平成20年2月20日(水曜日)
15時~17時30分
霞が関東京會舘シルバースタールーム
生駒委員長、青井委員、安部委員、碓井委員、加治木委員、北川委員、妹尾委員、多氣田委員、日高委員、藤川委員
藤原課長、坂口企画官、黒澤課長補佐、高橋係員(以上、全て専門教育課)
平成19年度の「サービス・イノベーション人材育成推進プログラム」に選定された6大学の代表者(プロジェクト実施担当者)よりプロジェクトの進捗状況、今後の推進計画等についてプレゼンテーションが行われ、それぞれについて、出席者による意見交換が行われた。
主な意見は以下のとおり。
(プロジェクト名称:サービス・イノベーション・マネージャーの育成-サービス・セクターの生産性管理のための人材育成-)
【委員】
CSIの調査は重要だが、サービスでイノベーションを実現するならば、全体の特徴指標だけでなく個別のニーズやそれに基づいた教育が必要である。
【大学出席者】
今後、統計処理も含めた指標の構成の工夫を図り、指数も徐々に細かくして個別性を確保していきたい。
【委員】
実際に13人の学生を対象に、全く新しい学問体系による教育を開始して約4ヶ月が経過しているが、学生の手応えはどうか。
【大学出席者】
当初、プログラムへの参加意思を示す学生は3~5名程度と予想していたが、実際に希望者を募ったところ15名という多数の応募があった。また、教育プログラムは修士課程を対象としたものであるが、博士課程の学生からも2~3名の受講希望があった。予想よりもサービス分野に興味を持っている学生が多いというのが全体的な印象である。
(プロジェクト名称:顧客志向ビジネス・イノベーションのためのサービス科学に基づく高度専門職業人育成プログラムの開発)
【委員】
「サービス科学の理論と実践」という授業はどのような内容で構成されるのか。
【大学出席者】
理論として、オペレーションズリサーチのネットワークフローや待ち行列、ITの応用、管理会計等の講義を行い、実践としては、企業との連携によりコールセンターの事例を活用した講義を行った。
【委員】
看護士の勤務体制が厳しいという話を聞いており、医療分野にフォーカスしたのはタイムリーである。看護師のモチベーションを向上させるようなソリューションも考えてほしい。また、データベースはどのようなものを考えているのか。
【大学出席者】
看護士の行動特性を知るために、その上司や患者等のデータも収集してデータベース化することを予定している。
【委員】
本プログラムでは、特定のサービス分野は、教育プログラム構築のための事例として活用することのみ可能なのであって、あらゆるサービス分野の土台となる知識やスキルを扱うことで広くサービス全般において生産性向上やイノベーション創出に寄与しうる人材の育成が目的である。その意味で個別分野のデータベース等の具体例をプログラムにどのように結びつけるのか。
【大学出席者】
個々の調査を基にした統計処理等を行うところからアプローチする。最初はいろいろな対象に関して多様な知見が出てくると思うが、それらの関係性に着目する中で普遍性を備えた理論が導けると期待している。
【委員】
構築されるデータベースが筑波大学の既存の研究分野としての組織行動学を改善するためのものではなく、医療分野そのものの改善に資するようなものになってほしい。
【委員】
サービスを提供する側の人間に視点を置いていることは評価できるが、これを業務のプロセスイノベーションの実現にも資するようなものとしてほしい。
【大学出席者】
(他大学の出席者)学生の教育に関する状況はどうか。
【大学出席者】
専攻の定員は53名であり、その中で20名程度の学生に本プログラムの教育を行っている。
(プロジェクト名称:社会的サービス価値のデザイン・イノベーター育成プログラム)
【委員】
1,600人の理工系大学院生全員を対象としたリベラルアーツカリキュラムであるとのことだが、学生や他の教員からの反応はどうか。
【大学出席者】
東工大の修士学生は他専攻科目を4単位取得することとなっており、本カリキュラムの科目で代替できる仕組を設けているため、学生の負担とはなっていないと認識している。また、他の教員からの抵抗感もない。
【委員】
ヘルシンキ工科大学(HUT)と実施したバトルトークとはどのような内容か。
【大学出席者】
HUTの学生16名及び東工大の学生13人の29名を5つのグループに分けて、フィンランドにおける教育の評価や日本の文化等に関するテーマについて討論を行った。
【委員】
グローバルに展開しており、他の大学にとっても非常に参考となる取組なので、可能な範囲で討論の状況等を公開していただきたい。
【大学出席者】
(他大学の出席者)フィンランドはサービス研究のメッカであるが、HUTを提携先として選んだ理由は何か。
【委員】
東工大と提携校となっていることがひとつの理由である。また、HUTは流動的な体制を構築してノキアから専門家を教員として招へいするなど産学官連携に関してプロジェクト推進の手本となるところが多かった。
(プロジェクト名称:「サービス価値創造マネジメント」教育プログラムの開発)
【委員】
人類学的方法論を担当する教員はどのようなバックグラウンドを持つのか。
【大学出席者】
主に3名の教員が担当しており、1人は経営人類学を、もう1人はイノベーション・マネジメントを専門としている、あとは国立民族博物館の博士課程を取得した研究員である。この3人で「気づき」の訓練を行うトレーニング体系を構築する予定である。
【委員】
人類学的なアプローチは面白いが、機能的方法等理学との統合を考えると人類学的方法だけではプロジェクトが不十分にならないか。
【大学出席者】
人類学的方法論で開発した成果をベースに文理融合を展開するようなプロセスを考えていきたい。
【委員】
プロジェクトの成果物としての教材は作成するのか。
【大学出席者】
2分冊で作成する予定。1つは人類学的方法論に関するもので、もう1つはサービスの価値創出を扱ったケース教材である。
【委員】
学生はどのようなバックグラウンド持つのか。
【大学出席者】
社会人経験のある学生が3分の1から2分の1程度で、残りは理工系が多いと認識している。
【委員】
サービス・イノベーションには、価値を創出するという面とプロセスにおいて生産性を高めるという面があり、京大では価値創出を重視していると理解するが、イノベーターの育成とイノベーターの(環境を整備する)支援のどちらを目的としているのか。
【大学出席者】
人材輩出をどちらか一方に限定しているわけではないが、例えば、公的領域の出口としては支援側の視点が中心になり、高度専門サービス業やITサービス業を出口と考えると、イノベーターの育成が中心となるだろう。
【委員】
人類学的アプローチには期待できるが、方法論的には参与観察にとどまってしまい、そこから出てくるのは学術的知見であり、実践的トレーニング手法ではない。参与観察やケース・メソッドだけでなく、実践家としての探索学習ができるようなトレーニング・マニュアルも展開してほしい。
(プロジェクト名称:高付加価値を生む、シミュレーション・マインドを持ったミドル・マネージャー育成プログラムの構築-サービス・マネジメント100(3段階ケース・メソッド)の開発と運用-)
【委員】
西武文理大学の全学生1,300人のうち、どの程度が求める人材として発掘・輩出できると考えているのか。
【大学出席者】
学生の大部分が将来的にサービス業への従事に関して高いモチベーションを持って入学してくる。多様な科目にケース教育を融合させた実践的な教育カリキュラムを展開することで、1,300人全員が課題解決型の能力を身につけて卒業してほしいと考えている。
【委員】
3年間でケース教材を100本作成するというのは非常に大きな目標である。他のビジネススクール等においても、ケース教材作成に従事する教員のモチベーションの維持が課題となっているが、その点はどのように解決することを考えているのか
【委員】
一般的に教員はケース教材を作成するぐらいなら論文を書きたがる傾向にある。強制力を持ってケース教材を作成させるだけの仕組が必要になるだろう。
【大学出席者】
企業出身の教員とも効果的に協力して、ケース教材作成に意欲的に取り組めるような仕組を検討しながら進めていきたい。
【委員】
理事長のリーダシップも得ながら、是非とも100本を実現してもらいたい。
(プロジェクト名称:サービス・イノベーションの真髄を把握し、活用する人材育成プロジェクト)
【大学出席者】
(他大学の出席者)明治大学が設定する調査仮説はどのように検証する予定か。
【大学出席者】
まずは、サービスに変異性が存在するか、そしてその変異性への対応がどのように行われているかについて明らかにしていきたい。今は、その対応関係がシステム化されていないというのが現状である。
【委員】
サービス・イノベーションに必要な知識・技能となる(A)IT関連知識・システム論・行動科学、(B)サービス理論、(C)現場での具体的な知恵を構成する暗黙知的知識・経験の3つは、どのような論拠で設定しているのか。
【大学出席者】
自分の考えであり、一種の仮説として設定している。それぞれ、(A)はサービス生産の構造部分で必要な要素、(B)はサービスのデザインに関係するもの、(C)はサービス供給においてニーズの不確実性に対応する具体的な知であり、これらはベストプラクティスの評価基準を明らかにするために設定している。
【委員】
もともとの「サービス・イノベーション人材育成推進プログラム」の主旨は、定義が定まっていないサービス・イノベーションというものに関してそれぞれのプロジェクトにおいて明らかにする取組を進めてほしいということ、また、アウトプットとして、優れた教材やベストプラクティス等を輩出してほしいということである。まずは、それぞれの大学において、これらの目的をしっかりと見据えてプロジェクトを推進してほしい。
【委員】
平成19年度選定プロジェクトはビジネス系のアプローチが多いが、特にITの分野では価値創造のスタイルが変わってきているという現状もあり、プログラムの今後としては、ITや数理科学をベースとしたようなアプローチも必要であると考えている。グーグルの成功が輝かしい例で、その背後には非常に複雑な数理科学のモデリングが存在している。
【委員】
6大学のプロジェクトに関して、相互の成果活用も視野に入れた効率的な連携をどう図っていくかについて、また、今後継続的に人材育成を進めていくうえでの展望について意見交換を行いたい。
【委員】
効率的な連携を図るためには継続的な議論の場が必要であり、コンソーシアム的な機能の形成が理想であるが、そこまでいかなくともベストプラクティスを蓄積していけるような仕組を検討すべきである。
【委員】
本プログラム以外にも国内ではサービスに関する様々な取組が進められており、例えば経済産業省の「サービス産業生産性協議会」等との連携も重要である。
【委員】
経済産業省では、ものづくりの生産性向上に係るノウハウをサービス業にも活用していこうという取組も進められており、今後の効果的な統合を期待したい。
【大学出席者】
継続的な取組が重要である。3年間のプロジェクト終了後の展開をどのようにするのかも含め、長期的に知識を蓄積していくような方針を文部科学省で検討してほしい。
【事務局】
本プログラムの公募要領において、委託期間終了後も大学が自立的かつ発展的な運営を行うこととなっている。そのうえで、まずは本プログラムのように新たな領域の教育研究も各大学で進めてもらい、打破すべき構造的問題等を今回の委員会のような議論の場でしっかりと検討しながら3年後以降の発展につなげていきたい。
【委員】
各大学において、2年間で教育プログラムのプロトタイプを開発し、それをもとに恒常的に教育を実施していくことが本プログラムの目的と認識している。
【大学出席者】
教材を開発して終わりということではないはず。単に教材をWebページへ公開するだけでは真の活用は期待できない。
【委員】
開発するのは教育プログラムであり、教材だけではない。6大学が効果的に連携し、分担できるところは分担するなどして効率性を確保しながら継続的に進めてもらいたい。
【委員】
国のプロジェクトは性質上期限が定められているものである。まずは期間内で所要の成果の輩出を目指すべきである。
【委員】
現在、各方面でさまざまな取組が進められているが、学会の形成という方向性もイメージしておくべきである。
事務局より、資料2及び資料3、資料4に基づいて、平成20年度のサービス・イノベーション人材育成関連予算である「産学連携による実践型人材育成事業」及び公募関係資料(案)、今後のスケジュールについての説明が行われた。公募関係資料については、2月27日(水曜日)を期限に委員会委員に意見照会を行うこととし、修正点の調整等は委員長に一任された。
主な意見は以下のとおり。
【委員】
既存の事業を繰り返すような場合、例えば民間企業であればこれまでの反省を行うような機会を設けるのが一般的である。本事業に関しても今後のよりよいプログラム構築を目指して、6大学のプロジェクト担当者等に対してプログラムの感想や運用上の改善点などを聞くような機会を設けてほしい。
【事務局】
可能であれば、非公開で意見を集約する方向で、メールによるアンケートの実施などを検討させていただきたい。
【委員】
平成20年度の新規公募にあたって、平成19年度に採択された大学の別のグループが申請することはできるのか。
【事務局】
排除するものではないが、既に19年度に学内において調整が行われたはずであるいうことも勘案して、じっくり審査させていただくこととなる。
以上
高等教育局専門教育課
-- 登録:平成21年以前 --