国立大学法人東京芸術大学の平成21年度に係る業務の実績に関する評価結果

1 全体評価

 東京芸術大学は、国立の総合芸術大学として世界的な芸術家を輩出し、我が国の芸術の指導的役割を果たしてきており、創立以来の自由と創造の精神を発展させ、優れた芸術家、研究者、教育者を養成することを目標とし、芸術をもって社会に貢献し続けることを使命として、教育研究と社会連携活動を推進してきている。
 業務運営については、清華大学(中国)において、芸術教育、日中両国の大学間交流や文化交流の発展の推進を目的に、国公立5芸術大学が協力して「日中芸術教育シンポジウム」を開催している。
 財務内容の改善については、音源のCD、DVD等への二次利用や、テレビ・ラジオ等からの取材要請にも積極的に応えられるよう、演奏会の出演者に対して、書面にて音源の使用並びに著作隣接権と肖像権について、対価を要求することなく利用を認める旨の承諾書を提出してもらうことにより、経費の節約等を図っている。
 自己点検・評価及び情報提供については、広報誌において、新たに受賞学生インタビューを掲載するとともに読者へのアンケート調査を実施し、表紙や目次の見直しのほか、受賞教員インタビュー、旬の藝大、藝大ピープル等新たな連載を掲載するとともに文字の拡大や写真点数の増加等、読みやすさや見やすさに配慮している。
 教育研究等の質の向上については、クラシック音楽の発祥の地ヨーロッパの中でも、豊かな音楽の伝統を誇るドイツで開催する「第10回ヤング・ユーロ・クラシック音楽祭」にて、音楽学部の教育水準を世界に示すとともに、国際交流、国際親善を図るため、学部学生及び大学院学生105名から構成する「東京藝大シンフォニーオーケストラ」のドイツ派遣を行い、演奏技術や表現力等について高い評価を得ている。

2 項目別評価

1.業務運営・財務内容等の状況

(1)業務運営の改善及び効率化に関する目標

1.運営体制の改善、2.教育研究組織の見直し、3.人事の適正化、4.事務等の効率化・合理化

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 清華大学美術学院講堂において、芸術教育、日中両国の大学間交流や文化交流の発展の推進を目的に「日中芸術教育シンポジウム」を開催するとともに、シンポジウム開催に際しては、国公立5芸術大学(東京芸術大学、金沢美術工芸大学、愛知県立芸術大学、京都市立芸術大学、沖縄県立芸術大学)が協力して企画・実施等を行っている。

○ 奏楽堂において、独立行政法人理化学研究所との連携協力記念シンポジウム「未来を拓く~科学と芸術の交差~」を開催するとともに、芸術と科学が本来密接な関係性を有するものであり、今後の社会発展の基盤であることを確認している。

○ 音楽学部邦楽科の各専攻が垣根を取り払い同一のステージに立つことによって新しい芸術表現を開拓するための企画である「和楽の美」シリーズは、舞台美術に美術学部教員及び学生が参加することが大きな特徴となっている。

○ 大学の情報発信力を高めるためのデジタルアーカイブ等の情報システム化、ポータルサイトを前提とした芸術情報センターの機器整備・更新を実施している。

○ 経営協議会から出された法人運営に関する意見(募金による基金等の創設等)について、その取組事例をウェブサイトで公表している。

○ 経営協議会の審議内容は、大学のウェブサイトに議事録を掲載することにより社会に広く公表している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載20事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(2)財務内容の改善に関する目標

1.外部研究資金その他の自己収入の増加、2.経費の抑制、3.資産の運用管理の改善

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 教育・研究成果の社会への発信をより促進し、ひいては音楽文化のさらなる向上に資するために、音源のCD、DVD等への二次利用や、テレビ・ラジオ等からの取材要請にも積極的に応えられるよう、演奏会の出演者に対して、書面にて音源の使用並びに著作隣接権と肖像権について、対価を要求することなく利用を認める旨の承諾書を提出してもらうことにより、経費の節約等を図っている。

○ 公開講座として、「陶芸」「絵画制作」「木版画」等、美術17講座、「声楽」等音楽4講座、「サウンドプログラミングワークショップ」等、芸術情報センター6講座、計27講座を開講し、芸術教育を幅広く市民に向けて行い、市民が芸術創造を行う機会の提供に努め、収入を確保している。

○ 消耗品費や印刷製本費等の節約等、経費削減の取組により、一般管理費比率は4.4%

(対前年度比2.9%減)となっている。

○ 中期計画における総人件費改革を踏まえた人件費削減目標の達成に向けて、着実に人件費削減が行われている。今後とも、中期目標・中期計画の達成に向け、教育研究の質の確保に配慮しつつ、人件費削減の取組を行うことが期待される。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載12事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(3)自己点検・評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標

1.評価の充実、2.情報公開等の推進

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 広報誌「藝大通信」において、新たに受賞学生インタビューを掲載するとともに読者へのアンケート調査を実施し、表紙や目次の見直しのほか、受賞教員インタビュー、旬の藝大、藝大ピープル等新たな連載を掲載するとともに文字の拡大や写真点数の増加等、読みやすさや見やすさに配慮している。

○ 芸術分野における教育機関の評価に係る試案について、これまでの海外文献調査や平成20年度に実施した「芸術系大学への期待に関する調査」等を基に作成し、学内の各部局や理事室等に配布している。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載4事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

(4)その他業務運営に関する重要目標

1.施設設備の整備・活用等、2.安全管理

平成21年度の実績のうち、下記の事項が注目される。

○ 共用スペースの有効利用として、既存の石膏展示室の一部を、学生・教員の教育研究成果が発表できる多目的展示ギャラリーに改築している。

○ 施設の有効活用では、絵画棟改修工事に伴い、フレキシブルスペースを一時的な移転場所として赤レンガ1号館2階、総合工房棟のオープンアトリエ、多目的ラウンジを絵画棟アトリエの代替教室として使用している。

○ 大学美術館におけるCO2濃度制御の導入による空調負荷の低減、冷却水ポンプのインバーター化によりエネルギー使用量の削減を図るとともに太陽光発電設備を設置している。

○ 施設マネジメントについては、平成20年度までと同様に平成17年度に策定した「キャンパスプランの検討について」に基づき管理・運営室(施設・環境部会)と関連する各委員会が連携して検討及び施設面等の整備を進めている。

【評定】中期目標・中期計画の達成に向けて順調に進んでいる

(理由)年度計画の記載10事項すべてが「年度計画を十分に実施している」と認められ、上記の状況等を総合的に勘案したことによる。

2.教育研究等の質の向上の状況

 評価委員会が平成21年度の外形的進捗状況について確認した結果、下記の事項が注目される。

○ クラシック音楽の発祥の地ヨーロッパの中でも、豊かな音楽の伝統を誇るドイツで開催する「第10回ヤング・ユーロ・クラシック音楽祭」にて、音楽学部の教育水準を世界に示すとともに、国際交流、国際親善を図るため、学部学生及び大学院学生105名から構成する「東京藝大シンフォニーオーケストラ」のドイツ派遣を行い、演奏技術や表現力等について高い評価を得ている。

○ 芸術学分野等での専門性を深めた学芸員を養成する高いレベルでの学芸員教育課程の構築を実現するために、大学美術館運営委員会及び美術学部教務委員会において、教育内容やカリキュラムの検討を行っている。

○ 学生が学内外で作品や演奏を発表することについて、大学の教育研究成果の公開という意味だけではなく、芸術文化の社会への普及又は芸術家を目指す学生にとって今後の活躍の場を広げるためのきっかけづくりの場という意味もあり、積極的に推進している。

○ 留学生の経済的支援策として、一定の条件の下で支給対象者を拡大(30人から42人)し、緊急支援奨学金を支給している。

○ 平成20年度に実施した国内における芸術系大学の実態調査や意見交換会等を踏まえ、海外における芸術系大学の実態調査やシンポジウム「演奏・創作と芸術研究」を開催するなど、芸術系大学院における学位授与プロセスの研究を進めている。

○ 「異界の風景-東京藝大油画科の現在と美術資料」では、「異界」を創造行為が発生する場をさす概念と定義し、表現が生まれる媒介となる「風景」を提起する試みで、大学の収蔵品に対して、油画教員作家が油画において推し進める創作、研究、教育からの新たな視点によるアプローチを提示し、相互作用に基づく制作・展示を行っている。

○ 大学の情報発信力を高めるための方策の一つとして、デジタルアーカイブの情報システム化、情報集約化(ポータルサイト)を図る目的から、旧来比約5倍の容量のデータストレージの導入、学内システムの共通認証基盤の準備としてシングルサインオンを導入する等、環境整備を行っている。

お問合せ先

高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室

(高等教育局国立大学法人支援課国立大学法人評価委員会室)

-- 登録:平成23年12月 --