学校法人のガバナンス改革に関するQ&A(令和4年4月版)

学校法人のガバナンス改革に関し、学校法人制度改革特別委員会にてまとめられた「学校法人制度改革の具体的方策について」(以下「特別委員会報告書」という。)や、私立学校法改正法案骨子案について、これまでに寄せられた質問とそれらに対する現時点での文部科学省としての考え方をまとめております。

Q1 令和元年の改正法附則では5年後見直し規定が設けられているのに、5年経過する前に見直すのはなぜですか。

A 令和元年の私立学校法改正法附則の検討規定は、令和2年4月の施行から5年経過するまで見直しや改正をしてはならないという趣旨ではありません。
 また、令和元年改正時の国会における附帯決議や経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019・2021では、学校法人のガバナンス改革について検討が求められています。私立学校を取り巻く様々な状況を考えると、速やかに適切な見直しを行うことが重要であると考えています。

Q2 特別委員会報告書(改正法案骨子案)は、令和3年12月の学校法人ガバナンス改革会議の提言から大幅に後退しているのではないですか。

A 令和3年12月の学校法人ガバナンス改革会議の報告書では、評議員会を最高監督・議決機関とするなどの全く新たな役割分担を含む改革方策について提言されましたが、その基本的な考え方は、他の公益法人と同等のガバナンス体制を構築するために、「業務執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を行う点にあります。
 学校法人制度改革特別委員会では、この「業務執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方に据え、学校法人ガバナンス改革会議の提言事項が実効性ある形で実現されるよう、学校法人の持つ独自性などに配慮して適切な見直しを加えつつ、関係者の合意形成を丁寧に図りながら議論されました。
 その結果取りまとめられた特別委員会報告書の改革方策は、学校法人のガバナンス改革を着実に進めるものとなっていると考えています。

Q3 学校法人のガバナンスは各法人が寄附行為で自主的に定めればよく、法改正しなくてもよいのではないですか。

A 現行の私立学校法は、私立学校の自主性を尊重する趣旨に鑑み、広く寄附行為による自治を認め、その内容を各学校法人の裁量に委ねています。各学校法人の設立経緯や建学の精神などを踏まえ、それぞれの実情に応じた多様な寄附行為の定めが設けられています。
 一方で、この仕組みでは、理事や評議員の人事権など重要な権限を理事長等の特定の者に集中させることも、寄附行為の定め方によっては可能です。こうした仕組みが不適切に運用され、悪意のある業務執行がなされた場合に、自主的な監督が機能しないようなときは、学校法人の公共性に疑いを持たれるおそれもあります。
 このため、令和元年の私立学校法改正時の国会における附帯決議や骨太の方針2019・2021などを踏まえ、学校法人制度の沿革や多様性に配慮しつつ、「執行と監視・監督の役割を明確化・分離」をする観点から、私立学校法を改正することで、法律上も自律的に学校法人の公共性が高まり、信頼性の一層の向上につながるものと考えています。

Q4 大臣所轄法人と知事所轄法人では状況が大きく異なるので、ガバナンスの在り方は分けて考えるべきではないですか。

A 理事・理事会と評議員・評議員会の関係、役員や評議員の欠格要件や解任事由など、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」に関わるガバナンスの基本構造については、学校法人の規模に拘らず法的規律を共通に明確化して定めることが適切であると考えています。
 一方で、ガバナンスの基本構造に関わらない事項については、大臣所轄法人と知事所轄法人の区分その他の規模に応じた区分を適切に設けることも必要であると考えています。法人の基礎的変更に係る事項及び重要な寄附行為の変更に関する評議員会の決議(承認)、会計監査人の設置、内部統制システムの整備などについては、対応を分けることを検討しています。

Q5 知事所轄法人でも全国的に展開する大規模な法人については、大臣所轄法人と同等の扱いとすることが示されていますが、広域通信制高校のみならず専門学校についても同様に扱うべきではないですか。

A  Q4の通り、ガバナンスの基本構造に関わらない事項については、大臣所轄法人と知事所轄法人の区分その他の規模に応じた区分を適切に設けることが必要であると考えています。
 特別委員会報告書では、知事所轄法人でも、全国的に展開するような大規模な法人については、大臣所轄法人と同等の扱いとすることも考えられるとされているところ、例えば広域通信制高校を運営する法人などが該当しうると考えておりますが、具体的な対象については、今後関係者の意見も伺いながら検討していきます。

Q6 理事に対する監督は、理事会や監事が行えば十分で、評議員会が監督する必要はないのではないですか。

A 評議員会は、昭和24年の私立学校法制定当初から必置の機関とされており、その趣旨の一つは、理事による専断を防止することにありました。
 平成16年の私立学校法改正では、監事と評議員の兼職が禁止され、それぞれ独立に機能を発揮することになりました。その際、通知において、評議員会は、理事会の決定が適切か判断し意見を述べるとともに、学校法人の公共性を高めるために必要なチェックをすることが示され、監事は、その専門性と独立性をさらに高めることが要請されています。
 監事による監督が機能しないような場合でも、初めから所轄庁が介入するのではなく、まずは学校法人内で評議員会が自浄作用を発揮することが期待されるところ、今回の改正でその方法や手続を具体化することを検討しています。

Q7 理事選任機関が機能しない場合や、監事が機能しない場合とは、どのような場合ですか。

A 特別委員会報告書では、理事の選任を行う機関として、評議員会その他の機関を寄附行為で定めることが示されました。理事の解任については、客観的な解任事由として法令違反、職務上の義務違反、心身の故障などを定め、評議員会は、評議員会以外の理事選任機関が機能しない場合に、解任事由のある理事の解任を当該理事選任機関に求めることができるようにすることが示されています。
 この場合、理事選任機関において客観的な解任事由に該当すると判断されれば、当該理事を解任することができますが、何らかの事情で理事選任機関において当該理事を解任するに至らない場合、評議員会はその決議によって当該理事の解任を当該理事選任機関に請求することができるような仕組みを検討しています。
  また、現行制度においても、監事は、理事が法令等に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該理事に対し、当該行為の差止を請求することができますが、何らかの事情で監事がこうした権限を行使しない場合、評議員会が監事に対し、権限行使を請求することができるような仕組みを検討しています。

Q8 役員近親者とは、どのような者ですか。

A これまでも、監事に期待される役割に鑑み、監事は理事の配偶者又は三親等以内の親族以外の者から選任することが望ましいこと(令和元年法改正時の通知)、評議員会の構成について、当該学校法人の役員及び職員が大多数を占めたり、特定の同族が多く選任されたりすることのないようにすること(平成16年法改正時の通知)が示されています。
 今回の改正では、これらについて法律上の規律として、役員近親者が監事に就任することを禁止するほか、評議員に含まれる役員近親者の数に一定の上限を設けることを検討しています。
 なお、役員近親者の範囲については、現行制度や他の法人制度も参考としつつ、検討していきます。

Q9 理事の任命権は、評議員会のみが持つこととすべきではないですか。

A 理事・理事会に対する監視・監督機能を発揮する上では、業務の決定と執行を担う理事会の構成員である理事を選解任する権限が重要です。現行制度では理事の選解任は寄附行為の定めに委ねられているところ、これを法定することを検討しています。その際、「執行と監視・監督の明確化・分離」と、学校法人の沿革・多様性や独自性の双方のバランスを考慮した仕組みを検討する必要があります。
 現状でも、理事の選任は、評議員会や理事会による選任のほか、役員選考会議や関係団体といった任意の機関による選任もあり、学校法人ごとに多様な方法で行われています。このため、特別委員会報告書では、理事の選任機関を評議員会に一元化することはせず、理事選任機関を寄附行為で明確に定めるよう法定することが示されました。

Q10 理事と評議員の兼職禁止が示されましたが、兼職は認めるべきではないですか。禁止するとしても、知事所轄法人については十分な移行措置を設けるべきではないですか。

A 昭和24年の私立学校法制定当初から評議員会は必置の機関とされています。これは、評議員会が理事による専断を防止し、評議員会による理事会へのチェック機能を発揮することが期待されているものです。
 そのため、理事と評議員の兼職については、理事会と評議員会の役割を明確化し、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」をするというガバナンスの基本的な考え方を踏まえれば、法律上、兼職関係を解消していくことが必要です。
 その際、理事会と評議員会の円滑な連携が困難となるとの御指摘もありますが、通常の場合、評議員会は理事会で議題を決めた上で招集されることや、理事が提案者等として評議員会に出席し執行部門の考え方を説明すること、また、平時から評議員に対し、法人運営に関する情報共有を行うことなどにより、円滑な連携のもとで運営していただくことは十分可能であると考えています。
 なお、特別委員会報告書では、現状から変更が生じる事項について、負担の軽減と運営の継続性に鑑み、所要の準備期間を設けることや、知事所轄法人を中心に、必要に応じて経過措置を定めることが示されています。その上で、理事と評議員の兼職禁止については、評議員の確保のために兼職関係を維持することについては慎重であるべきとしつつ、移行に向けての一定の配慮も検討すべきとされました。これらも踏まえ、今後具体的な在り方について検討していきます。

