国立大学法人高知大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 高知大学は、南国土佐の自然と風土に学び、未来を展望した知の創造と学術の継承・発展を通した人類の持続的発展と地域社会への貢献を使命とし、高度で実際的な学術研究の推進と、広く国際社会に貢献し得る人材を輩出している。また、文理統合型大学院への改組に伴う領域横断的な教育研究の実施、教育・教員組織の分離による発展的な教育研究の展開等、機動的・戦略的な大学運営に取り組んでいる。
 業務内容については、教員の人事評価を実施し、評価結果を勤勉手当及び昇給に反映しており、評価できる。また、仕事と妊娠・出産・育児の両立を支援するため、育児短時間勤務制度の導入等に取り組んでいる。
 財務運営については、サッカー部ユニフォームへ企業名を掲載することによりスポンサー料として寄附金を得る仕組みを導入している。
 その他業務運営については、エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)による第1種エネルギー管理指定工場である岡豊キャンパスにおいては、エネルギー消費原単位について、年1%以上低減する目標を達成するとともに、大学全体でも対前年度比0.8%低減している。
 一方、毒物・劇物の管理状況について、理学部、医学部、農学部のうち一部の部署を除き適正に管理されておらず、早急な対応を求める所見が平成21年度会計監査において出されていることを踏まえ、毒物、劇物を含む薬品管理の徹底について関係者への周知や、適正管理に必要な環境整備、マニュアル等に基づく適正な運用に努めることが求められる。
 教育研究等の質の向上については、今後の教育改革方針を示した「高知大学の学士課程教育改革の基本方針」を策定している。また、特別教育研究経費プロジェクトをさらに発展させた研究プロジェクト「学際的融合によるシステム糖鎖生物学研究推進事業」、「地球掘削科学のための国際研究教育拠点形成」、「黒潮圏科学による地域社会の温暖化適応策の構築」を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教員の人事評価について、教育活動、研究活動等の5項目による評価を実施し、評価結果を平成21年12月の勤勉手当及び平成22年1月の昇給から反映しており、評価できる。

○ 教員組織の充実を図るため、新たな教員評価、組織評価の単位となる「部門」の構成を見直し、平成22年4月から新部門に教員を配属することで、各教育組織(学系)からの要請による出動体制を構築し、人的資源の効率的・戦略的活用を図っている。

○ 障害者の就業機会拡大等を検討した結果、環境整備業務に従事する職員として採用する教育学部附属特別支援学校の卒業生を平成22年4月から4名に増員することとしている。

○ 仕事と妊娠・出産・育児の両立を支援するため、育児短時間勤務制度を導入するとともに、大学入試センター試験の際は、朝倉キャンパス・岡豊キャンパスに臨時託児所を設置している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、外国人教員が増加していないことについては、外国人枠の教員公募を実施し、外国人教員は19名(対前年度比2名増)となっており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて特筆すべき進捗状況にある

(理由)年度計画の記載21事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められるほか、全学で教員の人事評価を実施し、その評価結果を処遇に反映する取組を実施していること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学外講師による科学研究費補助金申請書のブラッシュアップを実施するとともに、不採択者で一定以上の評価該当者50名に対し、インセンティブ経費を付与した結果、平成22年度科学研究費補助金の内定件数が35件増加している。

○ サッカー部ユニフォームに企業名を掲載することにより、スポンサー料として寄附金を得る仕組みを導入している。

○ 受託研究、受託事業及び寄附金による外部資金収益額は8億8,330万円(対前年度比2億8,865万円減)、外部資金比率は3.1%(対前年度比1.0%減)となっていることから、外部資金獲得に向けた取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「教員の総合的活動自己評価」について、ウェブサイト入力システム機能追加により、平成17年度以降の各教員のデータ検索が可能となり、教員のデータ入力の利便性が向上している。

○ ラジオ番組「Change The 高知大学」特別企画番組として、「学長と高知県知事」「学長と国内大手企業代表取締役」との対談を放送し、地域の大学としての高知県との関わりや人材育成等の役割をアピールしている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ クオリティー、スペース、セーフティー、エネルギーマネジメントの推進を活動方針として施設整備計画及び施設維持保全計画を策定し、第2期中期目標・中期計画に向けた施設概要、施設整備マスタープラン(案)を作成している。

○ 施設の劣化等について状況を把握するため、施設パトロールを継続して実施し、特殊建築物定期報告の結果による改善計画を作成するともに、ハザードマップ及びトイレ調査等のフォローアップ調査を実施して安全性に問題がある箇所を改善している。

○ 高知大学生活協同組合からの寄附金等による学生会館・食堂の整備等を行っている。

○ 南海地震対策として、附属小学校体育館等の耐震補強整備を実施し、小津キャンパス附属学校園の耐震補強整備が100%完成している。

○ エネルギーの使用の合理化に関する法律(昭和54年法律第49号)による第1種エネルギー管理指定工場である岡豊キャンパスにおいては、エネルギー消費原単位について、年1%以上低減する目標を達成するとともに、大学全体でも対前年度比0.8%低減している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 毒物・劇物の管理状況について、理学部、医学部、農学部のうち一部の部署を除き適正に管理されておらず、早急な対応を求める所見が平成21年度会計監査において出されていることを踏まえ、毒物、劇物を含む薬品管理の徹底について関係者への周知や、適正管理に必要な環境整備、マニュアル等に基づく適正な運用に努めることが求められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載5事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 各学部のディプロマ・ポリシー(学位授与方針)及びアドミッション・ポリシー(入学者受入方針)を一層明確かつ具体化した上で、カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)に基づいたカリキュラムマップを作成し、人材育成目標を明示している。

○ これまでの教育改革を取りまとめ、今後の教育改革方針を示した「高知大学の学士課程教育改革の基本方針」を策定している。

○ 大学院総合人間自然科学研究科では、横断型カリキュラムの改善を行うとともに、他専攻と協働した指導体制の充実化を図っている。

○ 総合教育センターと事務局が連携し、1年次からのキャリアパス設計に必要な情報提供や就職関連ガイダンス等を行っている。

○ 特別教育研究経費プロジェクトをさらに発展させた研究プロジェクト「学際的融合によるシステム糖鎖生物学研究推進事業」、「地球掘削科学のための国際研究教育拠点形成」、「黒潮圏科学による地域社会の温暖化適応策の構築」を開始している。

○ 知的財産セミナー及び特許講習会・相談会等の活動を充実させるとともに、技術移転交流会への参加を積極的に行い、知的財産の創出と管理・活用を推進している。また、産学連携事業を推進し、地域の発展及び振興に努めている。

○ 大学交流協定等を活用し、国際的な教育研究ネットワークの拡大に向けて取組を推進するとともに、中国に高知大学帰国留学生同窓会組織を設立している。

○ 「高知発達障害研究プロジェクト」において、高知県と連携し、県の実情に即した発達障害支援研究と支援システムの構築に取り組んでいる。

全国共同利用関係

○ 海洋コア総合研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。

○ 高度な研究支援要請にも対応可能な専門知識と経験を有するPD研究員5名を公募採用(うち1名国際公募)するとともに、兼務教員を4名、技術職員1名を増員し教育・研究・技術支援体制の強化を図っている。また、外国人研究者の来訪機会の増加に対応するため、英会話能力を備えたスタッフを雇用し、国際化への対応を図っている。

附属病院関係

○ 卒後臨床研修センターの支援業務及び人材育成に関するプロジェクト事業支援を行う「高度医療人育成支援室」を設置、学部教育との連携も図りながら、良質な医療人の育成をするための体制を整備している。診療では、平成20年度に開設した骨盤機能センターにおいて受診した患者の生活の質(QOL)も含めた診療成績調査を行っており、QOLも考慮した満足度の高い医療を推進している。
 今後、引き続き、地域医療を担う医師を養成するための「家庭医道場」の取組や専門外来(サブスペシャリティ)の充実等、地域における質の高い教育研修・診療体制のさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 周産期医療を担う若手医師の教育環境整備、女性医師の勤務継続支援・復帰支援等の教育指導体制の充実を図るためのプログラムを開始している。

○ 低侵襲手術を積極的に学習するために、低侵襲手術教育・トレーニングセンターを設置するとともに、スキルスラボでは、医学科の臨床技能実習や研修医の採血・注射手技トレーニング等を実施し、延べ2,200名以上が利用するなど、教育研修体制の充実が図られている。

○ 前立腺がんに対するペプチドワクチン療法の開発、骨髄細胞移入血管再生療法におけるバージャー病症例への施行、皮膚潅流圧(SPP)の測定の血流改善効果の評価法導入等、先端医療の開発・臨床応用を推進している。

(診療面)

○ 小児救急医療体制では、公的5病院(高知大学病院を含む)による輪番制の維持に努力しており、地域における救急医療体制の提供に努めている。

○ 医療従事者との調整や患者の回復を促進するために患者・家族を支援する「家族支援専門看護師」を配置するなど、全診療科の患者を対象として支援活動に取り組んでおり、組織横断的な活動を推進している。

○ 地域貢献のため、精神神経科の「ドルフィンプロジェクト」、薬剤部の「本場の本物大豊の碁石茶」研究、整形外科の高齢者運動器健診事業、総合診療部の「高齢者におけるインフルエンザワクチン通年接種下の抗体価の変化」の調査等に取り組んでいる。

(運営面)

○ 外部評価では、財団法人日本医療機能評価機構による病院機能評価Ver6.0に認定されている。

○ 中国四国国立大学4病院薬剤部長会議において、医薬品調達の共同交渉の実現に向けた検討を行っており、後発医薬品の採用、一般競争入札や医療材料SPDの活用による経費の節減に取り組んでいる。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --