構想審査会における主な意見

・白丸○は構想を評価する意見、黒丸●は不十分とする意見を表す。
・第1回から第5回までの審査会における発言及び書面による意見提出を基に整理をしたもの。異なる委員からの指摘、異なる場面での指摘であっても、類似の意見であればまとめて一つの意見として記載している。
・審査会として一致した意見ではなく、個々の意見を列記しているため、相反する内容の記述もある。

 

1.個別の構想に関する意見

(1)国際復興記念大学 

【1】留意点1「震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育等を行うこと」について
○総合診療医の養成をはじめとする地域医療、国際貢献、放射線医学研究所の設置による原子力災害からの再生、産業の育成と、構想の内容は豊富で、意欲的であると言える。
○地域で活躍する総合診療医の育成という方向は、今回の新設の趣旨に添っていると言える。
○原子力災害による甚大な被害により、今回の震災で最もダメージの大きかった福島県に立地し、真剣にその対応を考えていることは評価できる。福島の中でも郡山市というまとまった人口のある都市に立地することは、妥当な計画と言える。
○現時点で活発な医療活動を行っている大規模な民間病院を母体にし、意欲的に構想をまとめている。
○グループ内に急性期病院から高齢者福祉施設、障害者支援施設など多様な施設を有していることは、地域医療を経験させる上で有利と言える。
○福島に設置を構想する大学として、国際放射線医学研究所の設立を計画していることは有意義と言える。
●国際放射線医学研究所の設置等、放射線に関する研究等の取組は福島県立医科大学と重なり、応募書等からは、新たな医科大学を設置しないと果たせない使命が伝わらない。すみ分けが必要である。福島県立医科大学が人材確保に苦労しながら放射線の影響を踏まえた県民健康調査等に力を尽くしている中、そのマンパワーを分散すべきではないのではないか。
●先端的医療的な面と地域医療的な面が混合しており、方向性が不明確である。アジアからの留学生を入学させることが、今回の医学部新設の趣旨とどう適合するのかが明確に示されていない。
●がん治療、国際交流等、現在の病院グループの特色を生かそうとする余りに、取り組む内容が、やや総花的なものに感じられてしまうのではないか。
●旧来の医学教育の枠を超える発想はほとんどないように感じられる。「地域医療支援センター」と「総合診療センター」をあえて二本立てにすることは、現在の方向性と逆行している。最近の医学教育の知見を取り入れられる体制の充実をはかるべきである。
●教育研究上の連携先を示しているが、具体的にどのような連携によって何をしようとしているのかがわかりにくく、連携することについての調整がどれだけ付いているのかも不明確であった。

【2】留意点2「教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じること」について
○グループ内に、臨床医学の指導者となり得る人材はそれなりにそろっていると言えるのではないか。
○東北地方の中では、首都圏に近くアクセスがよい立地であることも、人的資源を得る上で有利な要素になり得ると考えられる。
●関連病院の医師が誰でも大学教員になれるわけではなく、特に基礎系教員・社会医学系教員の確保に苦労することが予想される。教員経験がある医師であっても余りに高齢であると不安がある。
●構想の中心メンバーに幅広い人脈があるとしても、それを活用した教員・医師等の確保がどこまでできるのか疑問な点はあり、地域医療に支障を来さず人材を集める道筋を明らかにすることが必要である。
●関連病院から教員を確保した場合、その地域の医師不足を引き起こす可能性を秘めている。グループ内で教員・医師を確保する場合の後補充の問題に対しても対策が必要である。

【3】留意点3「大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じること」について
○福島県は東北6県の中でも医師数の減少が最も顕著であるので、ニーズは高いと考えられる。
●年間約3000万円という高額な授業料(私立大学医学部医学科としては平均的な金額)に対し、奨学金により授業料全額が免除される対象者は3名のみ。多くの学生は月5~10万円程度の奨学金であり、それではとても授業料をまかなえない。経済的に余裕がある学生でないと入学が難しく、かつ月5万円程度の奨学金であれば容易に返済ができてしまうため、卒業後、医師が東北地方に残ることを促す効果は期待できない。
●高額な授業料設定であるにも関わらず定員の大部分を東北出身者に限定した地域枠とするという構想であるが、それで地域枠が充足できるか疑問。仮に地域枠を充足するために学力基準を緩めた場合、学生の学力の問題(国家試験の合格率等)が生じないか懸念される。
●福島県等からの具体的な協力が得られておらず、奨学金に関しては、財源は附属病院の収益から確保することとされており、確実性に不安がある。民間病院等からの寄附を充てることも示唆されているが、その場合、寄附した民間病院への医師の配置が優先され、東北地方全体の中で医師が不足している地域へ医師の供給ができるのか不安がある。
●初めは地域医療に従事しても、高額な学納金等を回収するために、給料の高い民間病院等に就職する可能性が高く、その対策が必要である。
●東北全体というよりも福島県を中心に考えられた構想であり、卒業生が東北各地の医師不足地域に貢献できるような方策を講じる必要がある。
●卒後の医師定着に関して、福島県立医科大学をはじめとする既存の大学との連携、役割分担が明らかでないため、東北全体の地域定着にどれだけ貢献しうるかが判断できない。

【4】留意点4「将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること」について
○100名の入学定員のうち20名を臨時定員とし、将来削減する予定を示している。その後の定員削減についても他大学と連携して対応する旨が示されている。
●100名の入学定員の大半が東北出身者を対象とした地域枠として設定されているが、授業料全額に相当する奨学金受給者が3名と少ないことから、適切に定員枠を充足ができるのか疑問がある。
●80名の定員でも経営が成り立つと説明されているものの、過去に私立大学の定員を削減した際には、90名以下は経営困難という主張がされていた経緯があることから、更なる定員削減は容易ではないのではないか。

【5】実現可能性、その他
○既に一定水準の実績のある急性期病院(総合南東北病院)を保有している。先進的な医療にも取り組んでおり、三つの構想の中では最も大学病院に近い規模であり、準備を進める上で有利と考えられる。
●今回の医学部設置は、通常の大学設置と異なり、震災や原発事故からの復興・再生という極めて公共的な意義の大きい教育事業であり、地元福島県や他の東北各県との協力関係を構築せずに一私立大学の独力だけで立ち向かうことには無理があると言わざるを得ない。
●大学の設置に当たっては、設置認可申請時点において、設置経費・運営経費を確保している必要があるが、グループにおける多額の負債の処理に関する資金計画が不透明であり、裏付けが弱い。
●母体となるグループからの寄附金で設置経費等を賄う計画であるが、これまでの先進医療設備等への積極的な投資により、120億円を超える借入金がある中で、100億円もの寄附をどのように行うのか。現在の経営は順調だとしても、主要な収入源であった病院を学校法人に寄附した後の借入金返済、特に、寄附する病院の土地建物の大部分に抵当権が設定されていることへの対応について、債権者の理解を得ていることを証するものがなく、不安を一掃できるだけの根拠が得られていない。財務面では不確実性があると言わざるを得ない。

(2)東北医科薬科大学

【1】留意点1「震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育等を行うこと」について
○薬学教育を通じて、70年以上も東北6県の医療に貢献してきた実績があり、同地方の大学としての使命を理解していると言える。
○「地域医療を担う総合診療医」「災害医療に対応できる医師」「薬学の基礎知識と薬物治療の実践能力を持つ医師」を育成することを掲げ、東日本大震災の経験も生かした上で、東北地域に根ざした医師養成という目指す姿が示されている。それに対応した6年間のカリキュラムが明確に示されている。実学本意の職業教育となっている。臨床実習も76週に及び評価できる。
○カリキュラムが具体的で地域医療に特化した内容も評価できる。地域医療、災害医療や被災地への対応について準備教育、基礎医学教育、社会医学教育、臨床医学教育、臨床実習の各段階において、医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応しつつ特色を加えた到達目標と学習内容を明確に示している。
○再追加質問で回答のあった、薬学部におけるICT活用状況は充実しており、医学部への活用も期待できる。
○人口の多い地域に立地する本院を有している一方で、津波による最大の被害があった石巻市に石巻サテライトセンターが地域医療・災害医療教育の場として予定されている。
○仙台に立地し附属病院の収益に安定感がある。教育上必要な症例の確保も一定程度可能と思われる。
○全体として、これまでの大学にない斬新な点があるとは言えないが、今回の医学部新設の目的は、特別な大学を作るということ自体が目的ではなく、東北地方の医療ニーズに着実に対応できるかどうかであるから、趣旨に即したものであると言える。
●医学・薬学の連携だけでなく、看護やその他の医療技術職との連携も重要。1年次から多職種連携教育に取り組むべきである。
●滞在型の地域医療実習を行う等の工夫はなされているが、まだ既存の医学教育の延長線上にとどまっている。臨床実習のうち地域の病院で行う割合を増やすことや、卒業後の臨床研修は大学病院以外の地域医療の現場を主とする等、約40年ぶりの医学部新設にふさわしい思い切った教育を行うべきである。
●診療所や老健施設、在宅医療の現場等での実習等を行うこととされているが、すべての学生がまとまった期間実習を行うことができるだけの実習場所を確保することは容易ではない。その点に対する見通しが十分とは言えない。
●外部の病院を実習に活用する場合でも、大部分は附属病院本院で行えるようにしておく必要がある。
●準備は進んでいるが、教育組織、特に臨床実習等、医師養成の根幹が十分でない。医学教育の専門家の数を増やしてよりよい教育プログラムとすべきである。
●東北大学医学部との関係が強く、新しい時代の医学部としての新規性、東北大学等の既存大学との差別化、すみ分けが明確でない。一定期間経過後に、ごく普通の私立医科大学になって特徴を失わないようにすることも必要。

【2】留意点2「教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じること」について
○既に薬学部、大学院、附属病院があることにおいては優位性がある。
○自薦・他薦による29人の候補者のリストアップ、公募の際に求める教員像が明確にされ、具体的な教員公募期間の提示や関東以西の協力大学の候補校も絞られている等、ある程度の道筋がついており、1校に選定される前の準備としてはおおむね十分だと言える。
○薬学出身者が多いとはいえ、教員名簿を見る限りは、基礎医学系教員の候補者となりうる人材を既に擁していると言える。附属病院の医師、看護師の獲得についても、少なくとも宮城大学よりは余裕があると言える。
○仙台市という立地上、看護師等の医療関係スタッフを集めやすい。
●必要な準備は行っているとはいえ、採用する医師数が多いため、採用に当たり東北地方の医療に支障を来さないよう、東北6県、医療関係団体、東北の6大学と協議する必要がある。
●再質問によって、教員や職員を募集するスケジュールの概要は明らかになったが、地域医療に支障を来さないという安心感を得られる具体策の提示にまでは至っていない。
●協力を得ている大学等の関連病院から医師を集める場合にも、地域医療に支障を来さないようにすべきである。協力を得ているという大学との具体的な連携について明確な方策を示されたい。
●立地上、看護師等の医療スタッフを集める上で有利にあるということは、他地域から人材を奪うことになる可能性がある。ある程度は震災復興のためにやむを得ないことを納得してもらうほかない面もあるが、関係団体からの意見聴取でも要望があったように、教員・医師・看護師等の確保で地域医療に支障を来さないための更なる努力を期待する。

【3】留意点3「大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じること」について
○学納金は国公立に比べ高額であるが、宮城県が奨学金基金を設けることを表明しており、大学独自の奨学金も加えることで、卒業後一定期間地域医療に従事することを条件に、最大50名が学費全額相当、20名が学費半額相当の返済が免除されるという構想である。私立大学医学部で、これだけの人数を対象とした奨学金制度を設けているのは前例がないのではないか。
○奨学金の金額が高額になることが、卒後東北地方に残り地域医療に従事する上で強いインセンティブとなることが期待できる。
○奨学金の対象でない学生もいるが、本学で学んだことを生かして東北以外の地域で活躍し、本邦のあるいはグローバルな医療によい影響を与えてくれることは、新設医学部の趣旨に反するものではないのではないか。
○関係団体からの意見聴取の中で、地域への定着率向上には研修病院の指導が充実していることが重要という指摘があったが、本構想は、最大被災地である石巻、宮城県南の中核病院他のネットワークを活用した研修や既存大学の関連病院群と連携を打ち出している等、卒後、どのような病院で研修するか具体的に提示している点が評価できる。
○地域の医療機関と高機能の附属病院を循環させる制度は、既に多くの大学で実施されており新味はないが、若い医師の素直なキャリア形成の要求に合致するもので、卒業後の地域定着を促す上で、一定の効果があることは期待できる。
○配偶者出産休暇等の取組も医師の定着に効果的と考えられる。
●修学資金を受けない学生(120人中50人)の扱いが問題。学生間に三つのグループが生まれることになるため、卒業後の地域医療への従事について一体感のある教育を行うことができるか。
●宮城県が基金を設けることとしている奨学金の仕組みについて、実効性を含めて更なる具体的な検討が必要である。勤務先が特定の地域の自治体病院に偏らないようにする方策や、東北地方の病院以外の勤務先が肩代わりしてしまうことへの対策が必要である。
●卒後の研修先の病院が、既存の特定大学の関連病院である場合、病院の部長クラスは特定の大学出身者で占められていることになる。その環境で新設医大の学生が誇りをもって定着できるかどうかが疑問。
●既に仙台市内には東北大学がある。新たに医学部を置くことは医療機能の仙台への集中となる。大学から東北全体への医師派遣機能の実効性をより明確に担保し、仙台へ医師が集中しないようにする必要がある。
●他県との連携交渉はこれからという段階であるが、東北6県を対象としたネットワークの構築など、医師を東北6県に配置する工夫を一層求めたい。卒後は医師不足地域への重点的な配置を戦略的に進める計画が必要である。
●初めは地域医療に従事しても、高額な学納金等を回収するために、給料の高い都市部の民間病院等に流れる可能性が高く、その歯止めが必要。

【4】留意点4「将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること」について
○臨時定員を最初から設定しており、将来的な増減に備えることができている。
○将来の定員削減については、他の私立大学と協力して対応することが明言されているので、条件を満たしていると言える。
●臨時定員を設定し、将来の定員削減に協力すると明言しているとはいえ、当初から120名とすることは多すぎるのではないか。奨学金対象とならない学生が50人いることで一体的な教育が難しくなるのではないか。
●過去に私立大学の定員を削減した際には、90名以下は経営困難という主張がされていた経緯があることから、更なる定員削減は難しいのではないか。
●今、120名もの医学部を新設すると、今後定員削減が必要になったときに、各大学に対して定員削減の要請がしにくくなるのではないか。

【5】実現可能性、その他
○計画は具体的であり、設置者、設置場所、設立準備組織の体制等の整備において、現時点ではもっとも実現可能性が高いと考えられる。
○既に学校法人、大学が存在していること、466床の急性期病院を保有していること、大学病院の立地が経営上問題がないこと、財政的に無理がないこと、カリキュラム等が整備されていることから、他の構想に比べ、実現可能性は高いと思われる。
○協力者となる石巻市、国立病院機構仙台医療センター、労働者健康福祉機構東北労災病院、その他の連携病院群(宮城県北部、南部の中核的な自治体病院等)とは協定や協力の内諾を取り付けている。
○附属病院の立地条件としては人口が多い仙台市に設置されており安定感がある。財源に関して、今後の医業収入について不透明ではあるものの、東北大学等とのすみ分けができれば病院収入も期待できる。
●通常の私立大学では震災復興という公的な役割を負いきれない。宮城県をはじめとして地方公共団体側も、全体として協力に当たるべきである。その場合、医学部の運営方針についても、当該私立大学の理事会で全てを決定する運営方式でよいのかどうかも検討を要する。
●薬科大学の附属病院としての経験は現時点では1年しかなく、そこからさらに医学部を持つ大学の附属病院へバージョンアップしていくために、職員の意識や附属病院の役割に応じた対応が可能かどうか不安があり、対策が必要である。
●第2病院、第3病院として、小規模の病院、無床の診療所を計画しているのは魅力的ではあるが、現時点では計画が具体的でなく不透明感がある。
●復興や医師不足対策が進み、医師の充足感が改善された場合には、現在の構想のような地域医療に特化したものから、良質な臨床医育成を行うごく普通の私立医学部となる可能性が高い。しかし宮城県をはじめ東北の各自治体と強い協力体制を確立し、当面は震災復興を中心課題に据えつつ、一定の時期が来たら、東北地方の医療の現場に根付く医師養成を持続的に行っていくということであればそれなりの意義があるかもしれない。


(3)宮城大学

【1】留意点1「震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育等を行うこと」について
○ヒアリング時の説明からは、自治体病院で働く総合診療医の確保により県内の地域医療を立て直したいこと、これまでにない教育をしたいことに対する知事の熱意が感じられた。
○具体的なカリキュラム案が示されていないことは準備不足という点が否めないが、どういう医師を県が育成したいと考えているかということは、追加資料等から理解できた。
○総合診療医養成に特化し、どこにもない特徴的な大学、地域完結型の教育を行うということの意気込みは高く評価できる。
○設置場所が、人口当たり医師数が東北地方の中でも特に少ない地域であり、医療過疎地域に立地するため、医療格差の是正、地域振興への期待は大きい。
○学生時代に医師不足の小都市で学ぶことにより、日常生活から地域医療になじむことが期待できる。
○公立大学であるため、メッセージ性があるのではないか。
○応募された構想の中では具体的に言及されていないが、宮城大学は看護学部や事業構想学部といった学部を有しており、これらの学部と連携した取組が行われることも期待できるのではないか。
○応募された構想の中では予定されていないが、もし地域包括ケアで先進的と言われる涌谷町で実習を行うならば、よい教育ができる可能性があるのではないか。
●応募書及び添付資料では教育内容についての説明が薄かったため、書面により何度か質問を行ったが、目指す教育に対応した具体的なカリキュラムが理解できるだけの案が提示されなかった。地域医療に支障を来さずに教員や医師、看護師等を確保する具体的な人材確保についても、学部長候補者の人脈を活用するという以上の説明は得られなかった。大学設置に最低の必要条件であるカリキュラムや人材確保に関して資料を提示できていない状態では、本審査会として、責任を持って選定することは難しいと言わざるを得ないのではないか。
●今までの大学と異なる教育を行うという意気込みは示されているが、その内容が具体的に示されていない。これまでにない言わば実験的な取組であるならば、より具体的なプラン(どのような病院でどのような実習を行うかが明示されたカリキュラム)と全体をコーディネートする体制(リーダーの人物像や調整する仕組み)が明らかにされなければ、その実現可能性や学習効果について適切に評価することができないが、これらが提示されておらず不確実性が高い。
●質問に対する回答で示された、基礎医学を後回しにして先に臨床医学を学ぶというカリキュラムも実験的である。このカリキュラムで学んでは臨床実習に進む前の共用試験に合格できないのではないか。これまでにない教育に取り組むべきとする宮城大学の提案には傾聴すべき点も多いが、新しい医学教育の在り方として、別の機会に時間をかけて議論すべきではないか。
●県が前面に出て主導権も握っている形のため、宮城大学自身のビジョン、具体的な取組が見えない。ヒアリング時には1,2年次の人間性教育が特色であるという話があったが、その具体的内容については示されなかった。宮城大学全体として入試改革を行うという話も十分に理解することができなかった。
●地域医療、総合診療に特化した大学を作るということを前面に掲げている一方で、医学部長候補者には地域医療・総合診療というよりは高度に専門的、先端的な医療、研究に実績のある人を選んでいる。医学部長候補者が構想の作成時点では深く関わっていないように見受けられる。
●総合診療医に特化して育成するという構想であるが、総合診療医は、急性期の医療についても十分な理解があって成り立つもの。各領域の専門医がまるで存在せず、急性期に対応できる医療機関もないところで活躍する医師ではない。
●医学部が設置される近辺の医師不足解消が今回の医学部新設の目的ではなく、医学部がどこにあっても東北地方全体の医師不足地域に医師を配分するシステムが必要。医師不足地域に医学部を置いたら東北全体の医師偏在が解消するわけではない。いかに医師が不足している地域に医師を配分するかが重要である。
●東北版の自治医科大学を目指すと言っていることについて、学生全員が授業料を免除される点においては同じかもしれないが、自治医科大学のように手厚い教員の体制などの特色を本気になって参考にすることが望まれる。

【2】留意点2「教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じること」について
○医学部長候補者の元の勤務地(関西)等、東北以外の広範な大学に声をかけて人材を集めようとしている点は評価できるのではないか。
○入学定員を60名に抑えている分、必要な教員数が相対的に少なくて済むという利点がある。(大学設置基準上、入学定員60名の際に必要な専任教員数は130名、入学定員61名以上120名までの場合は140名。)
●目指す教育をどのようなカリキュラム、体制で行うのかという点や、大学病院の病床数や機能等も確定していないため、どのような教員、医師、看護師等が何人くらい必要なのか確定することもできず、そこが決まらないと人員確保の見通しを示せないのではないか。
●母体とする病院は医師数が30人程度と、明らかに少人数であるため、二つの構想の病院と比べ、大学としての最低の水準を確保するためにはかなりの人数の医師を教員として招く必要がある。看護師等についても同様である。その見通しはかなり厳しいと言わざるを得ず、もし仮に他地域から集めることができたとしても、その際には各地の地域医療へ与える影響は大きいのではないか。
●応募時点では教員確保についてほぼ未着手の状態。医学部長候補者の人脈、宮城大学等のネットワークを活用して教員等を集めるというだけでは具体性に乏しく、それで地域医療に支障を来さずに人材を集められるか疑問。大学病院としては機能的に乏しいものとなる可能性のある病院に優秀な人材が集められるかどうかも問題。
●完成時までに350人以上看護師を増やす計画になっているが、看護師については教員とは異なり遠方から集めることは難しい。立地上看護師等の確保に不利と言わざるを得ないが、具体的な対策が示されていない。現在の栗原中央病院の職員を継続して雇用することを予定しているようであるが、地方の公立病院から医学部附属病院に代わることにより勤務条件が大きく異なることとなり確実に継続ができるのか懸念がある。

【3】留意点3「大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じること」について
○公立大学であり、かつ全学生(60人)に奨学金が支給されるため、志さえあれば経済事情に関わらず進学しやすい。これにより東北地方に定着する医師を育てたいという構想は評価できる。一体感を持った教育がしやすいことが期待できる。
○県立大学であるから、一般論として、県の医療政策、医師確保対策との連携、他の自治体や公立病院等との連携がやりやすいのではないか。
●県民の税金で運営費を確保する県立大学であるが故に、宮城県内の医師確保が優先され、東北全体の医師偏在解消に消極的になる可能性を否定できない。特に各県の「地域医療ビジョン」の策定が始まると、自県の医療機関の適正配置を行う権限と責任が増すため、その傾向が強まることが予想される。
●卒業後、どのような病院でどのような臨床研修を行うのかということや、臨床研修後のキャリアパスについて、具体的に示されていない。
●学費が安い分、地域医療の義務を履行せずに、奨学金を返済してしまうことが比較的容易である。生活費も貸与するがためておけば返済できてしまう。人口に比して国公立医学部が少ない東京近辺の学生がたくさん集まり、卒業後、奨学金を返済して東北を出て行ってしまう可能性が高いが、そのための対策が講じられていない。国公立大の場合、奨学金よりも、入学時に出身地域を限定した入試枠(地域枠入試)を設ける方が定着につながる面があるが、地域枠入試については具体的な提案がない。
●出身地域を限定した入試は提案されていないため、宮城県内はともかく、他の5県に毎年5人ずつ残すということは難しいのではないか。例えば東京の高校を立て宮城大学で学んだ学生が卒業後、地元ではない青森県や秋田県で一定期間勤務するように促すことは、そう簡単なことではない。義務年限と出産等のライフイベントとの関係も考える必要がある。
●「同じ釜の飯」を食べた仲間の一体感ということが強調されていた。趣旨は理解できるが、実習病院や附属病院の体制が不明確であり、「同じ釜の飯」の同じ釜はどこに据えるのかがわからない。例えば全寮制にして仲間意識を醸成する等の取組が必要ではないか。
●東北地方の他の大学や研修病院との連携体制が築けておらず、大学院設置の見通しもないため、卒業後に東北地方に残る魅力やインセンティブ、卒後の教育機会が担保されているとは言いにくい。

