監事の業務監査について

文部科学省 平成25年度学校法人監事研修会
■平成25年11月7日(木曜日)
■発表者:実践女子学園理事長 井原 徹
【監事の業務監査について】
【発表要旨】
1.マネジメントの中でのチェック体制の限界
マネジメントの中で、マネジメント推進者が自らチェックし、全うな形に是正することには限界がある。
2.マネジメント体系の外にチェック体制を作る。
マネジメントの中に質・量ともに適正なチェック・規制・規律の仕組みを持つことが難しいとすれば、マネジメント体制とは別な仕組みで行う。
3.チェック体制の中心は、監事である。
そのチェック等の仕組みの中心に位置すべきものが、私立学校法によって、責任・権限が明確に規定されている「監事」である。
4.監事の報酬
大学の監事は無給が多い。任務遂行にそれなりの時間を費やし、神経を使っての任務遂行になるのであるから、監事の業務や責任に相応しい報酬額を設定すべきではないか。
5.監事の苦労(ぼやき)
よく聞く発言は以下のようなものである。
(1) うちの理事長さんは素晴らしい方だ。大学を上手く切り盛りしてくれると信じている。
(2) 監事になったけれど、特段にこういうことをやってほしいといった要請はないので、理事会に出席して、じっと見守っている。
(3) 「業務監査」と言われても、非常勤でたまにしか来ない私には情報も部下もない。内部監査室もない中で何をどうしたらよいか。
(4) 監事というものに対する理事会メンバーの理解が低い。監事がやりやすくなるよう、むしろ理事たちに指導してほしい。
6.理事会の審議・決定内容が適正かどうかを判断する。
そのためには、次の事項が整っていることを要する。
(1) 適正な開催回数を要請する。また、「学内理事会(常務理事会)」にも出席して、経常的な理事長、理事の業務執行をチェックすべきである。
(2) 理事会等の審議事項(案件)の適正化(充実)、報告事項の適正化(充実)が必須である。
(3) 大学の「意思決定全体」の適正化に目を向ける。
「会議による意思決定」「稟議による意思決定」「職位による意思決定」の三つの構造における相互の適正化を図る。
(4) 理事会等における決定内容を、教職員に対して適正に、迅速に知らせる仕組みを整える。
7.教学監査への対応
「学部・学科の新増設や教育・研究における重点分野の決定、学生・生徒の募集計画等の教学的な側面を有する内容についても、学校法人の経営に関連する問題である以上、監事による監査の対象となり、・・・(文部科学省)」教学監査については、熟考の上で対応する必要がある。大学全体のガバナンス体制の構築と歩を合わせる必要がある。
8.内部監査室との連携
大学(法人)全体の監査体制の充実のためには、内部監査体制の構築を併せて行う必要がある。内部監査室の把握するデータや、内部監査結果を内部監査部隊と共有して、大学に潜む「監事として判断すべき事項」を探り当てることが大切である。
9.監事の常勤化
常勤監事を置く学校法人は、10パーセント程度であるが、監事監査の重要性を考えて、監事の常勤化を理事会に要請すべきではないかと思う。
10.監事と理事長との良好な関係の構築理事長と監事は慣れ合ってはいけないが、互いの立場を尊重した上で、ざっくばらんな会話ができる人間関係を構築しておくことが大切だと思う。
11.まとめ
組織全体のガバナンス構築(広義のガバナンス)の前に、「狭義のガバナンス」とでも言うべき体制の充実が必要であると考えている。それは監事と評議員会によるチェック、規律体制の構築である。
全体のガバナンス(統治)を形成するためにも、適切で緊張感のある「狭義のガバナンス」を形成することが必要であり、必須である。
そのためには、監事の適正な活動が基盤として成立していなければならない。


以上

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-- 登録:平成25年01月 --