国立大学法人政策研究大学院大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 政策研究大学院大学は、政策研究教育を通じて、我が国及び世界の民主的な統治の発展と高度化に貢献することを目的とし、政策研究の学問的確立を先導するとともに、世界的にも卓越した研究・教育を実現するための取組を進めている。
 業務運営については、各国を代表する大学等と、教育及び研究者交流に関する協定を新たに8件締結し、研究交流の体制を充実させている。
 財務内容については、教育プログラムの運営に必要な経費と、創意工夫による充実強化に必要な経費に区分して、プログラムごとに予算配分を行うことにより、各プログラムの執行額がより適切に把握できる仕組を構築し、平成22年度以降の財務分析がより機能するように準備を行っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、「Public Policy Program」について、国際機関・中央省庁・地方自治体において政策分析・政策実施を担当する高度専門職業人の人材育成を充実させる観点から、従来からの1年制に加えて2年制プログラムの導入を決定している。
 一方、「年度計画を上回って実施している」と自己評価している事項がかなり多く見られ、計画の設定や実施状況の評価について、引き続き、適切に実施するよう努めることが期待される。
 教育研究等の質の向上については、「国際機関の幹部職員養成」、「ローカルガバナンスの強化」及び「ステーツマン教育」に関する問題提起型研究プロジェクトの3つのパイロット事業の他、検討が必要と考えられる政策課題のうち、規制と権利調整、開発政策の新展開、国際標準等の課題についてのプロジェクト研究に着手している。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 各国を代表する大学等と、教育及び研究者交流に関する協定を新たに8件締結し、研究交流の体制を充実させている。

○ 共同プロジェクト研究の実施や客員研究員の受入れや情報の発信を行う政策研究プロジェクトセンターの機能と、政策情報研究センターの機能の関係を整理し、両センターを発展的に統合して、政策研究センターとすることを決定している。

○ 大学運営局人員配置を検証し、国際交流事業及び広報事業を担当する課を発足させるとともに、国際交渉を円滑に行うための外国人スタッフの補充、外国からの研修受入事業に従事する職員の補充等、必要な事務的機能の強化を図っている。

○ 利便性を向上させたシステムを平成22年度から導入するため、平成21年度中に学内ネットワークシステムの更新作業を行うとともに、分散していた教務情報及び留学生情報を一つのデータベースに集約し、利便性も高めるなど、教育支援ツールとしての機能を強化した新たな教務システムを検討し、導入のための準備を行っている。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(大学の知名度を上げるための広報戦略等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 教員や事務職員に占める女性の割合は高いが、男女共同参画に関する具体的な目標を設定した計画等の策定、推進のための組織の設置等、学内での男女共同参画推進に向けた取組が乏しいことから、今後一層の取組が期待される。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

○ 平成16年度から平成20年度までの評価結果で評価委員会が課題として指摘した、大学院博士課程について、学生収容定員の充足率が平成16年度から平成18年度においては85%、平成19年度から平成21年度においては90%をそれぞれ満たさなかったことから、今後、速やかに、定員の充足に向け、入学定員の適正化に努めることや、入学者の学力水準に留意しつつ充足に努めることが求められる。(なお、平成22年度は90%を満たしている。)

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載27事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、大学院博士課程において学生収容定員の充足率が90%を満たさなかったこと等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育プログラムの運営に必要な経費と、創意工夫による充実強化に必要な経費に区分して、プログラムごとに予算配分を行うことにより、各プログラムの執行額がより適切に把握できる仕組を構築し、平成22年度以降の財務分析がより機能するように準備を行っている。

○ 様々な研究助成情報を学内ポータルサイトに随時掲載するとともに、1か月ごとにリマインドメールを送信し、外部資金獲得の支援情報を提供している。

○ 外国人教員の外部資金獲得の申請を促すため、英語での申請を受け付けている公募については、英文により外部資金情報を提供するとともに、英語による個別相談に応じている。

○ 受託研究収益及び共同研究収益等、外部資金の獲得努力により、外部資金比率は10.1%(対前年度比2.2%増)となっている。

○ 一般管理費比率が17.8%(対前年度比2.2%増)となっていることから、削減に向けさらなる取組が期待される。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、随意契約見直し計画の実施については、契約の見直しに着手するなど、指摘に対する取組が行われているが、複写機の随意契約の公表については、ウェブサイトへの掲載が漏れていたことから、適切な取組が期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載7事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 「Public Policy Program」について、国際機関・中央省庁・地方自治体において政策分析・政策実施を担当する高度専門職業人の人材育成を充実させる観点から、従来からの1年制に加えて2年制プログラムの導入を決定している。

○ IMF(国際通貨基金)が奨学金を拠出しているプログラムについて、ミッションの見直し及び対象国拡大の結果、「Transition Economy Program」を「Asian Economic Policy Program」へ改称することを決定するとともに、当該IMF奨学金事業が公募制に移行するのにあわせて、従来からの1年制に加えて2年制プログラムの導入を決定している。

○ 「年度計画を上回って実施している」と自己評価している事項がかなり多く見られ、計画の設定や実施状況の評価について、引き続き、適切に実施するよう努めることが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 外国人留学生、研究者のために整備した国際交流施設について、以後の長期間における維持管理費・大規模修繕費及び建替のための建設費の一部にかかる財源を賃料等の自己収入で賄うことができるように賃料等の設定を行っている。

○ PFI事業のモニタリングの結果等を踏まえ、業務作業計画を実情に合わせて変更し、設備点検項目の追加を行うとともに、中長期修繕計画については、PFI事業契約に基づき、実情に合わせ平成21年度修繕計画を策定し、外壁、監視盤等の修繕を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 「国際機関の幹部職員養成」、「ローカルガバナンスの強化」及び「ステーツマン教育」に関する問題提起型研究プロジェクトの3つのパイロット事業の他、検討が必要と考えられる政策課題のうち、規制と権利調整、開発政策の新展開、国際標準等の課題についてのプロジェクト研究に着手している。

○ 大学と公共政策の各分野で優れた実績を有する各省庁政策研究所等との連携による政策研究教育の拠点とした政策研究院機構(仮称)の創設に向け、特任教員制度(人事交流等により特命業務に従事する専門家を教員待遇で任用)を活用して財務省やJICA(独立行政法人国際協力機構)等から特任教授等として4名を雇用し、研究を開始している。

○ 各国における研究機関、国際機関や海外の大学と連携し、アフリカ4か国(ウガンダ、エチオピア、ガーナ、ナイジェリア)及びアジア1か国(ベトナム)で共同研究を実施するとともに、ベトナムでは運営体制を見直した上で、引き続きハノイのプロジェクト事務所を運営し、現地における国際会議の開催や情報の発信等を通じてベトナムにおけるネットワークを維持している。

○ 「防災政策プログラム」については、引き続き独立行政法人建築研究所及び独立行政法人土木研究所と連携して運営を行うとともに、大学院博士課程においては、土木研究所と連携協定を締結し、防災学にかかるプログラムを開設し、平成22年度より学生を受け入れることを決定している。

○ 東京都港区及び関係機関と連携し、「日本語カンバセーションパートナー事業」を通し留学生がより日本語に親しめるように協力し、学生の「みなと区民祭り」への参加を促進するとともに、国際交流コンサートを実施する他、東京国際映画祭の一環として位置付けられた映画上映会を港区と協力して実施し、留学生の鑑賞を促すなど、留学生と地域社会との交流を支援している。

○ 留学生の宿舎機能を中核とした国際交流施設(45戸)を整備するとともに、その他の留学生の宿舎に利用している民間施設において管理人を置くなど、留学生生活の支援を充実している。

○ 外部調査機関による資料評価結果と、学生の貸出利用統計を基に、政策研究に関わる国内外の資料の収集、学生の学習・研究のための資料を中心とした収集、大学の国際化への対応を支援する資料の収集を基本方針とする資料収集基準を策定している。

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高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --