平成24年3月30日
本会議では、高等教育機関に進学・在籍する外国人学生の日本語教育に関し、
(1)平成22年5月の事業仕分け結果を踏まえた、新たな法務省告示の際の審査の枠組みの在り方
(2)日本語教育機関の教育の質保証等の在り方
(3)高等教育機関と日本語教育機関との連携促進
などの課題について、日本語教育機関の多様な設置形態・教育対象者や、在留資格「留学」が高等教育以外の機関で学習する者を含む資格であること等を踏まえた上で、議論を行い、平成23年8月に「第一次まとめ」を取りまとめた。
「第一次まとめ」取りまとめ後も、当面の間以降の新規審査の枠組みや、その他の高等教育機関に進学・在籍する外国人学生の日本語教育に関する課題等についての議論を行い、最終的な報告書として取りまとめる。
今後、本報告書を踏まえ、法務省告示に係る審査の枠組みや高等教育機関に進学・在籍する外国人留学生に対する日本語教育に関する諸施策が適切に実施されることを期待する。
※:本取りまとめにおける「日本語教育機関」とは、在留資格「留学」を取得できる機関で専ら日本語教育を実施する機関を指し、「高等教育機関」とは、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)を指す。
1.日本語教育機関に関する喫緊の課題は、財団法人日本語教育振興協会(以下、「日振協」という。)が実施してきた日本語教育機関の審査・証明事業に関し、法務大臣が告示をもって外国人に対する日本語教育を行う機関を定める場合には「日本語教育機関の設備及び編制についての審査及び証明を行うことができる法人による証明を参考とすることができる」とされているが、平成22年5月の事業仕分けで、「民間の組織の行った審査結果を「参考にする」という法令の立てつけとなっているが、日振協を通さなければいけないのか不明確」、「法的により明確な制度に改めるべき」との趣旨で「廃止」するとされたことを踏まえ、法務省告示に係る審査の枠組みを今後どのように構築するかということである。
2.「第一次まとめ」において、(1)喫緊の課題としての法務省告示に係る審査の枠組みについて、及び、(2)日本語教育機関の水準の維持・向上について検討し、提言を取りまとめた。
3.その後も本会議において、(1)当面の間以降の審査の枠組みや、(2)日本語教育機関の水準の維持等についての検討を行ったところである。
(※1:かつての在留資格「留学」、「就学」は、平成22年7月に「留学」に一本化された。現行の在留資格「留学」は、高等学校に在籍する者や高等教育機関への進学を希望しない学習コースに在籍する者にも付与され、在留資格「留学」を取得するために必要な日本語教育の在り方というものを統一的に捉えることは難しい。また、日本語教育機関に在留資格「留学」以外の在留資格を有する者が在籍する機会もある。このため、(1)高等教育機関への進学を希望する者に対する日本語教育、(2)高等教育機関への進学ではなく、一般的な目的(例えば企業への就職を希望する者)を有する者に対する日本語教育、(3)在留資格「留学」以外の在留資格を有し、日常生活者としての学習を希望する者に対する日本語教育、というように、学習者のニーズに対応した分類での、在るべき日本語教育の姿、求められる教育の質、基準、公的な関与の在り方等について、中長期的な観点から検討を継続することが必要である。)
(※2:法務省告示の枠組みは法務省により運用される制度であるが、外国人が、本邦の大学、短期大学、高等専門学校、高等学校等以外の機関で専ら日本語教育を受けようとする場合は、当該機関が法務省告示をもって定められなければ、在留資格「留学」をもって本邦に入国・在留できないという重要な課題であることから、本会議としてその在り方の枠組み(案)を議論し、提言する)
1.法務省告示に係る新規審査について「第一次取りまとめ」では、新規開設を希望する日本語教育機関に対する円滑な審査の実施の必要性を考慮し、当分の間は、国による審査を行うべきと考えるとしたところである。
2.その後、当分の間以降の審査の枠組みについて引き続き検討した結果、法務省告示に関する新規審査の枠組みについては、両省協力の下、適切、確実に実施することとし、具体には、
(1)「第一次まとめ」において、国が行うとされた当分の間以降も、引き続き国が開設に係る事前の行政相談の受付及び審査を行い、在留資格認定証明書交付申請後に審査結果を踏まえて告示を行う枠組み、
(2)効率的、効果的な審査のため、引き続き法務省が開設に係る事前の行政相談を受け付け、文部科学省の協力を得つつ審査を行い、法務省が告示を行うこと、及び両省が両省の事務を円滑に実施するための環境整備を実施、
(3)審査に際しては、(1)新規開設希望校に対する審査が、日本語教育機関の水準維持に重要な役割を果たしているという意識の共有、(2)法務省及び文部科学省がそれぞれ担当する役割の明確化とその確実な実施、
が望まれる。
また、国が審査を行うに際しては、原則として書面審査のみを行う項目の特定や専門的知見を有し中立的・客観的な立場での審査が可能な組織への審査業務の外部委託等、効率的な審査の実施が望まれる。
なお、学生の日本留学に対する信頼性を担保する観点から、新規開設を希望する日本語教育機関が、法務省から、事前の行政相談の結果回答時に手交された、回答文書を学生募集の際に示すこと等により、当該日本語教育機関の新規開設に関する状況を示すこと等が望まれる。
3.審査基準については、「第一次まとめ」を踏まえ、これまで法務省が告示の際の参考としていた日振協の審査・証明において使用していた現行の基準(昭和63年に文部省(当時)が策定した基準及び平成15年に日振協が策定した審査内規)をベースに、文部科学省と法務省が連携して、告示校たる日本語教育機関としての適格性を判断するための基準を策定することが望ましい。
本会議としては、別添1-1の審査基準(案) (PDF:174KB)、別添1-2の審査基準ガイドライン(案) (PDF:108KB)を提言する。
4.法務省告示校の新規申請時の審査事項に変更が生じた際の取り扱いについては、「第一次まとめ」を踏まえ、法務省において早急に決定し、告示校に周知されることが必要である。
また、日本語教育機関の設備・編制の水準が継続的に維持されることが重要である旨を踏まえた、枠組みの構築が望まれる。
本会議としては、別添2の取扱い(案) (PDF:93.1KB)を提言する。
1.日本語教育機関の教育の水準の維持・向上については、(1)教育の質の基準、(2)教職員の質の基準、(3)継続的な質保証の枠組み等に着目し、法務省告示の枠組みとは別の観点として、日本語教育機関には多様な在留資格を持つ学習者が在籍すること等を踏まえつつ、日本語教育機関での在るべき日本語教育の内容、その他解決すべき課題等について、中長期的な観点から継続的に検討することが必要である。
また、在留資格「留学」につながらない日本語教育を行う機関等も存在することから、教育水準の維持・向上については、全体のニーズや状況等を踏まえた上で、基準や枠組みを設定することの可否等も含めて検討を行うことが必要である。
2.また、高等教育機関が外国人学生に求める日本語能力は、学部・大学院等、文系・理系・医歯薬系等と、受入れレベル・分野により様々である。高等教育機関への進学を目的とする者に対する教育の質を検討する際には、高等教育機関が入学者に対してどのような日本語能力を求めているか等を踏まえながら検討を進める必要がある。
3.なお、日本語教育の質の保証の枠組みの検討に際しては、機関毎の特性を踏まえた上での、その必要性の有無も含めた検討が必要である。このため、留学生支援を担う文部科学省高等教育局学生・留学生課と生活者等を含めた外国人一般に対する日本語教育の推進を担う文化庁文化部国語課が連携して、検討を行っていくことが必要である。
4.また、日本語教育機関の教育の質が担保され、安心して学べる環境であるという情報を海外に向けて発信していくことも、質の高い外国人学生を獲得するために必要である。
1.「第一次まとめ」にあるとおり、日本語教育機関においては、高等教育機関への進学準備のみを担うという状況ではなくなってきていると考えられる。高等教育機関進学後の外国人学生に対する追加的な日本語教育の提供等、日本語教育機関が果たす役割は、これまで以上に大きいものになると考えられる。
2.高等教育機関においては、学力及び語学能力(日本語、英語等)を適切に判断した入学者選抜により学生を入学させることが、入学後の充実した学修・学生生活や在籍管理の観点等からも重要と考えられる。
3.外国人学生の日本語能力に関しては、例えば、(1)大学入学に必要な専門分野の学力は有しているが、日本語能力が不足する者を一定の条件下で正規学生として入学させることや、(2)海外での、高等教育機関と日本語教育機関が連携した選抜試験の実施など、外国人学生が我が国に留学しやすい環境を整えることが重要である。このような環境整備にあたっては、高等教育機関と日本語教育機関との連携は重要なものと考えられる。また、国際交流基金は、留学生の母国における日本語教育と我が国の高等教育機関における日本語教育のアーティキュレーション(接続性)の支援に取り組んでいるところ、その成果は日本語教育機関にも参考になるものと考えられる。
4.今後、多様な日本語教育を提供している日本語教育機関と高等教育機関が連携することにより、高等教育機関に在籍する外国人学生の様々なニーズに応じた日本語教育の提供の機会の拡大が期待される。
5.また、多様な日本語学習者のニーズを踏まえ、国、地方公共団体、企業等、さまざまな団体と日本語教育機関との連携の促進も重要と考えられる。
なお、外国人学生が安心して学習に取り組める環境の構築等についても、各種団体との連携により促進されることが期待される。
以上
留学生交流室留学交流支援係
電話番号:03-5253-4111(内線2517)
-- 登録:平成24年04月 --