表を聞かせていただきました。ありがとうございました。
 それでは、最後に、桃山学院教育大学人間教育学部人間教育学科の准教授でいらっしゃるオチャンテ・村井・ロサ・メルセデス委員より御発表をいただきます。オチャンテ様、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○オチャンテ委員
 よろしくお願いします。日本語の元学習者としての意見を述べさせていただきます。
 私はオチャンテ・村井・ロサ・メルセデスで、日系4世のペルー人です。96年の12月に来日して、もう滞在歴は28年、人生の半分以上日本で暮らしています。全ての生活の基盤が日本で整っています。地元は三重県の伊賀市です。日本に来てからすぐこの伊賀市に在住するようになりました。割と90年代から多くのブラジル・ペルー人が、来日するような地域、外国人が集住する地域でもあります。割と高校の進学率も高いと言える、特に外国にルーツのある、日本語指導が必要な子供たちの進学率も高いと言える場所であります。
 私が来日してから、97年の1月、中学3年生の3学期から日本の地元の中学校に入学することになりました。当時、15歳で、兄は16歳で学齢超過だったけれど、当時の校長先生の判断で入学を認められ、兄と一緒に中学校に通うことになりました。当時、国際教室があって、もう既に日系ブラジル・ペルー人の生徒さんがいたので、そこが初期適応教室という役割を果たしていました。ずっと国際教室に在籍して、音楽の授業、体育の授業は同級生たちと一緒に参加するというような形になりました。ですので、毎日継続的に日本語の勉強を、短期間で平仮名・片仮名を覚えて、小学1年生程度の漢字をそこで学びました。
 わずか2か月で卒業して、次に定時制高校に進学しました。平仮名・片仮名は書けたけれど、まだ来日3か月目だったので、ほぼ日本語が話せない状態であったけれど、当時の校長先生の判断で、ここも入学が認められ、兄と2人で定時制高校に入学することができました。もう既に定時制高校には同じような外国人の生徒さんもいました。ここは学習者、日本語の指導が必要な生徒さんは兄と私だけだったので、結構、私たちの力に合わせて、必要に応じて、授業内容も柔軟に変更していましたし、毎日そこもこつこつ日本語の学ぶ時間を提供されて、日本語能力試験の4級、3級、2級というような、当時は年に1回しかなかったので、そういうのを目指して、途中からやっぱり日本で大学に行きたいというような思いもあったので、それを目指しました。高校3年生に入ってから、スペイン語学科の学生が支援に入り、母語によるサポートとか通訳・翻訳の体制が整えられました。
 当時の日本語教員は日本語の専門ではなかったんです。ではなかったけれど、すごく熱意があり、いろんな教材を一から作成していました。最初は漢字の勉強ばかりしていたけれど、途中から、地域の日本語学校も通っていたので、日本語能力試験のこういった勉強をやっているよと話したら、学習の内容がそっちのほうに変えられました。割とこの初期段階の支援で、特に専門性のある、もちろん熱意のある人材による指導で、さらに早い段階で日本語で学ぶ力を獲得できたのではないかなと思います。
 私の場合だと、ペルーにいたときから結構学習する習慣ができていたし、環境も整っていました。大学に進学したいという希望も当然ありました。そのため、今の学習というのは将来につながっているんだ、今日本語を覚えないと大学に行けないということは常に頭にはありました。そういった確かな目標、モチベーションで、ずっと高いままに持っていました。そして、定時制高校ですので、いろんな課題を抱えている生徒さんもいたので、そういう周りの理解、受入れがあって、支え合う仲間が当時はできていました。
 私の定時制高校の一応生活というのは、仕事、学校、家庭で、割と周りに、例えば地域の伊賀日本語の会というボランティアの先生たちがいて、そこにいろんな生活の相談に乗ったりする先生がいましたし、スペイン語ができる日本人もいたので、いろんなことを、通訳とかしてもらったり、助けられました。あと、カトリック教会という居場所もあって、そこで同じエスニックの仲間たちと交流がありました。ですので、孤立することはなかったです。あと、音楽活動もしていたので、地域の方たちと、そういったイベントに呼ばれたりとか、家族でそのような活動もやりました。ですので、地域のボランティア・エスニックコミュニティーとの連携は常にありました。
 その後、大学に進学したけれど、大学は小規模だったので、毎週学科長との面談があったりとか、先輩の指導が入り、割と日本語も、来日4年目だったけれど、そういった支援は常にありました。ですので、何とか大学も卒業することができて、その後の進学もできました。その後、5年間、三重県の外国人児童生徒巡回相談員という仕事もして、毎日小学校、中学校を巡回して、外国につながりのある子供たちの支援に携わりました。現在は桃山学院教育大学で仕事をして、活動を続けています。
 大学生と一緒に地元の伊賀市で、子供たちの夏休み・冬休みの宿題と大学生との交流会、居場所の提供等、やっぱり地元意識をつけさせるような活動をやっています。彼らは国籍はやっぱり違うけれど、地元は伊賀市なんだというような思いをつけさせるような、伊賀で普通の日本の子供たちが知っているようなことをこういったイベントでみんなで体験をしたりしています。
 自分の体験からよかったと思う点は、まず継続的な日本語の指導の支援があったことです。あと進路支援もありました。学習言語を習得するまでのきめ細かなサポート体制が整っていましたし、そういう高度な人的資本を持っている地域のボランティア・エスニックコミュニティーからのサポートも常にあったし、自分たちからも情報を求めるようにしていました。しかし、アドバイスだけでは乗り越えられない壁というのは、やはり経済的、大学行くのにお金がかかったり、受けられる奨学金も数少なかった。当時はまだ定住者の資格を持って、永住権はなかったので、奨学金を借りるために永住の資格を取りました。ですので、いろいろ経済的な制約が当時ありました。
 研究から、いろいろ関わってきている子供たちとかでうまくいっているケースと、やはり途中、中途退学、高校の退学をする若者も少なくないわけです。やっぱり小学校、中学校では丁寧には見てもらっているけれど、特に私が関わっている子供たちは、日本で生まれている子供たちが多くて、そういう子供たちは一般入試では受かるけれど、なかなかやっぱり高校ではついていけないとか、もちろんなじめない、不登校の体験をしたり、あとはやはり高校の教育制度がまだ十分に理解されていないこともある。普通科、進学校、職業コースというのの違いが細かく分からない。保護者も分からない。特に保護者の理解、子供たち、一生懸命日本語の学習はしているけれど、保護者からしたら、なぜ成績上がらないとか、なかなかそういうところの第二言語習得の苦労というものが保護者も理解されていないというところもあります。退学の要因は一つではない。自分の将来の実現に近い高校よりもアクセスしやすい高校、すごく限られた選択の中で選ばざるを得ない状態にあります。あと、もちろん今は進路ガイダンスとか地域の同じロールモデルとの交流というのがあるけれど、やはり保護者向けのこういったロールモデル、家族の関与がとても大切だと思っているので、地域のキーパーソンを巻き込んで、こういった親の、お母さんとしてのロールモデルも提供する必要もあるのかなと思っています。そして、やはりキャリア教育を通して多様な職業に就く可能性がある。なかなかやはり、将来何になりたいと本当に具体的に描けないような子供たちも大勢いるので、そういった明確な展望とか、あと、学科が、学校の教科とかが苦手であっても、何か特技を生かし職業選択できるような情報提供とか、そういった接点づくりも必要かと思います。地元とかの仕事、職人技とか、そういう何か手仕事に就くような、大学行くから皆さんがそれで成功するわけではないので、いろんな職業選択があるということをやはり早い段階から提供しなければならないかなと思っています。
 あと、うまくいっているケースとかでは、やはり早い段階からなりたい自分、将来こうなりたいと思っている、目標設定をしている、そして、自信を持っている教科が一つでもあります。特に私が関わった子供たちは、みんな英語に自信、語学に自信がある。周りからも、すごく英語の発音がきれいとかと言われて、高校のときに英検2級を取ったりとか、力入れたりしています。あと、大学に入ってから自分の母語の大切さに気づいたという学生が多くて、第二言語として学習するようになったということを語る若者が多いんですけど、やはり学校ではなかなか、母語を使うとからかわれるとか、恥ずかしいから使わないようにしていたということをよく皆さん挙げます。ですので、やっぱりこういったバイリンガルを励ます学級の大切さ、どの言語でも価値がある、外国語教育は英語だけではないというようなことをやはり学校現場の周りの子供たちにも理解させるような活動も必要なのかなと思っています。文化・言語などの多様なリソースを持っている彼らの強みにまず気づかせる、生かせる環境を提供、そして子供たちの自尊感情を高める活動がとても重要になってきます。
 あと、やはり日本語の個別の指導の時間がすごく限られています。残念ながら、週に何回かしかないとか。なので、学級で過ごす時間が圧倒的に多いわけです。日本語教育の専門性のある人材の育成とか、やはり現場の先生とかと話をすると、なかなかそういう専門性のある先生が少ないとか、研修とかネットづくりとか、そのための予算化とか、モデル事業の制度化も求められます。あとやはり、居場所として感じられる学級・学校、受け入れられている、本来の自分が出せるような学級が、残念ながら、まだそれができていなく、国際教室に行くと本来の姿が出せるような現状はいまだにあります。あとやはり、学校現場でのやさしい日本語の研修とかの必要性もあるのではないかなと思います。やさしい日本語を授業で用いることで、授業のユニバーサルデザインにもつながり、多様な困難を抱える子供たちの授業理解にも役に立つのではないかなと思います。あとやはり、先生になってからどうしても研修が多くて大変だというようなこともあると思うので、教員養成大学からのこういった学ぶプログラムを一つ、人権意識、多文化共生、異文化理解とか、どうしても選択科目になったり、関心のある学生は取るけれど、教員になろうと思っている学生全員に受けさせる必要があるのではないかと思われます。日本語の教え方は国語教科とは違うので、先ほどもお話にもありましたが、難しいかもしれないけど、今後日本語を教科として考える必要もあるのではないか。あとは、外国人女性等が抱えている、外国人労働者が抱えている課題はどうなのかということを学べるような、こういったプログラムも必要なのかなと思います。あと、こういった登録日本語指導の資格を取得するためのインセンティブも、何か学生が感じられるようなインセンティブも必要なのかなと思います。
 まとめていくと、目標設定の早期化ですね。ロールモデルとの交流、あと保護者自身の地域のロールモデルにする――自分の保護者自身も地域のロールモデルとなっていました。保護者の相談相手にもなっていたので、やっぱりそういった立場の方たち、どこの地域にもいると思うので、そういった力を生かしていく。あと、自分の場合だと、なかなか保護者から学ぶのが難しかった日本社会の仕組みとか、生涯賃金とか、言葉遣い、マナーとかは、やはり私は支援者から学んでいました。ですので、常に相談するところがあったので、そういった場も非常に求められるのではないかなと思います。学校・管理職の理解と支援と地域のボランティアによるサポート、常に励ましてくれる周りの方たちがいることで、子供たち自身も前向きになるのではないかなと思います。いつも考えるのは、地域の取組で、環境によって進路が左右されるのではないか。自分自身も、三重県の伊賀市でなければ、同じ進路を歩むことができたのかなと思ったりします。ですので、この温度差がないように、どこの地域に行っても同じような支援体制が受けられることを非常に私は切に願っています。
 少し早口で、時間がすぐたってしまったけれど、これで一旦お話を終わりたいと思います。御清聴ありがとうございました。
 
○西原座長
 どうもありがとうございました。
 以上、4名の方から非常に密度の濃い御発表をいただきました。ありがとうございました。
 次に、議事の2として、事務局のほうから、これまでに寄せられた、過去の会議においても寄せられた御意見等についてまとめた書類を御提示いただきますので、それを聞きになって、その後、ディスカッションに移りたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 事務局の日本語教育課の石川でございます。資料2につきまして御説明させていただければと思います。
 こちらの資料2でございますけれども、昨年度に日本語教育推進基本方針のフォローアップの取りまとめを示しました第6回の日本語教育推進関係者会議から前回の第8回までのいただいた主な意見を取りまとめたものでございます。時間に限りもございますので、ここでこの資料一つ一つの御意見を御紹介するということは差し控えさせていただきますけれども、この全体の構成といたしまして、それぞれの意見を日本語教育推進基本方針の項目に沿って整理してあるものでございます。
 なお、この項目名のところに赤字で補足的に記載しているところがございますけれども、ここについては、もともと基本方針が取りまとめられました令和2年のときから現在までの間に制度的な変化等のあった部分でございまして、御意見についても多くあった部分ということでございます。そういった点について、これについての御意見というのはここに位置づけて整理しておりますということが分かりやすいように赤字で記載しておるところでございます。
 今後、基本方針の改定に向けた検討について関係省庁間で実施していくこととなりますけれども、その際には、この資料にまとめたものなど、関係者会議でいただいた御意見も参考にしながら検討を行いたいと考えているところでございます。
 事務局からの説明は以上でございます。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 これで残りの時間が1時間を切ったという状況でこれからディスカッションに入るわけでございますけれども、まず最初に、4人の方からの御発表がございましたので、その御発表の内容について、御意見、それから質問等がおありでしたら、その方々がいらっしゃるこの時間にまずそれをお受けしたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、御発表者の名前を特定なさった上で御質問、コメント等を伺いたいと思います。挙手をしていただけますでしょうか。では、田尻委員、どうぞ。
 
