国立大学法人横浜国立大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 横浜国立大学は、「実践性」、「先進性」、「開放性」及び「国際性」の4つの具体的な理念を掲げ、この理念を実現するため「大学憲章」を定めて大学運営を推進している。
 業務運営については、大学のグランドデザインとなる教育基本方針「YNUイニシアティブ」(1.学位授与方針、2.教育課程編成・実施方針、3.入学者受入方針に加え、4.教育の質の持続的向上(ファカルティ・ディベロップメント(FD)/スタッフ・ディベロップメント(SD)推進方針))として一体的かつ一覧性を高めて公表し、教職員・学生等と「YNU意識」を共有化しようとしている。
 財務内容については、財務分析評価等を踏まえ、学長及び部局長等のリーダーシップに基づく学内競争的経費の拡充・重点を図ること等を盛り込んだ「予算制度改革の基本的方向性について(最終報告)」を取りまとめ、平成22年度予算編成方針に反映している。
 教育研究等の質の向上については、ビジネス関連科目、インターンシップ、キャリア教育、修了課題(ビジネス・プラクティス検定)に加え、ビジネス教育サポートサイト「Y-Career」運用を融合した副専攻「ビジネス・プラクティスプログラム」を導入し、学生が卒業・修了後に必要とされる分析能力・企画能力等の修得を図っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学のグランドデザインとなる教育基本方針「YNUイニシアティブ」(1.学位授与方針、2.教育課程編成・実施方針、3.入学者受入方針に加え、4.教育の質の持続的向上(FD/SD推進方針))として一体的かつ一覧性を高めて公表し、教職員・学生等と「YNU意識」を共有化しようとしている。

○ 第2期中期目標期間の重点事項に向けた「国際化支援」「教育研究支援」体制強化のため、グローバル・ヨコハマ・プロジェクト支援組織「教育研究高度化支援室」を設置し、国際連携プロジェクトや留学生プロジェクト支援等の一元的な推進を行っている。

○ 学長裁量の時限的な配分枠「全学教員枠」を活用し、学長のリーダーシップにより全学的視点から教員を配置し、戦略的な教育研究の展開と中期目標の実現を目指すとともに、事務職員配置枠を計画的に確保し、重点事項、繁忙期の業務や次世代育成支援に対応している。

○ 専門性の高い業務について、外部有識者や専門家に継続委嘱するとともに、市民ボランティア登録制度を積極的に活用して留学生支援、図書館業務支援体制を強化している。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(施設・設備の貸出等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載29事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 財務分析評価等を踏まえ、学長及び部局長等のリーダーシップに基づく学内競争的経費の拡充・重点を図ること等を盛り込んだ「予算制度改革の基本的方向性について(最終報告)」を取りまとめ、平成22年度予算編成方針に反映している。

○ 授業料・入学料免除額及び免除比率等、平成19年度決算時よりも多くの財務指標を盛り込み、平成20年度決算に係る特徴について取りまとめた「財務分析報告書2009」や、財務内容を分かりやすく解説した「財務レポート2009」を作成し、役員をはじめ役員・部局長合同会議や経営協議会に報告している。

○ 人件費管理プロジェクトチームにより、第1期及び第2期中期目標・中期計画中における人件費所要見込額に関する各種推計を実施し、一層適切な執行管理を行うため、平成22年度の人事管理方針に活用している。

○ 教員の研究活動、研究成果、相談に応じられるテーマを紹介した「研究者総覧」を大学ウェブサイトで公開したほか、「産学連携パートナー・発掘ガイド2009-2010」を発行して、大学全体として研究活動とその成果情報等を積極的に提供し外部資金の獲得や申請を促すことに努めている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 大学の基本理念である「実践的学術の国際拠点」形成に向けて、国内外において大学の訴求力強化、YNU意識の統一化のため「YNUユニバーシティ・アイデンティティ・システム」を制定し、スローガン、シンボルマーク、ロゴマーク、シンボルカラーの統合による「YNU意識」を統一化している。

○ 大学ウェブサイトをリニューアルし、ユーザビリティ重視の広報メディアとして充実させ、入学志願者と保護者(社会)重視の効果的広報・情報発信と大学のブランディング化に取り組んでいる。

○ ホームカミングデーでは、従来の卒業生と大学との懇親目的から「卒業生、在学生、教職員」に加え、「入学志願者、保護者、地域住民」にも開放したオープンキャンパス(オープンハウス)として教育研究成果の公開推進を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を上回って実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 施設マネジメントの推進について、1.耐震診断結果による「施設整備5ヶ年整備構想」を見直し、2.キャンパスマスタープランを見直し、マスタープランの基本方針を策定し、3.「全学共通利用スペース」制度により大型改修2棟の利用状況見直しを実施し、当該整備面積の20%(約650m2)を全学共通利用スペースとして確保し、多様な教育研究ニーズに対応している。

○ 四半期ごとにエネルギー使用量の点検評価を実施し、キャンパス委員会を通じて教職員・学生への啓蒙活動を実施することにより、全学教職員・学生の省エネルギー意識を高めている。

○ 大学に関わる様々なリスクに対応した総合的なマニュアルを作成するため、各リスク担当課職員により構成するワーキンググループを設置しており、関係委員会において検討し、各種リスクに対応した行動計画をまとめた危機管理基本マニュアルを策定し、ウェブサイトに掲載して危機管理体制を強化している。

○ 新健康診断システムの活用により、内臓肥満・メタボリック症候群対象者(学生・教職員)に対して延べ4日間にわたり、管理栄養士による食事指導および健康スポーツ医による運動指導を実施している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載14事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ ビジネス関連科目、インターンシップ、キャリア教育、修了課題(ビジネス・プラクティス検定)に加え、ビジネス教育サポートサイト「Y-Career」運用を融合した副専攻「ビジネス・プラクティスプログラム」を導入し、学生が卒業・修了後に必要とされる分析能力・企画能力等の修得を図っている。

○ 教育学研究科では、学部、5附属学校、教育実践総合センターとの連携、協力体制を強化するために、研究科所属教員、附属学校教員、大学院生及び学部出身教員から構成される「教育デザイン研究会」を組織し、研究科、学部、附属学校、教育実践総合センターが一体となった教員養成システムを再構築している。

○ 留学生受入の拡充を推進するため、民間資金による独立採算型整備事業「大岡インターナショナルレジデンス(留学生・研究者用居室311室予定)」を平成21年度に着工し、平成22年度に共用開始予定としている。

○ 就職相談体制の強化による相談件数急増に伴い、キャリア・アドバイザー就職相談を週3日から週4日体制に拡充するとともに、相談ブースを増設するなど、相談環境を強化している。

○ 研究活動の基盤となる全学的な施設設備、ICT(Information Communication Technology)環境の整備充実を戦略的かつ計画的に実施するための検討について、「CIO(Chief Information Officer)」の明確な権限の下で、「統合認証基盤(学生・教職員ID、学籍の一元化)」の整備を進めている。

○ 産学連携を支援する組織「よこはまティーエルオー株式会社」「NPO法人YUVEC(よこはま大学ベンチャークラブ)」との連携を強化するとともに、知的財産部門では「知的財産ポリシー」の下で特許出願、知的財産の技術移転を進めている。

○ 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」により、テニュア・トラック制に基づき若手教員に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。

○ 附属横浜中学校では、神奈川県立光陵高校との連携型中高一貫教育を一層推進し、神奈川県教育委員会と「かながわの中等教育の先導的モデルづくり」検討会議を設置して、神奈川県内の学力育成モデルに関する実践的研究(リテラシー育成モデル)について研究を進めている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --