平成20年度「大学病院連携型高度医療人養成推進事業」選定取組の概要及び選定理由

申請担当大学
(連携大学)
北海道大学
(札幌医科大学、旭川医科大学、東京慈恵会医科大学、弘前大学)
取組名 自立した専門医を育むオール北海道プラス1:4大学連携および教育病院共有化による地域大学循環型専門研修プログラム
事業責任者 近藤 哲(医学研究科教授・病院長補佐)
(取組の概要)  プライマリケア能力と専門領域の診療能力とを兼ね備えた、真に実力のある自立した(一人立ちした)専門医を育成し、その専門医が、獲得した専門性を活かして診療・研究を精力的に行いつつ、大学あるいは教育病院で今度は指導医として専門研修医の教育にあたるシステムを確立することが本プログラムの目的である。そのためには、卒後6〜8年目で学会専門医の資格を取得し、さらに数年の高度な専門研修を含め通算10年単位の研修を行って、指導医の素養をも修得する。この間、道内全3医育大学間で共有化した地域関連教育病院で幅広い一般診療経験を、道外の慈恵会医科大学が加わった4大学病院で高度な専門性を、さらに大学院では臨床研究能力や教育手法を修得する。地域大学循環型の首尾一貫した系統的な研修システムの中にも多様性と選択制を確保した魅力あるキャリア形成プログラムであり、優良な指導医を育成することでプログラムの継続性が保たれる。
(選定理由)  北海道大学、旭川医科大学、札幌医科大学の北海道3大学とその教育関連施設が連携したプログラムである。これに6つの専門分野について東京慈恵会医科大学と連携し、多様なプログラムを作成している。道内3大学と地域関連施設を循環し、「自立した専門医」を育成する初期研修終了後10年スパンの医師育成計画である。北海道下の関連教育病院を互いに共有し、プログラムの透明化をはかっていることから参加者のメリットは大きい。プログラムに「女性と子どもヘルスサイエンスコース」が設定していることも評価される。同時に、北海道の医師不足を乗り越えるための意欲が示されており評価できる。
 一方で、それぞれのコースが大学別に作成されており、各大学の専門分野とその関連施設内の循環に留まっており、既存の研修コースを寄せ集めた感が否めない。参加者が道内3大学間をも循環し、混ざり合うような、ダイナミックな補完性を持つプログラムを考える必要がある。
 北海道内の広い地域を移動する指導医、研修医の経済的支援は、旧来の出張の形で考えると可能であるが、新しいプログラムで比較的短期間の循環の場合の経済的支援を強化する必要がある。
 また、3大学間で教育関連病院を共有化したことが具体的に実践されるような取り組みを期待したい。

申請担当大学
(連携大学)
東北大学
(弘前大学、岩手医科大学、山形大学、福島県立医科大学)
取組名 東北高度医療人キャリアパス支援システム(ハブ連結型大学病院間連携専門医養成プラン)
事業責任者 里見 進(病院長)
(取組の概要)  東北という広大な医療圏において高度な専門医を効率よく養成するシステムを構築する。本プログラムに参加する大学病院とその関連医療機関による医師キャリアパス協議会を組織し、各大学病院に設置する医師キャリアパス支援センターを中心に、医学生から初期研修医、専門研修医、大学院教育まで、一貫した医師の生涯キャリアパス支援体制を構築する。また、専門医取得から地域における指導医へとキャリアアップする各段階の人的交流を促進し、地域医療の担い手となる医師循環システムを確立する。東北大学病院は指導医の供給や研究指向性の強い若手医師の研究受け入れ先となり、人材の環境においてハブ的機能病院となる。東北大学病院とその関連医療機関で運営・維持されてきた従来のプログラムを活性化させると共に、連携大学病院と研修機能を相互補完し、東北地域の大学病院に若手医師を再結集させる。
(選定理由)  非常に養成可能人数が多く、医師不足解消のために東北の大学がよく団結していることが伝わる。特に、卒後研修の運営協議会をNPO法人化することで自主財源での運営を目指している点、東北大学をハブ機能大学病院とし、大学間のより強いネットワークの確立を示している点が評価できる。
 一方で、大学間の交流がほとんど示されておらず、従来の硬直したコースと同一内容と思われる。東北大学以外の後期研修医が参加しやすい環境作りに努めること。また、東北大学以外の参加校のメリットが何か、具体的に明らかにし、更に連携による相互補完を深められることを望む。
 さらに、研修評価委員会は、全ての大学が参加することが望ましく、出来れば専門研修医の代表なども参加させるべきである。

申請担当大学
(連携大学)
筑波大学
(東京大学、千葉大学、東京女子医科大学、自治医科大学)
取組名 東関東・東京高度医療人養成ネットワーク
事業責任者 松村 明(総合臨床教育センター部長・副病院長)
(取組の概要)  本事業では、東関東・東京に位置する5つの大学病院が緊密に連携・協力し、それぞれの得意分野による相互補完を図ることでより完成度の高い魅力ある研修プログラムを提供する。同時に、それぞれの大学病院における医師キャリア形成システムを充実させるとともに指導体制の強化をはかり、お互いの人事交流を活性化させることで、若手医師が将来に希望を持ちながら安心して研修に専念できる体制を構築する。本事業の実施に当たっては、複数大学で支える地域医療連携拠点病院を置いて各大学が緊密な連携を取りながら戦略的に人事配置を行うなど、若手医師の効果的なキャリアアップと地域医療の充実を両立させることを目的としたコーディネートを行うことで、国民の要請に応えられる質の高い専門医や臨床研究者を数多く養成するとともに、地域医療に貢献することを目的とする。
(選定理由)  本プログラムは、筑波大学を中心とした東関東5大学による、相互補完・連携によって構想されているが、構成する大学のバランスの良さもさることながら、全ての大学が首都圏にあることから、交通の利便性もあり、人材の移動と連携しやすさでは、他の追随を許さない。
 また、高い専門性と臨床能力を有するアカデミックマインドを尊重しながらのアカデミックレジデント制度の導入も魅力的である。さらには、プログラムが多彩かつ豊富である点は高く評価できる。教育学的要素を取り入れ、教育ツールの作成にも力を注いでいることも、期待できる点である。
 一方で、各大学間の連携については大いに評価するものの、具体的な方策については、目新しい提案がなされていないという弱点がある。
 また、幾つかの大学の単独コースに、既存のいわゆる専門医研修制度と変わらない部分がある。また、卒前教育との関連の記載に乏しく、総合診療能力を有する医師の育成枠を広げる必要がある。
 さらに言うと、バランスの良い各大学でありながら、その特徴を生かした役割分担や研修の到達目標への具体性に難点がある。

申請担当大学
(連携大学)
群馬大学
(信州大学、獨協医科大学、日本大学、埼玉医科大学)
取組名 関東・信州広域循環型専門医養成プログラム-専門医育成と医師不足解消を目指して-
事業責任者 石川 治(病院長)
(取組の概要)  本事業は、群馬大学、信州大学、獨協医科大学、日本大学、埼玉医科大学と大学病院の関連施設が連携し、専門医育成と医師不足解消を目指す循環型高度医療人養成プログラムである。関東・信州地域の大学病院とその関連施設がそれぞれの特色ある機能を活かしつつ、相互に機能を補完する環境の下で、指導医が高水準の医療を示し、リサーチマインドをもつ若手専門医師を育成する。すなわち、次世代の診療・教育・研究を担う医師を育成する循環型キャリアパスを確立する。地域関連病院に指導医を優先的に巡回させることにより若手医師の臨床能力を向上させ、若手医師も連携病院間を循環することにより様々な患者や疾患を経験する。最終的にはチーム医療を担うことができる専門医師を確保して地域医療の安定化を目指す。参加大学病院は地域診療施設の機能分担について医療関係団体及び都県と緊密な連携をとり、地域の医療体制を再構築し、維持する。
(選定理由)  医療人能力開発センター、各大学コーディネーターの設置や専門性の高い医師育成キャリアパスの構築は本プログラム及びテーマの趣旨に適合しており高く評価できる。
 プログラム形式の共通化や明示による透明性が担保されており、また長期の研修を要する分野では長期の設定があるなど、実現性の高いものとなっている。
 各大学に責任ある立場の人が設定され、群馬大学のセンターが機能するようになれば有効性が高まるものと思われる。
 共通の評価体制によるプログラム自体の相互評価がなされる工夫があり、取組の質の向上や改善に結びつけるシステムとなっている。
 一方で、大学中心の研修が目立つ点と、総合医の育成にあまり重点が置かれていない点に工夫が加われば、医師不足解消につながるのではないか、また大学間、あるいはプログラム内容の補完・連携の具体的な取組があれば、実現性が向上するのではないかと思われる。総合医の育成についても本プログラムでは実現可能性が低いように見受けられる。
 大学間で交流が行われ、調整すべきプログラムがあれば有効性も高まるだろう。
 評価体制については他大学からの評価の担保が無い点については改善の余地がある。

申請担当大学
(連携大学)
東京医科歯科大学
(秋田大学、島根大学)
取組名 都会と地方の協調連携による高度医療人養成−「付加価値」を身につけるテーラーメイド研修−
事業責任者 坂本 徹(病院長)
(取組の概要)  東京医科歯科大学、秋田大学および島根大学の医学部は、先進医療機関である附属病院と豊富な関連病院が連携し、それぞれの地域の医療を担う医師を輩出してきた。三大学は広域連携臨床研修プログラムを創設し、臨床研修における連携を既に開始している。この経験を踏まえ、新たに専門医および家庭医育成においても連携する。3大学が新たに提供する1短期パッケージ研修(3ヶ月、滞在費および交通費支給)および2長期パッケージ研修(1年、滞在費および交通費支給)を活用することにより、付加価値のある専門医もしくは家庭医になるための研修が可能となる。また3大学は(社会人)大学院を有し、後期研修の過程で発見した課題を、研修を継続しつつ研究に昇華・発展させる道も開いており、専門医資格に加え学位取得も可能である。さらに、首都圏と医療過疎地という全く異なる診療圏の医療が体験でき、大きく視野を展開できることも特色である。
(選定理由)  都心部の大学と地方部の大学が連携したプログラムとすることで、地域医療の確保を考慮した提案となっており、連携する3大学は、初期研修段階において既に連携の実績を有しているため、高い実現性が期待できる。
 また、長期パッケージ研修に短期パッケージ研修を組み合わせることで、プログラムに柔軟性と魅力を持たせている。
 さらに、Webベースの共通ポートフォリオにより、評価等の個人データ管理がされる点など大きな期待が持てる。
 一方で、利点も認められる短期パッケージ研修方式であるが、優れた短期パッケージの断片的な利用を許容することが、研修医の一貫したキャリアデザイン上、マイナス要因となる可能性もある。
 また、都心部の研修医が地方の大学で研修すること、及びその逆の場合の学習目標の明確な設定が必要。専門医研修であることから、初期研修と異なり、地域医療を体験するだけにとどまらず、専門家としてどのような研修が出来るか、明確にしていくことが必要。
 また、大学間を異動する広域コースの応募者の安定的な確保が今後の課題となるだろう。

申請担当大学
(連携大学)
新潟大学
(秋田大学、琉球大学)
取組名 NAR大学・地域連携「プラスα専門医」の養成
事業責任者 鈴木 榮一(医歯学総合病院医科総合診療部教授)
(取組の概要)  豪雪地域や離島を抱える新潟県、秋田県及び沖縄県では、それぞれ新潟大学、秋田大学及び琉球大学(以下、NAR大学;ナル)が各県唯一の医育機関であり、地域に高度医療を提供できる専門医を養成するとともに、地域医療を担う医療人を育成することが期待されている。本プログラムは、NAR大学病院と関連医療機関を循環する207の専門重点コースからなり、参加者は自ら選択し、1全員が専門分野の専門医を取得する。さらに、2大学院生としてより深い研究を併行して行い、専門領域における臨床研究者となる。3より専門性の高い領域の研修を行い、subspecialtyの専門医となる。4専門分野の周辺領域や他領域を研修し、より広範な領域に対応できる専門医となる。その上で、5プログラム終了後も継続的なキャリア形成への支援により、長期にわたり地域に定着し、専門医「プラスα(より深く、より高く、より広く、より長く)にナルことを目指す。
(選定理由)  地域的な特徴がある3大学が連携し、付加価値のある専門医の育成を目指していて、多数の関連医育機関を循環させながら多彩なプログラムで対応し、目的にあった計画として評価される。専門医取得とともに将来長期にわたり地域に定着する医師育成を目指している点も評価される。多岐にわたるコースを設定して多様性があり魅力がある。
 目的に沿って周到かつ綿密に計画され、参加者の目標設定も明確で、全員の専門医資格取得のための定期的な達成度の報告制度があり、実現性が高いと期待される。
 多彩なコース設定のもとで準備され、キャリアアップをよく考えていることも特徴。新潟大の総合力に加え、秋田大学の脳卒中、琉球大学の予防医学の連携で地域性も踏まえた効率的なプログラムが形成されていて成果が期待される。
 評価体制では、医師キャリア支援センター構想でもって計画の実現性を高くし、また評価が出来る計画となっている。
 一方で、3大学連携というが、実質的には秋田・新潟大学の連携が主体であり、琉球大学の参入の意義が不明瞭な点がある。コースの数と受け入れ人数のアンバランスがあり、コース自体も細分化され過ぎて、総合的な育成プランという点が弱点である。また基本コンセプトとコース設定の間に乖離が見られ、臨床研究や高度医療への取り組みが乏しいことも問題である。
 全体計画では琉球大学のコースがなく、新潟大学中心のプログラムであり、連携をより強化したものが出来れば成果が期待されるであろう。研修先が選択性であり、全体としての実効性が問われる。
 同じ分野で複数のコース設定があり、効果を上げるには各々の位置づけをより明瞭にする必要がある。大学とその関連病院間のみで完結するコースの位置づけが不明瞭であり、大学連携コースに、より配慮すれば効果は上がるであろう
 評価体制は整っているが、具体的な受け入れや到達目標での数値設定をして評価してほしい。

申請担当大学
(連携大学)
富山大学
(滋賀医科大学、聖マリアンナ医科大学、福井大学、高知大学、東京大学、東京女子医科大学、新潟大学、北海道大学、京都大学、慶應義塾大学、東邦大学、神戸大学、金沢医科大学、久留米大学、千葉大学、奈良県立医科大学、長崎大学、香川大学、東北大学、金沢大学、名古屋大学、岡山大学)
取組名 地域発信・統合型専門医養成プログラム
事業責任者 戸邉 一之(第1内科診療部門長・教授)
(取組の概要)  本事業は、富山大学附属病院が取り組んでいる「幅広く患者を診療できる専門医の育成」、「地域に密着した医療人の育成」という理念の基に、他大学病院との連携による最先端の知識・技術の修得及び和漢診療や研究部門における本院の実績を取り入れた新たな専門医研修プログラムの構築により、「全進を統合して診療できる」専門医、「東西医学を統合」及び「高度に専門分化した医療とプライマリケアの統合」を担える専門医、すなわち統合型専門医の育成を図るものである。このため、113の工夫された専門医養成コースを設定するとともに、東西融合高度医療の実践者等の育成、コースに大学院での臨床研究を取り込むなど、専門医育成と臨床研究者育成を有機的に実施できる体制整備も行い、地方大学単独では育成が追いついていない高度専門医療を担う医師の確保と地域への定着、さらに和漢診療を実践する専門医の全国への発信を図る。
(選定理由)  多くの大学の講座と連携し、広域であり、総合診療医育成に力を入れている点は期待できる。和漢診療など富山大学の特徴を生かしたプログラムを多彩な形で取り入れているところは評価される点である。また、地域の第一線病院での研修も多く取り入れており、地域医療への貢献が期待できる。
 一方で、連携大学の豊富さに比べ、規模が小さく、従来の研修と変わらない部分が散見される。
 また、連携大学の実施責任体制が取れるのかどうか、講座間の連携形式では無理があるように思われる。さらに、プログラム終了後のキャリアデザインの具体例が乏しい。