○田尻委員
 今日、大変貴重な御発表で、特に難民の方がこういう場に出てお話しになるというのは大変大事なことだと思います。基本的に、私の立場ですけれども、日本語教育と難民やいろんな方との関わりですと、やっぱり人権問題があって、これはオチャンテさんのところにもありましたけど、日本語能力が足りないために進路が選べないというのは避けたい。そこで、彼らの、自分たちの将来計画に役に立つための日本語の能力を伸ばすということをまず基本にしたいと私は考えておりますので、今日はそういう点で大変ありがたい発表でありました。
 それと、佐藤委員のときに、前回私がお話ししたような、日本語科という科目をつくってほしいというようなお話をしたのが今日、佐藤委員の中で重なりましたので、大変心強く感じました。基本的には難民や、留学だけではなく、日本の社会生活で生きている人たちの人生設計に関わる日本語教育という視点をぜひ形として取り入れて全体を位置づけてほしいと思っております。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございました。御意見として伺いました。
 ほかに御質問。どうぞ。
 
○ロジャーズ委員 
 皆さんの御発表、本当に興味深くお聞きしましたので、貴重な御意見をありがとうございます。
 私は、本当にずっと社員として勤めてきて、企業でずっと外国人として勤めてきたところから、府中テンパールの松本さんにお聞きしたいと思います。本当にすごくベトナムに関しても、そこまでの案内の支援もなさっていることは少し驚きまして、すごく良いところで、そこまでのいろんな支援、あと経済的な支援、車で乗せていただくとか、そのようなことも行われたことは非常に重要だと思いますので、やっぱり課題としては、経済的な御支援と、あとは、私は一番気になっているのは、商社とか製造業、メーカーさんには、質が高い日本語をやっぱり皆さん学んでほしいんですけれども、実際仕事できるレベルまで応援しなくちゃいけないから、どこまでのレベルが必要なのか、あとは来日してからもっと応援できる形とか、そのようなところについては御意見があればぜひお聞きしたいと思いました。
 
○西原座長
 では、どうぞ、お答えいただけますでしょうか。
 
○府中テンパール
 ありがとうございます。どこまでのレベルがないと仕事が難しいかというのは正直明確には申しあげられませんが、できれば、日本語能力試験で申しますとN3ぐらいのレベルがあれば比較的簡単な日本語でのコミュニケーションが取りやすいといったところはあるかと思います。ただ、そこに満たない者についても、実際に身振りや物を持って作り方を教えてあげれば十分伝わりますので、N3レベルがないとどうにもならないというようなことは全くございません。
 
○西原座長
 よろしゅうございますでしょうか。
 
○ロジャーズ委員
 はい。
 
○西原座長
 企業さんによっても、それから職種によってもいろいろなレベルがあるし、専門用語等のこともあって、なかなか一つの答えというのはいただけないかと思いますけれども、今、N3というキーワードが出てきましたけれども、大体、四ツ谷委員、N3というのはCEFRでいうと。
 
○四ツ谷委員
 凡そ、B1レベル程度と思われます。
 
○西原座長
 B1ぐらいですよね。そうしますと、世界的にもB1というのは、労働ビザをもらうための条件になっていたりする国もあり、N3イコールB1としたとして、そのくらいが働けるレベルとされていることが多いと、そういうことでございましょうか。ありがとうございます。
 ほかに御質問。どうぞ、高橋委員。
 
○高橋委員
 府中テンパールさんに2点お伺いしたいと思いますけれども、1点は、日本語ですけれども、技能実習の段階では監理団体もありますけれども、特定1号になった途端に制度的な支援なくなりますよね。2号に移行しようとすると、日本語の壁、学習の壁みたいなものがあると思います。そろそろ2号、適齢期の方もいらっしゃると思うんですけれども、どうされているのか。試験に受かる程度まで自社で教育されているのか、それともやっぱり外部の機関が必要なのかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
 それから、2点目は定着率のお話です。これ、もう日本は人手不足でもあって、どうしても都会へ流出しがちですけれども、御社から見て、どういう支援があったら定着ができるようになる。例えば生活支援、住宅支援ですとか、何か自治体との連携なんかも必要に思うんですけれども、何かそこで、これはというものがあれば、挙げていただければと思うんですけれども。
 
○西原座長
 ありがとうございました。では、まず1号から2号への問題、お願いします。
 
○府中テンパール
 そうですね。現時点では特定技能1号から2号へ移行する際に日本語能力試験の要件はないので、そこまで問題は感じておりませんが、製造業においてはビジネス・キャリア検定3級という試験と特定技能2号評価試験、こちらは日本人が受検しても50%ぐらいの合格率と非常に難しい問題であると感じております。実際に10年ぐらい経験した者が教えて受検しています。
 
○西原座長
 あと、定着の問題ですが、第2の質問。
 
○府中テンパール
 そうですね。定着の問題についても、転職する理由の本音の部分は、賃金の部分ではないかと感じております。広島の地域と大阪、東京といった賃金の部分では違いもあります。だからといって、広島にある我々の会社がそれだけの、大阪、東京を上回るような賃金というのはなかなか難しい状況があるので、今やっているサポート、日本語のサポートだとか、いろいろなイベントだとか、そういったところで会社に愛着を感じてもらって、少しでも長く、弊社のほうに定着してもらいたいという思いは正直あります。
 
○高橋委員
 すみません。ちょっといいですか。
 
○西原座長
 はい。
 
○高橋委員
 ビジネス・キャリアの形成、1番目ですけれども、それは外部の機関とかで学ぶとかというチャンスはあるんでしょうか。
 
○府中テンパール
 いえ。外部の機関などで学ぶことについて事態を考えたことはなかったです。自社の経験の高い者が、ある教科書を基に1対1で教えている状況です。
 
○高橋委員
 ありがとうございます。
 
○西原座長
 育成就労について、有識者会議ができる、できたという報道がありましたけれども、その制度が始まると、またちょっと別の側面があるのかもしれませんですね。
 
○高橋委員
 そうですね。
 
○西原座長
 ほかに御質問いかがでしょうか。松田委員、どうぞ。
 
○松田委員
 意見はまだですよね。質問ですか。
 
○西原座長
 御質問でも御意見でも結構です。
 
○松田委員
 分かりました。意見のほうで申し述べさせていただきます。
 大きく2点あるんですけれども、一つ、今回の第三国の難民の方のチャレンジというか、生き方を聞けて、とてもよかったと思います。やはり難民特有の問題があるということを、それはやっぱり言葉だけではなくて、教科学習といったことにもハードルの高さがあるということで、やはり、日本語教育なんですけれども、日本語教育の中で教科学習支援もともに厚く支援ができるような体制づくりがあるといいなと思います。さぽうと21さんのような団体がこれからもたくさんあるといいというのは本当におっしゃるとおりだと思うんですけれども、そういった団体に対する定期的な支援といったものがあると、安定的にサポートが得られるのかなと思いますし、やはり夜間学校、夜間中学の存在もとても大きいので、こちらも手厚く支援されるとよいと思います。
 あともう一点は、テンパールさんの従業員の方が日本語教育をされているというのがとてもすばらしいなと思いました。やはり身近で共に生きる人がその共に生きる人を支えていく、そういったことが自然にできてくるというのがやっぱり理想かなと思いますし、また、こういった動きが、点で動くんじゃなくて、連動していくととてもいいのではないかなと思います。連動の在り方はいろいろあると思うんですけど、例えば、その地域にある小学校にいるベトナムのお子さんたちの教科学習支援に技能実習の方も関わっていくとか、そういった、技能実習と子供の日本語教育が別に動いていることではなくて、恐らく散在地域にあると思いますので、散在地域にある技能実習の方が子供の教育にも関わるというようなことになっていくとまたよくなるのかなと思います。それに絡めて、やはり自尊感情という話もとても大事な話で、オチャンテ委員がおっしゃったと思うんですけど、居場所のなさとか承認されない気持ちといったものは技能実習の方も地域にいる子供もいろんな点で持っていると思うので、そういったことが承認され合う機会にもなるんじゃないのかなと思いました。
 以上です。
 
○西原座長
 最後のところは受入社会の問題ということですよね。
 
○松田委員
 そうですね。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 ほかに御意見ございますでしょうか。どうぞ、森下委員。
 
○森下委員
 今日は大変貴重なお話をお聞かせいただき、発表者の皆様ありがとうございました。
 オチャンテ委員の発表の、共に学べる重要性というお話の中の学校現場でのやさしい日本語研修の必要性という箇所について、私も非常に重要なことだと思いました。特に、やさしい日本語というのは、外国人児童だけでなく、多様な児童とのコミュニケーションとしても有用だという御意見もとても大事なところだと思いました。共に学んでいく環境として、やさしい日本語研修というのは学校現場でもとても大事なことだと思っていますし、その研修は、学校の教職員の方だけでなくて、日本人児童とその保護者の方にも実施していただくとより良いのではないかと思っております。多様性を受け入れるマインドとやさしい日本語に変換するという方法を小さいうちから学ぶことは非常に重要だと思っております。この取組は、外国人児童だけでなくて、外国人児童の保護者の方に対しても非常に有効だと思っております。例えば学校でのお便りとか書類などは非常に読みにくく、理解ができず、子供が1人だけ提出できないものがあったり、忘れ物があったり、保護者同士の会話についていけないなど、非常に困っているという話をよくお聞きします。現在、外国人材が多い集住地域では行政を中心に積極的にやさしい日本語を取り入れていらっしゃいますが、先ほど佐藤委員がおっしゃっていたように、外国人児童は散在しているということもございますので、そういう集住地区でない学校現場においても、外国人児童やその保護者が日本語を勉強するのと同時に、受け入れる日本人側も寄り添う努力をしていく必要があるのではないかと思っております。私は日本語学校を運営しており、もちろん留学生を含め、日本語教育を必要とする方への日本語教育が第1の目的ではあるのですが、多文化共生社会を受け入れる日本人側の環境を醸成していくということも同時にとても大事なことだと思っております。その一環で、やさしい日本語の研修を弊校で取り組んでおりますが、自治体、大学高校、企業から年々研修依頼も増えてきております。多文化共生社会の中で、企業、地域、学校、いろいろなところで、私たち日本人側も寄り添う気持ちとともにそういった受入体制を作っていくことが、今日のお話を聞いて改めて必要だと感じました。ありがとうございました。
 
○西原座長
 ありがとうございました。やはり受入社会の問題という、これは本当に根本的に大切なことだとお聞きいたしました。ありがとうございました。
 そろそろ次の総合的なところに移りたいのですけれども、ぜひ質問を今、御発表についての御質問をぜひという方はどうぞ挙手をお願いいたします。では、もし後で思い出されましたら、後でおっしゃっていただいてもいいのですけれども。伊東先生。
 
○伊東座長代理
 よろしいですか。
 
○西原座長 
 はい、どうぞ。
 
○伊東座長代理
 先ほどの府中テンパールの松本さんに最後お聞きしたいことなんですけれども、今回の日本語教育支援に関しては、いわゆる日本語教育の専門家の支援なく、全ていわゆる社内で対応されたと理解してよろしいでしょうか。
 
○府中テンパール
 はい。社内で全て、専門家のお力を借りることなく対応しております。
 
○伊東座長代理
 その中で課題、問題はございませんでしたか。
 
○府中テンパール
 はい。問題や課題はあるかと思います。正しい日本語教育という面ではやはり劣っていると思いますので、インターネットの力を借りながらだとか、本当に手探りでやっているというのが正直なところです。
 
○伊東座長代理
 分かりました。どうもありがとうございました。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 では、御発表に関する質問はこれで一旦打ち切らせていただき、先ほど事務局のほうから御発表が、御説明がありました、これまでに寄せられた意見等についてというところを御覧いただき、それについては御質問というよりはコメントということになろうかと思いますけども、御意見がありましたら次々にいただきたいと思うのですけれども、もし皆さんが集中してしまうと時間が足りなくなるかと思いますが、1人二、三分という下で、この間とは逆に、あいうえお順の後ろのほうから御意見を伺っていきたいと思うのですけれども、まず四ツ谷委員、いかがですか。
 
○四ツ谷委員
 そうですね、海外における日本語教育と今日佐藤委員から御発表ありましたけれども、海外に在留している邦人の子等に対する日本語教育の部分につきましては、これまで様々な委員の方から御意見をいただいて、課題等を網羅的に挙げていただいているかなと思っております。
 
○西原座長
 海外におけるというのは7項目になる。
 
○四ツ谷委員
 そうですね。すみません。3ページ目に挙げられている点です。7.
と8.の部分になりますけれども、これにつきましては、海外における日本語教育の抱えている課題といった点について問題点が複数挙げられておりまして、特に足りない部分はないかと思いますが、実際のところ、海外における日本語教育は国や地域ごとによって抱えている課題とか問題点が異なっており、例えば中等教育の学習者が多いのかとか、あるいは成人が多いのかとか、そういった、それぞれの国によって必要とされる支援とか、やらなければいけないことというのが様々ではありますけれども、大体ここに書いていただいているようなポイントでカバーされておりますので、ここにあるポイントを軸に、それぞれの国・地域において必要とされるような支援をしていくということが肝要なのではないかと思っております。
 あと、8.ですけれども、これにつきましては、いわゆる継承日本語教育ですが、場所の確保が課題という点だけ挙げられていますが、今日、佐藤委員から、継承日本語教育、日本につながる子供たちの日本語教育の課題について分かりやすく整理していただきましたので、その点もここに盛り込んでいただければと思います。
 
