平成22年12月2日(木曜日) 16時00分から18時00分
文部科学省3F2特別会議室
水谷座長、伊藤委員、太田委員、江副委員、安藤委員、太田委員、奥田委員、加藤委員、岸澤委員、五味委員、竹田委員、武田委員、
田山委員、西澤委員、西原純子委員、西原鈴子委員、林委員、堀江委員、堀委員、山口委員、山本委員、山田委員
法務省、外務省
笹木副大臣、磯田高等教育局長、加藤高等教育局審議官、舟橋文化庁国語課長、氷見谷留学生交流室長 他
(1)委員の互選により水谷委員が座長に選ばれた。
(2)会議の公開について諮られ、本会議は、公開するとされた。
(3)本日の配布資料について事務局より説明のあった後、以下のとおり議論がなされた。
(○:委員、●:事務局)
○ 留学生30万人計画がオープンになった際、英語で専門教育を行うということがクローズアップされ、留学生別科や日本語教育関係者の中で、今後の日本語教育がどうなっていくのかという不安が広がった。ここに来て日本語教育が再びクローズアップされてきたことはよいこと。
○ 総合大学では、文系、理系、医歯学系という分野毎で、留学生に期待する日本語能力が異なる。文系は卒論を書く必要上、高度な書く能力が要求される。理系の場合、学部生だとまだ英語の授業の方が理解しやすく、大学院では、日本語は日常的な会話能力があれば充分で、高い日本語能力は要求としない。医歯学系では、国費留学生に関しては、いつも半年間の日本語教育が必要かと議論になる。日常的な会話ができれば何とかなる。
一方、どのような留学生でも日本語を学びたがる。大学側として、留学生に求める日本語能力は分野によって異なる。
○ 留学生の出口を考えると、日本企業に就職する場合、文科系では日本語ができなくては話にならない。
グローバル化ということで英語での授業も選択肢の一つと思うが、出口のことを考えるとしっかりと日本語を学習した後、大学、専門学校等に進学し、勉学や技術を身につける。そういう環境を整えることが留学生にとっても必要なのではないか。
○ 日本語教育機関での日本語学習者は、必ずしも高等教育機関に進学・在籍する人だけではない。高等教育機関への進学者は日本語教育機関で学習する者の一部である。日本語教育機関では、もっと広い意味で、学習者が希望する教育を実施してきた。日本語教育機関での学習者の実態を踏まえ、今後、望まれるところも含めて、本会議の議題としていったら良いと考える。
○ 日本語教育機関の社会的地位の確立のため、大学進学という機能があったのは事実。ただ、実際に日本語教育機関で勉強しているのは高等教育機関への進学する者だけとは限らないのも事実。
○ 高等教育機関進学者に必要な日本語力、日本語教育は幅が広い。一方、非進学者を対象とした基準が実は同時に求められているのかもしれない。このため、この会議で扱う日本語教育をかなり幅広く考える必要があると思う。
また、大学院への留学が増加しており、高等教育機関を対象という際も、学部だけではなく幅広く見る必要がある。
○ 言葉の教育だけではなく、外国で生きること等、言葉の力を考えることも入れて考えなければいけない。
○ 他国と比較すると日本留学は競争力がまだまだ弱い。日本留学の典型例は、まず渡日し、日本語学習の後、大学を受験。受験に失敗したら進学できない。大学進学が不確定な状況での渡日となり、日本留学は賭けの状態になっている。
日本語教育機関への入学希望者は頭打ちだが、日本語教育機関数は増加している。財団法人日本語教育振興協会認定校の1校当たりの学生数は平均100人。正直、この学生数での学校維持は厳しい。日本語教育機関が簡単に設立でき、簡単に撤退できる形になっているのは問題。私が、学校法人を設立した時には、教育に関与するのであれば、永続性、安定性、公共性の3つが重要で、学校教育法で認可された学校になるべきだと指導され、それに従った。
問題は、各種学校になっても、その結果として、株式会社立と全く同じで差がないということ。税金等の差はあるものの、両者に差がないなら、規制を受けることが少なく、楽な方がいいという話になる。その意味で、今後、日本語教育機関の形態をどうするかは重要な問題。新たに認めるのであれば、学校教育法にある程度のっとった形の学校として認めるほうが、将来に禍根を残さないように思われる。もちろん既存の学校の活動を認めないという話ではない。
大学との連携は世界では当たり前。日本では、大学の個々の先生に話をすると連携が重要と言われるが、大学の経営層へ話が発展しない。この問題が解決しないと国際競争力がなかなかつかない。
○ 海外の大学では日本に学生を送りたいが、日本語教育は自国である程度行ってから送りたいという要望もある。日本の大学側からすると、1.日本語の質と、2.専門教育を受ける能力という2つの質保証が必要である。日本で日本語教育機関を卒業した学生と、母国である程度教育を受け、かつ日本語もある程度できることを保証された場合を比較すると、留学生を受け入れ、専門教育を施す側の立場として、後者のほうが採りやすいというところもある。
○ 語学留学に関して、大学と同様の最長4年間のビザを出す必要はない。いわゆる授業料と在留期間がリンクした語学ビザがあればもっと簡単に来日できるのではないか。
○ 高等教育機関に進学・在学する学生を対象として、日本語教育機関としてどのような質保証、システムがよいのかという狭い話になりそうな感じがする。日本語教育機関として、教育の質保証をどのように考えていくかということではないのか。
○ 日本語教育機関として根本的にどう在るべきか。大学との連携を考えても、学部・大学院進学のための予備教育として日本語教育機関があるのではなく、入学後の日本語能力が不足する学生、あるいは専門性の高い日本語を必要とする学生に対し、高等教育機関と日本語教育機関が連携して対応できる体制を作る必要がある。また、日本語教育の基礎から就職等の出口までの一貫性を考える時、日本語教育機関は、これまで多様な学習者に対する日本語教育の経験、ノウハウを有しているので、いろいろな場面への対応が可能。
大学あるいは大学教育の中で、いかに協働していけるかがこれからの日本語教育機関のあり方と思う。日本語教育機関がこれまで、多様な教育を提供する中で、そのような力をつけてきたということを認めてほしい。
○ 日本語教育機関での学習結果を日本の大学が単位として認める等ができれば、学生募集のときも日本留学のヴィジョンとして見せられる。今はヴィジョンが見せられない状態。
○ 日本語教育機関で学ぶ学生の在留資格が「就学」から「留学」に一本化された。留学生施策全体の中で、日本語教育機関で学習する留学生をどのように扱うかを考えることが必要。
○ 日本語教育を考える場合、文科省だけでは無理ではないか。法務省、外務省も関係する。もう少し大きな政策的、横断的にコントロールできるシステムがないと、今後の方向性を考えるのは難しいのではないか。
また、日本語教育機関の設立に関する基準がない。そのため日振協の認定があったわけで、これがなくなり、それに代わる基準が策定されなければバラバラになるため、早急に基準を策定する必要がある。ある種新しい学種を作ることも考えられるのではないか。
高等教育機関との連携では、海外ではESL等の民間の語学学校が大学のキャンパス内に学校を持って、大学内の留学生の言語の面倒を見る。このようなシステムは、そのような基準を設ければ推進されるのではない。また、ESLは移民者への英語教育という機能も有している。そういった意味では、日本語教育機関も進学のためだけではなく、今後、移民等の受け入れのための機能が必要となる場面も出てくるのではないか。
○ 知的資源を世界から求めるためには、どのような政策が省庁横断的に共通目標として設定されなければならないのか、ということを考える必要がある。日本には世界トップ水準の教育・研究分野が多くあると思うので、その辺を踏まえつつ、日本語教育機関と大学、専門学校等はどのようなステップを踏み出す必要があるのかという議論も大切。
○ 日本留学者で、全く日本語に関心なく、事前の勉強ゼロで来日する人は少ないと思う。海外での日本語教育を発展させることによって日本留学の母数を増やすことは必要。その中でどういう形で来日するのかをよく考えていかないといけない。
渡日前に高等教育機関への進学を決定する仕組みがあり、その人達に対する日本語教育というような枠組みができないか。大学が、この程度の日本語能力が最低限入学段階で必要ということを明示し、それに合う教育を日本語教育機関が行うという仕組みを考えていかなければいけない。そうすると日本語教育機関に求められる水準が明らかになり、それを満たしているかどうかで判断するということが考えられる。
○ 国内外の日本語教育機関間の連携、日本語教育機関と大学との連携、企業との連携による就職支援等のパッケージをつくっていかないと日本留学全体の魅力が増加していかない。これは省庁横断的にやっていかないといけない。10万人計画当時からの問題が解決できていないというのは歯がゆい。留学生、国際教育交流全般のことを考えながら、日本語教育を考えていかないといけない。
また、予算が厳しい状況になってきており、横のネットワークを強化する必要がある。
○ 日本企業や社会の国際化、あるいは日本語教育機関に求められる基準や要件をどうやって国際化するのか、国際標準にどう適合させていくのかという視点が大切ではないのか。
○ 多くの学生に留学してもらうためには、留学生受け入れに当たっての全体の流れを設計し直し、大学や日本語教育機関がその中でどのような役割を担うのかを考え直さなければいけない。
○ 留学生の受け入れの際に忘れていけない視点は、日本人学生にとってどういう影響があるかということ。日本語教育に関しては、これまで国費留学生の場合、JASSO日本語教育センターで学んだ留学生を受け入れていたので、非常に安定していた。来年度からは私費留学生の受け入れが新たに開始されるが、質の確保が不安材料である。
○ 日本語教育機関では、今後、学生が減少すると予想され、これはそのまま大学、専門学校等に影響すると思う。
省庁横断的や産学官の連携と言われている、やはり国として戦略的な目標を掲げることが必要。
学校法人化が必要という方向性もあるが、例として出た海外の語学学校の大半は株式会社。教育機関として、継続性、公共性、安定性は必要だが、だから学校法人という考え方ではなく、逆に株式会社に安定性、公共性、継続性を与えるにはどのような手法があるのかを考える必要がある。
日本語教育機関の適正さの審査を、国が直接実施するとなるとコストがかかる。これまでの経験等を活かせるのであれば、改善するところは改善して日振協でも何でも使ってよいのでは。
また、国内の競争で打ち勝てない教育機関が海外との学生獲得競争に勝てるのか。日本留学というのはニッチなマーケット。そこのひ弱な国内仕様の教育機関が海外に出ていっても見向きもされない可能性がある。やはり、自由であること、柔軟であること、自立的な競争の中で生きていくことが大切と思う。
○ 留学生30万人計画が進んだ場合、理系の学生が増加すると思う。そのため、大学との連携は今後重要になる。
留学生のための科学技術日本語を教えていた。海外の予備教育機関ではそういった日本語科と教科との間をつなぐ特別な科学技術日本語という内容で事業展開をしている機関が幾つかある。そういった事例を考えても今後理系の学生が増えるということを考えれば、大学と連携をせざるを得ず、そういった授業を展開していかなければならない。
○ 日本留学の魅力がないと言っているのではない。ものすごくある。しかし、学生が日本へ留学する時に、明確なルートが描けないことが障害になっている。
○ 本会議の議題がやはり高等教育機関への進学・在学者に限定されていると思う。学生が日本留学のヴィジョンが描けないというのは、学生が日本留学で得られる展望を小さくしてしまっているから。留学希望者が何を求めているかを把握しなければ、受け手側で何ができるかを考えても仕方がない。そこから考えると学生のニーズの多様化も見えてくるし、日本語教育機関が提供できるのも高等教育機関への進学を対象としたものだけではないということも簡単にわかる。
(4)事務局より次回の日程について説明があったのち、閉会。
高等教育局学生・留学生課留学生交流室
-- 登録:平成23年01月 --