国立大学法人徳島大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 徳島大学は、優れた専門的能力を有し、進取の気風を身に付けた人材を育成する大学、根源的な真理を探究する研究と社会的要請の強い課題を解決する研究を通して国際社会で高く評価される大学を基本目標として、世界に通用する研究教育大学を目指し、学長のリーダーシップの下、年度当初に学長より各理事へ重点課題への取組を指示し、自己点検・評価によりその進捗を図ってきている。
 業務運営については、競争的資金に係る間接経費の70%を学長裁量経費として確保し、全学的な研究支援経費等に配分し研究基盤の充実を図っている。また、「徳島大学男女共同参画宣言」を発表するとともに、男女共同参画室や全学の女性教員を中心とした女性研究者等支援プロジェクトチームを設置するなど、男女共同参画推進に向けた取組を行っている。
 財務内容については、科学研究費補助金に関する説明会の開催等により、科学研究費補助金の採択件数及び採択金額は増加している。
 自己点検・評価及び情報提供については、全国大学サイト・ユーザビリティ調査2009/2010において、3年連続で全国国公私立大学中1位となっている。
 教育研究等の質の向上については、ヘルスバイオサイエンスを基礎とした幅広い専門医療教育を推進するため、大学院生に組織横断的に学際的研究を指導できる教育体制を整えている。また、他の奨学金を受給していない大学院博士課程の学生を対象に、授業料の半額を給付する「徳島大学ゆめ奨学金」を創設し、給付している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学長が機動的に教員配置できる学長裁量ポストを35ポスト(対前年度比5ポスト増)とし、教育・研究を活性化させるプロジェクト等を支援するための任期付教員を配置している。

○ 競争的資金に係る間接経費の70%を学長裁量経費として確保し、全学的な研究支援経費等に配分し研究基盤の充実を図っている。

○ 「徳島大学男女共同参画宣言」を発表するとともに、男女共同参画室設置や全学の女性教員を中心とした「女性研究者等支援プロジェクトチーム」を設置するなど、男女共同参画推進に向けた取組がなされている。

○ 総合科学部及び大学院人間・自然環境研究科を改組し、大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部及び大学院総合科学教育部を設置しており、今後の発展が期待される。

○ 糖尿病関連の研究及び人材育成等を包括的・総合的に行うため、糖尿病臨床部門と糖尿病研究開発部門からなる糖尿病臨床・研究開発センターを設置している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 知的クラスター創成事業等の外部資金獲得に取り組み、外部資金比率は6.3%(対前年度比1.1%増)となっている。

○ 科学研究費補助金に関する説明会の開催等により、科学研究費補助金の採択件数は377件(対前年度比39件増)、採択金額は11億1,614万円(対前年度比8,335万円増)となっている。

○ 電子複写機賃貸借契約を随意契約から一般競争契約に変更したことにより、管理業務にかかる経費を2,711万円削減している。

○ 資金運用額の確保を図り、6,185万円の運用益を大学院博士後期課程学生への奨学金(徳島大学ゆめ奨学金)等に活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載6事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 組織評価について、財務会計システムから財務関連データを直接参照できるようにするなどデータの精度向上を図るとともに、組織評価実施スケジュールを早めることで評価結果原案に対する各組織の意見等を評価結果報告書に反映している。

○ 「全国大学サイト・ユーザビリティ調査2009/2010」において、3年連続で全国国公私立大学中1位となっている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載3事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ キャンパスアメニティの向上を図るため、常三島地区においてシンボルストリートと学生憩いの場である「助任の丘」の新設整備を行っている。

○ 学内施設のエコ対策を調査し、各建物に最適のエコシステムを提案する報告書を作成している。

○ 防災体制の強化を図るため、安全管理体制及び防犯・防災体制に関する内部監査を実施している。

○ 温室効果ガス削減に取り組んだ結果、平成21年度の単位面積当たりのCO2排出量は、対前年度比3.3%減となっている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載16事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ ヘルスバイオサイエンスを基礎とした幅広い専門医療教育を推進するため、医科学、口腔科学、薬科学、栄養生命科学、保健科学の5教育部を担当する教員からなる6つの研究教育クラスターを構築し、大学院生に組織横断的に学際的研究を指導できる教育体制を整えている。

○ 常三島地区においては、成績評価システムを導入し、GPA(Grade Point Average)を用いた学習目標の提供、GPC(Grade Point Class)の公開等が行われており、成績評価の明確化を教員及び学生に周知するとともに、シラバスに具体的到達目標、成績評価の基準を明記している。また、蔵本地区においては、医療系のコアカリキュラムに基づく「共用試験」である客観試験(Computer Based Testing)、臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination)による全国統一の成績評価システムを導入している。

○ 大学院先端技術科学教育部では、ダブルディグリープログラムにおいて英語のみで修了できる英語コースを設け、約70科目を英語コース科目としている。

○ 他の奨学金を受給していない大学院博士課程の学生を対象に、授業料の半額を給付する「徳島大学ゆめ奨学金」を創設し、114名に1,527万円を給付している。

○ 大型競争的資金の獲得を目的として組織された研究組織を育成・支援し、パイロット的大型研究の振興を図るパイロット事業支援プログラム(研究支援事業)8件に5,500万円の支援を行った結果、「先端計測分析技術・機器開発事業(科学技術振興機構)」等に採択されている。

○ 「国立大学法人徳島大学シーズ集2009」について、日本語版とともに、海外への情報発信強化のために英語版を発行している。

○ イノベーションクラブ講演会と題して、「知財について」、「中国の制度について」、「ロシアの制度について」、「外為法について」をそれぞれ開催している。

○ ICTを活用した地域と販売者・実践者の交流を促進する商店街・地域モデルとして「ブロードバンド徹底活用1000人塾」を実施している。

○ 韓国釜山市において「徳島大学卒業留学生同窓会(韓国)」を設立している。

○ 留学生と日本人学生、地域住民との交流を図るための「多文化体験交流会」を実施し、約200名が参加している。

附属病院関係

○ 高齢化社会において患者数が急増しているパーキンソン・ジストニア及び脳血管障害後遺症等の症例を対象とした「パーキンソン・ジストニア治療研究センター」を設置するなど、先端医療開発・臨床応用の推進に取り組んでいる。診療では、統合されたチーム医療を行うために、口腔管理センターにおいて、医科診療部門の集中治療室(ICU)等への往診診療(630回)等を実践するなど、医科と歯科診療の横断的な診療体制を構築し、成果を上げている。
 今後、平成22年度から「大学直轄」に移行するメリットも十分活かしながら、病院運営組織をより一層活性化させるさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 周産期医師支援室を設置し、周産期医療に関わる医師の人材養成制度を構築するための体制を整備している。

○ 医師の生涯教育のための遠隔医学教育(研修)システム(MLS)が、大学院生向けの教育システムとしても活用されるとともに、看護師教育についてもeラーニングシステム(CDSS:キャリア開発支援システム)が日常的な看護教育に活用されており、教育研修の推進を図っている。

(診療面)

○ 「携帯による検査結果お知らせシステム」を開発し、結果を聞くためだけの来院が不要となり、外来患者の待ち時間減少、医師の負担軽減にもつながるなど、患者サービスの向上を図っている。

○ 外科漢方外来、緩和ケア外来、糖尿病外来の開設等、患者のニーズも踏まえながら質の高い医療の提供に努めている。

(運営面)

○ 病院長を中心とした迅速かつ的確な意思決定プロセスを構築し、病院経営基盤を確立し責任体制を明確にするために、病院を「学部附属」から「大学直轄」とすることを決定している。

○ ベッドコントロールの効率化に伴う稼働率の増加、手術件数や外来化学療法件数の増加、差額室の料金改定等により、病院経営を効率化して病院収入の増加を図っている。(対前年度比11億円増)

○ 医師の処遇改善のため、分娩取扱手当、オンコール手当、夜間診療手当を新設するなど、就労環境の整備を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --