私立学校法の一部を改正する法律等の施行について(通知)

16文科高第305号
平成16年7月23日

文部科学大臣所轄各学校法人理事長 殿
各都道府県知事

文部科学事務次官
御手洗 康

  このたび、別添のとおり「私立学校法の一部を改正する法律(平成16年法律第42号)」、「私立学校法施行令等の一部を改正する政令(平成16年政令第226号)」及び「私立学校法施行規則の一部を改正する省令(平成16年文部科学省令第37号)」が公布され、平成17年4月1日から施行されることとなりました。
  これらの法令改正の趣旨、概要及び留意すべき事項は下記のとおりですので、十分に御了知の上、その運用に当たって遺漏のないようにお取り計らいください。
  また、各都道府県知事におかれては、所轄の学校法人及び私立学校法第64条第4項の法人に対して周知されるようお願いします。

第一 改正の趣旨

  学校法人が公教育の担い手として今後とも健全な発展を続けていくためには、少子化等社会経済情勢の変化をはじめ、法人諸制度の改革、規制緩和の進展など学校法人をめぐる近年の状況等に適切に対応するとともに、様々な課題に対して主体的かつ機動的に対処できる体制にしていくことが重要である。このため、私立学校の公共性を高めるとともにその自主性を最大限尊重する現行制度の基本に立ちつつ、各学校法人における管理運営制度の改善を図るとともに、財務情報等の公開を一層推進し、あわせて、各都道府県における私学行政の一層適切な執行に資するため、その実情に即して私立学校審議会を構成することができるよう、所要の改正を行ったものである。

第二 改正の概要

1.私立学校法の一部を改正する法律(平成16年法律第42号)

(1)学校法人の管理運営制度の改善

1.理事制度の改善
  • ア 学校法人に理事会を置くこととし、理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督することとしたこと。あわせて、理事会の招集方法、議長、定足数及び議決要件について定めたこと。(第36条関係)
  • イ 理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理することとしたこと。(第37条第1項関係)
  • ウ 理事(理事長を除く。)は、寄附行為の定めるところにより、学校法人を代表し、理事長を補佐して学校法人の業務を掌理する等とするほか、民法第54条を準用しないこととしたこと。(第37条第2項及び第49条関係)
  • エ 理事のうちには、その選任の際現に当該学校法人の役員又は職員でない者(以下「外部理事」という。)を1名以上選任することとしたこと。ただし、最初の選任の際に外部理事として選任された理事が再任される際には、外部理事とみなされること。(第38条第5項及び第6項関係)
  • オ 理事の定数、任期、選任及び解任の方法並びに理事会に関する規定を必ず寄附行為に記載することとしたこと。(第30条関係)
2.監事制度の改善
  • ア 監事の職務として新たに、学校法人の業務又は財産の状況について、毎会計年度監査報告書を作成し、当該会計年度終了後二月以内に理事会及び評議員会に提出することを加えるほか、理事会の設置に伴う所要の規定の整備を行ったこと。(第37条第3項関係)
  • イ 監事は、評議員会の同意を得て理事長が選任することとするほか、評議員と兼ねてはならないこととすること。(第38条第4項及び第39条関係)
  • ウ 監事のうちには、その選任の際現に当該学校法人の役員又は職員でない者(以下「外部監事」という。)を1名以上選任することとしたこと。ただし、最初の選任の際に外部監事として選任された監事が再任される際には、外部監事とみなすこととしたこと。(第38条第5項及び第6項関係)
  • エ 監事の定数、任期、選任及び解任の方法を必ず寄附行為に記載することとしたこと。(第30条関係)
3 評議員会制度の改善
  • ア 事業計画については、理事長においてあらかじめ評議員会の意見を聞かなければならないこととしたこと。(第42条第1項関係)
  • イ 理事長は、毎会計年度終了後二月以内に決算とともに事業の実績を評議員会に報告し、その意見を求めなければならないこととしたこと。(第46条関係)

(2)財務情報の公開

  1. 学校法人は、毎会計年度終了後二月以内に、財産目録、貸借対照表及び収支計算書のほか、事業報告書を作成しなければならないこととしたこと。(第47条第1項関係)
  2. 学校法人は、上記1の書類及び監事の作成する監査報告書(以下「財産目録等」という。)を各事務所に備えて置き、在学者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないこととしたこと。(第47条第2項関係)
  3. 学校法人の理事等が、財産目録、貸借対照表及び収支計算書のほか、事業報告書及び監査報告書の備付けを怠り、又は記載すべき事項を記載せず、若しくは不実の記載をしたときは、二十万円以下の過料に処することとしたこと。(第66条関係)

(3)私立学校審議会の構成の見直し

  私立学校審議会の委員は、教育に関し学識経験を有する者のうちから都道府県知事が任命することとするほか、委員の資格、構成割合、推薦手続等は、都道府県知事の判断にゆだねることとしたこと。(第10条及び第11条関係)

(4)施行期日等

  1. この法律は、平成17年4月1日(以下「施行日」という。)から施行すること。ただし、施行日前に設立された学校法人の寄附行為に対する下記3の規定については、公布の日から施行すること。(附則第1条関係)
  2. 私立学校審議会の委員の任命並びに外部理事又は外部監事の選任及び評議員会の同意を得て行う監事の選任に係る改正規定は、施行日以後に行われる委員の任命及び役員の選任について適用すること。(附則第2条及び第5条関係)
  3. 施行日前に設立された学校法人で、当該学校法人の寄附行為に上記(1)の1のオ又は2のエについての定めのないものは、平成18年3月31日までに、これらの事項について寄附行為をもって定めなければならないこととしたこと。(附則第3条関係)
  4. 評議員会に対する事業の実績の報告、事業報告書及び監査報告書の作成及び事務所への備付け並びに財産目録等の閲覧に係る改正規定は、平成16年4月1日以後に始まる会計年度に係る事業の実績及び財産目録等について適用すること。(附則第4条、第7条及び第8条関係)
  5. 事業計画に関する評議員会からの意見聴取に係る改正規定は、施行日以後の期日を期間の始期とする事業計画について適用すること。(附則第6条関係)
  6. 私立学校法の一部改正に伴い、地方自治法の一部を改正したこと。(附則第9条関係)
  7. その他関係規定の整備を行ったこと。

2.私立学校法施行令等の一部を改正する政令(平成16年政令第226号)

  • (1)都道府県知事を所轄庁とする学校法人及び私立学校法第64条第4項の法人の都道府県知事への届出事項に関し、登記内容の変更に伴う規定の整備を行ったこと。(私立学校法施行令第1条第2項関係)
  • (2)登記事項として、新たに「代表権の範囲又は制限に関する定めがあるときは、その定め」を加えることとしたこと。(組合等登記令別表1関係)
  • (3)私立学校法の一部改正に伴う規定の整備を行ったこと。(私立学校法施行令第1条第2項及び沖縄の復帰に伴う文部省関係法令の適用の特別措置等に関する政令第49条関係)
  • (4)この政令は、平成17年4月1日から施行すること。

3.私立学校法施行規則の一部を改正する省令(平成16年文部科学省令第37号)

  • (1)寄附行為(変更)認可申請手続等に係る提出書類について見直しを行ったこと。(第2条関係)
  • (2)学校法人等の寄附行為変更の届出事項として、私立専修学校及び私立各種学校の設置廃止を伴わない名称変更等を追加したこと。(第4条の3関係)
  • (3)私立学校法施行令の一部改正に伴う規定の整備を行ったこと。(第13条第1項関係)
  • (4)文部科学大臣を所轄庁とする学校法人の文部科学大臣への届出事項等に関し、登記内容の変更に伴う規定の整備を行ったこと。(第13条第3項及び第4項関係)
  • (5)その他関係規定の整備を行ったこと。
  • (6)この省令は、平成17年4月1日から施行すること。

第三 留意事項

1.私立学校法の一部を改正する法律

(1)学校法人の管理運営制度の改善

1.理事制度の改善
  • ア 理事会については、すべての理事が学校法人の運営に責任を持って参画し、機動的な意思決定をできる体制を整備する観点から、学校法人の業務の決定を行う機関として法律上明確に位置付けたものであること。このような理事会に期待される役割にかんがみ、理事会運営の活性化を図る観点から、理事長についてはできる限り常勤化や兼職の制限を行うとともに、非常勤の理事に対しては学校法人の運営の状況について定期的な情報提供を行うことが期待されること。また、理事会の議事についてはいわゆる白紙委任は行うべきでなく、出席できない場合にはできる限り書面による意思表示を行うようにされたいこと。
  • イ 今回の改正により、原則として理事長のみが代表権を有することとなり、理事長以外の理事については、寄附行為の規定により代表権を付与された場合にのみ代表権を有することとなること。
  • ウ 外部理事については、学校法人の運営に多様な意見を取り入れ、経営機能の強化に資するよう導入したものであること。このため、1名に限るのではなく、各学校法人の規模や実情等に応じてできる限り積極的な登用が期待されること。また、選任の際だけでなく過去においても当該学校法人の役員又は職員でなかった者や、学校及び学校法人の運営に関し優れた識見を有する者を選任するよう努められたいこと。
  • エ 理事の定数、任期、選任及び解任の方法並びに理事会に関する規定については、各学校法人において寄附行為に適切に定めを設ける必要があること。なお、私立学校法における理事については、特段の定めがない場合には理事長を含むものであることに留意されたいこと。
2.監事制度の改善
  • ア 監事の作成する監査報告書については、各学校法人の規模や実情等に応じた適切な内容とされたいこと。その際、監事の監査は財務に関する部分に限られるものではなく、学校法人の運営全般が対象となることに留意されたいこと。
  • イ 監事の選任については、監査される側の者のみで選任することのないようにする観点から改正するものであり、評議員会の同意を得ること及び最終的な選任を理事長において行うことを担保した上で、それ以外の具体的な選出手続については各学校法人において改正の趣旨を踏まえ適切に定められたいこと。
  • ウ 外部監事の導入及び評議員との兼職禁止については、監事の専門性及び独立性を高める観点から行うこととしたものであること。このため外部監事については、選任の際だけでなく過去においても当該学校法人の役員又は職員でなかった者や、財務管理、事業の経営管理その他法人が行う業務の運営に優れた識見を有する者を選任するよう努められたいこと。
  • エ 監事の定数、任期、選任及び解任の方法については、各学校法人において寄附行為に適切に定めを設ける必要があること。
  • オ 監事が評議員を兼ねている場合は、平成17年4月1日以降は兼職できなくなるものであること。
  • カ 監査の結果、学校法人の業務又は財産に関し不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したときの所轄庁又は理事会及び評議員会への報告については、監事において当該内容や状況等に応じて適切に判断すべきであるが、仮に理事会及び評議員会に報告した場合に理事会又は評議員会において適切な対応がなされない場合には、所轄庁に報告されたいこと。
  • キ 監事の監査機能の充実を図る今回の改正の趣旨を踏まえ、各学校法人においては法人の規模や実情等に応じ、監事の常勤化を進めることや理事長等から監事に対して定期的に学校法人の業務の状況等について報告すること、監事の監査を支援するための事務体制や内部監査組織の整備を行うこと等監査の充実を図るための取組が期待されること。
3.評議員会制度の改善
  • ア 今回の改正は、評議員会が、理事会の行う学校法人の業務の決定に際し、当該決定が適切なものであるか判断し的確な意見を述べるとともに、学校法人の公共性を高めるために必要なチェックができるようにするためのものであること。このため、理事長が毎年度、事業計画及び事業の実績を評議員会に報告し意見を求める際には、評議員が当該学校法人の業務全体の状況について十分に把握できるよう留意されたいこと。
  • イ 評議員会については、諮問機関としての位置付けを原則としつつ寄附行為の定めにより重要事項の決定について評議員会の議決を要することとできる現行制度について今回変更するものではないこと。ただし、議決を要することとしている場合についても、理事会が業務の決定を行うに当たり、評議員会の意思を確認する方法として同意の議決を必要としているという性質のものであり、学校法人の運営についての最終的な責任は理事会が負うものである点に留意されたいこと。
  • ウ 学校法人の運営に多様な意見を反映し、学校法人の公共性の高揚を図ることを目的とする評議員会制度の趣旨にかんがみ、評議員会の構成について、当該学校法人の役員及び職員が大多数を占めたり、特定の同族が多く選任されたりすることのないようにされたいこと。

(2)財務情報の公開

  1. 今回の改正は、学校法人が公共性の高い法人としての説明責任を果たし、関係者の理解と協力を一層得られるようにしていく観点から、従前より義務付けられている財務書類の作成及び事務所への備え置きに加えて、新たに一定の書類を関係者への閲覧に供することを義務付けたものであること。
  2. 今回の改正内容は、設置する学校の種類や数、規模等、学校法人の多様な実態を踏まえつつ、法律によりすべての学校法人に共通に義務付けるべき最低限の内容を規定したものであること。したがって、各学校法人におかれては、法律に規定する内容に加え、設置する学校の規模等、それぞれの実情に応じ、例えば学内広報やインターネット等の活用など、より積極的な対応が期待されること。
  3. 各都道府県知事所轄の学校法人については、一般に小規模な学校法人が多いことにかんがみ、各都道府県において指導等を行うに際しては、これらの小規模法人に過度の負担とならないよう配慮されたいこと。

(3)私立学校審議会の構成の見直し

  今回の改正は、都道府県における私学行政を過度に規制しないよう、私立学校審議会の委員の資格や構成割合、推薦手続に関する詳細な規定を見直すものであり、今後は、各都道府県において、それぞれの地域の実情を勘案しつつ、都道府県知事の私立学校における行政の適正を期するために置かれている私立学校審議会の目的を踏まえた適切な人選を行われたいこと。

2.私立学校法施行令等の一部を改正する政令(平成16年政令第226号)

  • (1)都道府県知事への届出事項に係る改正については、今回の私立学校法の改正により今後は理事長及び代表権を有する理事のみを登記することとなったことに伴い、改正後も引き続きすべての理事の就任・退任の状況等について把握できるようにするための改正であること。また、理事就任と同時に理事長に就任する場合等私立学校法施行令第1条第1項に基づく届出と同条第2項に基づく届出が同時に行われる場合の提出書類については、重複することのないよう各都道府県において配慮されたいこと。
  • (2)寄附行為の定めにより代表権を付与された理事について、特定の事項についてのみ代表権を有することとする等代表権の範囲に限定がある場合については、今後は当該代表権の範囲について登記することが必要となること。

3.私立学校法施行規則の一部を改正する省令(平成16年文部科学省令第37号)

  • (1)第2条第1項の改正については、役員が欠格事由のすべてに該当していないことの確認を行うための改正であること。
  • (2)文部科学大臣への届出事項に係る改正については、上記2.(1)と同様の趣旨で行ったものであること。なお、理事就任と同時に理事長に就任する場合等第13条第2項に基づく届出と同条第3項に基づく届出が同時に行われる場合の提出書類については、重複する書類は省略可能であること。

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-- 登録:平成21年以前 --