【4】留意点4「将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること」について
○定員の規模(60名)は新設大学の教育上、無理がなく妥当な人数であると考えられる。
○元々の定員が60名であれば、今後の医師需給を考えても、特に削減する必要はないと考えられる。
●60名の定員で開学した場合、施設等の都合上これ以上定員を増やすこともできず、逆に60名以下では教育を成り立たせることが難しくなる。将来的に増減の調整ができないのではないか。
●60名という人数は、単に最小の規模であるというだけであり、将来の医師需給に関しての見通しを立ててこの人数を設定したとは言えないのではないか。

【5】実現可能性、その他
○一般論として、公立大学であれば、各自治体との協力関係が構築しやすいことが期待できるのではないか。
○県民の理解の下、毎年度の運営費交付金が用意できるのであれば、財政上の安定が期待できる。
○知事のリーダーシップのもと、自治医科大学等の取組を本気になって参考にし、県の行政の全力を挙げて取り組めば、将来的にはよい大学となることが期待できる。
○一般論ではあるが、公的な主体がバックにあるということは、構想全体に対する安心感が期待できるのではないか。
○ヒアリング時には説明者の中には医師が一人もおらず、教育内容等の確認のしようがない状態であったが、その後の書面での質問に対する回答を見ると、医師である者を含めた検討が行われていることがうかがえる。
●初期投資の270億円については議会に説明がされているとのことだが、年間50億円以上とされる運営費を県が将来にわたり毎年支出し続けることについてまでは、まだ県議会や県民の理解を得るに至っていないのではないか。応募時点で県民の意見募集等は行われておらず、宮城県民の同意が得られなければ実現の可能性がないという不安がある。県民の税金で東北全体の医療を支え続けるということに理解が得られるか。
●カリキュラム、教員確保等、現時点で不確定な要素が多いという状況から考えると、平成28年度開学を前提とするならば、大学設置・学校法人審議会での審査の結果不認可になる可能性も高いと言わざるを得ない。復興という観点からはできるだけ早く卒業生を東北地方に輩出することが重要であり、そのためには実現可能性という観点も重要ではないか。
●公立大学であれば地域の医療機関と連携しやすいという見方もあるが、地域の医療機関は極めて多忙であり、たとえ行政からの依頼であっても、そう簡単に学生受入れには対応できないのではないか。行政ではなく宮城大学自身が早急に地域連携の構築をしなくてはならないのではないか。
●構想が同じ程度まで準備できていれば公立の方がよいという見方もあるが、現在の案では、公立であることにより期待できるメリットよりも、構想が不十分であることによる問題点の方が上回っているのではないか。
●栗原中央病院は、現在でも市費で赤字を補塡し経営が厳しいのに、栗原市近辺の医療需要予測では、入院・外来ともに大きく減少し、2050年頃には現在より3割程度減少すると見込まれている(大崎・栗原医療圏)。宮城県北部が全体として同様の傾向である。こうした中で将来的な附属病院の運営維持は極めて難しいと思われるが、その対策が示されていない。
●立地地域が医師不足に悩んでいる地域であることは明らかである。しかし、なぜ、必要な患者数を確保することが難しい過疎地域に医学部を置くことを前提としているのか。今回の医学部新設の目的は大学立地地域の医師数を増やすことではなく、東北全体の医師不足解消にある。同じ宮城県北部にしても、既に急性期病院として十分な力量があり、研修医の教育実績もある病院(大崎市民病院)を中心として検討すべきではないか。
●附属病院の母体としようとしている栗原中央病院は、大学病院として見た場合には教育・診療機能や規模が小さく、抜本的な拡充が必要である。しかし規模の大幅な拡大を行った場合、患者数の大幅減少が見込まれている立地上、病床稼働率が低くなる等経営的問題が生じたり、他の医療機関に影響を与たりする可能性がある。一方でヒアリング時等に示された最小で300床程度の附属病院とするという案では明らかに教育が成り立たない。どちらにしても問題があるが、この点についてどう考えるかという質問に対して具体的な対策が示されなかった。
●剖検率が0%、臨床研究・治験の実施件数が0という病院が大学病院になり得るのか疑問。大学や大学病院の経営、臨床教育の質の確保などについて適切な水準が確保できる見通しがない。大学や附属病院の教職員、さらに学生に優秀な人材を集めようとしても苦戦すると考えられるが、その対策が示されていない。
●医学部新設に向けた知事の目指すところ、熱意は高く評価できる。しかし人事、カリキュラム策定といった大学としての基本的なことは、首長の意向を踏まえつつ、大学が自ら主体的に行うことが必要ではないか。
●第2回構想審査会(7月4日)におけるヒアリング時の説明内容の多くは、宮城大学と十分検討されたものでなく、知事を中心とした行政サイドによる説明であった。宮城大学に医学部を設置するのに、宮城大学としての教育内容の考えが不十分では評価が困難と言わざるを得ない。宮城大学を中心に、当初から有識者による検討体制を組むべきだったのではないか。
●応募後、構想審査が始まってから応募時に足りなかったことの対策を講じているようだが、審査会としては、応募された構想やヒアリング時の説明をもとに、各応募者が同じ条件で出した情報を元に判断しないと公平性がたもてない。
●応募時点では、宮城大学に医学部を置くのか単科の医科大学を設置するのか決まっておらず、第1回審査会における議論を聞いて構想の根幹である附属病院の在り方を大幅に見直すことを示唆し、二転三転している印象がある。こうした経緯、準備状況からは、実現可能性については低いと言わざるを得ないのではないか。
●例えば実習等における連携先が決まっていないこと等について「申請までの時間が短い」「公的機関は選定されてからでないと動けない」ということが理由として説明されている。しかしヒアリング時の説明では、昨年秋に知事自身が総理に対して「東北に医学部を」と進言したことがきっかけになっていると明言された。もっと早くから宮城県としての準備を行い、他の自治体に協力を呼びかけ、構想を練り上げる機会があったことを考えれば、準備不足や構想にかける意気込みが不足していたと言わざるを得ないのではないか。