○西原座長
 そうでございますね。これは今までということでございますので、今日の部分をまた総合的に加えたりするということはこれから事務局がしてくださることかと思っております。
 
○四ツ谷委員
 分かりました。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 では、森下委員、いかがでしょうか。今度、こちらのほうの。
 
○森下委員
 はい。私が7月に発表させていただいた内容を項目に分けて盛り込んでいただいて、ありがとうございます。一つ、どういうふうに整理されているかというところで質問です。4番の、育成就労等の日本語能力に係る制度設計においては、日本語教育の専門家の意見を踏まえるとともに、試験を要件化するだけでなく入国後の日本語能力向上のための体制を含む仕組みとすべきというところと、あと、後ろのほうに、認定日本語教育機関を活用するというところに同じ内容があるのですが。
 
○西原座長
 10ポツのところ。
 
○森下委員
 そうです。10のところに、日本語教員の処遇改善のため、特に育成就労・特定技能制度においては、認定日本語教育機関を活用するとともに、日本語教育に係る適正な対価が支払われるようにすべきというところがあって、この2つの項目は、ニュアンスがちょっとずつ違う感じがするのですけど、これは並列しているようなイメージなのでしょうか。
 
○西原座長
 後ほど整理していただくという御要望というふうに伺ってよろしいでしょうか。
 
○森下委員
 そうですね、はい。
 
○西原座長
 複数のところに文言が出てくるけれども、ニュアンスが違うということで。
 
○森下委員
 そうですね。
 
○西原座長 
 それは事務局、よろしゅうございますか。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 そうですね。重なるような内容もございますので、項目ごとにいろいろある意見を集約していく中で、御趣旨としては恐らく、重なりながらも、認定機関に重点を置いた書き方のものを認定機関のほうに分類して、育成就労に軸を置いた書き方のものを便宜上分類しておりますけれども、実際、中身については重なる部分ですとかというのはあるものと認識しております。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 では、松田委員、よろしくお願いします。
 
○松田委員 
 2点申し上げます。
 1点目は総論なんですけれども、先ほど西原委員長もおっしゃってくださった、日本の社会の問題ですねという、ホスト側も日本語教育の対象にあるというようなことが、だから、社会の全体的なリテラシーを、共生リテラシーを育むというようなことも方向性として何か明確に書かれると良いのかなというふうに思いましたが。
 
○西原座長 
 分かりました。それ、よろしゅうございますか。はい。
 
○松田委員 
 もう一点は、海外における外国人等に対する日本語教育なんですけれども、今聞いている限りでは、いろんな世界情勢や経済情勢の変化によって、日本語教育の世界的な人気度が落ちてきている国が幾つかあると聞いています。例えばベトナム、そしてオーストラリアなども日本語教育が大学の中で科目からなくなってしまうというようなことがあるそうなんですけど、そういったときに国として少し、高等教育機関の日本語科などの支えもあってもいいのかなと思います。
 
○西原座長 
 分かりました。これは海外というところに重点的に入っているというわけではないかもしれないけれども、今後そこのところに加えられていくべき項目があるだろうと、そういうことでございますね。
 
○松田委員 
 そうですね、はい。
 
○西原座長 
 国際交流基金は最近、新しい調査結果を出されて。
 
○四ツ谷委員 
 今、調査中です。今年度が調査の年ですので、来年、結果を公表する予定です。そこで高等教育機関における日本語教育がどうなっているのか、ある程度見えてくるかもしれません。
 
○西原座長
 そうですね。ありがとうございます。
 
○松田委員
 以上です。
 
○西原座長
 では、福島委員、オンラインでいらっしゃいますが。
 
○福島委員
 福島です。
 私のところは総論のところですかね。1番の総論のところ、1番で、日本語教育を共生社会の実現という大きな目的に位置づけるというところです。本日のお話が、佐藤委員、オチャンテ委員、難民の方のお話が教育に関わることでしたので、少し今までの議論からはみ出るというか、教育政策の話になったなというのが非常に印象的で、田尻委員もおっしゃったように、権利に関わる、教育を受ける権利というのがあって、日本語教育はそれを保障するための手段の一つになるなと思いました。ちょっと質問をという、先ほどの話で、委員の方に質問というわけじゃなくて、もしかしたら文部科学省のほうに質問なのかもしれませんが、例えば教育を受ける権利というのは教育政策に入ると思うんですが、その中に日本語を教えるという手段が一つあるというのは分かりますけど、欧米各国では、多言語主義とか複言語主義とかバイリンガリズムとか、日本語だけではなかなかやはり、オチャンテ委員がおっしゃったように、ついていけないというのがあって、多言語の支援というのはあると思うんですが、それは教育政策のほうである種担保されていて、手段の一つとして私たちがこの日本語教育推進会議で日本語の議論をしているというような位置づけでいいのかなというのが一つ質問となりますが、いかがですか。
 
○西原座長
 19年に出された法律の中で既に、日本語を母語としない子供たちというか、日本語を母語としない家庭のその家庭における言語に注目するということが実はもう書いてあるんです。そのことについて、19年の法律には書いてあるけれども、具体的な何がなされるかということにはなっていないというのが現実かと思いますけれども、事務局、それ等について何か補足なさることがありますか。ただいまの御意見について。
 
○中野国際教育課長
 国際教育課の中野と申します。
 明確にお答えするのがなかなか難しい御質問かなと思ってお聞きしておりました。先生おっしゃる教育政策というのを学校教育と置き換えた場合なんですけれども、外国人あるいは日本語ができない方であっても公教育を保障するということで今受け入れていると。その中で、やはり日本の学校での教育というのが日本語で、日本語の教科書で、日本語でできている学習指導要領に基づいてなされているということから、手段として日本語支援、指導を行っているというのが現状かと思います。もちろん学習指導要領等でも母語・母文化の尊重という精神が出てきてはおりますけれども、現実的に母語だけで指導要領の求めるようなレベルの教育ができるのかということはまた別の問題かと思います。実際、現場のほうで、ここもすごく議論が分かれるところだと思いますけれども、サブ的に翻訳ソフトを使うとか、そういったことなどは行われているものと承知しておりますが、非常に難しい問題で、議論が必要なことかなと思います。
 
○西原座長
 そうですよね。カミンズ氏が言っていることなのですけれども、カナダの言語教育専門家、カミンズという人がいるんですが、その人は、もしその当該の国の試験でできなければ、その子の母語で同じことを聞いてごらん。それでできるんなら、その子はできるんだよとおっしゃっているんです。そこら辺のところが日本の教育現場ではなかなか、日本人教師自身の能力の不足もあって、それから、すぐに翻訳ソフトみたいなものが使えないというような言語もあるんですけれども、本来、母語で知っていることが例えば日本語ではチェックしてもらえないという状況というのは、これは大きな問題ではあるわけですよね。ありがとうございます。
 