申請担当大学
(連携大学)
山梨大学
(浜松医科大学、北里大学、昭和大学、聖マリアンナ医科大学)
取組名 研修医の多様な要望に応える専門医養成事業−南関東・静岡地域を起点とした地域住民に信頼される高度医療人の養成−
事業責任者 星 和彦(病院長)
(取組の概要)  地方国立大学病院と首都圏私立大学病院の連携により、後期研修プログラムの研修内容を相互に補完し、多様な専門医資格の取得が可能なキャリア形成コースを提示する。環境の異なる近距離の地域間連携により、短期間、1年以内での交流研修や巡回指導内容を数多く設定することが可能である。各専門医の資格取得に必要な特性と環境に配慮し、1診療科別専門医養成コース:基本診療科専門医とsubspecialtyの取得、2複合型専門医養成コース:複数臓器や診療科に関わる専門医の取得、3高度技術取得型専門医養成コース:技術取得に時間と経験が必要な専門医の取得、4地域医療・総合医療型専門医養成コース:家庭医や救急医を目指す専門医の取得、5女性医師キャリア形成型専門医養成コース:女性の生活環境に配慮した専門医の取得、の5コースを設定し、全コースに大学で教育、研究、診療に従事する、アカデミック・ドクターの養成プログラムを設ける。
(選定理由)  山梨大学、浜松医科大学の地方国立大学病院と、北里大学、昭和大学、聖マリアンナ医科大学の首都圏私立大学病院の連携による多彩な専門医資格の取得が可能なキャリア形成コースを提示している。主に、大学−その大学の関連病院の研修をおこなうプログラムであり、都会と地方をつなぐ形をとっている。コースを、診療科専門医型、複合型専門医型、高度技術取得方専門医型、地域医療・総合医療型に加えて女性医師キャリア形成型の5大別コースを設定し、それぞれに小分類のコースを設けていることは、参加者にとってプログラム構成の理解に役立つ。特に、地域医療・総合診療医育成に加えて、女性医師のコースを設けているところが評価できる。
 一方で、コースは多彩だが、それぞれのコースが大学病院とその関連施設との組み合わせが中心で、かつ、習得内容が分かりにくい。大学病院同士の相互補完性が見える具体的内容を持ったコース設定が必要。他大学への交流が短期(1〜2週)、中長期(2〜12週)であり、短期の交流では研修の十分な補完性が考えにくいこと、地域を越えて補完するプログラムが少ないこと、関連病院等での経験症例数の記載がないなどプログラムの改善が必要である。また、コース修了後のイメージ作り、膨大なコースの管理についても具体性を持った計画とすべきである。

申請担当大学
(連携大学)
名古屋大学
(愛知医科大学、岐阜大学、浜松医科大学、藤田保健衛生大学、三重大学、名古屋市立大学)
取組名 東海若手医師キャリア支援プログラム
事業責任者 松尾 清一(病院長)
(取組の概要)
  • 【理念】
    東海地方の7大学病院が拠点となり、当地域医療に貢献しながら専門医を育成していく。
  • 【概要】
    7大学がこれまで培ってきた専門医育成ノウハウを基盤として、関連病院を含めたそれぞれの医師育成システムを相互に補完しながら、当地域で研修するすべての若手医師にキャリアパスを提示し、最終的には当地域全体に専門医を充足させる。
  • 【特色】
    • 初期研修を地域病院で開始する研修医が多い(東海四県で平成19年度マッチ者842名中、大学病院は219名)当地域では、研修医は専門医取得までの過程で地域医療に大きな貢献を行う。
    • 7大学が中心となってキャリアパスを提示することで、当地域の病院で研修中のすべての研修医が幅広い選択肢を得るのみならず、大学院進学をもキャリアパスに組み込むことができる。
    • 当地域では7大学の関連病院の重複が多く、関連病院において他大学指導医からの指導を受けるなど、相互に研鑽することが推進されている。
(選定理由)  東海地区7大学の実績を強調したプログラムであり、現実的かつ、実行性のあるものと思われる。また、7大学は比較的、対等な関係の連携プログラムで、豊富なコース設定がなされている。研究者養成コースが豊富であることも評価できる。
 一方で、多くのコースが各大学—関連病院のプログラムであり、従来型と変わらない。東海地方の地域性を考慮して、さらに大学間連携を進めていくことを期待する。また各コースにおける実際の各大学間の人事交流やその利点が不明で、東海地域で人事交流・教育交流するメリットが参加者に伝わらない。

