ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループの活動実績

 

第1回ワーキング・グループ

第1回ワーキング・グループは2013年9月30日に東京で開催されました。ブルネイ,カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム,中国,韓国,日本が参加し,また,ASEAN大学連合(以下「AUN」),東南アジア教育大臣機構高等教育開発センター(以下「SEAMEO-RIHED」),ASEAN質保証ネットワーク(以下「AQAN」)及びASEAN事務局もオブザーバーとして同席しました。
この会合では,ワーキング・グループの将来の方向性について話し合われ,(1)「ASEAN+3学生交流と流動性に関するガイドライン」(以下「学生交流ガイドライン」)を2017年までに完成させること,(2)「ASEAN+3質保証専門家会合」を設置し,ASEAN+3各国の質保証機関(注)関係者や政府関係者が定期的に集まることが決定しました。

(注)高等教育機関が提供する教育の内容を評価する機関。教育の質を維持,向上させることを目的とする。日本では,文部科学大臣の認証を受けた評価機関が,高等教育機関の教育研究活動等について,評価基準に基づき認証評価を実施している。

第1回ワーキング・グループ(2013年9月30日,東京)

第1回ワーキング・グループ(2013年9月30日,東京)

第2回ワーキング・グループ

第2回ワーキング・グループの準備として,専門家会合が2014年6月25日にジャカルタで開催されました。インドネシア,マレーシア,タイ,ベトナム,韓国,日本が参加し,また,SEAMEO-RIHEDとASEAN事務局も同席しました。
この会合では,各国の優良事例が共有された後,「学生交流ガイドライン」についての意見交換が行われ,第2回ワーキング・グループで話し合われるべき事項が次のとおり取りまとめられました。

(1)ガイドラインは特定の学生交流プログラムのためのものではなく,ASEAN+3域内における全てのプログラムのためのものであること。

(2)ガイドラインの明確なビジョンや目的が定められるべきこと。

(3)スケジュール,活動の責任者を含む実施のメカニズムが定められるべきこと。

(4)バランスの取れた学生交流が促進されるべきこと。

第2回ワーキング・グループは2014年10月16日にバリで開催されました。ブルネイ,インドネシア,ラオス,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム,中国,韓国,日本が参加し,また,AUN,SEAMEO-RIHED及びASEAN事務局も同席しました。この会合では,「学生交流ガイドライン」の素案に含まれるべき要素について議論がなされ,次のとおり合意されました。

  • 目的は,アジアの学生の流動性に関する一般的かつ共通の問題を解決し,各種の学生交流プログラムが利用できるようにするためのサービスを提供し,障壁のない移動を促進すること
  •  単位互換,質保証,財政上あるいはその他の支援,モニタリングといったガイドラインに記載される全ての基準は,義務的なルールではなく,参照される基準とすべきこと

また,ワーキング・グループの設置を主導した我が国が,運営上のオーガナイザーを務めることに加えて,韓国と中国が副オーガナイザーとなることが認められました。副オーガナイザーの役割を定めるべく,運営規則の改定がなされることも決定されました。

第2回ワーキング・グループ (2014年10月16日,バリ)

第2回ワーキング・グループ (2014年10月16日,バリ)

第3回ワーキング・グループ

第3回ワーキング・グループは2015年6月11日にバンコクで開催されました。ブルネイ,カンボジア,インドネシア,ラオス,マレーシア,ミャンマー,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム,中国,韓国,日本が参加し,また,SEAMEO-RIHED及びASEAN事務局も同席しました。
この会合では,「学生交流ガイドライン」の案が了承され,これは2015年12月にバンコクで開催される「第6回ASEAN+3教育高級実務者会合」と2016年にマレーシアで開催される「第3回ASEAN+3教育大臣会合」に提出されることとなりました。
我が国は,ワーキング・グループの次の課題として,個別に留学した学生が留学先で獲得した単位が認定されない不利益をできるだけなくすことができるよう,「ASEAN+3単位互換制度の換算表を含む,留学生のための成績証明ガイドライン」(以下「留学証明ガイドライン」)を作成すること,また,この「留学証明ガイドライン」作成のための専門家会合を2016年3月に東京で開催することを提案しました。
また,第4回ワーキング・グループは,フィリピンがホスト国となり,マレーシアが議長を,副議長を我が国が務めることも認められました。

 

第3回ワーキング・グループ (2015年6月11日,バンコク)

第3回ワーキング・グループ (2015年6月11日,バンコク)

第4回ワーキング・グループ

第4回ワーキング・グループは2016年12月1日にフィリピンのセブで開催されました。インドネシア,マレーシア,フィリピン,シンガポール,タイ,ベトナム,日本が参加し,また,AUN,AQAN,SEAMEO-RIHED及びASEAN事務局も同席しました。
会合ではまず,2016年5月にマレーシアのセランゴールで開催されたASEAN+3教育大臣会合にて,「学生交流ガイドライン」が正式に承認されたことが報告され,各国の歓迎を受けました。

次に,2016年3月に東京で開催された「留学証明ガイドラインのための専門家会合」での議論を受けて我が国が作成した「留学証明ガイドライン」の草案について,活発な議論が行われ,会議後,各国が国内の高等教育関係機関と調整を進めることとなりました。また,「学生交流ガイドライン」のモニタリング方法やワーキング・グループの今後の活動内容についても意見交換が行われ,各国からの更なる意見集約を行うことが合意されました。
第5回ワーキング・グループについては,ベトナムがホスト国として2017年の開催について検討を進めることが確認されました。

 

第4回ワーキング・グループ(2016年12月1日,セブ)

 

第 4回ワーキング・グループ(2016年12月1日,セブ)

 

第5回ワーキング・グループ

第5回ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループは2017年10月20日にベトナムのホーチミンで開催されました。ASEAN10カ国と韓国,日本が参加し,また,AUN,AQAN,AQRF,SEAMEO RIHED及びASEAN事務局も同席しました。
会合では,2016年のワーキング・グループの会議で取り扱った3つの主要議題について,前回会議以降の各国からの意見集約を経て改善された草案を議論しました。特に,「留学証明ガイドライン」に関しては,各国による高等教育機関へのヒアリング結果等を踏まえて大幅な内容修正がなされた草案を再度議論し,「留学生の学修履歴のための成績証明書及び補足資料に関するガイドライン(仮称)」(以下「成績証明ガイドライン」)に名称変更がなされ,微修正を経て合意されました。「成績証明ガイドライン」は,2017年12月にバンコクで開催される「第8回ASEAN+3教育高級実務者会合」に提出され,2018年の試用期間を経て,第6回ワーキング・グループにおいて,再度議論を行うこととされました。
また,「学生交流ガイドライン」のモニタリングフォームやワーキング・グループの運営規則の改正案についても,微修正を経て合意され,「第8回ASEAN+3教育高級実務者会合」に提出される予定です。
2018年の第6回ワーキング・グループについては,ミャンマーがホスト国となり開催することが確認されました。 

 

第5回ワーキング・グループ (2017年10月20日,ホーチミン)

 第5回ワーキング・グループ (2017年10月20日,ホーチミン)

 

 

第6回ワーキング・グループ

第6回ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループは2018年8月13日,14日にミャンマーのネピドーで開催されました。ASEAN諸国と韓国,日本が参加し,また,AUN,AQAN,AQRF,SEAMEO RIHED及びASEAN事務局も同席しました。
会合では,2017年のワーキング・グループの会議で取り扱った主要議題について,前回会議以降の進捗に基づき議論を行いました。はじめに,「学生交流と流動性に関するガイドライン」に関し,学生交流数,大学間交流協定数等の調査結果を,各国が発表しました。また,モニタリング実施結果を踏まえ,モニタリングの様式が微修正されることになりました。
次に,「留学生の学修履歴のための成績証明書及び補足資料に関するガイドライン」(以下「成績証明書ガイドライン」)に関し,2018年に各国の大学で実施したトライアル(試用)の結果について,各国が発表を行いました。トライアルの結果を踏まえた議論の結果,ガイドラインは修正なく,ドラフト通りで合意され,2018年11月に開催予定の「第4回ASEAN+3教育大臣会合」での採択を見据え,2018年10月に開催予定の「第8回ASEAN+3教育高級実務者会合」に提出されることとなりました。
また,日中韓で行っている「CAMPUS Asia」事業について紹介があり,今後,本事業のASEAN地域への拡大の可能性について,引き続き議論を行っていくことが合意されました。併せて,今後のワーキング・グループの活動テーマについて,高等教育の流動性と質保証のための各大学における情報発信のあり方を取り上げることも合意されました。
2019年の第7回ワーキング・グループについては,シンガポールがホスト国となり開催することが確認されました。 

 

第6回ワーキング・グループ (2018年8月13日,14日,ネピドー)

 

 

第7回ワーキング・グループ

第7回ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループは2019年9月26日、27日にシンガポールで開催されました。ASEAN諸国と韓国、日本が参加し、また、AUN、AQAN、AQRF、SEAMEO RIHED及びASEAN事務局も同席しました。
会合では、まず、2016年に採択された「学生交流と流動性に関するガイドライン」のモニタリングと2018年に採択された「留学生の学修履歴のための成績証明書及び補足資料に関するガイドライン」の周知・活用状況について、各国から発表がありました。
次に、本ワーキング・グループのTORに関し、これまで特段規定のなかった議長・副議長の交代についてレターによる手続きを規定することで合意されました。
続いて、我が国より、キャンパス・アジアプログラムの実績と、東京で開催された第7回日中韓大学間交流・連携推進会議での議論を踏まえた今後の方向性について報告を行いました。特に、将来のアジアの協力の方向性として”Asia for All(仮称)” の概念を共有し、今後の協力について議論を継続していくこととなりました。
また、昨年の会議で今後の議論のテーマとして合意した「高等教育の流動性向上のための各大学による情報発信のあり方」については、日本から、3月に東京で開催した専門家会合の報告を行い、成果文書案、今後の行程及び各国の大学・学生等への質問票の送付とそのためのワーキング・チームの設置について提案を行いました。今後の行程について、来年秋の教育大臣会合での成果文書の採択を目標に議論を進めていく旨が合意されたほか、ワーキング・チームには、韓国、インドネシア、フィリピン、マレーシア、日本及びASEAN事務局が参加することとなりました。
最後に、2020年の第8回ワーキング・グループについては、ベトナムがホスト国となり開催することが確認されました。 

 
 

第7回ワーキング・グループ (2019年9月26日,27日,シンガポール)

 

 

第8回ワーキンググループ


第8回ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループは2020年11月12日にベトナム主催のオンライン形式にて開催されました。ASEAN諸国と韓国、中国及び日本が参加し、また、AUN、AQAN、AQRF、SEAMEO RIHED及びASEAN事務局も同席しました(計13か国5機関)。
会合では、まず、高等教育に対する新型コロナウイルス感染症の影響について、入国制限に関する最新情報、授業の実施方針(対面・遠隔等)、政府や大学による対応策、及び高等教育の国際化のニューノーマルという観点から各国が発表を行いました。
次に、「高等教育の流動性向上のための各大学による情報発信のあり方」について、我が国より、大学・学生等に対する質問票の分析結果を発表し、それを踏まえた成果文書案の修正について提案しました。今後の行程としては、成果文書案を修正した上で、各国の大学に配布してその有用性を検証し、2021年に開催予定の教育大臣会合での採択を目標に次回会合で最終合意することとなりました。
 続いて、韓国より、日中韓で実施しているキャンパス・アジアの実績とアジアに拡大する第3モードの方向性が報告され、詳細が決まり次第、ワーキング・グループに周知することとなりました。
 また、日本及び韓国より、ワーキング・グループの今後2年間の活動テーマを「質保証」に重点を置いたものとし、質保証機関との協力のもとで以下の取組を行うことが提案され、その進捗や成果をワーキング・グループに適宜報告することで合意されました。
・対面、オンライン、併用型授業の優良事例や課題に関する質保証の観点からの検討
 ・コンピテンシーや学習成果に関するフィージビリティ・スタディ(実行可能性の研究)の実施
・オンライン教育の実践や規制に関する情報交換
・「高等教育における新たなモビリティのあり方に関する共同ガイドライン」の作成
最後に、第9回ワーキング・グループについては、2021年の開催場所・時期について検討を進めることが確認されました。

 

第8回ワーキング・グループ (2020年11月12日、ベトナム主催のオンライン会合)

ASEAN+3質保証専門家会合

第1回ワーキング・グループにおいては,将来の方向性の1つとして,ASEAN+3各国の質保証機関が,学生交流や国境を越えた教育に関する意見を交換するために定期的に集まる機会を設けることが提案されました。これを受けて,「AQANラウンドテーブル会議」が,10月にホーチミンで開催され,「ASEAN+3質保証専門家会合」が発足しました。また,当該会合では,AQANのメンバーと日中韓の質保証機関が,域内の質の保証を伴った学生交流プログラムの拡大にどのように寄与することができるかについて議論する視点を持ちつつ,意見交換し,情報交換を円滑に行う場とすることが合意されました。

第1回質保証専門家会合

第1回質保証専門家会合は2014年3月6日にハノイで開催され,AQANの正会員及び準会員と日中韓の質保証機関が参加しました。
この会合では,ワーキング・グループと専門家会合との関係を定める運営規則について合意がなされ,質保証を伴う国境を越えた学生交流に関連した施策や取組について,フィリピン,タイ,韓国,日本から情報提供がなされました。
さらに,ASEAN+3各国における学生交流に関する質保証システムの情報を共有することについて合意がなされ,我が国の独立行政法人大学評価・学位授与機構(以下「NIAD-UE」)(※)がその情報収集のためのオンライン調査票を作成することが了解されました。

※2016年4月1日をもって,大学評価・学位授与機構(NIAD-UE)は,国立大学財務・経営センター(CUFM)と統合し,「大学改革支援・学位授与機構(NIAD-QE)」となりました。

第2回質保証専門家会合

第2回質保証専門家会合は2014年10月17日にバリで開催されました。AQANの正会員及び準会員と日中韓の質保証機関が参加しました。
NIAD-UEにより,学生交流に関する質保証についてオンライン調査の中間結果の報告がなされ,次の内容が共有されました。

  •  ASEAN+3諸国の質保証メカニズムは多様。学生交流に関する質保証の促進に当たっては,(1)学生交流の規模,(2)学生交流の種類,共同プログラムの様態,(3)各国政府の政策,の各視点において相違があるため,質保証機関の関心の程度は様々。
  •  学生交流が活発に行われる中において,どのような質保証の要素が重要か,また質保証専門家会合において,どのようなことが取り上げられるべきか,について継続的な議論が必要。

マレーシア,ベトナム,中国,日本が,学生交流に関するオンライン調査の結果に基づき,各国の質保証に対する考え方を紹介しました。その他の国も各国の学生交流と質保証の状況を情報共有しました。

第3回質保証専門家会合

第3回質保証専門家会合は2015年9月3日にマニラで開催されました。AQANの正会員及び準会員と日本の質保証機関が参加しました。
今後の質保証専門家会合においては,特に学生交流が活発な地域において提起された課題に焦点を置き,共同プログラムの質について課題を絞って継続的な議論が行われるべきとの結論に達しました。
また,NIAD-UEの研究者より,我が国と東アジア諸国との国際的な共同教育プログラムの質保証のためのチェックリストを作成中であるとの発表がなされました。 

4.今後の展望

ASEAN+3各国間では,将来の「アジア高等教育圏」の構築に向けた理解が徐々に共有されつつあります。こうした地域の教育圏を発展させるためには,域内の異なる仕組みや文化を認識すると同時に,広くアジア域内の国々としての共通面も理解することが重要です。今後は,ASEAN+3域内の持続的な協力体制を実現するため,形成されるガイドライン等のルールに基づいて,学生交流の促進や大学間ネットワークの拡大,さらには共同プログラムや情報共有が進められていくことになります。

お問合せ先

高等教育局高等教育企画課国際企画室

(高等教育局高等教育企画課国際企画室)