日本語予備教育を行う留学生別科等の基準に関する協力者会議(第3回)議事要旨

1.日時

令和元年11月5日(火曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

経済産業省 別館2階「235室」
 

3.議事

(1)国立大学協会からヒアリング
     京都大学 国際高等教育院 特定教授(吉田カレッジオフィス副室長)長谷部伸治氏
     京都大学 国際高等教育院 教授(吉田カレッジオフィス/附属日本語・日本文化教育センター) 河合淳子氏
(2)論点について
(3)その他

4.議事要旨

(1)国立大学協会からヒアリング
○京都大学から説明があり,意見交換を行った。

(2)論点について
新たな基準に係る論点や方向性について意見交換を行った。
○ 教員配置の根拠に資するため,学生の定員を設けることが良いのではないか。それに加えて,教員数をどうするかという点も忘れてはならない。日本語能力は学生によって様々であり,全員が一斉に授業を受けるということは想定しがたい。現状では,初級・中級・上級とレベルごとにクラスを分けて開講することが多く,この場合,3単位時間の授業を確保しなければならなくなる。教員の確保は学生数という量的な観点に加えて,学生の日本語能力,開講単位時間数も加味し,質の担保につなげることも必要ではないか。
○ 日本語教育機関の告示基準から参考にできる点として,学生数20名を一つの単位とすることはあり得ると思うが,それに加えて,レベルによる教員の配置も考慮が必要。
○ 日本語教育機関の告示基準の人数基準を最低限とする案も考えられる。
○ 学生の定員を設けることに賛成。この場合,定員にどのような場合を計上するのか。進学を目的とする者は当然対象になると思うが,それ以外の留学目的,受入れの態様もあるので,どこまで対象とするのかが重要。
○ 留学生別科の目的にも着目して,外形的に分かるような手立てがあるといいのではないか。
○ 基準の対象を考えるとき,別科には様々な形態があって,進学を目的にしているという点をベースに考えると,修了後の進学先が判断基準として重要。
●(事務局)非正規課程は,交換留学的なものや大学院向けのプログラムも含まれていて,純粋な学部進学を目指すものはあまり多くないのではないか。○ 進学を目的とした留学生だけを対象とした日本語教育の授業を,それだけで開講すると非効率。ヒアリングでも,一般の日本語教育の授業と一緒にやることが多いと説明があった。そのような授業のコマ数をどのように取り扱うのか,線引きが難しい。
○ 別々のプログラムであっても日本語教育は一本化する動きが多くの大学で行われているのではないか。
○ どの程度の時間数を勉強させるのかも目安の一つ。準備教育課程に指定されている場合は,日本語教育に係るものは760単位時間が必要。ここでは1単位時間が45分であることから,1コマを90分で換算すると380コマぐらいが,日本語教育に必要な時間数とある程度考えられるのではないか。日本語教育機関の告示基準は,日本語教育を専ら教えるという意味での基準であり,この基準はそれなりに機能しているのではないか。
ただし,年間授業週数の基準は,大学としての特殊性,大学の附属機関に対する影響が予想される。大学設置基準で一年間の授業期間を定期試験等を含め35週,各授業科目の授業期間は10週又は15週にわたる期間を単位としている。そのため,授業の実施期間が10週か15週かということを決め,あとは修業時間の1年の授業単位数は,760単位時間とか800単位時間とか,日本語教育機関の告示基準に合わせることも考えられるのではないか。
○ 教員が学部も別科も両方担当するなど複合的になっていることから,別科等の授業実施期間の始期・終期は,各大学のアカデミックカレンダーに準ずる形にする方が,勤務する教員にとっても良いのではないか。
○ 教員の要件は告示基準に準じた内容でよいのではないか。ただし,これまで大学の予備教育課程も含めて,学内でも余り意識されていないため,大学独自の要件で採用していることがほとんどではないか。例えば,日本語教育能力検定試験の合格者が要件化された場合,大学への影響は大きなものとなる。また,大学の教員採用は人事委員会のような会議で審議されることが多いため,基準を定めてもどの程度徹底できるか懸念が残る。
○ 日本語を教育する場所という意味では告示基準というのはある程度似ているものの,大学の学部教育に近い場所という意味では教員の要件も修士あるいは博士が求められる。修士又は博士がまずは一定程度求められ,あとはそれぞれの能力を示すような,スキル,養成課程の修了者が求められるのではないか。
○ 日本語教育の担当教員のうち,日本語教育機関の告示基準で定める4要件を満たしていない者として,言語学や文学の研究者が考えられる。逆に日本語の教育研究に関わる学位取得者に限定してしまうと,告示基準の4要件のいずれにも当てはまらない者が一定程度想定される。
○ 告示基準による日本語教育機関では,主任教員が教育課程全体を総括している。別科全体を統括する教員が誰かを明確にするためにも,そのような教員の職位が必要ではないか。
○ 日本語教育担当の教員資格について,主任とする者は,例えば日本語教育の経験が何年というものも付加してはどうか。カリキュラム策定,趣旨,コンセプトを教育プログラムにどのように反映したかを総括する責任者として,これまでの実績や経験を加味したものが必要ではないか。
○ 文化審議会日本語教育小委員会で,日本語教師の資質・能力,資格をどうするか,議論しており,それとリンクしていないと混乱が生じる可能性がある。
○ 主任を置く際,専任であることの必要性,線引きの検討が必要ではないか。日本語教育機関の場合は常勤が専任と非常勤がコマ数と分かれているが,大学に適用できるかは難しい。
○ 別科の主任を学部兼任とすると大学院兼任も付加されて,一人三役となることも想定される。責任を持つ教員が不在では,教育の質的保証も難しい。教育に責任を持つ立場の者がいれば,不適切な在籍管理の問題などの歯止めになるのではないか。
○ 施設面積や設備も大きな問題で,大学の正規課程には設置基準があり,人数に応じて面積も決まる。非正規課程の留学生別科は教室を保有していないにも関わらず,教室を使用している。別科の定員が増やせるから授業料を取れる。しかし,施設面積の算定には全く入っていない。
○ 施設面積基準を設定するには,定員管理をきっちりすることが重要。ただし,定員の計上方法の整理が課題。
○ 別科の設置趣旨が進学目的のところが多いが,入口段階が重要ではあるものの,その後,別科の目的に沿った教育がきちんと行われているかどうかをチェックできるような基準のようなものが必要ではないか。入学した学生が自分の所期の目的を達成できているのか,また,そのようなカリキュラムが組まれているか,はっきりできるような,基準が必要ではないか。
● 日本語教育機関の告示基準の解釈指針では,例えば日本語能力の最終到達目標については,進路目的に沿った適切な目標を設定するといって,括弧書きで,大学進学であれば,日本語能力試験のN1程度が取得できる等ということになっている。日本語教育機関の審査等では,ある程度,入り口と教育期間を踏まえてN1に到達できるものか確認している。