申請担当大学
(連携大学)
滋賀医科大学
(京都大学、大阪大学、大阪医科大学、旭川医科大学、琉球大学、神戸大学、三重大学、京都府立医科大学)
取組名 コア生涯学習型高度専門医養成プログラム
事業責任者 太田 茂(卒後臨床研修センター長)
(取組の概要)  滋賀医科大学を中心として実施する本プログラムは高度で実践的かつ倫理性科学性に富んだ専門医育成を目標とする。各種専門医コースに高度救急医療研修システム、各種手技の実践前スキルスラボ実習、動物実験施設などを使用した内視鏡・サージカルラボなどの確保を図る。各コース共通にファカルティ・ディベロップメントとして医療理論、医療安全、医療統計学、臨床治験などに関するセミナーなどを開催し倫理性、科学性を備えた専門医および大学院コースを併設し臨床研究者を養成する。これにより多様化した医療分野・地域医療のニードに対応する。連携大学は一部の大学に偏らず連携先から各々の得意分野に特化あるいはコア連携した研修を行う。専門医取得後も定期的に年1回リフレッシュ・セミナーを開催し診療技術の研鑽・習得を行う。
(選定理由)  本プログラムは、近畿圏の7大学プラス地域特化型連携として沖縄県と北海道にある2大学によって構成されているが、滋賀医科大学をコアとした研修システムであることから、滋賀県の地域性に密着したプログラムとなっている。それゆえ、滋賀県内の医師育成には非常に有効であると思える。
 医療倫理、医療安全、医療統計学、臨床治験などのセミナー開催をプログラムの中に入れ、専門医の取得に当たり高度な医療技術を習得できる魅力的なコースがあるなど、成果を大いに期待したい。
 一方で、評価と裏腹の関係になるが、多大学病院連携というよりも、滋賀医科大学の弱い分野を補うための、滋賀医科大学中心の体制でプログラムが作られており、相互的ではないという問題点を抱えている。
 連携が一方通行で、大学相互の交流が少ないなどの弱点がある。また、他大学での研修期間の短かさ、大学間のバランスがとれていないと思わせる点が多々見受けられ、工夫の余地がある。
 さらには、地域医療に貢献できる総合的診療能力を有する医師を養成するコースが少ない点は、大いに改善する必要がある。

申請担当大学
(連携大学)
京都大学
(福井大学、滋賀医科大学、関西医科大学、神戸大学、香川大学)
取組名 マグネット病院連携を基盤とした専門医養成(大学病院とマグネット病院との機能的連携を基盤とした高度医療人養成プラン)
事業責任者 中村 孝志(病院長)
(取組の概要)  若手医師研修に実績のあるマグネット病院群と、連携5大学病院との機能的連携を強化することで、マグネット病院における実践的専門医教育と大学病院での高度医療教育をシームレスにつなげ、優秀な専門医や臨床研究者を育成する試みである。大学は独自の専門性と地域性を生かし、若手医師が安心して研修できる多様なキャリアパスを提案する。特にマグネット病院と大学病院の特徴をふまえた教育連携のコースを多様化する若手医師のニーズに沿うように設定する。専門医取得後は、高度医療分野への参加や大学院進学など大学間の垣根を越えた多様なコースを準備することで、卒後10年以上に渡るキャリアアッププランが提案できる。将来的には、連携マグネット病院の数を増やすことで、本プランで養成した高度医療人を各地域のマグネット病院の指導医として循環させ、地域医療を活性化させ高いレベルでの医療の標準化に貢献したい。
(選定理由)  マグネット病院を中心にしてそれを大学病院がバックアップするという取り組みは本プログラムの趣旨に適合しており評価できる。また、初期研修で言われている大学病院対地域中核病院の対立構造を改善するものとして注目に値する。
 本プログラムに参加しているマグネット病院は既に実績が証明されており、目的達成の実現可能性は大であると思われる。また、卒後10年以上にわたるキャリアプランも提供できるという点は評価できる。
 謳われているように連携マグネット病院が増えてくるようになれば地域医療活性化にとって大変有効なプログラムといえる。
 連携型専門医教育会議は取り組みの質の向上や改善に結びつくものと期待される。
 一方で、マグネット病院と各大学との連携は明確に提示されているが、各地域でのマグネット病院での地域連携が明確でない。
 また、これだけの高度なプログラムであれば、研修中の臨床研究への積極的な参画が望まれる。
 連携マグネット病院をどの様に増やすのかが明確に示されておらず、地域医療活性化の具体的内容が見えにくくなっている。募集人員が多いことを考えるともっと地域ニーズに見合った定員設定が必要なのではないかと思われる。それに、地域医療活性化には総合診療科のプログラムも必要ではないかと考えられる。
 教育会議のほかに具体的な改善策が提示された方がよいと思われる。また、京都大学以外の大学の積極的な関わりが望まれる。

申請担当大学
(連携大学)
大阪大学
(近畿大学、大阪医科大学)
取組名 大阪大学・大学病院連携型専門医養成事業 リサーチマインドを持った高度医療人養成を目指して
事業責任者 笠原 彰紀(総合診療部長)
(取組の概要)  地域医療の充実のためには、卒然から卒後の初期臨床研修、専門医教育、生涯教育まで一貫した医師の教育体制を構築することが重要である。そのためには、個々の医学部がそれぞれの卒業生を対象に十分なアフターケア体制を整えつつ、若手医師が自らのライフプランを描くことを援助することが望まれる。しかしながら、個々の大学の努力ではそのような体制の整備には限界がある。このため、教育施設としての大学病院を中心に地域中核病院が一つの医療圏を形成し、かつ複数の大学病院が連携することにより得意分野を相互補完しあい、多様で魅力的なキャリアプランを若手医師に提示することを可能とするものである。若手医師が安心して自らのライフプランを描けるようになることで、大学病院を中心とする医療圏に医師を集積させ、地域の医療圏を統括した専門医養成と安定した医師供給体制が実現されることとなる。
(選定理由)  小児外科専門医、鏡視下手術重点コースなど、サブスペシャリティーも専門特化された高度医療を学習できるコースも用意されている点は画期的である。
 現在の大阪大学の専門医研修プログラムをベースにしているため、インフラ等を含め実現性は高いものが期待できる。
 また、豊富な研究実績の下、リサーチマインドを持った医師の養成を明確に打ち出している点、女性医師のキャリア養成プログラムに踏み込んでいること点については大いに期待が持てる。
 一方で、大学間の連携構築が消極的で、大阪大学以外の大学の役割が明確でない。
 従来の大阪大学の専門医研修プログラムから余り踏み出しておらず、大阪大学と関連病院との連携が主になっており、本プログラムのテーマとの適合性は十分と言えない。
 専門分化した大病院で勤務する専門医の養成指向が強く、地域医療に役立つ人材養成のコースが少ない点は今後の課題である。

申請担当大学
(連携大学)
島根大学
(神戸大学、鳥取大学、兵庫医科大学)
取組名 山陰と阪神を結ぶ医療人養成プログラム(地域医療と高度先進医療の融合による新たな教育システムの構築)
事業責任者 小林 祥泰(病院長)
(取組の概要)  本プログラムの理念は、魅力ある専門医・臨床研究者教育を通じて、大学病院専門医研修者及び臨床研究者の増加を目指し、かつ、関連医療機関にも専門研修医を循環することで地域医療に貢献することにある。そのために4大学が連携して相互補完を図り、魅力的な専門医・臨床研究者養成プログラムを策定・実施する。大学及び関連医療機関との連携により地域医療から高度先進医療まで幅広い分野での専門研修が効率よく行われ、専門医取得のみならず大学院における専門的な臨床研究が実施できることを特徴とする。また、コメディカルスタッフとのカンファレンスに積極的に参加し、チーム医療を体験することにより、患者中心の良質な医療を提供出来る医療人を育成する。また、教育効果向上のためコーディネーター・指導医による包括的な支援・指導・評価体制の充実を図るとともに4大学合同FD・シンポジウムを定期的に開催し全体のボトムアップを図る。
(選定理由)  高い専門性を持ち、かつ地域医療に貢献できる医師の育成のための山陰と阪神地区各2大学が相互補完の形で連携したプログラムである。都市部における豊富な専門分野の症例数に加えて総合医療を重視した地域医療を組み合わせており、テーマの趣旨に適合しており高く評価される。全体として意欲的な計画であり本事業の趣旨に適合する。
 連携という点で4大学がバランス良く有機的に協力し、大学や関連病院の弱点を補完し合う良質なプログラムで、関連施設の選定の仕方も教育的であり、地域のニーズという視点からも実効性が有る。
 地域医療から高度専門医療まで幅広い研修を提供するための連携体制が明確で、目標設定もなされており、制度として優れており成果が期待される。
 評価委員会(外部含む)に加えて、4大学での持ち回りのFD、シンポジウムでフィードバックする体制は成果が期待される。
 一方で、地域医療から高度先進医療までの幅広い研修について、希望者の配分、修練期間、何を獲得するか、などの具体性にやや乏しい。同一コースが各大学にあるなど4大学が並列している面も見られる。単独完結型や専門医制度と整合性がないコースも散見される。
 理念と実行性との間に全体的に距離がある。連携、養成計画での数値目標、地域医療の確保、コース毎の各段階での評価など、具体性をより高めるための大学の枠を越えた教育プログラマー及びコーディネーターの配置が求められる。都市型地方型2群間双方を循環しないコースが散見され、高度医療への参画も少ない点で改善が必要。
 人事交流する場合の身分や処遇をどうするか、大学の枠を越えて管理するのか不明瞭。専門医修得と学位修得(大学院コースを含む)の関連をコース内容で明らかしていくことなどで、有効性が高まるであろう。
 また、中央の指導体制、評価体制のあり方がやや不明確である。

申請担当大学
(連携大学)
広島大学
(岡山大学、川崎医科大学、山口大学)
取組名 山陽路・高度医療人養成プログラム−山陽地方4大学病院連携による専門医養成システム−
事業責任者 田妻 進(臨床実習教育研修センター長)
(取組の概要)  山陽地方は古くから陸路・山陽道ならびに海路・瀬戸内海という交通利便性を活用して文化交流を介した繁栄を享受してきた。山陽地方には東から岡山大学病院、川崎医科大学病院、広島大学病院、山口大学病院の4大学病院があり、それぞれ地域医療の中心として機能している。本プログラムは、それら“山陽路4大学病院”の地理的環境を基盤とする高度専門医養成プランであり、“大学病院群ローテーション型”、“大学病院・関連病院群ローテーション型”、“大学病院ベースキャンプ型”の3型からなる。一方、山陽路4大学病院は2つのがんプロフェッショナル養成プラン(1岡山大、川崎医科大、山口大と四国地区、2広島大と山陰地区)を進めており、臨床専門医を養成する高度教育の土壌も整っている。本プログラムはこれを活用して、“がん専門医”養成に代表される臨床専門医養成・大学院コースとの連動を特徴とする“医師キャリア形成システム”である。
(選定理由)  山陽4大学が得意分野で役割を決めて高度医療人を養成するプログラムは期待できる。大学病院群ローテーションの発想は非常に面白く、大学間の壁を取り除くものと期待できる。大学間のプログラムの標準化や均一化に努力する姿勢も賞賛に値する。
 一方で、コース名と受入人数はあっても、具体的にコースの概要についての記述がなく、さらに十分な討議が必要である感をもたせる。大学院の位置付けが不明確である。単一の大学内で数年のコースは設定されているものの内容の具体性やわかりやすさに問題があり、実際どのように行われるのか不安な点もある。

申請担当大学
(連携大学)
長崎大学
(佐賀大学、九州大学、岡山大学、神戸大学、富山大学、琉球大学、久留米大学、日本医科大学)
取組名 出島発、肥前の国専門医養成プログラム−地域性・国際性豊かな医療人の養成−
事業責任者 江口 勝美(病院長)
(取組の概要)  歴史的に関連深い長崎・佐賀両県の大学病院(長崎大学病院・佐賀大学病院)は、その関連医療機関を含め、緊密に連携する。さらに全国の連携大学病院と協力し、相互の優れた点を活かした専門医育成を行い、西九州地域への専門医の定着を図る。若手医師にとって魅力ある専門医コースやキャリアパスを明確に示し、専門医資格取得の支援を行う。全ての専門医の研修状況を把握し、目標達成に向けて、関連部署の協力の下、人材の適正配置を考慮した循環を行い、地域医療の重要性を認識した質の高い専門医や臨床研究者の育成を目指す。長崎大学が従来から取り組んでいる卒前・卒後の離島・へき地医療教育や感染症教育、国際医療を組み入れることで、より地域性・国際性豊かな、また、感染症医療に長けた人材の育成が期待される。さらに、女性医師のキャリアを正確に把握し、女性医師の復職を支援し、地域医療の充実に繋げる。
(選定理由)  本プログラムは、長崎大学がある長崎県の地域的背景としての、離島・へき地問題や、同大学の熱帯医学研究所における国際的な感染症研究など、その特徴を十分生かしたものとなっており、評価できる。また、熱帯医学研究所を通じての海外施設との協力や海外研修の機会を設置するなど、国際色豊かなプログラムとなっている点は特記すべきであろう。
 また、コア大学となる長崎大学・佐賀大学は近接しており、実現性の高いプランとなっている。さらには、女性医師への配慮を明言し、プログラム参加者や指導医に対する考慮もなされている。
 一方で、多くの大学との連携を謳っているものの、九州以外の遠方にある他大学との連携方法は具体性を欠いている。同時に、もう一つのコア大学である佐賀大学の位置付けが明確でなく、各々のコースを見ると、長崎大学単独とも読み取れる部分があり、ネットワークとしては不完全である。
 また、優れた研究者を育成する視点が弱く、各施設ごとの到達目標も明示されていない。さらには、内科系の研修コースの多くで、地域医療に貢献する総合的診療能力を担当できる養成プログラムが少ない点は、改善を求めたい。

申請担当大学
(連携大学)
熊本大学
(大分大学、宮崎大学)
取組名 中九州三大学病院合同専門医養成プログラム-地域医療支援と臨床研究推進の共有システム構築-
事業責任者 宇宿 功市郎(教授)
(取組の概要)  地域の医師不足、臨床研究を担う人材の枯渇が危惧されている。本プログラムでは、総合的な臨床能力と研究能力を身に付けた専門医の養成を目標とし、熊本大学・大分大学・宮崎大学の三大学病院が連携・相互補完して、地域医療支援と臨床研究推進の共有システムを構築する。具体的には、臨床シミュレーション及び遠隔教育のシステム共有並びに参加医師のキャリアデータ蓄積を図りながら、地域総合医療の共通プログラムを開発し、臨床研修・研究キャリアパスを充実する。地域医療機関への医師派遣を行いつつ、卒前教育から初期研修その後の専門研修への円滑な移行と各段階での到達目標の明確化、症例の深い理解と高度医療のための臨床研究法の確立と実践を行う。また、ロールモデルを含むキャリアパスの明確化により、医療の質向上と生涯学習の姿勢を教育するとともに、キャリアデータ蓄積を継続的なキャリア支援と地域医療に役立てる。
(選定理由)  地域的配置の良い比較的対等な3大学の連携による取り組みは本プログラム及びテーマの趣旨に適合しており高く評価できる。
 このプログラムは現状システムの発展型であり、実現可能性は高いものと期待できる。また、3大学連携総合診療医コースは優れた成果が期待できるものである。
 プログラムが合同で医師を地域へ派遣するという画期的な発想があり、その有効性に期待が持てる。また、各大学病院・関連施設間の連携は具体的に示されており、本テーマを達成する有効な方策となることが期待できる。
 評価委員会に地域住民が参加することになっており、地域の視点重視という意味では画期的なことと言える。
 一方で、全66コース中大学連携コースが5と少ないことは本事業の趣旨に必ずしも適合しているとは認められない。
 大学同志の連携や、申請大学以外の役割分担が明確でないなど、実施体制に不十分な点があり、今後の早急な改善が期待される。
 地域に貢献できる総合医療の構想が少ないことと、医師不足が言われている小児科・産婦人科領域への取組が十分でないことは地域医療支援の観点から改善の余地がある。さらに、研究者養成に関する3大学の連携体制についても明確化が望まれる。
 評価委員会に地域住民が参加することは良いが、組織としての評価体制の具体性に欠けており改善の余地がある。

申請担当大学
(連携大学)
琉球大学
(北海道大学、旭川医科大学、札幌医科大学、東北大学、福島県立医科大学、新潟大学、富山大学、群馬大学、東京大学、東京医科大学、帝京大学、浜松医科大学、愛知学院大学、三重大学、滋賀医科大学、京都大学、神戸大学、鳥取大学、香川大学、九州大学、久留米大学、福岡大学、佐賀大学、長崎大学、熊本大学、大分大学、宮崎大学、鹿児島大学)
取組名 多極連携型専門医・臨床研究医育成事業
事業責任者 國吉 幸男(病院長補佐)
(取組の概要)  沖縄の医療界は戦後復興の段階からプライマリケアおよび救急医療に関してアメリカから多くのものを吸収してきた。それを求めて沖縄での初期臨床研修を選ぶ新卒医師も多い。一方、高度専門医療は、その担い手である琉球大学医学部附属病院(以下、琉大病院)が創立から四半世紀ほどしか経過していないこと、離島を含め医療圏が非常に広くかつ沖縄が他県より離れており地域完結的な医療システムの構築が必要であることから、それを担当する専門医不足は切実である。また、専門医には、その専門領域での臨床的疑問に即した臨床研究を実施する能力が必要とされるが、これまで、我が国全体においても、沖縄においても、この点に焦点をあてた系統的な教育・研修システムは存在しなかった。本プログラムは、地域および社会に求められる専門医を効率よく育成するのみならず、臨床研究を行うことができる医師を育成し、質の高い地域内完結医療を行うことを目的とする。
(選定理由)  複数の大学間での連携を積極的に活用したプログラムとなっており、各コースの研修内容が明確に示されている点及び大静脈外科コースなど、特殊疾患、各論に特化したコース設定がなされている点は評価できる。
 また、専門医コースにアメリカ式レジデント方式に類似した方法を取り入れている点は画期的である。
 地域医療との連携についてよく考慮されており、地域の医師の養成、定着、医療の質のアップへの貢献が期待できる点も評価できる。
 一方で、計画した募集人員が、予定通り確保できるかという点に懸念がある。プログラムにおける教育体制整備のスケールメリットが期待しにくい。
 連携大学が多すぎる嫌いがあり、連携の実現に努力が必要と思われる。
 また、研究分野でのコース充実が望まれる。研究者の育成においては地域の特性を生かした分野に特化した教育プランが必要。

申請担当大学
(連携大学)
慶應義塾大学
(埼玉医科大学、東海大学、杏林大学、岩手医科大学、富山大学、東京歯科大学)
取組名 地域躍動型専門医養成一貫教育プログラム
事業責任者 末松 誠(医学部長)
(取組の概要)
  • 理念
    『高度医療を実践し地域の第一線で躍動できる優れた専門医』を育成することにより、地域医療機関への高度医療人材の安定供給を確保しつつ、大学病院における臨床研究の活性化を目指す。
  • 概略と特色
    それぞれが特色ある卒前卒後一貫教育システムを有する医学部・医科大学と、地域医療を支える教育基幹病院がネットワークを形成し、各施設特有の研修内容を比較的小規模な“ユニット”として全研修者に公平に開放する。研修者に複数の研修ユニットを能動的に選択させることにより、研修初期より高度の動機づけを担保し、将来のキャリアパスを視野に入れた極めて多彩で柔軟性に富むオーダーメイドの専門医研修を提供する。連携大学教員からなるプログラム運営委員会は、現場指導医の自立性を尊重しつつ、教育コンテンツの共有、共通評価制度とそれに基づく教員インセンティブ導入を推進し、単独大学では実現しえない相互補完・相互改革を加速させる。
(選定理由)  専門研修医を地域へ派遣するという画期的な教育プログラムで、地域と都会の医師が交流する可能性がある。診療クラスターという概念を導入して、様々な診療科の研修中に、他の分野での中途研修などを取り入れてサブスペシャリティー研修を可能にしたところなど評価できる。また、専門医、研究者の養成プログラムに魅力あるものが多数設定されている。
 一方で、他大学との相互補完の形は有するものの元来の医局システムからの脱却が見られないところも散見される。また女性医師に対する配慮が少ない点は気がかりである。第一線の地域医療に携わる総合医の養成コースが少ないため、今後の拡充が期待される。

申請担当大学
(連携大学)
大阪医科大学
(関西医科大学、近畿大学、兵庫医科大学、京都大学、大阪大学、大阪市立大学、和歌山県立医科大学)
取組名 近畿圏循環型医療人キャリア形成プログラム
事業責任者 米田 博(卒後臨床研修センター長)
(取組の概要)  本プログラムは、高度医療人養成並びに高度先進医療を提供する地域医療中核機関としての機能を強化して我が国における医師養成の質的向上に資することを理念とし、医師養成環境を整備することによって卒前教育からの長期的なキャリアデザインを明示して若手医師のキャリアパスへの対応を目指すものである。具体的には、既に卒前教育(臨床実習)において単位互換等の連携実績を有する近畿圏私立4医科大学(大阪医科大学、関西医科大学、近畿大学、兵庫医科大学)を中心に、近畿圏4国公立大学(京都大学、大阪大学、大阪市立大学、和歌山県立医科大学)が連携機関として参画することによって8大学病院推進体制を構築し、更に地域関連病院とも連携して各機関が持つ得意分野を集結することで、後期臨床研修医(専門研修医)の医療技術高度化を図ると共に、専門医取得、取得後のキャリア形成への支援体制を整え、若手医師の中・長期的キャリアパスを支援する。
(選定理由)  近畿圏の私立4大学による連携プログラムであるが、卒前教育段階の単位互換など、すでに密接な連携関係を持っており、その実績を専門医研修まで拡大するということで連携の強さに優れている。
 高度な専門性に特化したコースが用意されており、さらに学位取得についても謳われていることも評価できる。
 また、研修医や指導医の連携大学間の異動に対する経済的配慮が行われており、研修の継続性が期待できる。
 一方で、地域の小規模病院での研修が組み込まれていない、プライマリケアに特化したコース設定がないなど、地域医療の確保に対する貢献度に懸念がある。また、コースが細分化されすぎており、ジェネラルな志向性が少ない。
 コーディネーターの権限の範囲に不明確な点があり、プログラムの改善や専門研修医の透明な人事配置が出来るかどうか疑問である。

-- 登録:平成21年以前 --