アジア太平洋地域内外における資格の承認の連携強化による新型コロナウイルス感染症との対峙

新型コロナウイルス感染症に関する東京規約の締約国による声明 (2020年11月)



教育への新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響
 新型コロナウイルス感染症パンデミックは、教育、訓練及び国際的な移動に、前例のない、広範にわたる重大な混乱を引き起こした。世界中の人々は、教育の継続性を確保し、及び質の高い成果を維持するため、技術の進歩及び柔軟な取組を用いて、遠隔の形態による学習、教授及び仕事に急速に移行している。ただし、新型コロナウイルス感染症危機において、低所得国及び低中所得国のおおよそ40%で、排除される恐れのある脆弱な学習者に対する特定の支援を提供することができておらず、高等教育を受ける機会に相当な影響が生じ、重大な課題が残されている※1。
 
 数多くの学校及び教育機関が新型コロナウイルス感染症パンデミックの影響で一時的に閉鎖された。アジア太平洋地域においては、全生徒・学生人口の85%以上を占める7億5200万人以上の学習者が影響を受けている※2。在学生及び進学予定者、卒業生、教育を提供する者及び機関、質保証機関、規制当局及び資格の承認当局のあらゆる段階の利害関係者が影響を受けている。
 
 資格の承認に関する東京規約の締約国は、教育制度の広範に及ぶ混乱に対処するために取り組んでいる※3。アジア太平洋地域のユネスコ加盟国では、混乱した授業の影響を最小限に抑えるため、大規模な遠隔教育が実施されている。新型コロナウイルス感染症の影響を緩和するためのオンライン及びブレンド型(訳注:対面とオンラインの併用。以下同じ。)学習の成功により、教育の変革は加速している。東京規約はそれ自体で、多様な学習形態に対する公平性及び透明性を有する承認を容易にすることで、教育への更なる混乱を最小限に抑えるための重要な役割を果たしている。
 
東京規約の役割及び価値
 2018年の発効以降、資格の承認に関する東京規約及びその主要な規定は、現在の状況下では更にその重要性が高まっている。東京規約は、公平性及び透明性を有する資格の承認及び非伝統的な資格取得の形態に対する承認を容易にするため、アジア太平洋地域における信頼すべき情報の共有を促進するものであり、新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みるとこれらの資格の承認は一層その関連が増している。
 
 新型コロナウイルス時代の教育では、特にオンライン又はブレンド型の学習及び教授といった非伝統的な資格取得の形態によるものを含む、学習に混乱が生じた学生及び卒業生の修学及び資格が承認を得ることを確保する必要性が強調されている。東京規約には、非伝統的な学習の承認が含まれており、学生及び卒業生の移動に対する不合理な障壁を軽減している。
 
 東京規約はその締約国が、国境を越える学生の移動を支援しながら、効果的かつ持続可能な国際連携の枠組みを通じて、資格の承認の最善の原則及び実践に向けて取り組むことを約束する。公平性及び透明性を有する資格の承認は、学生及び卒業生が更なる教育及び訓練を追求することを支援し、最終的には雇用の見通しの改善につながり、経済的及び社会的な復興の努力を支援するものとなる
 
 前例のない新型コロナウイルス感染症の影響を鑑みて、東京規約委員会は次のことを希望する。
 
1.あらゆる後退が一時的なものとなるよう、教育の継続性及び質を確保するために、パンデミックが学生及び学者にもたらす影響を理解し、及び緩和するための活動を含め、アジア太平洋地域内外において多大な時間や労力、経費等が費やされることを認識すること。
2.公平性及び透明性を有する修学及び資格の承認並びにアジア太平洋国内情報センターネットワーク(APNNICを通じた信頼すべき情報の提供を含む、この分野における連携強化を通じて、すべての学生及び卒業生への更なる混乱を最小限に抑える助けとなる東京規約の価値を強調すること。
3.難民、避難民及び難民に類する状況にある者が有する資格の承認によることを含め、最も脆弱な、国際流動性のある学生を支援すること。規約に則り、各締約国は、自国の教育制度の枠組み及び規制の中で、手続(従前の学習の承認を含む。)を作成するため、あらゆる合理的な努力を払うこと。
4.非伝統的な学習形態により得られた資格及び部分的な修学の承認を含む、新型コロナウイルス感染症の影響への対処に関連する東京規約の主要な規定を強調すること。
5.地域における質の高いオンライン及びブレンド型学習の公平な承認及び教育の発展を確保するため、学習及び教授形態の変化を踏まえること。
 
 これらの課題は、世界的なオンライン学習への大規模な転換及び質の保証の措置に関する情報提供の必要性を鑑みると非常に重要なものである。
 
連携強化
 2020年代を、国境を越える高等教育の機会が失われた10年にしてはならない。したがって我々は、資格の承認の関連において「教育2030行動枠組み」の適時かつ完全な実施を確保すると共に、資格の承認に関する東京規約の実施に注力し、投資することを約束する。新型コロナウイルス感染症パンデミックに立ち向かうため、かつ、東京規約に則り、締約国は以下のことを約束する。

・国内のすべての既存の環境及び制度並びに意思決定者の自律性を十分に尊重すると共に、オンライン及びブレンド型学習といった非伝統的な資格取得の形態によるものを含む修学及び資格について、公平性及び透明性を有する承認又は評定を受ける個人の権利を保護すること。
・締約国間、国内情報センター(NIC)間、及びAPNNICを通じて情報の共有及び提供を強化すること。APNNICは、権限のある承認当局による質の高い決定を支援することを目的として、資格及び教育制度についての信頼すべき情報の提供に貢献する地域ネットワークとなること。
・オンライン学習及び教授、質の保証の措置並びに承認の取組及び実践について最新の情報及び経験を共有すること。
資格の承認に対するより補完的な地域の取組並びに新型コロナウイルス感染症禍及びデジタル時代に適した実践を発展させることを目的として、資格、教育及び訓練制度並びに資格の承認制度における多様性への理解を深めること。
・世界規約の将来の焦点は、21世紀の地球市民をより良く支援し、及び世界的に教育制度のレジリエンスを構築するための新たなかつ革新的な教育の形態にあることを認識し、全ての加盟国に開かれた、高等教育の資格の承認に関する東京規約及び新たな世界規約への署名を他の国に奨励すること。

  ユネスコは事務局として、ユネスコ加盟国による国際的及び地域規模での対話及び連携を支援する。ユネスコは、アジア太平洋地域及び世界中の国々が今日の経験及び公約から利益を享受することが確保されるよう、規範的な行動を通じて知識及び最善の実践の共有を促進していく。
 
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※1 ユネスコ(2020)「グローバルエデュケーションモニタリングレポート2020 インクルージョンと教育~すべての人とは誰一人取り残さないこと~」
※2 ユネスコ・バンコク事務所(2020)「新型コロナウイルス感染症とその他に対応するためのユネスコ地域教育支援戦略」
※3 2020年10月現在、東京規約の締約国はオーストラリア、中国、フィジー、バチカン市国、日本、モンゴル、ニュージーランド、韓国及びトルコの9か国である。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課国際企画室

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(高等教育局高等教育企画課国際企画室)