平成23年8月18日
1.本会議においては、高等教育機関に進学・在籍する外国人学生の日本語教育に関し、
(1)平成22年5月の事業仕分け結果を踏まえた、新たな法務省告示の際の審査の枠組みの在り方
(2)日本語教育機関の教育の質保証等の在り方
(3)高等教育機関と日本語教育機関との連携促進について
などの課題についての議論を行った。
2.本会議では、日本語教育機関の多様な、設置形態、教育対象者、教育内容や在留資格「留学」が高等教育以外の機関で学習する者を含む資格であること等を踏まえ、1.外国人留学生に対する在るべき日本語教育の在り方や、2.法務省告示に係る審査の枠組み等について様々な意見が述べられ、活発な議論が交わされた。
3.本報告書の提言を踏まえ、今後、法務省告示に係る審査の枠組みや、日本語教育の在り方、課題の検討等に関する諸施策が、適切に実施されることを期待する。
※:本とりまとめにおける「日本語教育機関」とは、在留資格「留学」を取得できる機関で専ら日本語教育を実施する機関を指し、「高等教育機関」とは、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(専門課程)を指す。
1.グローバル化した現在社会においては、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」は、国境を越えて、自らが有するニーズに沿って移動していく。ニーズが無いところ、移動を阻害する障壁が存在するところは迂回されるだけであり、移動する側によほどのニーズが無い限り、その障壁を乗り越えて入ってくることはない。外国人留学生の受入れ促進についても、最低限のルールを守りつつも、我が国が世界的な人材循環の環から取り残されないような、ルールの確立という視点で取り組んでいくことが必要である。
2.外国人留学生の受入れは、社会、高等教育機関、学生の国際化等の観点から、我が国にとって重要なテーマであり、平成22年(2010年)6月に決定された「新成長戦略」においても「2020年を目途に我が国から海外への日本人学生の留学等の海外交流を30万人、質の高い外国人学生の受入れ30万人を目指す」とされている。
3.我が国はこれまで、教育・研究レベルの高さや、安心・安全な社会、歴史と伝統を有する文化等、外国人留学生を引きつける様々な魅力を有し、多くの外国人留学生を受け入れてきた。
4.しかし、各国間における質の高い学生獲得競争が激しくなる中、我が国においても、より一層の、留学生の受入れ環境の充実や日本留学情報の発信を図ることが求められてきている。
5.また、本年3月に発生した東日本大震災は、外国人留学生を含む多くの人々に対して多大な被害をもたらした。
外国人留学生に関しては、震災の影響による一時的な帰国等の現象が見られたものの、大学等の再開にあわせて、多くの留学生が再渡日、新規渡日してきているが、震災の影響により、再渡日や新規渡日を断念した者や今後の日本留学を躊躇する者の存在も考えられる。
6.このため、関係省庁、高等教育機関、日本語教育機関等が連携し、日本留学に関する正確な情報の発信や、従来にも増した魅力ある留学環境の構築等による、外国人留学生の獲得のために諸施策にスピード感を持って取り組んでいく必要がある。
1.日本語教育機関に関する喫緊の課題は、平成22年5月の事業仕分けで、財団法人日本語教育振興協会(以下、「日振協」という。)が実施する日本語教育機関の審査・証明事業が、その制度が不明確であり、法的により明確な制度に改めるべきとの趣旨で「廃止」するとされたことを踏まえ、法務省告示に係る審査の枠組みを今後どのように構築するかということである。
2.上記1を検討する中で、1.在留資格「留学」を取得できる機関となるための法務省告示の際に必要な審査に関することと、2.日本語教育機関で実施されるべき日本語教育の在り方等について、審査主体や告示後の継続的な教育水準の維持の在り方、日本語教育の在り方、日本語教育の質の基準や日本語教師に求める基準などの観点から様々な意見が述べられ、活発な議論が展開された。
3.議論では、これまで日本語教育機関が外国人留学生の受け入れに際して果たしてきた重要な役割を確認するとともに、今後も、引き続き同様の役割を果たすことが期待されることが確認された。
4.上記1を踏まえ、本会議としては、1.喫緊の課題としての法務省告示に係る審査の枠組みについて及び、2.日本語教育機関の水準の維持・向上について検討することが必要と考える。
