国立大学法人鳥取大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 鳥取大学は、21世紀を迎えて教育、研究、社会貢献、診療等の面で大学が発揮すべき機能を十全に伸展させるため、「知と実践の融合」を理念として掲げ、1)社会の中核となりうる教養豊かな人材の養成、2)地球的・人類的・社会的課題解決への先端的研究、3)地域社会の産業と文化等への寄与を教育研究の目標としている。
 業務運営については、経営協議会学外委員からの資金調達に係る基金設置についての意見を踏まえ、「鳥取大学みらい基金」を創設し、大学の経営基盤の充実に努めている。また、遺伝子再生医療を目指した医学研究を中心とし、染色体工学を用いた横断的研究・トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を行うため、染色体工学研究センターを設置している。
 一方、年度計画に掲げている障害者雇用については、平成20年度から平成21年度にかけて障害者雇用者数と雇用率がともに減少しており、法定雇用率の達成に至っていないことから、着実な取組が求められる。
 また、年度計画に掲げている旅費システムの利用率向上については、チケット手配率が50%未満かつ平成20年度から平成21年度にかけてのチケット手配率も減少していることから、着実な取組が求められる。
 財務内容については、産学・地域連携推進機構のスタッフが収集した「教員面談情報」の活用等を行った結果、共同研究、受託研究及び奨学寄附金等による外部資金が14億2,867万円(対前年度比1億291万円増)となっている。
 その他業務運営については、「鳥取大学設備等整備支援事業」により、農学部附属動物病院(動物医療センター)の整備を実施している。
 教育研究等の質の向上については、「鳥取学」、「鳥大読書ゼミナール」、「プレゼンテーションの戦術~授業を創ろう!~」等を開設し、人間力を根底に置いた教育を充実させている。また、岐阜大学、京都産業大学との3大学間で「獣医・動物医科学系教育コンソーシアムによる社会の安全・安心に貢献する人材の育成」プログラムの連携教育を開始している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育研究の目標を達成するため、戦略的に取組む施策に必要な「戦略的経費」を8億9,476万円(対前年度比5,425万円増)確保し、学術図書資料費、国際戦略経費、教育・研究改善推進費、地域貢献支援事業費等として措置している。

○ 経営協議会学外委員からの資金調達に係る基金設置についての意見を踏まえ、「鳥取大学みらい基金」を創設し、大学の経営基盤の充実に努めている。

○ 子どもにものづくりや科学の楽しさを伝える人材を養成する拠点として米子市に「米子ものづくり道場」を開設している。

○ 遺伝子再生医療を目指した医学研究を中心とし、染色体工学を用いた横断的研究・トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)を行うため、染色体工学研究センターを設置している。

○ これまでの監事、会計監査人及び内部監査課からの指摘事項に対するフォローアップを随時行い、改善済み事項を確認するとともに、改善中のものについては、現状及び改善計画を確認している。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「障害者雇用については、法定雇用率(2.1%)の達成に努める」(実績報告書27頁・年度計画【26-2,28-2】)については、附属特別支援学校卒業生等を雇用することにより、卒業生の就職先確保と法定雇用率の達成に取り組んでいるものの、平成20年度から平成21年度にかけて障害者雇用者数と雇用率がともに減少しており、法定雇用率(2.1%)の達成に至っていないことから、年度計画を十分には達成していないものと認められる。

○ 「旅費システムの利用率向上に努めるとともに、財務会計システムの平成22年度本稼働に向けた更新を図り、業務の効率化・合理化を促進する。」(実績報告書31頁・年度計画【34-2】)については、旅費システムの利用率向上に向けてシステムの操作説明会開催やシステムのトップページに出張パック情報を掲載する等の取組を行っているものの、チケット手配率が50%未満かつ平成20年度から平成21年度にかけてのチケット手配率も減少していることから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載51事項中49事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、2事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 産学・地域連携推進機構のスタッフが収集した「教員面談情報」の活用等を行った結果、共同研究、受託研究及び奨学寄附金等による外部資金が14億2,867万円(対前年度比1億291万円増)となっている。

○ 「鳥取大学における設備整備に関するマスタープラン」を改訂し、今後導入される研究設備においては原則として全学共同利用としている。

○ 資金運用額の確保を図り、運用益を教育研究の充実や学生支援、留学生支援等に活用している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質を確保しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 地域学、医学、工学、農学の4学問分野の教育研究活動と社会連携活動について外部評価を実施し、評価結果を「平成21年度鳥取大学外部評価報告書」として取りまとめ、学内外に配布している。

○ 大阪府、兵庫県、岡山県を広報重点地域として学生募集活動を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設整備マスタープランに基づき、施設の整備状況についてフォローアップを行い、自己資金を活用して学生寮(米子キャンパス)及び農学部附属フィールドサイエンスセンター本館の耐震・機能改修を実施するとともに、「鳥取大学設備等整備支援事業」により、農学部附属動物病院(動物医療センター)の整備を実施している。

○ 共用スペース等の創出に活用するため、工学部において利用状況調査を実施し、調査結果に基づき改善を求めるとともに、全学共用スペース確保については、地域学部において全学共用スペース26室(1,180m2)を確保して使用者を決定している。

○ 学長・理事等をメンバーとする「感染症タスク・フォース」を設置して新型インフルエンザの対応を行うとともに、大学全体の基本的な判断基準・対応策方針等を定めた「鳥取大学における新型インフルエンザ対応」を策定している。

○ 学生の海外派遣に係る危機管理体制を充実させるため、「鳥取大学国際交流危機管理マニュアル」を作成している。

○ 防犯対策及び学生等への安全確保として、緊急通報機能を備えたセキュリティーポールを2基増設して鳥取地区内では合計7基とするとともに、大学から約1km離れた女子寮への帰宅経路である公道に付近住民と協議して防犯灯を5基増設している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 全学共通科目のカリキュラム体系を改正して従来の「主題科目」を「教養科目」とし、その科目区分を「基幹科目」、「主題科目」、「特定科目」としている。また、「特定科目」では、「鳥取学」、「鳥大読書ゼミナール」、「プレゼンテーションの戦術~授業を創ろう!~」等を開設し、人間力を根底に置いた教育を充実させている。

○ 岐阜大学、京都産業大学との3大学間で「獣医・動物医科学系教育コンソーシアムによる社会の安全・安心に貢献する人材の育成」プログラムの連携教育を開始している。

○ 教員及び大学院生を対象とした「教員及び大学院生のための英語研修」を開催し、英語でのプレゼンテーションや論文指導を行っている。

○ アルバイト情報提供業務を大学生協へ委託し、大学生協が大学生協情報ウェブサイトで健全かつ安全な求人情報を提供することにより、学生は24時間いつでも携帯電話向けウェブサイトから情報検索でき、求人情報を電子メールで受け取ることが可能となり、求人側もウェブサイトで登録・求人申込みが可能となっている。

○ 電子計算機システムの更新を実施して機能強化を図るとともに、必要な箇所だけが冷却され、効率的な廃熱回収が可能となる「ラック型冷却システム」を設置して、省エネルギー、省スペース、導入コスト・運用管理コストの削減を達成している。

○ 附属図書館では、鳥取県内ネットワークを利用した相互貸借等利用者サービスの充実を図るとともに、鳥取県内全地区の高等学校への図書貸出サービスを実施している。

○ 「中国地域産学官連携コンソーシアム」における「CPAS Net」(産学官連携マッチングシステム)に卒業研究タイトルを追加して情報量を増強し、ウェブサイトには面的特許技術の掲載を行うなど内容を充実させている。

○ 医学部の染色体工学技術を活用し、鳥取県におけるバイオ産業集積等を図る共同研究拠点施設「とっとりバイオフロンティア」を米子キャンパスに整備することを決定するとともに、「第1回シンポジウム・交流会-染色体工学技術を中心とした新産業の創出を目指して-」を鳥取県等と共催している。

○ 「日中間大学教育研究高度化のための国際シンポジウム」を河北大学(中国)で実施するとともに、「鳥取大学フェア」を河北大学、北京林業大学(中国)で実施している。

○ 附属特別支援学校では、「個の育ちをつなぐ教育課程~個が生きる集団づくりに視点をあてて~」を研究テーマとして取り組み、小学部、高等部本科、専攻科には各1名、中等部には3名の大学教員が指導助言者として、大学院生(1名)が研究協力者として、研究を支援している。

○ 大学教育支援機構の改組が図られ、教育センターに大学教育と附属学校教育との連携支援を目的として附属学校連携部門を設置するとともに、地域学部教員を併任させ、附属小学校の放課後を活用して、大学教員による課外教室(キッズスポーツアンドスタディサポート、陸上教室等)を実施している。

全国共同利用関係

○ 乾燥地研究センターでは、研究者コミュニティに開かれた運営体制を整備し、大学の枠を越えた全国共同利用を実施している。

○ グローバルCOEプログラム「乾燥地科学拠点の世界展開」により、外国人研究者3名(中国1名、シリア2名)を招へいして若手研究者向けの講義・セミナーを開催するとともに、共同研究等により外国人研究者5名(米国2名、シリア2名、モンゴル1名)を招へいしている。また、外国人研究者4名、留学生16名を受け入れるとともに、教員52名、ポストドクター15名、学生64名、事務職員6名、技術職員3名の計140名を海外へ派遣している。

附属病院関係

○ 血管再生医療の附属病院での臨床展開や、医学研究科において筋ジストロフィー患者由来のiPS細胞における遺伝子修復技術の開発等、基礎研究と臨床医学との融合を図りながら、トランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)の推進を図っている。診療では、救命救急センターにおける三次救急患者の受入体制を強化(平成21年度三次救急患者受入数863名、対前年度233名増)するとともに、地域医療機関等とも連携して「救急の日」イベントを開催するなど、地域医療の核となる役割を果たしている。
 今後、引き続き、救命救急医療体制の強化を図るとともに、「第二期中期計画期間の病院運営に関するアンケート」調査の意見を踏まえて、附属病院運営の活性化に向けたさらなる取組が期待される。

(教育・研究面)

○ 救命救急センターの体制強化により、救急救命士の気管挿管実習や薬物投与実習を積極的に受け入れており、救急救命士の教育体制を充実させている。(平成21年度受入人数14 名、対前年度6名増)

○ 専門医養成において、後期研修の選択肢(専門医、選択ローテート、大学院入学等)に幅を持たせ、多様な専門医技術を研修できるような体制を推進している。

(診療面)

○ 脳卒中連携パス等を地域医療機関11病院と運用して、平成21年度は206件(対前年度比196件増)となり、院内においてもクリティカルパス委員会を定期的に開催して適用率の向上を図っている。(平成21年度入院パス適用率42.7%、対前年度比9.7%増)

○ 新型インフルエンザ発生時において、協力医療機関に指定され、発熱外来等を設置して対応するなど、診療体制の充実を図っている。

○ 鳥取県内3病院がITネットワークで連携し、リスクの高い妊婦の周産期データやベッドの空き状況等の情報を共有する「鳥取県周産期医療情報システム」を運用(登録者数112名)しており、地域医療機関と連携して周産期医療提供体制を整備している。

(運営面)

○ 鳥取県から委託を受けた「女性医師就業支援事業」において、女性医師の就業支援を啓発するシンポジウム及び懇話会の開催等、就業環境を改善するための検討を行っている。

○ 診療実績等の貢献度を踏まえ、各診療科が自由に使えるインセンティブ経費を配分して職員の意欲向上に努めている。

○ 特定任期付職員の任期満了後の常勤化の制度を進めており、平成21年度は、診療放射線技師等7名を常勤化しており、医療業務従事者の安定的な確保を図っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --