国立大学法人お茶の水女子大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 お茶の水女子大学は、「21世紀型お茶の水女子大学モデル(現代のリベラルアーツから新たな大学院の創設へ-優れた女性人材の育成)」を大学の長期戦略として、豊かな見識と専門的知性を備えた女性リーダーの育成に向けて、学長のリーダーシップの下、新たなリベラルアーツを大学の基幹事業として位置付けるため、「文理融合21世紀型リベラルアーツ」のカリキュラム設計を行っている。
 業務運営については、約2万人にわたる東京女子高等師範学校及びお茶の水女子大学卒業生・修了生の悉皆調査を行い、卒業生のライフコースの分析を行って、国立女子大学の役割を検証している。
 一方、年度計画に掲げている女性の役職への登用を促進することについては、女性役職者数及び割合が増加するまでには至っていないことから、着実な取組が求められる。
 財務内容については、研究シーズのアピールについて、「研究紹介集」を発行し、産学官連携推進会議や「イノベーションジャパン2009」等で配布し、研究成果を広く社会に公開し産学官連携を推進するとともに、教員が開発した行動観察ソフトを商品化している。
 自己点検・評価及び情報提供については、学生の自主活動「学生企画プロジェクト」への大学の支援を継続するとともに、学生の自主企画による「お茶娘タイムズ」の発行、諸種のお茶大グッズの製作・販売、映画試写会の実施等、学生による情報公開の促進に努めている。
 教育研究等の質の向上については、成績・人物とも優秀かつ大学進学において経済的支援が必要な入学志望者が申請可能な、学部1、2年生を対象とした入学前予約型の奨学金制度(通称「みがかずば奨学金」)を設計し、広報活動を開始している。
 また、教養教育カリキュラムとして、「文理融合21世紀型リベラルアーツ科目群」の開講体制を整え、高度な専門教育を支えるための発信・交渉能力、領域横断的な視野、変化に対応する判断力を養うための取組を行っている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 約2万人にわたる東京女子高等師範学校及びお茶の水女子大学卒業生・修了生の悉皆調査を行い、卒業生のライフコースの分析を行って、国立女子大学の役割を検証している。

○ 教員の後任人事について、テニュアトラックによる若手教員の採用(任期付助教や准教授への昇任)を原則としている。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、次世代育成支援対策行動計画の策定については、平成21年11月に次世代育成支援対策行動計画を東京都労働局に提出しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、大学独自の採用制度の構築については、大学独自に「国際交流」及び「研究協力」の専門性を求める分野や一般管理部門について、既卒者を対象に語学力、実務経験及び職務上の資格取得等を条件として採用試験を実施し、2名の事務職員を採用しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、経営面での意識改革において効果の期待できる仕組みの構築については、経営面の意識改革を視野に、大学の理念に基づく業務を支える事務職員の育成を目途に、「当面の事務職員人材育成計画」を策定しており、指摘に対する取組が行われている。

○ 平成20年度評価結果において評価委員会が課題として指摘した、人員に関する基本方針の策定については、総人件費改革の着実な遂行との整合性を踏まえ、「人員に関する基本方針」を策定しており、指摘に対する取組が行われている。

平成21年度の実績のうち、下記の事項に課題がある。

(法人による自己評価と評価委員会の評価が異なる事項)

○ 「女性の役職への登用を促進する。」(実績報告書15頁・年度計画【20-1】)については、女性役職者数及び割合が増加するまでには至っていないことから、年度計画を十分には実施していないものと認められる。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けておおむね順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載35事項中34事項が「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められるが、1事項について「年度計画を十分には実施していない」と認められること等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 研究シーズのアピールについて、「研究紹介集」を発行し、産学官連携推進会議や「イノベーションジャパン2009」(「大学発知の見本市」)や東京都文京区の文京博覧会で配布し、研究成果を広く社会に公開し産学官連携を推進するとともに、教員が開発した行動観察ソフトを商品化している。

○ 大学施設の積極的な開放の方策として、より社会ニーズの高い一時貸付に関する要項を制定し、柔軟に対応できるように申請時期、使用期間や貸出料金について定めるとともに、貸出手続きをウェブサイトに掲載し、学外利用者に周知している。