(※1:かつての在留資格「留学」、「就学」は平成22年7月に「留学」に一本化された。現行の在留資格「留学」は、高等学校に在籍する者や高等教育機関への進学を希望しない学習コースに在籍する者にも付与され、在留資格「留学」を取得するために必要な日本語教育の在り方というものを統一的に捉えることは難しい。また、日本語教育機関に在留資格「留学」以外の在留資格を有する者が在籍する機会もある。このため、1.高等教育機関への進学を希望する者に対する日本語教育、2.高等教育機関への進学ではなく、一般的な目的(例えば企業への就職を希望する者)を有する者に対する日本語教育、3.在留資格「留学」以外の在留資格を有し、日常生活者としての学習を希望する者に対する日本語教育、というように、学習者のニーズに対応した分類での、在るべき日本語教育の姿、求められる教育の質、基準、公的な関与の在り方等について、中長期的な観点から検討を継続することが必要である。)
(※2:法務省告示の枠組みは法務省により運用される制度であるが、大学、短期大学、高等専門学校、専修学校(除く専ら日本語教育を行うもの)、各種学校(除く専ら日本語教育を行うもの)、高等学校等以外の機関は、法務省告示を得られないと入学する学生が在留資格「留学」を取得できる日本語教育機関になれないという重要な課題であることから、本会議としてその在り方の枠組み(案)を議論し、提言する。)
1.事業仕分けにおいて、法務省が告示の際に参考にすることができるとされた、日振協の審査・証明事業は、法的により明確な制度に改めるとして、廃止とされた。
今般、喫緊の課題への対応として、本法務省告示に係る新規審査及び変更届出等継続的な水準の維持の枠組みについて、提言する。
2.今後の新たな審査の枠組みとしては、次のことが考えられる。
(1)これまで、法務省が告示の際の参考としていた日振協の審査・証明において使用していた現行の基準(昭和63年に文部省(当時)が策定した基準及びその後日振協が改正を加えた基準)をベースに、文部科学省と法務省が連携して、告示校たる日本語教育機関としての適格性を判断するための基準を策定する。
また、専修学校、各種学校のように、既に都道府県によってその設置が認可されている機関に対する法務省告示の必要性の再検討や、告示が必要な場合であっても可能な限り手続きを簡素化するための検討が必要である。
(2)上記(1)で策定される基準に基づく告示校たる審査実施の枠組みについては、
1)国(文部科学省のみ、文部科学省と法務省の合同、法務省のみ)による審査、
もしくは、
2)審査団体による審査(※注:審査団体と業界団体は峻別)
の2つが考えられる。
3.審査の在り方を検討する際の留意事項
(1)より多くの優秀な外国人留学生の受入れを目指した日本語教育環境の構築にあたっては、新規開校の告示時に認められた日本語教育機関としての水準が継続的に維持されることが重要である。
(2)法務省告示校の申請事項に変更が生じた場合、これまで実質的には日振協において変更審査が実施されていたが、当分は、新規審査が国又は審査団体のいずれで実施されるの如何にかかわらず、法務省において届出事項、届出手順等が決定され、告示校に周知される必要がある。
(3)これまで日振協が3年毎に実施していた日振協自主事業である「認定」の更新については、法務省から、既に日振協による「認定」が更新されないことを理由に法務省告示を削除することは無い旨周知されており、法務省告示と日振協「認定」との関係性が明確化されている。
他方、日振協が自主事業として実施していた「認定」の更新のような枠組みは、日本語教育機関の継続的な水準の保持に一定の意義があったと考える。このため、今後も、日本語教育機関の告示後の水準を維持する何らかの機能は必要である。
なお、法務省告示校が449校(平成23年6月1日現在)存在することから、当該告示の告示制度における継続的な質保証の枠組みについては、その実現可能性にも留意しつつ、枠組みの構築を検討する必要がある。
4.当分の審査のあり方について
法務省告示の枠組みの検討に際しては、新規審査及び変更届出等継続的な水準の維持という点に留意する必要がある 。先の点に対する留意事項を全て満たす枠組みは、その業務量も膨大なものになると考えられる。このような膨大な業務量を国が実施することは、人員面、予算面等で難しい状況であるものの、仕分け結果を踏まえれば、審査団体の法的位置付けを確立しない限り、審査団体による審査も難しい。このため、今後の新規審査及び変更届出等を含む継続的な水準の維持の枠組みについては、時間をさらにかけた検討が必要と考えられる。
したがって、新規開設を希望する日本語教育機関に対する円滑な審査の実施の必要性を考慮すると、新規審査については、当分の間は、国による審査を行うべきと考える。
また、当分の間の法務省告示校について新規申請の際の審査事項に変更が生じた場合の取り扱いについては、法務省において関係機関と協力の上早急に、届出事項、届出手順等が決定され、告示校に周知される必要があると考える。
なお、当分の間以降の新規審査及び変更届出等を含む継続的な水準の維持の枠組みを検討するため、本検討会議の下に有識者による検討の場を設け、早急に最終的な提言をするための基本的な考え方を取りまとめることとする。
1.日本語教育機関においては、高等教育機関への進学準備のみを担うという状況ではなくなってきていると考えられる。進学後の外国人留学生に対する追加的な日本語教育の提供等、引き続き日本語教育機関が果たす役割は、これまで以上に大きいものになると考えられる。
2.高等教育機関においては、学力及び語学能力(日本語、英語等)を適切に判断した入学者選抜により学生を入学させることが、入学後の充実した学修・学生生活や在籍管理の観点等からも重要と考える。
外国人留学生の日本語能力に関しては、例えば、1.大学入学に必要な専門分野の学力は有しているが、日本語能力が不足する者を一定の条件の下で正規学生として入学させることや、2.海外における高等教育機関と日本語教育機関が連携した選抜試験の実施など、外国人留学生にとって留学しやすい環境を整えることが重要であると考えられ、引き続き検討が必要な課題であるが、このような環境整備にあたっては、高等教育機関と日本語教育機関との連携は極めて重要なものと考える。
3.多様な日本語教育を提供している日本語教育機関と高等教育機関が連携することにより、高等教育機関に在籍する外国人留学生のさまざまなニーズに応じた日本語教育の提供の機会の拡大が期待される。
また、多様な日本語学習者のニーズを踏まえ、国、地方公共団体、企業等、さまざまな団体との連携の促進も重要と考える。
4.上記1~3のような、高等教育機関と日本語教育機関間の連携促進や意見交換を容易にする協議体や会議の開催や連携を促進するためのモデルプログラムの実施等が望まれる。
1.日本語教育機関の教育の水準の維持・向上については、
1.教育の質の基準、
2.教職員の質の基準、
3.継続的な質保証の枠組み
等に着目して、法務省告示の枠組みとは別の観点として、多様な在留資格を持つ学習者が在籍すること等を踏まえつつ、日本語教育機関の在り方、在るべき日本語教育の内容、解決すべき課題等を論点とした、新たな会議を立ち上げ、中長期的な観点から継続的に検討することが必要である。
なお、その際には在留資格「留学」につながらない日本語教育を行う機関も存在することから、それらの機関における教育の水準の維持・向上について、機関の多様性等を踏まえつつ、基準や枠組みを設定することの可否等も含めて、あわせて検討を行うことが必要である。
2.また、高等教育機関が外国人留学生に求める日本語能力は、学部、大学院、文系、理系、医歯薬系と、受入れレベル・分野により様々である。高等教育機関への進学を目的とする者に対する基準を検討する際には、高等教育機関が入学者に対してどのような日本語能力を求めているか等を踏まえながらこの会議において、検討を進める必要がある。
3.さらに、諸外国における当該国の語学教育状況の現状や質保証の枠組み等も踏まえながら、検討を進める必要がある。
4.なお、上記1.の検討にあたっては、法務省告示校以外の在留資格「留学」を取得できる機関(例えば、日本語教育を実施する大学別科等)を対象とする日本語教育の質の保証の枠組みについて、その機関毎の特性を踏まえた上での、その必要性の有無も含めた検討が必要であるため、留学生支援を担う文部科学省高等教育局学生・留学生課と、生活者等を含めた外国人一般に対する日本語教育の推進を担う文化庁文化部国語課とが連携をとって、速やかに会議を設置し、実施されることが必要である。
1.世界的に教育の質の保証が関心を集める中、我が国における日本語教育の質の保証が担保され、安心して学べる環境であるという情報を海外に発信していくことが、質の高い外国人留学生を数多く獲得するために必要である。
2.また、日本語教育機関で学ぶ外国人留学生が、安心して学習に取り組める環境の構築等について、日本語教育機関の設立形態等を踏まえながら、検討することが必要である。
以上
外国留学係・私費留学生係
電話番号:03-5253-4111(内線3359)
-- 登録:平成23年08月 --