○福島委員
 そういった多言語支援というものも議論されている。元に戻すと、そういった大きな目的の中に明確に位置づけるということなので、その辺の教育政策とか、範囲みたいなものもうまく書いてあると、どの範囲での日本語教育政策だというのが分かっていいのかなと思います。
 
○西原座長
 そうですね。これは日本語教育推進関係者会議でございますので、中心となるのは日本語教育ということになろうかと思いますけれども、多文化共生ですとか、もう少し高次の目標というか、そういうことについても言及が、全体的なところにはあったほうがいいと、そういうことかもしれませんですね。
 浜田委員はいらっしゃっていますか。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 いらっしゃっていないので。
 
○西原座長
 分かりました。
 では、西口委員、よろしくお願いします。
 
○西口委員
 ありがとうございます。貴重な報告、ありがとうございました。私のほうからは4番と3番関連で少し意見を述べたいと思います。
 まず、育成就労制度が間もなく始まるわけですけれども、僕は先ほどの冒頭のテンパールさんの報告をすごく興味深く拝聴しました。といいますのは、テンパールさんの場合は結局オン・ザ・ジョブという形で日本語の支援、それから、さらには日本語能力試験の受験のための支援ということを社員の方がサポートするという形でなさっていて、それは具体的な仕事の現場のことも聞いて教えてもらえるという体制もできるし、具体的な同僚の方との人間関係もできていくということで、これは社長さんの見識だと思うんですけれども、外国人のそういう方、人材を受け入れて、会社を元気にしよう、もっと楽しい会社にしようというような、そういう思想がおありなのかなと思っています。そういう形での日本語支援というのもぜひ僕は残していただきたいなと思っています。テンパールさんの報告の最後のところに、自社による日本語教育の取組に対しても評価・推進していただきたいということが書いてあって、これが印象的なんです。つまり、育成就労の制度ができた場合に、外国人の方は日本語能力試験に合格しないと特定に移動できないとか、日本語指導は専門の日本語――あれ、どうなっていましたっけね。登録日本語教員でないといけないとか、認定日本語教育でやらないといけないとか、そういうのがあったんですかね。とにかく、社内、OJTでの形の日本語サポートというのも評価するというのが大事かなというのが私の考えです。
 それからもう一つ、急いで、3番に行きますけれども、3番に関して、僕自身は教員養成とも絡んで、教員養成課程で勉強した学生のたしか5%ぐらいしか卒業時に日本語教育に進んでいないという、この状況が日本語人材が増えていかない大きな問題になっていると思うんです。そのことを考えると、やはり認定された日本語学校、いわゆる認定日本語教育機関、そこのところの教育及び待遇の改善というんですかね、そういうことをやらないと、結局、養成しても若い人たちが日本語教育に入らないという状況がありますので、そこのところに関しては文科省さんの来年度の予算のところに、たしか受入企業と連携して教育あるいは実際の運営を検討していくみたいな、そういう項目があったのかなと思いますけれども、この2点について意見を申し上げました。よろしくお願いします。
 
○西原座長
 ありがとうございました。今度の認定制度の中で、就労及び生活に関して機関が認定されるということがあるわけでございますけれども、就労というものの中に実は企業は入っていないんですよね。企業の中で日本語教育をしているというときに、その企業を就労の教育機関として認定することにはなっていないので、そこら辺のところが引き続き注意していくべき課題になっていくのかなというような、そういう感想もあるかと思います。
 田尻委員、先ほどおっしゃいましたけど、何かまたほかのことでコメントがございますか。
 
○田尻委員
 すみません、時間を取って。ちょっと申し上げたいことがありますので、すみません、4番のほうの外国人等に……。
 
○西原座長
 被用者に対する日本語教育、4番。
 
○田尻委員
 はい。丸四つ目の、多分、諸外国について、これ、たしか、発言したのは私だけだと思うんですが、韓国の雇用許可制の話をして、「諸外国を参考」は正しいんですけれども、ヨーロッパは今、移民関係はかなり厳しい状況になってきています。逆に韓国の雇用許可制、問題はあるんですけれども、一番参考になるんじゃないかというので、せめて、「韓国の雇用許可制などを含めて諸外国の」ぐらいは書いてほしいなというのがちょっとありました。
 
○西原座長
 4番、4ポツでございますか。4ポツ、外国人等である被用者に対する……。
 
○田尻委員
 はい。4ポツの、諸外国の制度を参考にの前に、前に私が話したのは、韓国の雇用許可制の話をしたので、諸外国と言って、広く言って、今、ヨーロッパの場合、ドイツもフランスもちょっと、かなり移民問題厳しい状況です。今後の状況が分かりませんので、今のところ一番参考になるのはやっぱり韓国の雇用許可制なので、と私は考えているので。
 
○西原座長
 分かりました。
 
○田尻委員
 意見が出たとすると、韓国の雇用許可制などというのをせめて入れていただかないと、「諸外国の」というのはちょっと今、会議での意見としては合わないかなという感じがします。
 
○西原座長
 では、それは御参考にさせていただくということで。
 
○田尻委員
 それから、たしか基金について私は、もっと予算をもらえということをたくさん書いたんですが、ここではあまり書いていません。特に外国人のものに対して、日本語教育についての予算は随分減っていますので、やっぱり体制維持が大事です。日本語基礎テストにしてもたくさんの人が必要なので、やっぱり予算が必要です。一時期は孔子学院と競り合うとか言っていたんですが、最近それは言わなくなったので、やっぱりこれはやってほしいと思います。
 
○西原座長
 応援演説ですね。
 
○田尻委員
 はい。

○西原座長
 四ツ谷さんがにっこりしていらっしゃいます。
 
○田尻委員
 それで、大事なものが、前回ちょっと変わったのは、補正予算で、さっきちょっと出たんですが、誤解を招くので説明します。認定教育機関についてはある程度支援する方向が補正予算で出たんですよね。そうすると、今度、登録日本語教員のほうの支援もちょっとしてほしい。特に大学のほうの教員養成課程がやっぱり早くきちっと、つまり、これは高校生が次に大学に入ったときに、そこで日本教師の免許を取れるかどうかに関わるので、大学のほうは早めに申請するというのが当たり前というような雰囲気になるようなもの、ないしは、補正予算でやったように、認定日本語教育機関にはそれなりの支援があるんだったら、先に登録日本語教師養成機関のもっと大学にはこういう支援があるとかいうこともインセンティブをつければいいのかなと思います。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 
○田尻委員
 それと、もう一点だけ、すみません。さっきちょっと出たんですけど、高橋委員がいらっしゃるので、今度、特定技能制度と育成就労制度の運用に関する有識者会議が来年の1月に始まるんですが、これに日本語教育の専門家がぜひ入ってほしいなと私は、ここで言ってもどうなるか分かりませんが、外務省なんかもこの会議に入っているので、この分にぜひその部分を入れていただきたいというのが希望です。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 次に高橋委員が名簿で来るんですが、いかがでございましょうか。
 
○高橋委員
 新しい会議立ち上がって、そのときに、日本語の問題というのは非常に大きな問題なので、議論はしないといけないと思いますが、それもあって私はここにいるんだと思うんですけれども、専門家をお呼びするのかどうかはちょっとまだ、少し検討させていただければと思います。
 私から2点申し上げたいと思います。
 まず1点目は、4ポツの被用者の日本語教育ですが、ここで、「育成就労制度等における」ということで「等」となっていまして、この「等」の意味は、ここには特定技能も入るということなのかなとは思うんですが、ただ、今回、特定技能2号も日本語の試験の要件化がされているので、私は特定技能1号になってからの被用者の日本語教育が手薄になることが非常に心配でして、そういう意味では、「等」としないで、育成就労制度、それから特定技能と、ちゃんと抜き出して書いていただいて、そっちも大事なんだぞということを忘れないようにしていただきたいなと思います。
 それから、2点目は11ポツで、日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等となっていますが、この中の中身を一つ一つ、私の考えもそうですし、皆さんおっしゃったこともそうなんですが、質の問題というのは確かにあります。同時に教員の不足ということも非常に重要な問題だと思います。そのことも何度も書かれていますし、そもそも養成課程に入っても4.7%しか教師にならないということなので、要員の確保とか人材不足への対応とかということをきちっと表題のところに入れていただきたいなと、「等」にしないでほしいなと思います。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 続きまして、杉山委員、どうぞ。
 
○杉山委員
 杉山です。ありがとうございます。これは何か付け足したりしてもいいという感じでいいんですかね。
 
○西原座長
 はい。御意見を伺えればと思います。
 
○杉山委員
 今の高橋委員のおっしゃった育成就労と特定技能というところなんですけれども、外国人受入れにおいて、入国時の要件とか何かに移行するための要件で日本語能力に関して決まりがあるのは、やはり育成就労と特定技能、今は技能実習ですけれども、その面で言うと、いわゆる技術・人文知識・国際業務で入ってこられる方に関しては何も日本語能力に関する決まりがないわけでして、入国してから何をしなければいけないということもありませんし、入国するための要件もございませんので、実はこの高度人材の方のほうがむしろある意味ノーマークといった状況なのかなと思います。なので、ここの部分の方々が、前回と同じ話になってしまうんですけれども、同じ会社の中にいる社員でも、在留資格が異なると、支援が受けられたり受けられなかったりするというような状況が起きやすいので、高度人材の方々に関しても何らかの支援策というのを、これは必要に応じてということだと思いますけれども、場合によっては社内で英語でコミュニケーションが取れるケースというのは多々ありますが、必ずしもそういう会社ばかりではございませんので、その辺りも支援の対象として含めることを検討したほうがいいんじゃないかなというのが私の意見です。
 以上です。
 
○西原座長
 それは国としてということでございますか。
 
○杉山委員
 国としてということですね。はい。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 では、よろしゅうございましょうか。ロジャーズ委員。
 
○ロジャーズ委員
 ありがとうございます。私、誰もまだおっしゃっていないことについてコメントしたいと思います。7のところなんですけど、海外における外国人に対する日本語教育なんですけれども、前も府中テンパールさんの話も出てきたんですけれども、結局、今、日本文化のブームになっているから、それのすごくアピールのために無料でもっと案内で、アニメもそうなんですけど、コンテンツをやっぱりもっと増やすべきではないかなとすごく感じておりますし、あとは、2ポツのところで最後に書いてあったんですけれども、日本語教師だけではなく、日本研究者の育成支援などが必要ということはすごく大事ではないかなと思います。企業さんの中でもいろいろやっていらっしゃるし、ボランティアをやっぱりもっと増やすような活動がもっと重要ではないかなと思います。質のところもありますけれども、もともと関心があるようにしておくべきではないかなと思います。
 あと、二つのもっと包括的なところなんですけれども、支援の話はすごく多くて、いろんな生活の支援とか。でも、経済的な支援がたくさん今日の御報告の中で出てきて、だから、企業さんのほうでボランティアでいろんな負担もしているし、試験の金額も結構相当、やっぱり大きくなっているんです。あとは、今、円安で、結局、賃金がそんなに高くないから、日本をあんまり狙っていない労働者も結構増えているのではないかなと思います。アジアは特に。だから、それをもっとやっぱり絞って、どういうところが一番支援が重要なのか、国の分が今どうなっているかとか、それがちょっと、今のところ、見て、そんなに課題としてはあまり出てこないんじゃないかなということで、改めて御確認させていただきたいと思います。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございました。重要なことですよね。
 佐藤郡衛委員、いかがでしょうか。
 
○佐藤委員
 2番についてですが、タイトルに幼児と入っています。しかし、幼児の施策はほとんど入っていません。幼児について何か書き加える必要があるんじゃないかというのが1点目です。
 2点目は、これも2番ですが、今日は触れませんでしたが、受入れ側が共に学ぶということの意義について書き加える必要があると思います。共生や人権の尊重といったような視点から、外国にルーツのある子どもの教育の理念や日本語教育の在り方について書き加えることが必要だと思いました。
 3点目は、8番の箇所が、ほかのところと違って、あまりにも茫漠としています。今日話をしたように、継承語についても場だけでは、先ほど四ツ谷委員からの指摘にもあったように、具体的な施策を挙げていただきたいと思います。また、日本人学校、補習授業校の日本語教育も課題ですので、ぜひここに加えていただければありがたいなと思いました。
 以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 小池委員はいかがでしょうか。
 
○小池委員
 私は6の地域における教育の部分で少しお話をします。本日の発表で、企業とか学校、地域における大変有意義なお話を伺うことができました。あわせて、家族や子供を含めて幅広い対象の方に対して生活の基礎の部分の支援を担う自治体、地域の役割は大きいものがあると思っております。日頃、地域において、少し強い意見のある点について二つちょっと述べさせていただきたいと思います。
 一つは財源の確保で、地域教育の総合的な体制づくり推進の補助金ですけど、今年度は申請団体が増えていたということで、当初の見積りから二、三割減額になっているというような話を多く聞いております。この点については、前回、私、欠席して申し訳なかったんですけれども、文科省さんのほうから来年度は増額要求しているというような話があって、大変ありがたく思っていますけれども、今後とも申請団体とか事業規模が増えていくことが予想されますので、ぜひ地域の実際の事業ニーズに応じた予算の確保をしていただくようお願いします。これが地域の施策を進めるもとになっていますので、よろしくお願いしますというのが1点。
 もう一つが人材の確保ですけれども、地域でもいろいろ人材確保策をやっていますが、一方で、十分にマンパワーが整わなくて、ボランティアの個人的な取組や負担に頼らざるを得ない場合がまだ多いと聞いています。これについても国のほうの支援、体制整備をお願いしたいんですけれども、それとともに、自治体の方と意見交換すると、日本語教育に携わる人材が地域に定着するには、そこで専門職として経済的にも生活が成り立つような、そういった環境が必要だというお話をお伺いします。これは今すぐできるような話でもないんでしょうけど、今後、制度の構築・運用を行っていく中で、ぜひこうした視点を持って進めていただければと思います。主な意見への取上げも検討いただければと思います。よろしくお願いします。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 では、河原委員。
 
○河原委員
 今日は貴重な発表、ありがとうございました。
 2点ありまして、資料2の10、11番のところですが、小・中学校段階から公教育において日本語教室を設置し、できれば母国語による教材の使用を含めて、広く日本語教育を受けられる機会を提供すべきだと思いました。日本語が不十分だと学力に大きく影響してしまうので、仮に小学校から中学校、中学校から高校までは進学できたとしても、そこから先がストップしてしまいます。高等教育機関進学が難しくなってしまいますと、高等教育機関を経ずに企業でキャリアを築いていくことは、産業分野にもよりますが、非常に不利になる側面があります。ですので長期にわたって日本で生活していくことを想定し、学力面での不利を生まないように、ボランティアによる日本語支援に頼るばかりでなく、小・中学校で日本語教室を広く展開することが必要であるように思いました。ただし、小・中学校単独では日本語教育を展開することは難しいと思いますので、各地の認定日本語教育機関と連携するような仕組みをつくっていただければ、認定日本語教育機関を軸とした日本語教育の充実にもつながっていくのではないかと思います。また、現在留学生が主に学んでいる日本語教育機関ですが、技能実習生、特定技能制度との関連で言えば、もっと企業と認定日本語教育機関が連携してもよいと思います。そのように、外国人の児童生徒、留学生、技能実習生などの日本語教育を認定日本語教育機関に集約していけば、授業の品質の向上や教育コンテンツの開発・充実にもつながっていくのではないかと思います。また、日本語教師の認知や社会的地位も確立していくと思いますので、大学で日本語教育を学んだ学生にとって、日本語教師が職業の一つとして定着していくと思いますし、既存の日本語教師が登録日本語教員を目指そうという動きも活発化していくと思います。もちろんそのためには、日本語教師としての資質向上を引き出す研修を各地で展開することや日本語教員試験の受験機会の整備も必要になってくると思います。
 もう一点、今日オチャンテ委員の発表を伺って思ったことですが、「ロールモデル」との交流等を通して常に目標意識を持ち続けられたことが今日のお仕事につながったと思います。そういった点では、日本特有の産業構造や企業文化、歴史、学歴が重視される企業の採用傾向などについて指導する機会、つまり、外国人子女向けのキャリア教育の機会をなるべく年齢の小さいうちから提供してあげなければならないと思いました。それは日本語教育とは別の文脈でしょうから、職業教育の専門機関である専門学校との連携も必要になってくると思います。日本語教育だけでなく、日本で生活し、仕事をしていくための自力を身につけていくために、認定日本語教育機関を中心としながら、職業教育機関である専門学校との連携も含め、外国人のお子さんたちを多面的に支援する組織や連携が必要なのだと思います。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 
○河原委員
 もう一つ、最後に、資料2の12、13番のところについても一言申し上げたいのですが。
 
○西原座長
 ちょっとまとめていただけますか。
 
○河原委員
 はい。では、「日本語教育の参照枠」は、幼児から小中高生、留学生、技能実習生も含めて日本語教育体系の軸として機能し、日本語教育を進めていけるような枠組みとなるべきで、それに準拠して一貫して用いられる統一的標準的なテキスト、教材の開発が必要だと思います。
 私からは以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございます。
 では、オチャンテ委員。
 
○オチャンテ委員
 2番目の外国人児童生徒についてなんですけど、幼保小の接続で、特に、例えば幼稚園・保育園には通っているけれども、やっぱり日本語に課題を残したまま小学校に入学している子供たちは割と少なくないんです。それで、こういう早期段階からの日本語の学習、プレスクール的な幼稚園・保育園での日本語の学習、少しでも語彙力を増やせるような活動が重要なのではないかなと思っています。
 あと、よくこれは現場から聞くんですけど、やはり小学校、中学校の先生がすごく人権意識が高いとか一生懸命やっているけれど、高校に上がってくると、やはり一般入試とかで受けている子供が多いので、あまり課題がないと感じられるような先生が多くて、まだまだそこでの研修が足りていないのかなと思ったり、そういったところに、先ほど話題に出たやさしい日本語の研修も高校の教員とかにも必要なのかなと思ったりしました。
 あと、9番目の国民の理解と関心のところなんですが、やっぱりホスト社会の理解が、地域の受入れというのは、子供であっても大人であっても非常に大きな役割を果たしているので、もう少しそこに、今2点だけしかないので、何か一つ足していくと良いのかなと思ったり、日本語学習者はどんな思いをして日本に来ているのか、そういった理解がまだまだできていないところもあるのかなと思ったりしています。
 すみません。以上です。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 では、最後に伊東委員、よろしくお願いします。
 
○伊東座長代理
 私からは1点、4の育成就労等に関することに関して、やはり試験を要件化するだけでなく、学習の機会を提供する、そのための財政的措置と人的措置を地方自治体あるいは受入企業、できれば国のいわゆる支援の下、至急体制を整えていただきたいなと思います。
 以上です。
 
○西原座長
 就労者ということですね。
 
○伊東座長代理
 そうです。
 
○西原座長
 に対する。
 
○伊東座長代理
 はい。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 
○伊東座長代理
 試験を要件化するだけでなく、学びの機会をちゃんとお金、人で措置してほしいということです。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 ちょっと過ぎてしまいましたけれども、ほぼ時間内に御意見を聞くことができました。どうもありがとうございました。それから、御発表くださった皆様方、本当に貴重な、すばらしい発表をありがとうございました。
 それでは、これで議事というところは済みましたので、次に事務局に、何かお知らせ事があれば。
 
○石川日本語教育課課長補佐
 事務局でございます。
 次回の関係者会議の日程等でございますけれども、一旦取りまとめた前回までの意見と、また本日いただきました御意見も踏まえて、参考にしながら、政府のほうで基本方針の見直しの検討等を行っていきたいと思いますので、その検討の状況を踏まえて次の日程というのも設定させていただきたいと思いますので、また追って日程については御連絡させていただきます。
 
○西原座長
 ありがとうございました。
 それでは、ちょっと時間を過ぎてしまいましたが、以上で本日の会議を終了いたします。御協力、どうもありがとうございました。