○ 人件費シミュレーションを検証し、平成22年度以降の人員に関する基本方針を策定している。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載17事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 学生の自主活動「学生企画プロジェクト」への大学の支援を継続するとともに、学生の自主企画による「お茶娘タイムズ」の発行、諸種のお茶大グッズの製作・販売、映画試写会の実施等、学生による情報公開の促進に努めている。

○ 特に報道メディアの職に従事している卒業生に対象を絞り、広報戦略担当の学長特命補佐を中心に学長・役員・広報推進室等との情報交換を行い、広報活動の充実を図る方策の検討を行っている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載8事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 老朽化が著しい職員宿舎2棟を取り壊し学生寮整備用地に転用し、有効活用するとともに施設有効活用のための点検評価により、留学受入・派遣及び語学教育を行うグローバル教育センターに国際交流推進のため研究室等を再配分するなど、スペースの再配分を行っている。

○ 新型インフルエンザの発生を受け、学長をトップとする感染症対策会議を累次開催し、対策マニュアルを作成し、附属学校を含む全構成員に周知徹底するとともに、附属学校園を含む学内感染状況を、副学長(戦略担当・副総務機構長)の下に一元的に集約し、学級閉鎖、学年・学校閉鎖臨時休校措置や学生課外活動自粛措置を基準に基づき迅速に講じ、感染拡大を最小限にとどめている。

○ 施設管理マネジメントに基づき作成された室管理データベースを活用し、各研究棟の研究室を外部資金(大学教育の国際化加速プログラム他)によるプロジェクトに再配分している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を上回って実施している」又は「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ 教養教育カリキュラムとして、「文理融合21世紀型リベラルアーツ科目群」の開講体制を整え、高度な専門教育を支えるための発信・交渉能力、領域横断的な視野、変化に対応する判断力を養うための取組を行っている。

○ リベラルアーツ教育を基礎に、学科等の枠をこえた学生主体の選択を可能とする「複数プログラム選択型専門教育制度」を導入するため、制度設計と教育課程の開発を進めている。

○ 他大学と連携した「学際生命科学東京コンソーシアムによる全人的大学院人材育成拠点の確立」により、大学院共通カリキュラムの開発や学位審査システムの標準化を行っている。

○ 成績・人物とも優秀かつ大学進学において経済的支援が必要な入学志望者が申請可能な、学部1、2年生を対象とした入学前予約型の奨学金制度(通称「みがかずば奨学金」)を設計し、広報活動を開始している。

○ 子育て中の女性研究者に対してアカデミック・アシスタントを研究補助者として配置する支援を実施するとともに、「共同研究用経費」の学内公募の申請対象者を、教授、准教授、講師にとどまらず、助教やリサーチフェロー等、広範なものとし、若手女性研究者の育成を図っている。

○ 「若手研究者の自立的研究環境整備促進」により、テニュアトラック制に基づき若手教員に競争的環境の中で自立と活躍の機会を与える仕組みの導入を進めている。

○ 「女性が進出できる新しい研究分野の開拓」プロジェクトによる4分野の個別研究を推進し、女性研究者に対する要請に応えている。

○ 産学官連携展開事業において、知的財産本部に技術移転や特許に関する専門家(特任准教授、特任教授)を配置し、知的財産セミナー等の開催を通じて、研究推進・社会連携室との連携による知的財産や研究成果の社会的還元機能と地域社会との窓口機能を果たしている。

○ サイエンス&エデュケーションセンターと湾岸生物教育研究センターにおいて、東京都、東京都北区、千葉県館山市の教育委員会等と連携し、理科離れ対策教育支援事業を実施している。

○ 大学と附属学校の一体的な運営をさらに強化し、学長のリーダーシップの下に迅速に課題解決を図るため、学長を本部長とする「附属学校本部」を設置するとともに、附属学校本部の下に学校教育研究部を新設し、附属学校をフィールドとする研究、附属学校による開発研究・実践研究等を一層計画的に推進し拡充する体制を構築している。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --