「産学連携による実践型人材育成事業-長期インターンシップ・プログラム開発-(平成18年度採択)」中間評価結果学

大 学 名
(共同:主となる大学名に◎)
東京工業大学
申請区分 (1) 単独   2 共同 設置形態
共同:主となる大学
(1) 国立   2 公立   3 私立
教育プロジェクト名称 社会共生型創発力を育む産学連携実践教育
学長の氏名 伊賀 健一
事業責任者 所属部局
職名
氏名
総合理工学研究科 
教授
小田原 修

◇事業概要(目的、特色、重要性など):大学からの進捗状況報告書を抜粋

<事業の目的>
 学部を持たない独立研究科として戦略的な学際化を進めてきた本学総合理工学研究科では、科学技術・産業が国の政策に相互に入れ子となっている複雑社会の中で産業社会を支える新しい人材像として、「社会の要請」に柔軟に応えて科学技術を展開する素養を備えた人材の育成を目指している。そのような社会と科学技術の共生を具現化した“創発的適応性の育成”には、社会ダイナミクスの特性を実践的な実業舞台において習得することが重要である。
 本プロジェクトでは、連携講座として教育研究に携わる企業を中心に国内外の企業と協同し、主に博士後期課程の学生が社会と直結した舞台で取り組む長期インターンシップ・プログラムを実施する。テーマの策定にあたっては、科学技術の展開のみでは通用しない社会問題を包含した課題を抽出する。そのシステム的解決手法の習得を第一義の目標として課すことにより、社会の危機管理に優れたリーダーとしても活躍できる創発性と創造性に卓越した人材を育成する新しい融合教育研究機能を構築する。
<事業の特色>
(1) 連携講座として教育研究に携わる企業との協働により、実務的に社会と直結するテーマを策定できる。
(2) 学生がプログラム立案から能動的に参加することで、その起承転結で発生する様々な問題を体験できる。
(3) テーマに沿ったシナリオの伝承を円滑な事前・事後教育の強化で機能させ、海外派遣を含む実質2ヶ月以上のプログラムへの取り組みの自由度と実施上の安全性を向上できる。
(4) 連携講座や寄付講義の担当企業でのポスドク研究員などによる試行を導入することで、機能的で相互に優位性の主張が可能なプログラムを質的に向上できる。
(5) テーマに対する3つの育成対象(実証、実用、政策)の優先順位を吟味することで、プログラムの実施へ向けての“機動性”を強化できる。
(6) 実施プログラムを問題解決型と技術革新型と国際協働型の3つの育成試行の枠組みに区分することで、取り組む“姿勢”を強化できる。
<事業の重要性など>
 従来概念を淘汰するような内外の大きな波にもまれている昨今、創造に富む高度な研究能力を育むだけでは不十分であり、「社会との共生」を意識し近未来の科学技術を的確に予測し先導する能力も不可欠である。本プロジェクトのように、社会と連携しニーズに対応した横断的・機動的教育を通して自然と社会の融合部分である“創発能力”を開発することで、「現在および将来において多様・複雑に変化・発展し続ける社会環境や産業環境の中で発生する問題の解決」に挑む人材を育成することができる。
 リーダーシップを発揮するためには、知的能力ばかりでなくリスクマネージメントやシステム融合手法に優れていることも必要であり、本プロジェクトでの課題克服により、一般に行われている企業体験・就業訓練型のインターンシップとは異なり、同じ目的意識の下での担当教員と協働して構築した取り組みを分担する中で、学生自身に基礎的な研究から導かれて社会還元シナリオへと繋がるまでのシナリオに挑む逞しさが備わる。このような社会と融合し果敢に挑戦する素養を備えた高い付加価値を持つ博士後期課程の人材育成は、企業と大学との人事交流や企業による大学への支援の強化にも効果的であり、取り巻く環境と有機的に繋がるグローバルな社会循環と活性力を生み出す可能性も大きく、その波及効果は十分期待できる。

◇産学連携高度人材育成推進委員会における所見

(総合評価)
本事業の本来の趣旨、本プログラムの当初目的を再確認し、助言等に留意しながら、当初計画の適切なる変更が必要と判断される。

(コメント)
 本プログラムは、既存の充実した産学連携プログラムを活用しており、恵まれた基盤に立脚している。そのため産学連携高度人材育成という独自性が見えにくくなっている。また、プログラムは未だ初期段階にあり、今後は、以下の点を考慮し、事務組織を含めた大学と企業との組織的な協力関係の下、残された時間で本プログラムをさらに深化させ、高度人材養成の一つのモデルケースを構築していただきたい。「東工大モデル」というより独立研究科としての「すずかけ台モデル」としての成果を期待したい。

  1.  連携講座の連携先を派遣先として活用するとしても(1)本プログラムの「狙い」を組み込むこと、(2)事前・事後教育の徹底、(3)産学連携により企業等の現場を活用するという本事業の本来の趣旨に沿った派遣などの点で、取り組み状況は十分とはいえない。 よって、(a)博士課程後期の学生にプロフェッショナル人材の素養として何を学ばせるか、(b)派遣先特有の組織や技術領域をどのように習得させるか、(c)研究・開発などに携わる高度なインターンシップに必要な事前教育( CSR、知的財産、安全教育、市場変化など)をいかに効果的に行うか、(d)プログラム全体で博士課程後期「高度人材養成」のモデルを創るという総合的な考え方とマネジメントを各インターンシップにおいてどのように実現するかについて、具体的に明らかにした上で、職業スキルにとどまらず、現実の中から問題設定を行ったり、企業活動全体の中で自分の専門の位置づけを理解するなど、現実社会の中で必要となる「能力」を涵養するためのモデルとなるように、大学の研究所等ではなく、企業等の実際の現場でインターンシップを実施する必要がある。
  2.  プログラム運営全般的に、企業サイドの意向・都合などが優先されており、インターンシップ実施における産学双方の協議が十分にされているとは言えず、大学関係者がもっと積極的に関与していく必要がある。
  3.  連携講座の連携先を派遣先とすることで十分な派遣先が確保されているにもかかわらず、これまでの派遣実績が少なく、このままではプログラムの十分な検証ができない可能性もある。学生への情報提供に注力するとともに、研究科内の各専攻に更なる協力を求め、参加学生を増やし、このプログラムに投入した資金がどのように還元されているか見えるように努力する必要がある。
  4.  18・19年度の成果と課題が具体的に示されず、その後の計画に見える形で反映されていない。今後、企業からのアドバイザーや特任教授の意見も活用し、産学連携のマネジメント体制、第三者評価の体制をしっかりと機能させ、プログラムの改善に努めていく必要がある。
  5.  国内外の派遣先が本プログラムの趣旨を理解して、双方にメリットが生まれるように整えるにはまだ時間がかかると思われる。インターンシップ生の守秘義務の在り方、短期研究・研修で得られる成果などについて、大学と企業の間で十分なコンセンサスが得られるよう一層の努力が必要である。
  6.  長期海外派遣について、ビザ取得手続き等による派遣の遅れから派遣期間の短縮などの問題が生じており、制度や文化の相違に習熟した専門家のアドバイスが必要である。限られた研究連携等の経験のみでは、高度人材育成におけるリスク・マネジメントは十分とは言えない。

お問合せ先

文部科学省高等教育局専門教育課

電話番号:03-5253-4111(内線2992)

(文部科学省高等教育局専門教育課)

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