Q11 理事と評議員の兼職を禁止すると、新たな仕組みに対応できる適切な評議員を確保することが難しくなるのではないですか。

A 現行制度における評議員の数は、「理事の定数の二倍の数を超える数」とされており、現状でも、各学校法人で理事を兼職していない評議員が選任されているものと考えます。
 この規定は、評議員会の独自性を確保する観点から、理事を兼ねる評議員が評議員定数の過半数を占めることを防ぐ趣旨ですが、理事と評議員の兼職が解消されれば、評議員定数を理事の二倍超とする必要がなくなるので、評議員定数を引き下げることを検討しています。
 現在就任している理事兼職者でない評議員について、新制度における評議員が果たすべき役割や権限、責任を十分御理解いただいた上で、引き続き新制度の評議員に就任することは可能であると考えますので、新たに別の評議員の就任を求めなければならないケースは少ないと考えています。

Q12 理事会による評議員の選任が引き続き認められることが示されましたが、業務執行と監督を分離する観点からは、理事会による評議員の選任は禁止すべきではないですか。

A 学校法人のガバナンスにおける「執行と監視・監督の明確化・分離」の観点から、特別委員会報告書では、評議員の選任方法については、基本的に評議員会を選任機関とすることとされました。他方、評議員会と理事会の建設的な協働と相互けん制の関係の形成に資する範囲で、理事会による評議員の選任を認める余地もあるとされました。
 そこで、両者のバランスを考慮した仕組みとするため、理事・理事会による評議員選任を許容しながらも、選任される評議員の数や割合に一定の上限を設けることを法定し、評議員会に期待されるけん制機能の形骸化を防ぐことを検討しています。

Q13 理事・理事会により選任される評議員の評議員定数に占める上限割合は、どのようになるのですか。

A Q12の通り、理事・理事会による評議員選任を許容しつつ、選任される評議員の数や割合に一定の上限を設けることを検討しています。  具体的な上限割合の詳細は、評議員会と理事会の建設的な協働と相互けん制の関係の形成に資する範囲内とすることが示されたことを踏まえながら、今後検討していきます。

Q14 評議員を構成する属性ごとの評議員定数に占める上限割合は、どのようになるのですか。

A 特別委員会報告書では、評議員の機能の健全な実質化・可視化を図るため、評議員の属性に応じた評議員会構成上の上限割合を設定することが示されました。役員近親者や同一団体所属者については、学校法人の設立の経緯や建学の精神との調和にも配慮して、評議員に占める数や割合の一定の上限を定めることについて、今後検討していきます。

Q15 理事会と評議員会の意思決定の権限分配を見直すことが示されましたが、学校法人の最終的な責任・権限を持つのは誰になるのですか。

A 平成16年の私立学校法の改正において、それまで明文の規定がなかった理事会を法定し、理事会を学校法人の業務の決定を行う機関とすることや、理事会が学校法人の運営に最終的な責任を負うことが明確化されました。
 特別委員会報告書では、理事会と評議員会の建設的な協働の実現を目指し、両者の意思決定権限の分配を見直すことが提言されました。これは、評議員会が理事長や理事会へのチェック機能をしっかりと果たすべきとの考えに基づくものであり、従来の理事会の権限・責任を前提とした上で、これに対する評議員会によるけん制機能を強化することを意図したものです。

Q16 重要事項に関する学校法人の意思決定に当たって、理事会と評議員会とで判断が分かれた場合、どのように確定することになるのですか。

A 特別委員会報告書では、大臣所轄法人について、学校法人の基礎的変更等の重要事項については、理事会の決議に加えて評議員会の決議(承認)を要することとするとされました。また、教学面の校務や法人業務の執行等に関する具体的な事項については、評議員会の決議の対象にならないという考え方が示されました。
 その上で、評議員会の決議を要することとする重要事項については、多様な関係者の意見を聴き反映する趣旨に鑑み、まずは理事が評議員に対して丁寧な説明を尽くし、理事会・評議員会の建設的な協働を促進することが今次の改革の出発点であり、学校法人の基礎的変更等や各法人の寄附行為で定める評議員会の議決事項については、両者の決議をもって学校法人の意思決定とするものであり、各機関の決議の優劣を一律に法制上措置するものではないことが示されました。双方の判断が分かれた場合の対応については、他制度や学校法人の運営の実務を参考に、今後検討していきます。