2.全体に関する意見、国に対する要望等

(医学部新設の意義等について)
□40年近く医学部の新設は行われてこなかったのであるから、今、新たな医学部を設置する際には、単なる81番目の医育機関とするのではなく、全く新しいものとなることを期待したい。
□「震災後の東北」というものをどのくらいの長さで考えるべきか。余りに特化した医学部としてしまうと、将来的な需給状況によっては、学生の卒業後の進路が狭まる可能性があることも考慮すべきではないか。
□東北地方に特化し、地域の医師不足を解消することを目的とした医学部を作ることができたならば、結果的にそれは今までにない新しい大学となるのではないか。
□既存の医学部では新たな考え方、教育方法を取り入れるにしても、漸進的にならざるを得ない。新しい医学部ではこれまでのしがらみなく新たなことに取り組むべきである。
□今回の東北地方における医学部新設は、すぐには結果が出ない。10年後、20年後を見据えて東北地方の方々に希望を持ってもらえるようなメッセージ性のあるものとすべきである。

(評価の観点)
□今回の医学部新設の趣旨は、今までにない新しい大学を作ることではなく、とにかく早く東北で医師が増えてほしいということから来ているのではないか。医学部新設だけが地域医療を立て直す方法ではないと思うものの、今回はそういう観点で1校を選ぶべきではないか。
□極論を言えば、どんな医師でもいいから東北地方に残れば成功。そこに今回新しい大学を作る意味があるのではないか。
□公立か私立かに関わらず、同じ条件で応募が出てきたものについて、どういう理由でどの構想を選定するということが重要なのではないか。
□この審査会で実現可能性をどこまで見るべきか。教員の適確性や財務面等は、それを審査するための専門家が集まった大学設置・学校法人審議会で見るべきであり、それと同じ観点ではなく違う点を本審査会は評価すべきではないか。
□応募後に出てきた情報も幾つかはあるが、基本的には、締切りまでに出された構想と、ヒアリング時の説明、その後の書面での質問に対する回答を元に評価するべきである。基本方針で示された四つの留意点というのが原点ではないか。
□10年後20年後によい大学となっていることは当然期待したいが、学生は1年目から入学するのであり、まずは最初からちゃんとした教育ができることが必要ではないか。
□どの構想にしても、医師として求められる人間性、人に対する思いやり、温かみといった点を教育しようという部分が薄いように感じる。
□最近の若い医師の動向として、地方の小さな病院にずっといて多くの症例を見るということだけでは満足せず、もっとたくさん学びたいという気持ちが強い。どの構想を選ぶにしても、研修医としての身分を保障した上で、様々な場で学べるようにしていくことが必要。
□応募内容の確認を強化するということだけではなくて,この構想審査会の中で具体的にクリアすべき条件というものを設けて,この後にきちんとそれをクリアしているかどうか確認するということを条件につけないといけないのではないか。
□最終的には一つの構想を選ぶにしても、他の構想のよい点を入れて融合することはできるのではないか。

(将来的の医師需給等について)
□医学部を作り医師が出てくる10年後20年後には東北の状況が今と変わっている可能性がある。今後、総合診療医が大量に必要になるのは都市部であり、東北だけの問題ではないことを念頭に審査をすることが必要。
□じきに医師供給過剰時代が来る中で、医学部新設により定員が増えると、既存の大学に対して定員削減を要請しにくくなるのではないか。
□既存の地域枠の定着効果等をしっかりと検証すべきである。
□すぐに医師供給が過剰となるという意見もあるが、現場の実感としては違和感があり、ある程度供給が増えないと偏在も解消しにくいのではないか。
□今後の医師数を考える際には、女性医師の比率が増え、勤務時間を含めて働き方が多様になることを前提として考えなければならないのではないか。 

 

3.関係団体からの意見聴取の概要

(地域医療の現状)
□沿岸部の病院勤務医の減少が深刻である。
□沿岸部3県だけでなく東北地方全体が、震災前から絶対的な医師不足である。
□原発事故により多くの住民が県内外に避難しており、一層過疎化、超高齢化が進んでいる。また、津波による被害が大きかった沿岸部だけでなく、内陸部においても、東京の大学から民間の大規模病院に派遣されていた若い医師が帰ってしまった影響で医師確保が困難な状況。

(医師の地域定着、偏在解消方策)
□若い医師は、地域の中小医療機関での総合的な診療が期待される一方で、医療の高度化に伴う専門志向が強くなっており、キャリア支援も重要。
□地域偏在解消にこそまず取り組むべきである。医学教育の在り方も、6年間を通じたリベラルアーツ教育、医療政策や医療経済の学習、診療参加型臨床実習の充実等が必要。
□本学(発言者が所属する大学)の地域枠の学生については非常に成績は優秀である。今年初めて卒業生を出したが、留年もなく国家試験合格率も100%。学力というよりはモチベーションの高さが影響しているのではないか。
□地域枠奨学金によって地域に医師を残す方法として国公立大はもともと授業料が安く奨学金を簡単に返せてしまう(地元に残らない)のが問題。
□地域偏在に加え診療科偏在も問題。ある医療圏では神奈川県に匹敵する面積の中に産科医が一人もいない。そのためには総合医も重要だが産科医等の診療科の医師も重要。
□医師の絶対数を増やし、交代で赴任できるような状況を作ることが必要。

(新設される医学部に対する要望)
□新しい大学には是非既存の大学と連携してほしい。本学(発言者が所属する大学)の同窓生は東北各地にいる。新設の医大を卒業したからといってそれを差別化するわけではなく、一緒に医師としてのキャリアアップをしていただきたい。
□新しくできる医学部と既存の医学部は、緊急被ばく医療や原子力災害に関する教育、訓練等で、連携・役割分担を明確にしていくことが必要。
□新設大学には、医師として成長していける環境、長期的に医学的な能力を高めていくためのリカレント教育(卒後の継続学習)にも取り組んでほしい。
□地域枠の卒後のキャリアパスを明示することが重要である。本学(発言者が所属する大学)でもそれを明確にすることによって定着する率が少しずつ高まってきている。
□自治医科大学の卒業生は県が配分を行う仕組みだが、新しい医大の場合には、卒業生の勤務先の調整に、自治体病院を設置する市町村が関われるようにすべきではないか。
□新設の医学部、既存の医学部、関係する自治体等も参加したネットワークを構築し、地域へ貢献できるようなシステムを作るべきである。

(構想審査に関して留意すべきこと等)
□医師の引き抜きにより地域医療に影響がないようにしてほしい。
□新設医大の効果がでるのは10年後。今の医師不足に対応できるのはこれまでの定員増と地域枠奨学金であり、本県(発言者が所属する県)ではこれらは大変有効に機能しつつあり、このまま続けさせてほしい。
□首都圏の大学からの医師派遣も多く受けている。首都圏の大学からの教員登用により、間接的に東北に医師が来なくなるということがないように配慮していただきたい。
□自治医科大学の負担金を参考にすると、1学生当たり6000万円程度の運営費は毎年用意する必要があるのではないか。
□医師不足や高齢社会の地域医療の解決に向けた医学部設置について、将来的な継続可能性、その設置の志を十分に生かせるような体制の構築についても審議していただきたい。
□医師や看護師をはじめとした教職員の引き抜きには気をつけて進めてほしい。東北地方以外からの確保のための計画について十分慎重な審査をしてほしい。
□医学部新設に当たっては、医療崩壊を防ぐため、教員候補には本人の内諾だけでなく施設の長の同意書を添付させてほしい。一人でもいなくなると困る小さな病院が地域医療を支えている。
□県立病院でさえ看護師の確保に苦労している。看護師の引き抜きをさせないというルール作りもお願いしたい。
□600床の附属病院を設置するには、臨床教育や地域への質の高い医療は当然のことながら、病院経営の責務も重くなる。病院の所在地域、具体的には二次医療圏に十分配慮してほしい。同じ二次医療圏内に高機能な病院がある場合には、是非そうした病院と連携するようにしてほしい。
□もともと医学部新設については反対する意見も強かったが、この東北地方における医学部新設に関して大きな反対の声が上がっていないのは、医師の引き抜きの禁止などが条件として示されたから。この構想審査会において、各構想について、医師の引き抜き等の留意点について問題がないかどうか、真剣に審議していただけることを期待している。

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-- 登録:平成26年09月 --