学校法人のガバナンス改革に関し、学校法人制度改革特別委員会(以下「特別委員会」という。)にてまとめられた「学校法人制度改革の具体的方策について」(以下「特別委員会報告書」という。)や任意の意見募集で寄せられた御意見をもとに、私立学校法改正法案骨子を策定しました。本ページでは、これまでに寄せられた質問とそれらに対する現時点での文部科学省としての考え方をまとめております。
※令和5年1月に最新情報に更新しました。
※私立学校法改正法案骨子の項目に基づき分類
※本質疑応答集においては下記の略語を用いる。
「現行私学法」:改正前の私立学校法(昭和24年法律第270号)
「改正法案」:私立学校法の一部を改正する法律案
「改正後の私学法案」:私立学校法の一部を改正する法律案による改正後の私立学校法
「有識者会議報告書」:学校法人のガバナンスに関する有識者会議「学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取組の基本的な方向性について」(令和3年3月19日)
「改革会議提言」:学校法人ガバナンス改革会議「学校法人のガバナンスの根本的改革と強化の具体策」(令和3年12月3日)
「特別委員会報告書」:大学設置・学校法人審議会学校法人分科会 学校法人制度改革特別委員会「学校法人制度改革の具体的方策について」(令和4年3月29日)
「改正法案骨子」:私立学校法改正法案骨子
(注)現時点の考え方を示したものであり、今後、変更があり得る。
A 特別委員会報告書で示された学校法人のガバナンス改革の具体的方策は、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方として、理事長・理事の業務執行に対するけん制機能を健全に働かせることなどを目指すものです。
学校法人の不適切な管理運営を防ぎ、学校法人が社会の信頼と支援を得た上で、一層発展していくことができるよう必要な制度改正に取り組んでいきます。
A 令和元年の私立学校法改正法附則の検討規定は、令和2年4月の施行から5年経過するまで見直しや改正をしてはならないという趣旨ではありません。
また、令和元年改正時の国会における附帯決議や経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2019・2021・2022では、学校法人のガバナンス改革について検討が求められています。私立学校を取り巻く様々な状況を考えると、速やかに適切な見直しを行うことが重要であると考えています。
A 令和3年12月の学校法人ガバナンス改革会議提言では、評議員会を最高監督・議決機関とするなどの全く新たな役割分担を含む改革方策について提言されましたが、その基本的な考え方は、他の公益法人と同等のガバナンス体制を構築するために、「業務執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を行う点にあります。
特別委員会では、この「業務執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方に据え、学校法人ガバナンス改革会議の提言事項が実効性ある形で実現されるよう、学校法人の持つ独自性などに配慮して適切な見直しを加えつつ、関係者の合意形成を丁寧に図りながら議論されました。 その結果取りまとめられた特別委員会報告書の改革方策及び改正法案骨子は、学校法人のガバナンス改革を着実に進めるものとなっていると考えています。
A 現行の私立学校法は、私立学校の自主性を尊重する趣旨に鑑み、広く寄附行為による自治を認め、その内容を各学校法人の裁量に委ねています。各学校法人の設立経緯や建学の精神などを踏まえ、それぞれの実情に応じた多様な寄附行為の定めが設けられています。
一方で、この仕組みでは、理事や評議員の人事権など重要な権限を理事長等の特定の者に集中させることも、寄附行為の定め方によっては可能です。こうした仕組みが不適切に運用され、悪意のある業務執行がなされた場合に、自主的な監督が機能しないようなときは、学校法人の公共性に疑いを持たれるおそれもあります。
このため、令和元年の私立学校法改正時の国会における附帯決議や骨太の方針2019・2021・2022などを踏まえ、学校法人制度の沿革や多様性に配慮しつつ、「執行と監視・監督の役割を明確化・分離」をする観点から、私立学校法を改正することで、法律上も自律的に学校法人の公共性が高まり、信頼性の一層の向上につながるものと考えています。
A 評議員会は、昭和24年の私立学校法制定当初から必置の機関とされており、その趣旨の一つは、理事による専断を防止することにありました。
平成16年の私立学校法改正では、監事と評議員の兼職が禁止され、それぞれ独立に機能を発揮することになりました。その際、通知において、評議員会は、理事会の決定が適切か判断し意見を述べるとともに、学校法人の公共性を高めるために必要なチェックをすることが示され、監事は、その専門性と独立性をさらに高めることが要請されています。
監事による監督が機能しないような場合でも、初めから所轄庁が介入するのではなく、まずは学校法人内で評議員会が自浄作用を発揮することが期待されるところ、今回の改正でその方法や手続を具体化することを検討しています。
A 理事の解任は理事選任機関が行うこととなります。理事選任機関において、理事が客観的な解任事由(法令違反、職務上の義務違反、心身の故障など)に該当すると判断すれば、当該理事を解任することができますが、何らかの事情で理事選任機関において当該理事を解任するに至らない場合、評議員会はその決議によって当該理事の解任を当該理事選任機関に求めることができるような仕組みを検討しています。
また、現行制度においても、監事は、理事が法令等に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって法人に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該理事に対し、当該行為の差止を請求することができますが、何らかの事情で監事がこうした権限を行使しない場合、評議員会が監事に対し、権限行使を求めることができるような仕組みを検討しています。
A 理事・理事会と評議員・評議員会の関係、役員や評議員の欠格要件や解任事由など、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」に関わるガバナンスの基本構造については、学校法人の規模に拘らず法的規律を共通に明確化して定めることが適切であると考えています。
一方で、ガバナンスの基本構造に関わらない事項については、小規模法人の実態に照らして組織運営が過重とならないように、大臣所轄学校法人と知事所轄学校法人の区分その他の規模に応じた区分を適切に設けることも必要であると考えています。
具体的には、任意解散、合併、重要な寄附行為の変更のような重要事項についての評議員会承認の義務化、会計監査人の設置、内部統制システムの整備などについては、大臣所轄学校法人等にのみ適用することを検討しています。
A 特別委員会報告書別紙の「規模に応じた対応案」を踏まえ、法制化作業を進めて行きますが、今後、設置する学校に応じた私立学校法の適用関係についてわかりやすい資料を提示していきたいと考えています。
A Q7の通り、ガバナンスの基本構造に関わらない事項については、大臣所轄学校法人と知事所轄学校法人の区分その他の規模に応じた区分を適切に設けることが必要であると考えています。
特別委員会報告書では、知事所轄学校法人でも、全国的に展開するような大規模な法人については、大臣所轄学校法人と同等の扱いとすることも考えられるとされているところ、具体的な対象については、今後関係者の意見も伺いながら検討していきます。
A 新制度の経過措置については、現状から変更が生じる事項について負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、準備期間との関係を踏まえ、他法人制度の施行時の対応を参考にして検討していきます。
A この度の制度改正に対応して、今後大臣所轄学校法人向けの寄附行為作成例の改訂について検討していきます。それを参考としつつ、都道府県向けに知事所轄学校法人の寄附行為変更の参考となる資料をお示しできるよう検討していきます。
A 定年については、今般の学校法人制度改革の議論では論点となっておらず、残された課題と認識しています。今回のハードローの整備に加えて、ソフトローとしてのガバナンス・コードの見直しや実効性確保の方策について、自主的な検討と改善を促すことが望まれるところです。
A 平成16年の私立学校法の改正において、それまで明文の規定がなかった理事会を法定し、理事会を学校法人の業務の決定を行う機関とすることや、理事会が学校法人の運営に最終的な責任を負うことが明確化されました。
特別委員会報告書では、理事会と評議員会の建設的な協働の実現を目指し、両者の意思決定権限の分配を見直すことが提言されました。これは、評議員会が理事長や理事会へのチェック機能をしっかりと果たすべきとの考えに基づくものであり、従来の理事会の権限・責任を前提とした上で、これに対する評議員会によるけん制機能を強化することを意図したものです。
A 特別委員会報告書では、大臣所轄学校法人について、学校法人の基礎的変更等の重要事項については、理事会の決議に加えて評議員会の決議(承認)を要することとするとされました。また、教学面の校務や法人業務の執行等に関する具体的な事項については、寄附行為に特段の定めを置かない限り、評議員会の決議の対象にならないという考え方が示されました。
そのため、私立学校法改正後においては、評議員会の決議を必要としている以上、理事会と評議員会の決議がそろわなければ、学校法人の意思決定としては否決されることとなります。
そのような事態を避けるためには、今般、評議員会の決議を要することとする重要事項については、多様な関係者の意見を聴き反映する趣旨に鑑み、まずは理事が評議員に対して丁寧な説明を尽くし、理事会・評議員会の建設的な協働を目指すことが必要と考えています。その際、決議が分かれた場合の、建設的な協働を促進するための理事会と評議員会の議論の方法・手続等については、有識者から、各学校法人の寄附行為で定めて開示する案も示されたところです。ただし、評議員会決議を不要とするような寄附行為を定めることは認められないと考えています。
A 事業活動の社会的影響やステークホールダーが広範にわたる大臣所轄学校法人においては、学校法人の基礎的変更(任意解散・合併)や重要な寄附行為変更について、理事会の決定とともに評議員会の決議(承認)を要することとなります。
また、特別委員会報告書では、これら以外の業務に関する事項については、各法人の寄附行為の定めにより評議員会の議決事項を定めうる現行の評議員会の基本構造を維持することが望ましいとしつつ、中期計画や役員報酬基準などの重要な業務の基本方針についても、理事会決定に加えて評議員会の決議(承認)を要する位置付けとしていくことを、引き続き検討すべきとされました。
A 大臣所轄学校法人等において評議員会の議決を要する「寄附行為の変更」の具体的内容については、下位法令(文部科学省令)の検討の中で、広くご意見を伺いながら検討したいと考えています。その際、学校法人にとって重要な寄附行為の変更とは何かという観点で検討を行う予定です。
A 評議員会における議題の提案については理事会が、議案の提案については理事が原則として行うこととする方向で検討しています。
また、一定の割合以上の評議員が招集を請求した評議員会等の審議事項は、請求した評議員が決定することとする方向で検討しています。
A 理事会と評議員会の建設的な協働の観点から、理事長を含む理事が評議員会に出席し、議題・議案の内容を説明することを可能とすることを検討しています。具体的な理事・理事長の関わり方については、今後、法制的に検討していきます。
A 評議員会の招集については、機動的な開催が可能となるよう、理事が行うこととする方向で検討しています。
(なお、現行においても、評議員会が招集されないような場合、評議員は総数の3分の1以上によって招集を請求することができるとされており、改正後も同様の規定を維持しつつ、大臣所轄学校法人における招集要件の緩和等について検討しています 。)
A 特別委員会報告書では、理事長の選定・解職を理事会の権限とすることが示されており、これによって、任命責任を理事会が負うことが明確化されることになります。ただし、現行法第42条第2項のように、寄附行為をもって、理事長の選定・解職に評議員会の議決を要することとすることは可能と考えます。(この場合は、理事会決議と評議員会決議の両方が必要となる。)
また、理事長を校長などの充て職にするなどの理事長選任の在り方については、今般の改正法の趣旨が、理事の選任機関の明確化による透明性の確保にあることから、校長を理事に選任するに際しては、どのような機関を「理事選任機関」とするかを各学校法人において明確化していただくことを想定しています。
A 個別理事への委任禁止の重要事項の範囲については、現行法第42条第1項各号(評議員会への意見聴取事項)や、他法人制度の類似制度を参考に、法制的に検討しています。
理事長も「理事」であるため、個別の理事への委任を禁止する重要事項については、理事長への委任も禁止する方向で検討しています。
A 理事・理事会に対する監視・監督機能を発揮する上では、業務の決定と執行を担う理事会の構成員である理事を選解任する権限が重要です。現行制度では理事の選解任は寄附行為の定めに委ねられているところ、これを法定することを検討しています。その際、「執行と監視・監督の明確化・分離」と、学校法人の沿革・多様性や独自性の双方のバランスを考慮した仕組みを検討する必要があります。
現状でも、理事の選任は、評議員会や理事会による選任のほか、役員選考会議や関係団体といった任意の機関による選任もあり、学校法人ごとに多様な方法で行われています。このため、特別委員会報告書では、理事の選任機関を評議員会に一元化することはせず、理事選任機関を寄附行為で明確に定めるよう法定することが示されました。
A 特別委員会報告書において、理事の選任機関として、評議員会その他の機関(評議員会、理事会のほか、役員選考会議、設立団体、選挙実施機関など任意に置かれる機関を含む。)を寄附行為で明確に定めるよう法的に措置すべきことが示されたところであり、御質問のような対応も可能とする方向で検討しています。
なお、理事選任機関(評議員会その他の機関)が理事を選任する場合は、あらかじめ評議員会の意見を聴かなければならないこととする方向で検討しています。
A 理事選任機関として、評議員会その他の機関を寄附行為で明確に定めていれば、複数の選任機関を認める方向で検討しています。
A 現行私立学校法において、学校職員は理事に就任できるところ、改正後もその方向で検討しています。
A 理事のうちには校長を含まなければならないとする現行規定(私立学校法第38条第1項第1号)の趣旨は維持する方向で検討しているため、校長理事を理事として解任する場合は、他の校長を理事に選任する(校長が複数いる学校法人の場合)か、校長の職を解職した上で新たな校長を理事に選任する(校長が一人の学校法人の場合)のいずれかの対応が必要と考えています。
A 理事・評議員としての任期を定めていただく必要があると考えています。なお、理事と評議員の兼職関係は解消することとしています。
A 現在の理事・監事・評議員は、現在の仕組みの下で選任されていますが、新制度への移行に当たっては、負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、適切な移行措置を設けることが必要になると考えており、新制度における資格や構成の要件を満たせば、現在の理事・監事・評議員は一定期間まで継続して在任を可能とする方向で検討しています。
A 理事の任期は、選任後4年を上限に寄附行為で定めた期間内の最終会計年度に関する定時評議員会の終結の時までとするところ、例えば寄附行為で4年とした場合で、仮にX年9月28日に選任した場合、その任期は(X+4)年9月27日までに終了する最終会計年度である(X+3)年度に関する定時評議員会(例:(X+4)年6月25日)までとなります。
後任の理事の任期の始期は、前任の理事の任期満了日の翌日以降となります。
A 役員の任期は、私立学校法で定める上限の範囲内において、寄附行為で具体的に定めることとなります。その際、理事の任期に関する寄附行為で定める期間を4年、監事の任期に関する寄附行為で定める期間を4年とすることは、理事の任期が監事の任期を超えてはいないため、許容される方向で検討しています。
A 理事の職務報告を義務付けるのは、報告を通じて、理事会が理事の職務の執行の監督を適切に行うことができるようにするためです。他法人制度においても、理事の理事会への報告は3か月に1回以上とされており、私立学校法改正においても、大臣所轄学校法人等においては同様の方向で検討しているところです。
この場合、年4回以上の理事会開催が必要となります。
A 理事の職務報告を義務付けるのは、報告を通じて、理事会が理事の職務の執行の監督を適切に行うことができるようにするためです。そのため、質疑応答等を通じて理事の職務の執行状況を適切に把握する必要があり、監査報告書では職務報告に代えられないと認識していますが、他法人制度も参考に、具体的な運用方法については、今後お示ししたいと考えています。
A 理事の職務報告を義務付けるのは、報告を通じて、理事会が理事の職務の執行の監督を適切に行うことができるようにするためです。
知事所轄学校法人において寄附行為で、年2回の報告とした場合は、年2回以上の理事会開催が必要となります。
なお、短期間に2回立て続けに報告がされ、その次に報告がなされるまでの期間が長くなりすぎないようにするため、2回の理事会の間の期間は一定期間空けることを求める方向で検討しています。
A 「理事の職務の執行を監督する権限を担う」理事会の職務に鑑み、職務報告の対象は業務執行の権限を有する理事のみとなります。なお、業務執行者以外の理事についても、理事の相互監督という理事会の職務が健全に果たされるよう、その役割や活動を可視化していく努力が求められ、社外取締役の活動状況を事業報告に掲載する会社法の取組も参考になると考えています。
A 現状から変更が生じる事項について、負担の軽減と運営の継続性に鑑み、所要の準備期間を設けることや、知事所轄学校法人を中心に、必要に応じて経過措置を定めることとしています。その上で、理事と評議員の兼職禁止については、理事会と評議員会の役割を明確化し、執行と監督の機能を分離するというガバナンスの基本構造を踏まえれば、兼職関係を解消していくことが必要と考えています。
A 理事と評議員の兼職については、理事会と評議員会の役割を明確化し、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」をするというガバナンスの基本的な考え方を踏まえれば、法律上、兼職関係を解消していくことが必要です。そのため、現行私立学校法第38条第1項第2号は改正する方向で検討しています。
A 現行制度における評議員の数は、「理事の定数の二倍の数を超える数」とされており、現状でも、各学校法人で理事を兼職していない評議員が選任されているものと考えます。
この規定は、評議員会の独自性を確保する観点から、理事を兼ねる評議員が評議員定数の過半数を占めることを防ぐ趣旨ですが、理事と評議員の兼職が解消されれば、評議員定数を理事の二倍超とする必要がなくなるので、評議員定数を引き下げることを検討しています。
現在就任している理事兼職者でない評議員について、新制度における評議員が果たすべき役割や権限、責任を十分御理解いただいた上で、引き続き新制度の評議員に在任することは可能であると考えますので、理事と評議員の兼職が禁止されるという観点では、新たに別の評議員の就任を求めなければならないケースは少ないと考えています。
A 2021年度に行った都道府県所轄学校法人に関するアンケート調査によると、評議員数は、高校から幼稚園までの全体平均で14.6人であり、このうち、役員と兼職している評議員は2.6人、兼職していない評議員は12.0人となっています。
法改正後は、評議員の定数を理事の定数を超える数まで引き下げる方向で検討していますが、現在の理事数は、全体平均6.7人となっているため、法改正後において評議員は平均7人程度と必要となります。既に、役員と兼職していない評議員が12人程度いるので、その中から適切に選任いただくことで、新たに別の評議員の就任を求めなければならないケースは少ないと考えています。
同様に、日本私立学校振興・共済事業団による大臣所轄学校法人に関するアンケート調査によると評議員数の平均は26.0人、このうち、役員と兼職している評議員の平均は7.9人、理事の平均は10.0人となっているため、既に、役員と兼職していない評議員が18人程度いるので、その中から適切に選任いただくことで、新たに別の評議員の就任を求めなければならないケースは少ないと考えています。
A 学校法人のガバナンスにおける「執行と監視・監督の明確化・分離」の観点から、特別委員会報告書では、評議員の選任方法については、基本的に評議員会を選任機関とすることとされました。他方、評議員会と理事会の建設的な協働と相互けん制の関係の形成に資する範囲で、理事会による評議員の選任を認める余地もあるとされました。
そこで、両者のバランスを考慮した仕組みとするため、理事・理事会による評議員選任を許容しながらも、選任される評議員の数や割合に一定の上限を設けることを法定し、評議員会に期待されるけん制機能の形骸化を防ぐことを検討しています。
A 特別委員会報告書では、「基本的には評議員会を選任機関として明確にしつつ、理事・理事会により選任される評議員の数や割合に一定の上限を設けることを法律上措置すべきである。」とされており、評議員会以外によって評議員が選任されることも想定しているところです。
A 理事又は理事会が評議員を選任することを禁止している他法人制度においては、評議員の選任又は解任に当たりその議題又は議案を理事会が提出することは妨げられていないこととされています。
そのため、改正後の私立学校法においても、理事会において評議員候補者の原案を作成し、評議員会又は選任のための中立的な機関に提案することは妨げないこととし、当該機関において評議員を選任することを許容される方向で、法制的に検討しています。
ただし、特別委員会報告書の趣旨を踏まえれば、実質的に理事・理事会がすべての評議員を選任していると同視できるような寄附行為の定め(理事会提案の評議員候補者からしか評議員会が評議員を選任できない旨の寄附行為の定め等)については、許されないと考えています。
A 「建設的な協働とけん制関係の確立」の観点から、理事と評議員との兼職は禁止されますが、兼職関係になければ評議員のうちから次期理事を選任することは可能であると考えており、その方向で検討しています。また、評議員が欠けた場合の評議員の補充についても、寄附行為で定めた方法によって可能と考えます。
A 「建設的な協働とけん制関係の確立」の観点から、理事・監事と評議員との兼職は禁止されますが、元理事や元監事を評議員に選任することや元理事を監事、元監事を理事に選任することは可能であると考えており、その方向で検討しています。
A 学校法人の職員が評議員に就任することは、教学と経営の協調を通じた教育の質の向上に対する責務や人的集団としての私立学校の特性に鑑み認めた上で、特定の利害関係に偏らない幅広い意見を反映し、評議員会の機能の健全な実質化を推し進める観点から、総評議員に占める職員評議員の上限割合は3分の1とすることを検討しています。
A 理事・理事会による評議員選任を許容しつつ、理事・理事会により選任される評議員の評議員定数に占める上限割合は2分の1とすることを検討しています。
A 学校法人の設立の経緯や建学の精神との調和にも配慮して、役員(理事及び監事)と特別利害関係を持つ評議員については、各役員につき一人までとすることを検討しています。また、他の評議員と特別利害関係を持つ評議員については、各評議員につき一人までとすることも検討しています。その上で、役員や評議員のいずれかと特別利害関係を有する評議員の総評議員に占める上限割合は6分の1とすることを検討しています。
なお、現状から変更が生じる事項について負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、準備期間との関係を踏まえ、経過措置を設けることも検討しています。
※「特別利害関係」とは、一方の者が他方の者の配偶者または三親等以内の親族である関係などであり、具体的には省令において定めることとしています。
A 現行私立学校法上、評議員には「学校法人の職員」を必ず含めなければならないとされています(私立学校法第44条第1項)。これは、教学と経営の協調を通じた教育の質の向上に対する責務や人的集団としての私立学校の特性に由来すると考えられます。
今回の改革においては、業務執行と監督を分離することが求められている一方、こうした学校法人の沿革と独自性にも十分に配慮し、両者のバランスを考慮した仕組みとする必要があります。このため、法人職員の評議員兼職を一律には禁止せず、評議員会のチェック機能の実効性を法的に担保する観点から、法人職員の評議員就任に一定の上限を設けることを法律上措置することを検討しています。
A 理事又は理事会が評議員を選任することを禁止している他法人制度においては、評議員の選任又は解任に当たりその議題又は議案を理事会が提出することは妨げられていないこととされています。そのため、改正後の私立学校法においても、理事会において評議員候補者の原案を作成し、評議員会又は選任のための中立的な機関に提案することは妨げないこととし、当該機関において評議員を選任することを許容される方向で、法制的に検討したいと考えています。したがって、改正後においても、評議員に公認会計士、第三者評価に携わる関係者等を加えることは可能であると考えています。
A 「卒業生かつ職員」の評議員は、職員評議員となることを検討しています。なお、総評議員に占める割合に上限が定められる属性(理事・理事会が選任した者、職員、特別利害関係者)に複数該当する場合は、それぞれの規制に適合することが必要となることを検討しています。
A 特別委員会報告書でも示されているとおり、評議員の上限定数については、ガバナンス・コードの見直しにおける議論の中で検討させていただきたいと考えています。
A 現行法において評議員会の議長の選任方法は各学校法人に委ねられており、その考え方を維持する方向で検討しています。なお、評議員会の議長と理事が兼任している場合には、理事と評議員の兼職解消を図ることとしていることを踏まえた見直しが必要です。
A 評議員の資格、選任方法、評議員会の構成等に関する規律は、他法人制度も参考に、法定する方向で検討しています。
また、資格とは評議員に就任することができない事由(いわゆる欠格事由)などを想定していますが、他法人制度も参考に、検討しています。
A 評議員に関して、補償契約、責任限定契約、損害賠償責任保険契約を締結することは可能です。
A 学校法人と評議員は委任関係に立つところ、評議員の解任は、寄附行為をもって定めるところによるとすることを検討しています。選任と解任とは表裏一体であるため、原則として、評議員を選任した機関等が、当該評議員を解任する権限を持つべきと考えていますが、寄附行為の定め方によっては、理事・理事会に評議員の解任請求権を認めることも可能です。ただし、この場合においても、評議員を選任した機関等の選解任権を侵害するような寄附行為の定めは効力を有しないものと考えます。
A 特別委員会報告書では、「評議員会の活動状況も監事の監査の一環として確認し、評議員の不正行為や法令違反について所轄庁・理事会・評議員会への報告の対象とすべきである。」とされており、監事が行うことが示されています。
A 当該裁判例は、評議員会に属する権限について評議員個人が自ら行使することができないと判断したものであり、個人としての評議員が何らの権限も有さないと判断したものではないと理解しています。
理事会と建設的に協働し、理事長・理事会に対するけん制機能を健全に働かせるという評議員会の役割を踏まえ、個々の評議員にどのような権限を付与するか、他法人制度も参考に検討しています。
A 改正後の私立学校法案においては、理事会において監事候補者の原案を作成し、評議員会に提案することは妨げないこととし、それを踏まえて評議員会において監事を選任することを許容する方向で、法制的に検討しています。
ただし、特別委員会報告書や改正法案骨子の趣旨を踏まえれば、実質的に理事・理事会が監事を選任していると同視できるような寄附行為の定め(理事会提案の監事候補者からしか評議員会が監事を選任できない旨の寄附行為の定め等)については、許されないと考えています。
また、恣意的な監事の選任又は解任を防止する観点から、理事長や特定の理事による提案ではなく、理事会の決定を必要とすることが適当であると考えています。
A 今般の学校法人制度改革は、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」を基本的な考え方としつつ、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の各権限を明確に整理し、「建設的な協働と相互けん制」を確立することで、実効性のあるガバナンス構造を構築することとされています。
学校法人の業務の執行は引き続き、理事会が行うことに対して、監視・監督の役割は監事・評議員会が担うこととなると認識しています。そのため、業務執行を行う理事長が監事を選任するという現行法の仕組みを改めることとしています。
A これまでも、監事に期待される役割に鑑み、監事は理事の配偶者又は三親等以内の親族以外の者から選任することが望ましいこと(令和元年法改正時の通知)、評議員会の構成について、当該学校法人の役員及び職員が大多数を占めたり、特定の同族が多く選任されたりすることのないようにすること(平成16年法改正時の通知)が示されています。
今回の改正では、これらについて法律上の規律として、役員近親者が監事に就任することを禁止するほか、評議員に含まれる役員近親者の数に一定の上限を設けることとしています。
なお、役員近親者の範囲については、現行制度や他の法人制度も参考としつつ、検討していきます。
A 監事については、現行法において、理事、評議員又は学校法人の職員の就任が禁止されており(私立学校法第39条)、更に特別委員会報告書において、役員近親者の監事の就任を禁止すべきであるとされました。これは、監査の実効性・客観性を高めるとともに、監事が理事会のモニタリング機能や評議員会のチェック機能の起点ともなることから、理事会や評議員会との協働や相互けん制を強化する趣旨です。そのため、監事としてふさわしい資格を有する者の範囲については、その趣旨を踏まえて、今後の法制化の中で、他法人制度も参考に検討していきます。
A 特別委員会報告書では、特に大規模な大臣所轄学校法人については、監査対象となる業務範囲が広いことや、常時の監査の必要性が大きくなることから、監事の一部について常勤化することが示されました。
「特に大規模な大臣所轄学校法人」の範囲については、他の法人制度なども参考にしながら、今後詳細について検討していきます。
また、「一部」とは、複数の監事のうち少なくとも一人を常勤とすることを想定しています。なお、一般的に、「常勤」とは、「定められた勤務時間中常に勤務する態勢にあり、かつ、職務専念義務があるもの」とされていますが、他法人制度も参考に、今後の法制化の中で検討していきます。
A 私立学校振興助成法に基づいて会計監査を実施している会計士等を、法律上そのまま私立学校法に基づく会計監査人とみなすわけではありませんので、手続上、改めて、私立学校法上の会計監査人として評議員会により選任することが必要になります。
A 私立学校法に基づく会計監査人の監査が制度化されることに伴い、学校法人会計基準を私立学校法に基づくものとして位置付ける必要があります。
その上で、全ての学校法人に学校法人会計基準を適用する方向で検討しています。
A 私立学校法において会計監査人による監査を制度化するためには、私立学校法に基づく会計基準を整備することが必要となります。
このため、現在の私立学校振興助成法に基づく学校法人会計基準を改正し、私立学校法に基づく会計基準として位置付けることを予定しています。
A 他の法人制度も参考にしながら、会計帳簿の作成・保存・閲覧の義務化についても検討していきます。
A 私立学校法により作成が必要な計算書類の内容については、現在の学校法人会計基準をベースとしながら、セグメント別の情報表示の在り方を含め、今後検討していく予定です。
(現時点では、セグメント別で単独の計算書類を作成することは予定しておりません。)
A 会計監査人による会計監査は、理事会承認前の計算書類及び財産目録について行うことを予定していることから、当該監査期間を確保するため、書類の作成期限(理事会承認の期限)を現行より1か月延長することを予定しています。
A 内部統制システムの整備に求められる水準については、他法人制度も参考に、今後の法制化の中で検討していきます。
A 他法人制度も参考に、内部通報を受けた者が適切に監事に報告することなどを必要とする方向で、今後の法制化の中で検討していきます。
A 2021(令和3)年3月19日に取りまとめられた、「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」報告書では、公益的な法人としてのガバナンスを確保するためにふさわしい学校法人制度の在り方が議論されました。
その結果、①中長期的な教育研究の質の向上を図る「攻め」のガバナンス向上に向けて、優れた理事長・役員の選任、理事の執行と理事会の監督の分離などについて、学校法人の多様性を尊重しながら後押しする枠組みの構築、②不祥事事案の発生を防ぎ社会からの信頼を確保する「守り」のガバナンスの確保に向けては、評議員会の監督権限、役員の解任事由や手続、監事の独立性などについて、他の公益法人と同等の枠組みの整備などを求める改革方策の基本的な方向性を提言頂きました。
特別委員会報告書でもこの考え方は踏襲されているものと認識しています。
A 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律では、子法人を「一般社団法人又は一般財団法人がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの」と定義しており、学校法人における子法人についても、これらを参考に、今後の法制化の中で検討していきます。
A 今般の改正において、監事・会計監査人に子法人に対する調査権を付与する趣旨は、学校法人が子法人を利用した不適切な行為を行うことを防止する観点等から、学校法人に対する監査に必要な範囲で、子法人の業務及び財産の状況を調査できることとするものです。その上で、子法人の監査については、会社法等の法令に基づいて適切に監査されるべきものであると考えています。
また、上記趣旨から子法人の役職員との兼職禁止は、子法人の業務執行者等を対象とし、子法人の監事・監査役等との兼職は禁止する必要がないと考えています。
A 監事・会計監査人に子法人に対する調査権を付与する趣旨は、学校法人が子法人を利用した不適切な行為を行うことを防止する観点等から、学校法人に対する監査に必要な範囲で、子法人の業務及び財産の状況を調査できることとするものです。したがって、監事・会計監査人の監査の対象に子法人を含めようとするものではありません。
A 子法人に対する調査は、あくまで学校法人が子法人を利用して不適切な行為を行っていないかという観点等から行われるものであり、子法人の業務や会計処理が適正に行われているどうかを監査するものではありません。このため、子法人の監事・会計監査人との役割が不明確になるという問題は生じないものと考えます。
A 特別委員会報告書を踏まえ、文部科学省において報告書に基づく私立学校法改正法案の骨子案を作成し、その内容について広く国民の皆様から御意見を伺う意見募集を実施し、法案骨子を公表しました。
国民の皆様から頂いた御意見も踏まえた上で、法制化の作業を進め、法案を国会に提出できるよう努力していきます。
新制度の施行時期については、現時点で未定ですが、現状から変更が生じる事項について負担の軽減と運営の継続性を確保する観点から、十分な準備期間を設けることが必要であるため、令和7年4月1日施行とする方向で検討を進めています。
A 現行の私立学校法などに反しない範囲であれば施行前であっても学内規程等の体制整備を行うことは可能と考えています。また、学内規程の効力発生日を施行日以後にすることで、改正法施行前に学内規程等の体制整備を行うことは可能と考えています。
A 学校法人の制度改革は、ハードローとしての私立学校法の改正だけでなく、関係する政省令や寄附行為作成例、設置認可等に関する審査基準、関係団体におけるガバナンス・コードの見直し等、実効性確保の方策が総合的になされた上で、各学校法人における自主的な検討と改善を促していくことになります。
寄附行為作成例や標準的な寄附行為についても、こうした総合的な実効性確保の方策の一つであり、今後、その見直しについて検討した上で、お示ししていくことを考えています。
A 私立大学版ガバナンス・コードについては、令和3年3月に取りまとめられた学校法人のガバナンスに関する有識者会議で「各大学における遵守状況の点検・公表の段階的な推進を強力に推進していくとともに、できる限り早期にコンプライ・オア・エクスプレイン方式への移行を目指していくべき」とされました。
今後、法改正の状況を踏まえつつ、各大学団体等においてガバナンス・コードの見直し・充実に向けた自主的取組が進むことが期待されますが、そうした取組を一層促進するための更なる方策についても、関係者とも協議・相談しつつ検討していきます。