Q17 大臣所轄法人について理事会決定とともに評議員会決議を要することとされた重要な寄附行為の変更とは、具体的にどのようなものですか。

A 事業活動の社会的影響やステークホールダーが広範にわたる大臣所轄法人においては、学校法人の基礎的変更(任意解散・合併)や重要な寄附行為変更について、理事会の決定とともに評議員会の決議(承認)を要することとなります。
 また、特別委員会報告書では、これら以外の業務に関する事項については、各法人の寄附行為の定めにより評議員会の議決事項を定めうる現行の評議員会の基本構造を維持することが望ましいとしつつ、中期計画や役員報酬基準などの重要な業務の基本方針についても、理事会決定に加えて評議員会の決議(承認)を要する位置付けとしていくことを、引き続き検討すべきとされました。

Q18 監事の一部を常勤化することが示された「特に規模の大きい大臣所轄法人」とは、どのようなものですか。

A 特別委員会報告書では、特に大規模な大臣所轄法人については、監査対象となる業務範囲が広いことや、常時の監査の必要性が大きくなることから、監事の一部について常勤化することが示されました。
 「特に大規模な大臣所轄法人」の範囲については、他の法人制度なども参考にしながら、今後詳細について検討していきます。

Q19 今後の法改正のスケジュールはどうなるのですか。新制度はいつから施行されるのですか。

A 特別委員会報告書を踏まえ、文部科学省において報告書に基づく私立学校法改正法案の骨子案を作成し、その内容について広く国民の皆様から御意見を伺う意見募集を、令和4年4月4日から令和4年5月3日にかけて実施しています。
 国民の皆様から頂いた御意見も踏まえた上で、法制化の作業を進め、法案を国会に提出できるよう努力していきます。
 新制度の施行時期については、現時点で未定ですが、現状から変更が生じる事項について負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、十分な準備期間を設けることが必要であると考えています。

Q20 現在の理事・監事・評議員は、法改正に伴って退任しないといけないのですか。新たに選び直さないといけないのですか。

A 現在の理事・監事・評議員は、現在の仕組みの下で選任されていますが、新制度への移行に当たっては、負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、適切な移行措置を設けることが必要になると考えています。
 ただし、改めて新制度における理事・監事・評議員として果たすべき役割や権限、責任を十分御理解いただき、適切な選任手続を経た上で、引き続き就任することは可能であると考えています。

Q21 寄附行為作成例や標準的な寄附行為は、今後示されるのですか。

A 学校法人の制度改革は、ハードローとしての私立学校法の改正だけでなく、関係する政省令や寄附行為作成例、設置認可等に関する審査基準、関係団体におけるガバナンス・コードの見直し等、実効性確保の方策が総合的になされた上で、各学校法人における自主的な検討と改善を促していくことになります。
 寄附行為作成例や標準的な寄附行為についても、こうした総合的な実効性確保の方策の一つであり、今後、その見直しについて検討した上で、お示ししていくことを考えています。

Q22 各大学団体等が作成しているガバナンス・コードの充実について、今後どのように取り組んでいくのですか。

A 私立大学版ガバナンス・コードについては、令和3年3月に取りまとめられた学校法人のガバナンスに関する有識者会議で「各大学における遵守状況の点検・公表の段階的な推進を強力に推進していくとともに、できる限り早期にコンプライ・オア・エクスプレイン方式への移行を目指していくべき」とされました。
 今後、法改正の状況を踏まえつつ、各大学団体等においてガバナンス・コードの見直し・充実に向けた自主的取組が進むことが期待されますが、そうした取組を一層促進するための更なる方策についても、関係者とも協議・相談しつつ検討していきます。

Q23 今回の改革をすれば、学校法人の不祥事の発生を防げるようになるのですか。

A 特別委員会報告書で示された学校法人のガバナンス改革の具体的方策は、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方として、理事長の業務執行に対するけん制機能を健全に働かせることなどを目指すものです。
 学校法人の不適切な管理運営を防ぎ、学校法人が社会の信頼と支援を得た上で、一層発展していくことができるよう必要な制度改正に取り組んでいきます。

(高等教育局私学部私学行政課)