構想審査結果の理由

本審査会は、「東北地方における医学部設置認可に関する基本方針」(平成25年12月17日復興庁・文部科学省・厚生労働省)(以下「基本方針」という。)に基づき、「東北地方における医学部設置に係る構想の応募要領」(平成26年4月文部科学省)にのっとって応募された三つの構想について、審査を行った。

 

1.各構想に対する評価

(それぞれの構想に対する評価) 
○ 国際復興記念大学(仮称)については、震災で甚大な被害を受けている福島県に立地し、原子力災害からの対応について真剣に考えている点を評価する意見、意欲的に様々な要素を構想に取り入れている点を評価する意見、既に急性期病院として一定の実績がある病院を有する点を評価する意見等があった。一方、問題点としては、福島県や福島県立医科大学との連携が十分とれておらず、既に様々な取組を行っている福島県立医科大学ではなく、新たに大学を設置しないと実現できないことが不明確である等、自治体・大学・関係者等との協力を得られていないことに関する意見があった。特に、定員の大半を東北出身者に限定した地域枠入試としながら、奨学金の金額が授業料に対して少額(学費全額免除相当となるのは3人のみ)であり、経済力のある学生しか集まらなくなる可能性が高いことや卒業後に地域に定着していくキャリアパスが不明確であるなど、卒後の定着策としての効果が十分期待できないという意見があった。母体となる財団等が、高度・先進医療に積極的な投資をしていることにより、収益性は高いものの負債が多く、大学を新設するに当たり必要な費用を、債務なく確保することについて不確実性を指摘する意見等があった。

○ 東北医科薬科大学については、教育上必要な症例数・患者数の確保等において有利な仙台市内に本院を持ちつつ、最大被災地である石巻市で再建予定の石巻市立病院へサテライトを設置すること等、被災地の地域医療、災害医療に配慮した6年間のカリキュラム内容が充実し、医学教育モデル・コア・カリキュラムに対応しつつ特色ある教育に対応した具体的な到達目標も設定していることを評価する意見があった。また地域の基幹的な自治体病院とのネットワークを構築する準備等を進めていることや東北地方における70年以上にわたる医療人教育実績があること、設置経費を自己資金で確保できる一定のめどがあり、附属病院を含めた財政面でも安定していることについても評価されている。一方で、東北大学との連携が強く意識されている分、既存の大学とのすみ分けが十分でなく、既存の大学の卒業生が定着できていないような地域の医師確保につながるのかという意見、比較的医師数の多い仙台に立地する分、医師不足地域における実習や卒後の医師派遣について明確に示すべきという意見、相対的には最も具体的な教育内容を示しているとはいえ、もっと思い切った取組をしていくべきという意見があった。入学定員120名のうち50人が宮城県の設ける奨学金基金の対象(6年間の学費相当)、20人が大学独自の奨学金の対象(学費半額相当)となっていることについて、一般的な私立大学には例のない奨学金の規模であり、高額な奨学金貸与により裕福でない学生にも道が開かれ、かつ地域定着を促す効果が期待できるという意見がある一方、奨学金対象外の50人の学生と合わせると三つの学生集団が生まれることになるため、地域定着を促す教育を行うに当たり、一体感をつくる上で支障になるのではないかという意見もあった。

○ 宮城大学は、総合診療医を育成・確保し地域医療を立て直したいという知事の熱意が感じられるという意見、公立であることにより県の医療政策との連携、他の自治体等との連携がしやすいのではないかという期待感があるという意見、比較的少人数(入学定員60名)で全員が奨学金の対象であり、一体感のある教育が期待できるという意見、過疎地域の地域振興としては大いに期待されるという意見等があった。一方で、目指す特色に応じた教育内容や教育体制について具体性が欠けることや、医師や教員の確保の具体策を持っていないこと、栗原市以外の自治体や病院、各大学等との連携について着手されていないこと等、構想全体が準備不足であり検討体制も不十分であることについて懸念する意見が多かった。特に、附属病院については、栗原市に設置するということが決まっているものの、その規模、機能、人口減少が進行している中での患者数の確保や経営の見通し、近隣医療機関との役割分担が定まっていないことが問題であるとする意見が多かった。また、知事のリーダーシップ、意欲を高く評価する意見がある一方で、応募から約1か月後に宮城大学が設置主体となることが決まったという経緯もあり、構想内容について宮城大学の意向がほとんど見えないという意見もあった。地域定着に関しては、学費が安いことで門戸が広がること、全員が東北地方への定着のための奨学金の対象であることを評価する意見が多かった。一方で、一般的に、国公立大学の少ない首都圏から学生が多く集まり、比較的安価な奨学金を返済し定着せずに戻ってしまうという懸念や、奨学金は東北全体を視野にいれた仕組みであっても、大学の設置経費及び運営費を県費で負担する県立大学であるが故に、自県の事情を優先せざるを得ないことが起こり得るのではないかという懸念に対する、宮城大学としての具体的な対策が示されていないという意見もあった。

○ いずれの構想も、掲げた基本理念やミッション等の方向性は、おおむね基本方針に示された医学部設置の趣旨に添うものであると言えるが、その具体的な構想内容に関しては一長一短であり、委員からはそれぞれの構想に対して様々な意見が出された。その概要は「構想審査会における主な意見」にまとめたとおりである。

(関係団体等からの意見の概要)
○ 本審査会では、審査の参考とするため、東北地方の被災三県に所在する大学、岩手県及び福島県、東北市長会、医療関係者を代表して日本医師会から、新たな医学部に期待することや留意すべき点等についての意見聴取を行った。

○ 各団体から共通していた要望としては、教員・医師等の確保で地域医療に影響を来さないこと等、基本方針で示した留意点について本審査会で厳しく審査してほしいというものであった。また、誰が設置主体となるにしても、各大学・地方公共団体等と連携してほしいという要望も共通していた。なお、どの応募者であれば連携できる、できないという意見はなかった。

○ また、各自治体からは、総じて、総合診療医に関して高い期待がある一方で、産科や小児科等の専門医の養成も必要という意見があった。卒後の定着のためには、配置先の決定において市町村の意向が反映できる仕組みが必要であるという意見があった。

 

2.選定に向けた議論と論点

(1)選定に向けた審査の経過

○ 前述のとおり、いずれの構想も、評価すべき点と不十分な点があり、一長一短であった。審査の中では、いずれの大学も現状においては選定できないという意見もあったが、選定に向けた議論を進める中で、おおむね、不十分な点に対しては条件を付すという前提で、東北医科薬科大学の構想を選定するか、あるいは宮城大学の構想を選定するかという点に議論が集約された。この二つの構想のどちらを選定すべきという議論は、選定に当たりどの観点を重視するかという議論と密接不可分という形となった。

○ 例えば、地域医療や災害医療を含む6年間の教育内容等、構想に具体性があるのは東北医科薬科大であり、宮城大は基本的なカリキュラムを示すことができておらず、附属病院の詳細や教員や医師等の確保の具体的な方法を示せていない以上選定できないという、いわば将来への期待度よりも構想の内容、具体性、実現可能性を重視する観点から、東北医科薬科大学を評価する意見があった。一方、宮城大の準備不足、構想の具体性が欠けることを認めた上で、東北薬科大学はこれまでの医学部の延長線上であり、これまでの医学部とは違う特殊な医学部を目指すべきであり、公立の宮城大学であれば、知事のリーダーシップの下、これまでにない医学部を作れるのではないかという、いわば構想の内容、具体性、実現可能性よりも将来への期待度を重視する観点から、宮城大学を評価する意見があった。

(2)四つの「留意点」を中心とした議論

(四つの「留意点」について)
○  基本方針では、受け付けた構想に対して「基本方針に示した条件等に適合し、最も趣旨にかない、実現可能性のある構想を一つ選定する」こととしている。

○ 「留意点」とされたものは、以下の四つの点である。
【1】東北地方の将来の医療ニーズを踏まえた教育等を行うこと
【2】教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さないような方策を講じること
【3】大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の解消に寄与する方策を講じること
【4】将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること

○ この審査会が設けられた趣旨は、基本方針に掲げた趣旨、留意点に対応しているかどうかを専門的かつ客観的に評価するためのものである。関係団体等からの意見聴取では、どの団体からも、特定の構想を選定すべき・すべきでないとする意見はなく、本審査会において、基本方針の留意点について適切に審査することを求める意見が多かった。

○ 基本方針に掲げた趣旨や留意点への対応を評価するということは、設置主体(公立か私立か、既存の学校法人か新規の法人か)、設置場所(何県に置くか)等の外形的な違いによる印象や期待値ではなく、実際の応募書や追加資料に基づき、趣旨にふさわしいものになっているか、留意点に対応できているかという点をしっかり見ることが必要となる。

(当初の内容や実現可能性の評価と将来性、特殊性について)
○ 審査の中では、大学設置時の教育内容や体制あるいは実現可能性で評価するのではなく、10年後20年後によりよい大学となり得るかどうかという点を重視すべきという意見もあった。それに対し、教員の適確性や法人の財務状況等についての詳細な審査は大学設置・学校法人審議会で行うにせよ、復興という目的からはできるだけ早く医師を育て東北地方に輩出することも重要であり、構想段階での実現可能性は軽視すべきでないという意見があった。

○ 大学である以上、1年目から責任を持って学生を育てあげ、社会に送り出していくことは当然の役割である。また医学部は、教育に協力していただく患者の安全や人権という観点からも、開学当初から、医学教育モデル・コア・カリキュラムに示された到達目標を踏まえ、最低限必要な水準の医学教育を実施できる環境を作ることが必要であると考えられる。

○ また、審査の中では、約40年ぶりに医学部を作る以上、既存の医学部とは抜本的に異なる特別な医学部にすべきではないかという意見があった。それに対しては、従来の医学部と大きく異なる医学教育の在り方については、今回の医学部設置の構想審査とは別途、時間をかけて議論すべき問題ではないかという意見があった。

○ 基本方針では、一義的には東北地方の医療へ貢献する医師を育て定着させることを求めており、特別な大学を作ること自体を目的とはしていない。結果として、既存の大学とは様々な点で異なる特色を持ちうる可能性はあるが、特殊性自体が先にありきではないため、基本方針の趣旨、留意点に対応できる教育内容や体制、地域定着策等が用意されているかどうかを審査することが本審査会の目的にかなうと考えられる。

○ こうしたことから、基本方針に掲げる四つの留意点と実現可能性を中心に、応募書や添付資料、ヒアリング時の説明、書面による質問への回答を元に、各構想を評価することが重要と考えた。

(留意点への対応や実現可能性という観点からの各構想の評価)
○ このように考えて、四つの留意点等の観点にそって各構想の内容を評価すると、以下のとおりである。

<東北医科薬科大学>
・ 東北医科薬科大学の構想は、前述のとおり、全般的に更なる改善・向上の余地はあるが、教育内容(留意点1)については、患者や教職員の確保に有利な仙台市内に附属病院本院を置き、最大被災地である石巻市に地域医療教育のサテライトを置き、地域医療や災害医療教育に関し準備教育から基礎医学教育、社会医学教育、臨床医学教育、臨床実習等の各段階における到達目標を明示し、教員確保の方策(留意点2)についても選定後の具体的な段取りの案を持っていると言える。
・ 地域定着策(留意点3)等についても、宮城県との連携も含めて最大70人分の地域医療従事を条件とした奨学金を確保し、卒後のキャリア形成のため研修病院のネットワークの案を示す等、一通りの具体策を示し、具体的な連携先を設定している。なお、奨学金の貸与の有無により3種類の学生集団が生まれることについて、一体感をつくる上で支障になるという指摘があった。
・ 入学定員については、臨時定員削減後、更なる定員減に関しては他大学と連携して協力することを明言しており、それが担保できるならば、将来を考慮した入学定員(留意点4)についても満たせていると言える。
・ 既存の大学との役割分担、東北6県全体との連携ができておらず、県外の病院との具体的なネットワーク構築が必要である等、不十分な点も指摘されたが、本構想については具体的な準備が進んでいるからこそ具体的な改善事項等の指摘を受けているという面もある。様々な具体的条件を付し、それをクリアできるならば、求められる水準に達すると考えられる。

<宮城大学>
・ 宮城大学の構想は、定員が60名と小規模であることから将来的な定員調整については問題がない点(留意点4)において相対的に優位にある。
・ 地域定着策の観点(留意点3)においては、入学定員全員を奨学金対象としている点が高く評価できる。また、公立であれば東北地方の自治体と連携が取りやすいのではないかと期待する意見もある。なお、関東地方等から学生が集まり奨学金を返還して東北から出て行くことへの懸念や、県立大学として自県の事情を優先せざるを得ないという懸念に対して、具体的な対策が示されていないという指摘もあった。
・ 一方で、教育の内容については、これまでにない「地域完結型」の教育による総合診療医育成を目指すということが示されているが、目指す教育を実現するための6年間を通じた教育内容や方法(留意点1)が具体的に示されず、実習等に必要な連携先との協議も未着手である。
・ 特に、附属病院の考え方について、栗原市と連携することは固まっているが、大学病院としてどのような機能、規模とするかという基本的なことが具体的に定まっていない。このため、医師不足地域であり地元からの期待度の高い立地である半面、経営面や人材確保の面では不利な点をどう克服し、人口減少の中で附属病院を維持し、目指す教育に必要な教育環境が構築できるのか(留意点1、実現可能性)、他地域の医療に支障を来さず教員や医師、看護師等の確保ができるのか(留意点2)を判断することもできず、基本方針に掲げる留意点を満たせると本審査会が判断できるだけの根拠を示せていないと言わざるを得ない。
・ 総じて、宮城県が必要とする人材像は示されているものの、宮城大学としての具体的な取組が見えず、準備不足が否めない。今後、宮城大学が主体性を発揮し、宮城県が県の総力を挙げて取り組めば、長期的には、各所の協力を得て教育を充実させることにより、よい大学となる可能性はあるが、開設予定時期までに、地域医療等に支障を来すことなく、計画とおりの医学部を作るという観点(実現可能性)からは、困難と言わざるを得ない。

<国際復興記念大学>
・ 各留意点へ対応するためには、大学自身だけの力だけでなく、各県や既存の医学部を有する大学との連携協力が不可欠であるが、国際復興記念大学は、そうした関係を構築できていない。このことにより、地域定着のための奨学金を自前で確保せざるを得ず、全額免除の対象は3人に限られるなど卒後の地域定着策が不十分(留意点3)であることや、福島県立医科大学をはじめとする既存の大学とどう連携・役割分担をして人材育成を行うのかが明確でないという問題(留意点1)につながっている。また、大学病院の母体とする病院が、相応の規模や実績を有し、かつ経営努力等により高い収益を上げているとはいえ、事業拡大のための多額の長期借入金を抱え附属病院や土地に抵当権が設定された状態から、借入れなく設置経費及び当初の運営費を確保することについては、県民の理解が得られれば公費により財源を確保できる宮城大学や、現時点で長期借入金がなく自己資金により設置経費を賄う一定のめどがあり、かつ奨学金基金等について宮城県が支援を約束している東北医科薬科大学に比べれば、財務面で確実性に欠ける(実現可能性)。総じて、医学部設置に強い意志を持ち病院グループとしての実力・実績があるとしても、東北全体の復興のための医学部設置という特別なテーマに対し、行政等との密接な連携のないまま、自グループの力だけで立ち向かうことの限界があると言わざるを得ない。

 (3)宮城県内の2構想の関係について

(東北薬科大学と宮城県の構想について)
○ 上記(1)のように、審査の過程においては、東北医科薬科大を選定すべきか宮城大学を選定すべきかについては両論があったが、東北薬科大と宮城県の両者が連携すべきであるという指摘については、おおむね異論がなかった。

(東北薬科大学と宮城県の連携する方策について)
○ 宮城県は、県立の宮城大学における医学部設置の応募者である一方で、仮に東北医科薬科大学の構想が採択されれば、県が奨学金基金の設置や初期の設置経費等に対する補助(最大で30億円)などの支援を行うことを表明しており、東北医科薬科大学が選定された場合にも、基金を活用した奨学金(最大50人を想定。詳細は県と大学で協議することとされている)が可能となっている。

○ 東北医科薬科大学の構想は、宮城県と連携し、県から奨学金基金の設立等の支援を受けつつ、例えば地域医療実習や卒後の地域定着策などにおいて宮城県の希望も踏まえたものとすることにより、相互にメリットがあり、東北医科薬科大学の構想を改善し、より充実したものとすることが期待できる。逆に、宮城大学の構想に対して、東北薬科大学が協力し、相互にメリットがあることとしては、医学教育と薬学教育との連携等に限られ、それにより宮城大学の構想の問題点(教育内容や教員確保の見通し、附属病院の確保など)が直ちに解消されることにはならない。

○ なお、どちらが選定されても、宮城県内に設置されるということ、宮城県が設置する基金を活用し奨学金により50~60人程度の学費相当額が免除(東北医科薬科大の場合約3,000万円、宮城大学の場合には生活費相当を含めた約1,300万円を想定)され、受給者には東北の地域医療に従事する義務が発生することについてはほぼ同じであるが、東北医科薬科大学が設置する場合の県費負担は、奨学金基金を除くと県からの補助金は最大で30億円であり、残りは同大学の自己資金により確保されなければならない。一方、宮城大学が設置する場合の県費負担は、施設費等の設置経費(270億円程度)や運営費交付金(追加資料によると年額57億円程度)を合わせ、開学後10年間で約800億円近くに達し、こうした費用は県が将来にわたり負い続けることについて宮城県民の理解が得ることが必要であることも考慮に入れるべきではないかという指摘もあった。公立と私立の制度上の違いもあることから、財務面については、どちらがよいとは一概に言えない面があった。

 

3.結論

(結論と条件)
○ 以上の論点を総合的に勘案すると、結論としては、東北医科薬科大学は、宮城県の支援を受け、幾つかの具体的な条件に対して誠実に対応することができるならば、新たな医学部の設置主体として適していると判断できる。 
○ 今回の医学部設置の趣旨については、70年以上にわたって東北地方の薬剤師養成に実績があるとはいえ、独自の建学の精神により設置された私立大学が、将来にわたり負い続けていくことは容易ではない。東北医科薬科大学が、宮城県による継続的なバックアップを受けるとともに、東北各県、各大学と連携し、設置理念のとおりに運営がなされるよう、いわば復興のための県境を越えた公私連携型の仕組み、体制を構築することが必要である。宮城県においては、知事の強い要望が東北地方における医学部設置の特例が行われる道が開かれるきっかけの一つとなった経緯も踏まえ、東北医科薬科大学がその理念を果たせるよう、十分な連携や適切な支援を期待する。

○ このため、選定後速やかに、東北薬科大学においては、東北各県、各大学、関係団体からなる運営協議会(仮)を立ち上げ、教員等の確保による各地域の医療への影響や卒後の定着策等をはじめとして、この運営協議会で意見を聞き、自ら主体的に医学部新設構想の更なる向上を図ることを求めたい。この協議会の立ち上げに関しては、本審査会として各県・大学等の関係者に対し、積極的な協力をお願いしたい。また、国からも、各県・各大学等に対する協力要請を行うとともに、必要な指導助言を行うことを求めたい。

○  この協議会の枠組みを活用することにより、東北大学をはじめとする既存の大学との役割分担を整理し、卒業生が都市部に集中することなく、東北6県全体の医師偏在解消につなげる枠組みを確立することを期待する。

○  教育内容や地域定着策を深めていく上では、自治医科大学や各大学の地域枠におけるこれまでの取組の実績や課題を踏まえ、それを乗り越えるものとすることが期待される。こうした観点から、宮城県が打ち出した奨学金基金の仕組みをはじめ、地域定着策や教育内容について更なる工夫をすべきである。奨学金基金の仕組みについては、大学と宮城県で詳細を詰め、文部科学省、厚生労働省とも相談の上、速やかに検討をし、東北各県と調整していくことを求めたい。

○  また臨時定員20名を含めて120名の入学定員を設定し、うち50人に対しては宮城県が設置する奨学金基金を活用した奨学生とし、20人に対しては大学独自の奨学金による奨学生とする仕組みについては、東北地方の地域医療に従事することをもって学費相当の奨学金の返済を免除することは地域定着のために効果的であるとする意見があった一方で、奨学金枠がない学生が50人存在することにより学生全体の地域医療に対する一体感を下げることにならないように具体的な工夫をする必要がある。例えば臨時定員を設定せず入学定員を100名の定員としてスタートすることや、学費全額相当の奨学金対象者数を増やす等、定員設定と奨学金設定については、宮城県等とも協議の上、適切な規模を再度検討することが必要と考える。

○ このほか、具体的に履行を求める条件は、選定結果本文に記載したとおりである。

(補足:医師養成数に関する意見)
○  この点について議論することが本審査会に課された役割ではないが、選定に関する議論の中で、今後の全国的な医師養成数の在り方に関する意見として、医師の地域偏在や勤務状況の改善、ある程度全体の人数を増やしていく必要があるとする意見と、数字上は間もなく需給が一致するので、早めに定員抑制を考えていく必要があるとする意見の両方が出された。

○ 今回の東北地方における医学部新設は復興という特例の扱いであり、今後の医学部新設や医師養成数に関しては、医師需給の見通しや定員増の効果の検証、医療制度改革の動向等を踏まえて、文部科学省と厚生労働省が連携し、慎重かつ適切に検討することが求められる。

(終わりに~各方面への協力要請)
○ 今後、選定に当たり付された条件が無事に果たされ、設置認可を受けて新しい医学部が一つできたとしても、それだけで直ちに将来の医療が変わるわけではない。特に今後の超高齢社会、人口減少社会の中で医療を支えていくためには、医師の養成数の増加や偏在解消策だけでなく、医療機関の機能分化などによる効率的・効果的な医療提供体制の確保、地域包括ケア体制の構築など様々な取組が必要になってくる。 
○ 設置される大学にはその理想の実現のため不断の努力を求めるとともに、東北地方の各地方公共団体、各大学、関係団体等においては、設置される医学部と可能な限り相互に協力しあい、全体として東北地方の震災からの復興、将来に向けた地域医療の振興のために、心を一つにして向かっていくことを期待したい。

お問合せ先

高等教育局医学教育課企画係

電話番号:03-5253-4111(内線2509)

-- 登録:平成26年09月 --