国立大学法人香川大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 香川大学は、創造的で人間性豊かな専門職業人・研究者を養成し、地域社会をリードするとともに、共生社会の実現に貢献することを基本的な目標に、「香川大学憲章」、「香川大学将来構想」を策定し、地域に根ざした学生中心の大学の理念に基づき、学生の卒業後の進路確定率を高めるなどの「出口から見た教育」の視点を重視した教育を実施している。
 業務運営については、意思決定の迅速化、責任権限の明確化を図るために事務局制を廃止するとともに、理事と事務組織のミーティングを定期的に実施して情報共有機能を補完、強化し、重要事案が迅速に伝達できる体制を構築している。
 財務内容については、科学研究費補助金の獲得増に向けた取組として、科学研究費補助金初年度交付額の3%を支給する報奨金制度を新設している。
 その他業務運営については、既存のキャンパスマスタープラン(施設整備計画図)を見直し、第2期中期目標・中期計画に対応する中・長期的な「香川大学キャンパスマスタープラン2010」を作成するとともに、既存プランに基づき、432件の教育・研究施設等の改善整備を行っている。
 教育研究等の質の向上については、フィールドワーク手法を積極的に導入した教育プログラムの開発を行い、地元企業・自治体・住民等の協力を得ながら、フィールドワークを実践することを通して、自ら問題を発見し、その解決のために行動できる人材養成に取り組んでいる。また、医学部・工学部が香川県と連携し、「医工情報領域融合による新産業創出拠点」を設立して研究活動を推進している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 新学部設置について、「実践知」の修得を教育上の中心目標とするリベラルアーツ系学部構想として取りまとめ、既存学部については、教育学部が教員養成機能に特化するなど、それぞれの専門領域で特化し、1学部1学科(課程)複数コース制(医学部を除く)に移行する構想を取りまとめている。

○ 学長戦略調整費を活用し、各部局の外部資金獲得意識向上、円滑な申請作業、採択額増加を図ることを目的として外部資金獲得支援経費を新設している。

○ 意思決定の迅速化、責任権限の明確化を図るために事務局制を廃止するとともに、理事と事務組織のミーティングを定期的に実施して情報共有機能を補完、強化し、重要事案が迅速に伝達できる体制を構築している。

○ 経営協議会学外委員からの意見を踏まえ、財務状況と経営状況を分析して報告書を作成し、学内外に配布するとともに、他大学の財務状況と比較して戦略的な予算編成に活用している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載31事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 科学研究費補助金の獲得増に向けた取組として、科学研究費補助金初年度交付額の3%を支給する報奨金制度を新設している。

○ 診療材料に係る価格交渉支援及び関連コンサルティング業務の請負契約を行い、診療材料費が1,243万円節減されている。

○ 資金運用額の確保を図り、運用益を特定施策推進経費等の財源に充て、教育研究活動推進を図るために活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、外部資金獲得については、科学研究費補助金採択に向けての研究計画調書のブラッシュアップ施策や共同研究、受託研究の増加に向けての研究シーズの情報発信等に取り組み、科学研究費補助金は3億2,751万円(対前年度比1,063万円増)、共同研究、受託研究及び寄附金による外部資金は13億882万円(対前年度比2億8,355万円増)となっており、指摘に対する取組が行われている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 第2期中期目標期間における中期計画・年度計画管理システムとしてウェブシステムの開発を行っている。

○ 大学の教育、研究、社会貢献等諸活動に関する情報を地域社会、卒業生、高等学校等に提供するため、「かがユニNEWS LETTER」を創刊・発行している。

○ 同窓会連合会ウェブサイトに卒業・修了生から大学に住所等の連絡や意見の書き込みができるコーナーを設け情報収集を図るなど、卒業・修了生とのネットワークを構築している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載2事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 既存のキャンパスマスタープラン(施設整備計画図)を見直し、第2期中期目標・中期計画に対応する中・長期的な「香川大学キャンパスマスタープラン2010」を作成するとともに、既存プランに基づき、432件の教育・研究施設等の改善整備を行っている。

○ 教育改革を実施する中で不可欠な全学利用スペース再編を検討するなど、さらなる共用スペースを確保するため、主要4団地の既存施設調査を実施している。

○ 身近に行える省エネルギー・環境対策への取組をまとめた「香川大学エコカード」を作成し、学生及び教職員に配布して啓発活動を行っている。

○ 「香川大学省エネルギー対策に関する規程」等に基づき、部局ごとのエネルギー管理体制を構築し、管理計画を作成・実施するとともに、各部局から報告された点検表を分析・評価し、一層の省エネルギーを推進するために指導、助言を行っている。

○ 幸町キャンパスのすべての通用門に防犯用カメラを設置し、防犯管理体制強化に取り組んでいる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載23項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ フィールドワーク手法を積極的に導入した教育プログラムの開発を行い、地元企業・自治体・住民等の協力を得ながら、フィールドワークを実践することを通して、自ら問題を発見し、その解決のために行動できる人材養成に取り組んでいる。

○ 新入生に対する修学相談において、新入生の具体的な疑問により適切に対応できるように、学生が補助として加わっている。

○ 「香川県遺跡資料リポジトリ」を立ち上げ、遺跡発掘調査資料を有する県内13自治体等の協力を得て各自治体の遺跡報告書413冊の電子化を行い、遺跡リポジトリに登録を行っている。また、香川大学学術リポジトリ(OLIVE)を正式公開して、3,764件のコンテンツ登録を行った結果、コンテンツ数は4,530件となっている。

○ 学部学生第1年次第2学期から図書館の時間外利用(無人開館)ができるように要項を改正し、平成22年度から施行することとしている。

○ 医学部・工学部が香川県と連携し、「医工情報領域融合による新産業創出拠点」を設立して総額7億2,000万円の外部資金を獲得している。

○ 外部資金で特命教授等の雇用ができる非常勤教員制度を整備し、特命教授や特命助教を採用している。

○ 企業訪問・企業見学会・技術相談等による企業ニーズ調査を実施するとともに、様々なイベントへの出展・シーズ発表や、企業に対する大学技術シーズの情報発信を行っている。

○ 防災士養成を目的に地域住民からも受講生を募り、「地域防災リーダー養成講座」を公開授業として開設し、防災士試験合格者30名の成果を上げている。

○ 希少糖D-プシコースの人における安全性と機能性を確認し、企業と共同でD-プシコースの血糖上昇抑制効果を特定保健用食品として申請している。

○ 国際交流推進に資することを目的に、一元的な情報収集・発信及び国際戦略の構築等を行うインターナショナルオフィスを設置している。

○ 香川県立図書館との間で双方が所蔵する資料の相互貸借、レファレンスサービス、職員の資質向上のための研修等の連携強化を図るため、相互協力に関する協定を締結している。

附属病院関係

○ 香川県がん診療連携拠点病院や医療ITを駆使した糖尿病関連疾患に対する地域連携対策事業(糖尿病克服プロジェクト「チーム香川」)等に関わる業務を円滑に処理するため、中核病院機能強化支援室を設置して、支援体制の整備を図っている。診療では、胎児期・新生児期に肝硬変や腎機能障害を発症し、死亡に至る原因不明の「新生児ヘモクロマトーシス」に罹患した胎児の治療に国内で初めて成功するなど、高度医療の提供に成果を上げている。
 今後、適正な人員配置も十分考慮しつつ、病院運営基盤を強固にするためのさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 医薬に関する自主臨床研究は、医薬品等臨床研究審査委員会(IRB)で22件の申請、倫理委員会において59件の臨床研究の審査を実施するなど、臨床研究の推進に努めている。

(診療面)

○ 新型インフルエンザの感染拡大に備え、香川県と新型インフルエンザ協力医療機関設備整備事業に係る協定書を締結するなど、医療提供体制の整備を行っている。

○ 患者自身が病態を理解し、安心してセルフケアを継続させるために、リンパ浮腫外来を開設するとともに、妊産褥婦の健康診査や保健指導を行う助産外来を開設するなど、診療体制の機能充実を図っている。

(運営面)

○ 教員適正配置ワーキンググループにおいて、病院長裁量枠における病院助教の新規配置と診療科等の定数見直しを実施し、コメディカル職員の業務量・必要度を検討し、言語聴覚士や臨床工学技士を新たに配置するなど、適正な医療従事者等の配置に努めている。

○ 7対1看護体制の実現に向け、広告媒体を活用した募集活動や病院見学・就職説明会等のアクションプランを実施した結果、7対1看護体制が実現する見込みとなり、より良質な看護体制を提供できる見通しとなっている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --